ヴァーチャル・ラブ ~いつもあなたを好きでした。~

楠瀬 飛鳥

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本編

3人目の家族

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今日は、唯がなんだか寂しそうなメールを送ってきた。やっぱり大阪の子のことを機にしているのかな?

「家に帰ったら、メール下さい。」

唯が自分では気づかずに送る寂しさを表現するメッセージだ。
僕も唯と話をしたい。昨日のことをもっと、誤解のないように説明したい。それよりも唯と時間を共有したいのかもしれない。

電話が鳴った。元気な唯の声だ!
でも、少しだけ、空元気にも聞こえる。まだ、逢ったことのない唯であることは充分、解っている。でも、唯の発する一言で、唯の状態を理解できる、そう思った。そう思いたいのかもしれない。
しかし、何故、このタイミングでメールではなく電話なのかな?という疑問は、すぐに解消された。
そう、電話はそう長くは続かなかった。唯は会社からかけているのだ。同僚が呼びに来たのだろう。「もう帰らないと!」の唯の声に落胆するのは、僕の方だった。
思わず、「家に帰ったら、電話してこいよ!」と、自然と口を伝う乱暴な言葉。自分でもなんて子供じみたストレートな表現だと驚く。唯ともっと時間を共有したい、そう願うがための一言だった。

帰宅のメールが唯から届く。
『チャットで待ってる。』と。ん、、、チャットかぁ、、、、少し残念に思うも、唯との時間を無駄にしたくないとPCを急いでONした。唯が待ってくれている!唯が先にチャットで待っていることが初めてであることに気づく。

このボタンをタッチすれば、唯に会える。
時間を共有するための秘密のボタン。そう考えると凄くドキドキした。
今日は、どんな唯なのか、想像は膨らむばかりだ。

平日ということもあって事前に制限時間を設定されているチャットに焦りすら感じる。唯の言葉を読みながら、自分の指が動いている。心で思うと同時に、言葉が口を伝うように、僕の指が、僕の言葉を文字にしていく。不思議な状態だと自分でも思う。実際の言葉では表現できない想い。文字が成せる技。

歌手が歌でしか、役者が演技でしか表現することができない物事があるのだとすれば、僕にとってのその手段は、文字だ。

まさに今の僕は僕の気持ちを文字に乗せる。まぎれもなく文字なんだ。
会話の中では恥ずかしくて言えないことすらも文字なら、それを可能にしてくれる。
そんなことを考えながら、唯への想いを文字にしている自分を発見する。

こんな状態でも今日のチャットでは、二人の未来について少し話すことができた。まだ、逢ったこともないのに、いや、逢ったことがないからこそ、妄想できること、文字にできる想いがそこにあった。いつもより時間は短くても、過去に固執するよりも何倍も楽しい。
僕と一緒に住むことを想像している唯、どんな家具を置き、どんなテーブルで一緒に食事をするのかを考ええているのかは、解らない。そんな唯とは別に僕は、唯の愛犬『ジュニアくん』のことを考えていた。正直なところ、唯が犬を飼っていることを聞かせてくれた時は驚いた。その間まで学生だった唯が、一人暮らしをし、夜遅くまで働いているのは事実だ。そんな唯が、ペットを飼っているとは思いもよらなかったからだ。しかも、僕の好きな目の大きな犬だ!『ダックスフンドのジュニアくん』は、どんな表情で僕を迎えてくれるんだろう、、、。ご主人様を奪い去ろうとしている僕を見て、吠えてくるのだろうか? そんなことを一人で考えていた。
そして、いつの間にか僕は、ジュニアくんも含めて、三人で暮らすことを想像していた。
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