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10 本心
しおりを挟む「っつ…」
「すまない!…痛むか?」
皇帝の座を狙っていたロリエッタ公爵は、
即位したばかりの若きイーサン皇帝ならば崩御できると企んだようで、娘と手を組み刺客を送り込んだ
刺客の攻撃からイーサンを守ったエラは、
咄嗟に剣を抜き、近くにいたイーサンに当たらないよう身体を捌いた為、
相手のナイフがエラの頬に掠っていたのだった。
そんなエラは、今、
イーサンの部屋で彼自らによる手当を受けていた。
「大丈夫です…それより、陛下がこんな事をしなくても…」
「僕がしたいんだ」
真剣な面持ちでエラの頬を優しく手当するイーサン
少しだけ悲しそうに、悔しそうに顔を歪めている
「陛下、そんな顔をなさらないでください。」
「…君に怪我を負わせてしまった…」
「私は貴方の専属騎士です。
盾となり、剣となる存在。
こんなかすり傷、どうという事ありません」
「…好きな人に、怪我を負わせてしまったんだ…」
「っ…そ、れは…」
しゅんと項垂れるイーサンを目の前にたじろぐエラ
逆の立場なら、私も同じような反応をしただろう。
危ない目に遭わないでほしいと願っただろう…
「私は、昔から腕力には自信があります」
「え?」
「だから、これからもああいった者から陛下をお守りできます」
イーサンを安心させたくて、精一杯笑顔を見せるエラ
「エラ…」
傷が痛まないよう、優しい手つきで頬を包み込み
真っ直ぐに見つめてくるイーサン
「、…あの…」
「好きだ、エラ」
苦しそうに、縋るように絞り出した声だった。
「陛下…」
「幼い頃から、婚約者として見せられていた写真の少女に恋焦がれてきた。
婚約破棄を言われた時は頭が真っ白になるほど悲しくて、咄嗟に父上に話すと言ってしまったが、
帰ってから、とても後悔した…
たとえ嫌われても、嫌だと言えていればと…
でも必ず会えると、僕の右腕になるとの約束を信じて、再会を待ちわびていた。」
「デビュタントで戴冠式を行うと決まった時、真っ先に君と一緒に参加したいと思った…
君が、パートナーを引き受けてくれて心の底から嬉しかった。
いざ会場に入ると、すぐに君を見つけた。
あまりにも美しく成長している君の姿がすぐに目に映り、
僕は愚かにも、また君に恋をしてしまったんだ」
「でも、公爵令息に言い寄られているのを見た時、
腸が煮えくり返りそうなほど嫉妬に駆られた。
「町でデートをした昨日、君の装いを見た時、
例え君が平民だったとしても
僕は必ず君に恋をすると思った。」
「そして今日…僕を守り怪我を負った君を間近で見て
もう二度と危ない目に遭わせたくないと思った…」
初めて聞く陛下の心の内に、エラはただただ驚き、
彼を見つめていた。
「頼む、エラ…僕の妃として、
僕の右腕になってはくれないか…?」
初恋の人…彼を護りたい、
その一心で鍛え上げてきた18歳の少女
帝国1、2を争うほどの剣術を身につけ、
自他共に認める騎士に成長した。
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恋心が消えたといえば嘘になる。
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初恋の人から、再び婚約の申し込みをされたエラは…
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