皇帝陛下、私と結婚しないでください。~婚約者から専属騎士になりました〜

瑚珀

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9 陰謀

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「ご機嫌よう、皇帝陛下。
マリー・フォンタナ・ロリエッタと申します

本日はご面会の機会をお与えくださり誠にありがとうございますっ」

ドレスの裾を優雅に持ち、ふわふわに巻いたブラウンの長髪を揺らし

愛らしい笑顔を振りまくマリー公爵令嬢。



昨日、イーサンと共に市場視察という名のデートをした際に告げられた

公爵令嬢との面会は、お茶を用意した皇城の離れにある庭で行われた。



 「それにしても、本当にお噂以上の美しさですわねっ」

目の前の皇帝に頬杖をつき、うっとりと見惚れる公爵令嬢

 「光栄だ」

その公爵令嬢を見ようともせず、ひたすらお茶を嗜むイーサン


 「ところで、あなたがイーサン様の専属騎士?」

唐突にエラに話を振るマリー


先程から陛下をイーサン様と呼ぶ彼女に不快な気持ちを募らせていた

皇族か婚約者しか、皇帝を名前で呼ぶことを許されていないのだが…


不躾であることを、彼女は知らないのだろうか。




色々と驚いたが、侯爵家よりも爵位の上である公爵令嬢に失礼な態度は取れない。



すぐに姿勢をマリーに向け、頭を下げた

 「はい。クラーク侯爵家 騎士団 副団長のエラ・スワン・クラークと申します」


 「ふーん…あなたがねぇ

たしか、クラーク令嬢ってイーサン様と婚約者で、まだ皇后候補としているのよね?」

 「…はい」

エラの頭の先から爪の先までを舐め回すように横目でじとりと見た彼女は、


くるっとイーサンの方へ顔を向き直り、
先程の愛くるしい笑顔を見せた


 「私ぃ、イーサン様と2人っきりでお話がしたいです!」


ちらりとエラを見たイーサンは、小さなため息を漏らし、


 「…参りましょう」

 「やったぁ!ありがとうございます」

と、庭園へ消えていった。



2人きり…その言葉に胸騒ぎを覚えたエラは

息を忍ばせ2人に気づかれないよう後を追った。




薔薇が咲きほこる高さ2mの生垣が迷路のように植えられている広大な庭園


段々と、人目のつかない木の生い茂った所へ入っていく2人。





やはり、おかしい


公爵という地位のある令嬢が、


護衛を1人もつけずに皇城へやってくるだろうか?




その時、



2人の頭上の木で人影が動くのを捉えたエラ






 「陛下っ!!!!」





黒いマントに身を包んだ男のナイフが
イーサンの背中を目掛けて振りかざされた瞬間、



咄嗟に男とイーサンの間に入ったエラ





 「エラ…っ!!!!!」









ッキ─────ン"
金属同士の触れ合う鈍い音が庭園に響いた。


 「チッ」

 「っ、大人しくしなさい…!」


間一髪のところで、エラは腰の剣を抜き相手のナイフを受け止めていた。



 「な、何してんのよ!!!私がせっかくここまで連れてきたのに…!お父様に言いつけて…っ」


はっと口を手で覆うマリー令嬢



 「…どうやら、刺客を入り込ませた不届きな方がいるようですね」


 「っち、違う!私は何も…!」


暴れる刺客を押さえつけ、マリー令嬢を睨みつけるエラ




騒ぎを聞き付けた皇室の護衛達が2人を捕らえ連行する。


どんな処遇を受けるかは、考えるまでもない…


 「陛下、お怪我は…」

振り向いた瞬間、イーサンに強く、強く抱きしめられた

 「っ!へ、陛下…?」


どこか怪我をしてしまったのだろうか…?
怖い思いをさせてしまった…この人を護ると誓ったのに


 「っ…生きてる…」


 「え…」


 「死んでしまったかと、思った…
君が、僕とあいつの間に入った瞬間…、

刺されてしまったかと…っ」



イーサンの肩が震えている


溢れ出る庇護欲を堪えられなかったエラは、
イーサンの背中に腕を回し


大きな背中を優しく、優しく 撫でた


 「イーサン…」


私の愛しい人

お守りできて本当に良かった
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