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第三部 いざ天上世界へ、上昇開始
第二十四話 決着を付けに来た
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『・・・・・・っ、クソがっ。この程度で、俺が・・・・・・・・・・・っ。俺たち死にたがりが・・・・・・っ。「死にたがりの英雄様」がそう簡単にやられるか、やられてたまるかってんだ・・・・・・・・っ。』
もう既に何体を倒したのか、数えるのを放棄した白き装甲に覆われた男性、『ケンジ110』は空になった弾倉を吐き出しながら手に持った銃器を振った。
ここに辿り着くまでにもう何丁の銃が使えなくなったのか、それすらも数えてはいなかった。今こうして手に持っている銃もまだ使えるのか、それすらも定かではない。
だが、目の前には多くの敵がいる。その群れの奥には自身が狙い定めた目標がいるはずだったがのだが、もう既に見えない今となってはまだいるのか、それすらも分からない。
ただ分かっていることがある。
それは。
自身がまだ動けるということと目の前にいる敵は自身にとっても敵だということであり。
味方は誰一人、ここにはいないということだ。
『・・・・・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・あん?』
ふと何かがおかしいことにケンジは疑問する。だが、何がおかしいのかケンジにとっては理解が出来なかった。
一度、落ち着こうと思ったのか、ケンジは敵地にも関わらず、深く、深く息を吸い・・・・・・深く息を吐いた。
そして、今の自身の状態を確かめようと軽く見渡してみる。
両手には今もう慣れ親しんでいる銃器がある。・・・・・・・慣れ親しんだとは言ってもまだ使えるかは定かではないが。背には何もない。ただ風が強く吹き付けるだけだ。だが、その風も今は何も感じない。それが『機械人種』であるからかは分からなかったが。
もう既に幾年も戦い続けている身としてはそんなことなどどうでもいい。
今は、たった一人。
それだけが分かればいいのだから。
そうだ、とケンジは自身が一人であることを自覚した。
そう思うのと同時に、再び疑問に思った。
誰もいない・・・・・・・・・・?
何故いないのか、とそう思ったのだ。
確か、ケンジは一人ではなかったはずだ。いつも隣に、正確には右後ろに控えているはずの誰かが。
そして、ケンジに寄り添うように背を重ねてくる誰かがいたはずだ。
そうだ、とケンジは思い出した。
ここには一人で来たのではない、誰かと共に来たのだ、と。
そして、こう思った。
『スパルタン』は英雄などではない、ただの死にたがりのバカのことだ、と。
そのことを思い出すと、すぐにその違和感に気が付いた。
いつも背に着けているマントがないことに。
いつも装備している左腕の盾と右腕の杭打ち機がないことに。
故にケンジは確信した。
これは誰かが見せた夢なのだ、と。
そう結論付けると、ケンジは己の頬を叩いた。
夢の中で己の頬を叩いて起きるというのは古き文化からの名残だ。
その為に、それによって目を覚ますということはほぼケンジの中で決定していたのだが・・・・・・・・・。
『・・・・・・・・・・・・・・っ。・・・・・・・・こいつぁ、どういう冗談だ?』
起きるという確証があってケンジは頬を叩いたのだが、現実に戻る気配はなかった。その事に疑問を持つのと同時にふと脳裏に今の現状の解決策が思い付く。
その解決策を実行に移そうとし、手元に握られている銃器を見る様に目を落とす。そこにあるのは今も壊れるまでにもう残りわずかと言った具合の銃器がある。
状態を見れば一発出せればいい方だと言える状態だったが、一つだけケンジには確信が出来ていた。
それは・・・・・・・・。
『ハッ。ドたまを吹き飛ばすのには何発もいらねぇ。一発出りゃ上等だ。』
そうだ。
誰かを倒すのであれば一発よりかは何発か撃てた方がいい。一発程度で刈られるほどまでの自信はない。確実に倒すことを考えるのであれば、何発か撃てた方が確実性は増す。だが、それは相手を倒す場合の話だ。
自分に使うのであれば、使うのは一発だけでいい。何発も使うまでに銃器を握っている保証もない。
一発、ただ一発だけだ。
ケンジは冷静にそう思いながら、側頭部に銃口を押し当てる。ケンジが何をしようとしているのか理解したのか何かが走ってくる姿が視界隅に映る。
だが、その姿を見るや否やケンジはニヤリと頬を歪める様に笑った。しかし悲しいかな、ケンジの顔は白い装甲に覆われている為にその口元を何かは見ることは出来なかった。
それでもいい。
そう思いながら、ケンジは呟いた。
『・・・・・・・・・・あばよ。・・・・・・・・現実で会おうぜ、クソ野郎。』
一つの銃声が響くのと同時に彼は意識を手放した。
『・・・・・・・・・・・・・・・っ。あ~・・・・・・嫌な夢だった。出来れば、もう二度と見たくはねぇな。』
出来れば、この夢から覚めたいもんだがな。
そう呟きながらケンジはむくりと上体を起き上がらせる。起き上がらせると同時に何かが崩れ落ちる音と誰かの声が聞こえるが、それは、今気にすることではない。
憂鬱気になりながらもケンジは今の身体の状態をサッと見渡して確認した。
左腕にはもう既に自身と一体に成りかけている『挽き肉製造機』付きの大盾があるはずだが、今はない。しかし、全くないというわけではなく、背中に重みを感じることが出来た。右腕には自身の手塩に掛けて作った相棒と呼ぶに等しい武器、『パイルバンカー』があった。
その状態を確認できたことで、ここは夢ではないことに静かに安堵の息をケンジは吐いた。あの夢は出来ればもう二度とは見たくない夢だった。
誰もいない、ただ一人で死地にいる夢など。
『・・・・・・・・・・いったい、何の皮肉だ。・・・・・・・ったく。』
今のケンジの状態からで言えば、あの夢も強ち冗談ではない。何故ならば、この世界にいるのは、ケンジ一人だけであり、『プレイヤー』という存在は何処にもいないのだから。
・・・・・・・・・・・そう言われてみれば、あの夢は今の状況を暗示しているのかもしれない。誰もいないただ一人のみの戦場で孤軍奮闘する・・・・・・・背後には己の死しかないという正に決死という状況とも言えたのだから。
だが、今は違う。
『・・・・・・・・・・・・ああ、そうだ。・・・・・・・・・今は、一人じゃねぇ。』
そう、今この瞬間はケンジ一人だけではない。ケンジの他にまだいるのだ。
そんなことを思いながら、崩れ落ちたであろう何かに視線を向ける。
・・・・・・・・そこには。
思い切りと言っても過言ではない勢いでどかされたにも関わらず、すやすやという寝息を立てながら熟睡している緑色の髪を短く切り添えている女性、ケイトがいた。
『・・・・・・・・・・・しっかし、よく寝られるもんだな。・・・・・・・普通はあんなんされたら起きるもんだろうに。・・・・・・・こんなに熟睡できるなんざぁ羨ましい限りだぜ。』
なんでだろうな、と言葉にはせずに顔面に掛かった髪をケンジは起こさない様にと細心の注意を掛けながらサッと払ってやる。だが、その事がくすぐたかったのか、フフフッ、とケイトは薄く笑った。そのせいで、ケンジは起こしちまったか!?と思っていたのだが、数秒後に聞こえ始めた彼女の寝息に彼は安堵した。
そこで、ふと周りを見渡してみると、姿が見えない一人がいることに気付き、寝息を立てるケイトを起こさぬようにそっと離れるのであった。
そして、歩く当てもなくケンジは歩き始める。
空はもう既に暗い。いくら『天上世界』とは言えども、朝と夜は別らしい。そこはゲームの世界と同じだった。・・・・・・・いや、どれもゲームの頃と同じか。
・・・・・・・・・ただ。
あの頃は生きることに必死だったせいで夜空を見上げることもなく、こうして、歩く当てもなく歩いていくということもなかった。一人での死を避けるために集団行動を基本とし、時間を限っての行動だった。何をするにも時間が限られ、物資も限られていた。
・・・・・・・・・・・ただ、そういった制限があったのを知っているのは限りなく少ないので知る者はいないだろうが。
故に、とケンジは空を見上げる。
今はもう既に太陽はそこにはなく、そこにあるのは数多くの天の光だ。ゲームでこの光を再現するのは難しいだろう。
だからこそ、ここはゲームとは違うと言えるのかもしれなかったが。
『・・・・・・・・・・・・・そう言えば。』
そう言えば、とケンジはふと思った。
空に見えるこの光を誰かが言っていた・・・・・・気がする。その人物は実在したか架空の存在だったか。向こうにいた頃に会ったであろうか、ここで会ったか。もうそれ自体を知ることはケンジには出来ない。しかし、誰かが言っていたということだけは覚えている。
それは・・・・・・・・。
『・・・・・・・・・天の光は、全て星、か。』
・・・・・・・・・己という存在と敵対するものではなく。
・・・・・・ただ、己という存在を『光』で表しているだけなのだ、と。
自分はここにいるぞ、と。
ただ光っているだけでしかない、と。
そういった意味合いを含んで言ったのであろう。
・・・・・・・・もう既にケンジの中から名前を忘れ去られた誰かが。
しかし、今この瞬間だけは。ケンジはその言葉に共感していた。
『・・・・・・・・・・ああ、その通りだ。敵の、攻撃とかの光じゃねぇ。ただ、そこにいるだけだ。何かするわけじゃねぇ。・・・・・・・・いや、何もしないのか?』
どっちだ?
うむむ、と悩むように唸り始めたケンジの前から声が掛けられた。
「・・・・・・・マスター?・・・・・・・如何なされました?近辺に影は見受けられなかったと思ったのですが。」
すぅ・・・・・・と浮かび上がる様に暗い影から出てきたのは黒とは全く真逆の白一色の服に白のフードを被った人物だった。だが、彼はその人物に警戒することなく普段そうするように声を掛けたのだった。
『・・・・・・・・・レオナか。悪いな、見回りなんかさせて。』
「nien。お気になさらず。もう既に敵影は捕捉しております。故に決戦を前にして身体を休めようと仰った貴方のお言葉に従ったまでのことです。お気になさらず。」
『あっはい。』
気にするな、と言った彼女の言葉にケンジは縮こまった態度で返した。
そうなのだ。
あれから、暫くしていくら進めども自ら定めた敵の存在、『魔人種』と接敵は全くと言っていいほどなく、あれよあれよという間にもう既に捉える程の距離まで来ることが出来た。あとは、ちゃっちゃと一発殲滅するだけなので、戦闘前に身体を休めておこうと決め、ケンジ達三人は休んでいたのだった。
幸い、ここには隠密行動に優れているレオナがいる。奇襲をかけようとした場合はすぐに分かる。
そういったこともあり、レオナに付近の警備を任せていたのだが・・・・・・・。
『・・・・・・・お前も休まないと、だろ?・・・・・・・・一日ずっと起きてるってのは身体に染みるからな。お前も少し休んどけ。・・・・・・今まで休んでた俺が言えることじゃないが、あとは任せてもらっていいんだぜ?』
「nien。それはたとえマスターのお言葉とは言えども、お断りさせていただきます。」
やんわりと休むように言ったケンジの言葉をレオナはばっさりと切り捨てる様に言った。普段の彼女からは予想できない切り返しだったことに彼は衝撃を受けるのと同じくこうも思った。
彼女は命令ではなく、マスターのお言葉と言った。
確かに彼女の言う通り命令でないのであれば、別に従う必要はない。しかし、それが命令ならば、話は別。
彼女はケンジにとっての『サポートキャラ』であり、彼女のにとっては『己を創造したご主人様』だ。それ以上でもなければ、それ以下でもない。
それだけの存在でしかないが故に、言葉に従う必要性は存在しない。
従いさせたければ、命令しろと。
そう彼女は言外に言っているような気がした。故に、ケンジはそれ以上に言わなかった。
『・・・・・・・・・・オーケー。・・・・・・・・・分かった、分かった。お前がそうしたいならそうすればいい。だが、適度には休め。・・・・・・・・分かったか?』
「ja。そのお言葉、しかと胸に刻みつけておきます。」
言外に忘れないという彼女に対して、ケンジは、別にそこまでしなくても良いんじゃないかなぁ、と思ったが、まぁ、そう言うんだったら別にいいか、こいつは無理とか無茶するヤツじゃないし、と気楽に思考を切り替えたのだった。
「それで・・・・・・・・・。如何なされました、マスター?」
どうしたかとレオナはケンジに訊いてくる。その質問に対してどう答えるかな、とケンジは少し考えて、答えた。
『あぁ~・・・・・・・・・、その、なんだ。・・・・・・・・恥ずかしい話なんだが。・・・・・・・・笑わないか?』
「・・・・・・・・・・・・・・・内容によっては、ですが。」
ケンジの質問に対してレオナは答える。その彼女の回答にケンジは、出来れば笑わないとか言って欲しいなぁ、と思いながら口を開いたのだった。
『・・・・・・・いやな?ちょいと変な夢?を見てな。気分を入れ替えようと思ってぶらっと来たわけなんだ。』
「成る程。・・・・・・・・して、その夢とは如何なもので?」
『変な夢だったぜ?いつもしてるものはなくて、ボロボロになっちまった銃を握って戦ってんだ。「ガトリング」はねぇわ、「パイルバンカー」はねぇわ、挙句の果てには「スパルタン」のことを英雄だなんかと思ってやがると来てな?いやぁ~、笑っちまうわな。「スパルタン」は英雄じゃねぇ。ただの死にたがりのバカ野郎ってな。・・・・・・・まぁ、自称してる俺が言えたことじゃねぇんだが。』
ハハハ、笑えるぜ、と乾いた笑いをするケンジをレオナは静かに見つめる。そして、何も話さずにレオナは被っていたフードを外した。
「マスター。」
『あ?どうした、レオナ?』
レオナの突然の行動にケンジは目を瞬かせる。普段、取ることのないフードを取り、ケンジを見るということは滅多にないが、それはケンジに伝えたいことがあるからの行動だとだいたい察していた彼は何も話すことなく、ただ彼女からの言葉を待っていた。
「私たちは貴方方が仰る夢というモノが分かりません。それがどういったモノなのか、それすらも知りません。」
ですが。
「私はここに居て、貴方もここに居ます。・・・・・・・・それだけしか私には分かりません。」
ですので。
「お聞きします、マスター。・・・・・・・・・・その夢、というモノでは貴方は何処にいましたか?」
『・・・・・・・・・成る程な。』
彼女の言いたいことがだいたいわかったケンジは顎に手を置いて、どう言えばいいのかを考えた。
あの夢の中では、少なくともここではない何処かということしか分かっていない。
いや。
何処かというのも定かではないのかもしれない。もしかすれば、ここでのことを夢見ていたのかもしれないし、そもそも何処でもないのかもしれない。
夢というモノが何かと訊かれれば、それに対する答えなどケンジには頭に浮かんでくるはずがなかった。
だが。
だが、一つだけ言えることがあるとすれば。
『そう、訊かれちゃこう答えるしか出来ねぇな。・・・・・・・何処か、だ。』
「何処か、ですか?」
『ああ。』
いいか?
『場所なんざ、いちいち覚えられないからな。ここかもしれないし、ここじゃないかもしれない。ただ、俺の持ってた装備は今してる装備とは全く別だったのは覚えてる。』
だから言えるのさ。
『ここじゃない、何処かだってな。』
「・・・・・・・・・・・・・成る程。」
今の説明で分かるモノか、非常に怪しいモノだったが、分かったという様に頷くレオナに対し、ケンジはただ一人、まぁ、分かるならいいか、と思うことにしたのだった。
しかし、そうであれば今は何処にいるということになるのか。
『いや・・・・・・・・・・、別にいいか・・・・・・・・・。』
「・・・・・・・・・・・・?マスター・・・・・・?」
何かを理解したかのように呟くケンジに対して、流れがよく分からないレオナは彼に訊ねる様に言う。その彼女にケンジはなんでもないという様に片手を振ったのだった。
『いや、気にするな。』
「・・・・・・・・・?貴女がそう仰るのであれば、気にはしませんが。」
よろしいので?と言うレオナにケンジは肯定するように頷いた。
『それで、何だったか・・・・・・・・。』
何を言おうとしたのかケンジは思い出そうとし・・・・・・・・。
『ああ、そうだった。俺が見回りするから、ちと休んでた方がいいんじゃないか?・・・・・・・・まぁ、ケイトのヤツは寝てるけどな。』
「・・・・・・・・・あまり眠気は感じませんけれど。」
『いや、寝る時に寝とかないと身体が上手く動かねぇからな。』
「そうですかね?」
『ヒトって生き物はそういうもんだ。』
まぁ、それより。
『寝ておけ、レオナ。』
「・・・・・・・・・・・であれば、ja。お言葉に甘えまして少し休んでおきます。」
『ああ、そうしとけ。』
渋々といった具合で頷いた彼女に、ケンジはようやくか、と思っていたのだった。正直に言ってしまえば、最初に言った時に素直に従ってくれると嬉しかったのだが。
そう思いながら彼は天を仰ぐ。
その天には今も星の光が煌めいているのだった。
「・・・・・・・・・・・で、チーフ。・・・・・・・・・・・これから、どうするの?」
それからしばし経ち、周りが明るくなり始めたところで寝ていたところまで戻って来たのだが、ケイトは戻った時にはまだ寝ていたので、少し腹が立って起こしてみたところ、起こされたことを不服に思っているのか、頬を少し膨らませながら、今後の方針をそう訊いてきたのだった。
『ああ。レオナのヤツがな?少し歩いたところで「クソッたれ」の群れを確認したらしくてな?景気づけにこれからちょっくら挨拶に行こうと考えてるんだが。』
「・・・・・・・・・・・倒すってこと?」
『まぁ、そうなるな。』
彼が言う、挨拶という言葉を今までの経験から導き出されたであろう答えでケイトは訊いてくる。とは言えどもケンジにとっては元よりそのつもりだったので肯定した。
「しかし、連中・・・・・・・・・コホン、失敬。彼らにはマスターにも言いましたが、多くモノを移動させるような大きなものがあります。果たして、私たちが移動を終える前に潰せるかどうかは・・・・・・・。」
『・・・・・・・・・・・・神のみぞ知る、ってか。』
「ja。と言いましてもまだ姿は見えましたので大丈夫かと思いますが。」
レオナの言葉にケンジはため息で応えた。
『おいおい、レオナ。まだ大丈夫ってのはもう間に合わないって言ってるもんだぜ?』
「そうでしょうか?」
『そうなんだよ。』
世の中ってのはよく分からないもんでな。
そう呟きながらケンジは立ち上がると、虚空をタップして『メニュー画面』を出し、操作をする。
『・・・・・・・・・・・残りが五割ちょいか。・・・・・・・連中を食らい潰すには残弾が厳しいところだが、ないよりかはマシか。・・・・・・・・・・・まぁ、無くなったら無くなったで俺には「パイルバンカー」と「ガトリング」がある。なんとかなるだろ、うん。』
気楽にそう言うケンジの言葉にケイトはレオナの方を向いて頷いた。その彼女の反応にその反応はたぶん違うと思うのだけれどどう伝えればいいのか、と悩み・・・・・・・何を伝えようとはしなかったのだった。
それが聞こえたのはそうした緩い雰囲気の時だった。
「・・・・・・・・・っ。」
警報の様にも聞こえる警笛の様な甲高い音が聞こえる。どんな音でも過敏に感じられるようにステータスを弄っているレオナは顔をしかめる様に身を震わせる。
そんな彼女の反応をケンジは見ると、すぐに状況を理解した。
『「あの生意気なクソッたれ」か!?』
「・・・・・・・・・・恐らくはっ。」
未だに鳴りやまぬ警笛に負けない様に、しかし、苦しい様に応えるレオナに彼はどうすればいいかを考える様に俯き・・・・・・自分の方を見る瞳に気が付いた。
『・・・・・・ケイト。行けるな?』
行けるか?とではなく行けるな?とほぼ決定事項の様に思える彼の言葉に対してケイトは頼りにされていることが嬉しいとでも言うように、パァと表情を明るくすると頷いて応えた。
「・・・・・・・・・・・ja!!!・・・・・・・・・・・問題ない!!!」
『それじゃ、任せる。』
「・・・・・・・・・・・任された!!」
ケンジが任せると言った途端に弾かれる様に飛び出るケイトの背を遠巻きに見ながら、右手に銃器を、左腕を背に回し盾を付けると自身の身体の一部となっていると言っても過言ではない「挽き肉製造機」のトリガーを触れた。
『・・・・・・・ったく、嬉しがちゃってまぁ。出来れば残しておいて欲しいもんだが、あの様子じゃ残りそうにもないな。・・・・・・・・・とは言っても人様の残飯処理が好きってわけじゃねぇんだがな。』
そこんとこ、間違えるなよ?
と訊く様に言いながらまだ唸っているレオナに手を伸ばす。
『動けるか?』
「・・・・・・・・・・っ。ja。申し訳ありません、マスター。警戒用に敷いた『マーカー』にやり返されるとは。・・・・・・・・何も返す言葉が御座いません。」
『気にするな。元はと言えば、「暗殺者」仕様にステ振りした俺の責任なんだ。悔やむならこれからを悔やまないでくれ。・・・・・・・いや、そうじゃないな。恨むなら俺を恨んでくれ。』
「・・・・・・・・っ。・・・・・・・・・まさか。それは有り得ません。創造主である貴方を恨むなど、その様なこと、私が出来ましょうか。」
『そりゃ、嬉しいねぇ。・・・・・・・・まぁ、元気が出たところで。』
レオナの手を掴んで立ち上がらせると、彼女の身体をケンジは自身へと寄せた。
「なっ!?マ、マスターっ!?こ、これはどういう!?」
ことなのでしょうか、と口から出る前に彼の顔が自身ではなく寄って来るであろう駆け足が聞こえる方へと向いていることで理解した。
彼は何か変な理由があってこの様なことをしているのではない、と。
その事を理解したレオナであったが、つい先日にもこれに似たなことがあったな、とふと思い、彼の口元を見て、自身の頬が熱くなるのを自覚した。
一方、身を引き寄せただけのケンジはレオナがそんな風なことを思っているとはつい知らず、こちらに駆けてくる足音の方へと右手に握った銃器を向け・・・・・・・・、躊躇うことなくトリガーを引いた。
愛用している『ガトリングランチャー』とは違い、遥か軽いと思える軽快な銃音が鳴り響く。
僅か数秒足らずの短い時間で全ての弾丸を吐き出したのか銃器からは空回り音が鳴り渡る。少し離れた場所では何かが何体か倒れる音が聞こえた。
『とりあえず、倒せたか。・・・・・・・・・にしても、弾倉一つで数体しか倒せねぇたぁ。相も変わらず「アサルトライフル」は使えねぇな・・・・・・・・・・。まだ「バトルライフル」の方がマシじゃねぇのか?』
いや、魔改造しちまえばもしくは・・・・・・・・・ぐぬぬ。
悩むように呟き始めたケンジに存在を忘れられたと思ったレオナは彼の頼りになり過ぎる胸元から静かに離れようとし・・・・・・・、それが出来ないと悟ると静かに行動をしようとすることを諦めて声を掛けたのだった。
「あの、マスター。その、もう、よろしいでしょうか?」
『・・・・・・・・・あっ?ああ、もういいぞ。悪いな。』
「い、いえ、お気になさらず。」
出来ることなら離れずに彼に寄せられるという滅多に出来ない経験を味わいたかったレオナであったが、悲しいかな、ここは敵地。そんなことをしていれば、敵に捕捉され主共々倒れてしまうのが目に浮かぶというもの。
主たる彼を死なせるなどとは従者にはあってはならない。そのことを改めて認識し、彼を死なせないことを胸の中で深く誓ったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・と言ったところで二人を倒せる者がいるとは限らないのだが。
そんなことをレオナが思っていると、少し離れたところで鳴り響く爆音が止んだことを不審に思って彼の方へと顔を向ける。彼女が何を言おうとしているのか悟ったのか、彼は何も言わずに頷いて、新たな得物を出現させると、手に握ったのだった。
そんな彼の動きを見て、レオナは、まさか、と驚愕の思いでケイトが消えていった方を見た。
そして、そんな二人の目の前には・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・チーフ。・・・・・・・・・・・向こうの方は全部終わったよ?」
さも当然と言った具合で肩を揺らしながら、ケイトが現れたのだった。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだよ、ケイトか。』
「・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・そうだけど?」
どういった意味でそう言ったのかを理解できないケイトは何が変なのかを彼に訊く様に言ったが、彼はそんなケイトに銃器を持った右手を上げて、銃口を上にすると、気にするなという様に振ったのだった。
『それで、ケイト。なんかあったのか?終わったにしちゃ、随分遅かったみたいだけど。』
「そうです、ケイト。なにかあったのですか?」
何かあったのかと訊いてくる二人の質問に対し、ケイトは眉をしかめると少し待てという様に片手を前に出し、数分の間唸った。
『お、おい?何があったんだ?それじゃ、お兄さんたち、全然分からねぇんだが?』
「ja。マスターの仰る通りです。ケイト、なにか分かったので?」
待てというのに全く待たない様子の二人の質問にケイトは嘆息すると、渋々といった具合で応えた。
「・・・・・・・・・・・それなんだけど。・・・・・・・・・・・なんか間に合わなかったみたいでさ。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
ケイトが何を言っているのか理解することが出来ずに呆けたような返事をする二人であったが、それが何を意味するのか理解したケンジは現実へすぐに復帰した。
『なん・・・・・だと・・・・・・・?ってこたぁ、アレか。もういないってか?』
「・・・・・・・・・・・nein。・・・・・・・・・・・そうじゃない。」
『そうじゃない?だったら、どういう意味だ?』
「・・・・・・・・・・・なんか昨日より減ってる。」
『・・・・・・・・・・・・・・・どういうことだ?』
ケイトの言葉の意味が理解できずに思わず、まだ復帰できていないレオナにケンジはそう思わず訊いたが、彼女が何かを言う前に、何を指すのかを理解した。
『んだと!?ってこたぁ、・・・・・・・・・・・クソッたれが!!!!間に合うか!?』
背中のマント下に納める様に左腕を入れ、腕を抜くとそこには何もなく・・・・・・・・。そのことに誰かが何かを言うよりも前にケンジは走り出した。
「えっ!?マ、マスター!?どちらに行かれるので!?」
突然走り出した彼の動作にレオナは慌てた様子で彼が付けていマントの黒い背に大きな声で問いながら、追い掛ける様に駆け出した。
『決まってるだろ!!』
後ろに振り返ることもなく、ケンジは後ろにいる二人に聞こえる様に大声を出した。
『アイツらが全員、降りる前に食らい潰す!!!』
「ヨシ、コレデ残ッテルノハイナイナ!?」
「ハッ!!残リハ偵察ニ出テイル連中ダケデス!!」
「了解シタ!!!シバシ待テ!!!」
「ハッ!!!」
ヒトに近い外見ではないが、誰もがヒトとは答えない正に人でなしと呼ぶに相応しい者が違う者にそう声を掛けて、自身よりも遥かに大きな『船』から外へと出てくる。
「全ク。何故、『魔人種』タル我ラガ『人類種』等ト・・・・・・・。」
「そう言うのは人がいないところで呟くモノだと思うのだがね?・・・・・・・・うん?」
そう呟く人でなしが少し離れるのを待っていたとでも言うかの様に一人の人間が現れる。
「オ、オ前ッ!!聞イテイタノカ!?」
「別に?・・・・・・・・ただまぁ、聞こえて来たものだからねぇ?・・・・・・・それで?君はなにか不服なのかな?」
その人間は人でなしに恐れることなく、むしろ尊大な態度で接し、人でなしはその人間に対して恐怖心を持った様子で怯えながら答えていた。
・・・・・・・・・・普通であれば、恐怖を与える側だというのに、だ。
「不服ナド!!!アルワケガ無カロウ!!!」
「そうだよねぇ・・・・・・・?あるわけがないよねぇ?君たちが恐れることなんて、さ。」
「ア、アァ。ソウダ、ソノ通リダ。地上ハ我等ノ手ニ。天ハオ前ノ手ニ。ソレガ契約ダ。」
「ああ、そうだ。それが僕と君らで取り決めた契約だ。その点には何も言わないよ。」
ただね?
「どうも、誰かが上がって来たみたいでねぇ・・・・・・・・・?少し予定が変わりそうなんだよねぇ。」
「誰カガ?」
そう言いながら、笑う彼に対し人でなしは不審に思ったのかそう訊いたが、彼は何も答えなかった。
「・・・・・・・・・・・まぁ、それに対しては一応手は打ってあるから心配には及ばないんだけどね。」
ただ、君たちも知ってるだろうけど。
「もうここにはいない『スパルタン』とかっていう連中が来てるんじゃないかと思ってね?いや、分からないからただの推測でしかないんだけど。」
「『スパルタン』?何ダ、ソレハ?」
「おや、ご存じでない?実在したであろう伝説の存在とか言われてるんだけど。」
「イヤ、知ランナ。」
「ふぅ~ん。そうか。・・・・・・知らないのか。」
意味ありげに言う彼に人でなしは不審に思った様子で目を細めて彼を見る。
しかし、そう見られても彼は小さな微笑みを浮かべるだけだった。
「まぁ、いいや。・・・・・・・・・それで?支度は出来たのかい?」
「ア?・・・・・・・アア、終ワッタ。何時デモ大丈夫ダ。」
「そうかい、それは何よりだ。」
安心したかの様に彼はそう呟き、思い付いたかのようにこう付け加えた。
「ああ、そうだ。今更なんだけど、ボクも付いて行ってもいいかい?いや、君ら『バイオス』の力を見くびってるわけじゃないんだ。ただ、『地上世界』の連中が地に伏せる光景を見たくて、ね。」
「・・・・・・・・?ソウカ?」
「うん、構わないかな?」
そう言った彼を人でなしは不審に思ったのか再び、細めた目で見るが見ただけで何が分かるでもないかと開き直ると、頷きながら答えた。
「構ワン。元ヨリ我等ト貴様デ決メタモノダ。問題等ナイ。・・・・・・・・ソウダロウ?」
「それは信用してくれてる、そう受け取って問題ないのかな?」
「アア。」
それは良かった!!と嬉しがる彼に人でなしは何を嬉しがってるのか、理解できずに首を捻っていたが考えることを放棄すると、『船』へと歩いていくのだった。
その人でなしの背を追う様に青年は歩き出し・・・・・・・・何かを感じ取ったのか、後ろを振り返った。
しかし、そこには誰もいなかった。
『クソッたれがっ!!!まだ、出るんじゃねぇ!!!』
もう既に錨を上げ、降下し始める『船』と呼ぶにはお粗末極まりないモノに向けてケンジは怒声を放ちながら駆ける足を緩めることなく進んでいく。
しかし、そんな彼の努力も虚しく、その『船』は雲の向こう側へと姿を隠してしまった。
『クソがっ!!間に合わなかったか!!ほんの少し出るのが早かったらっ。』
怒りを感じながら、地面を蹴るケンジの眼に、先程見えた『船』よりも小さい、よくても『小舟』だろうと思えるモノがあった。幸いなことに、人が一人乗る程度の余裕はありそうに見えた。
そこより離れたところにはそんな『小舟』よりもまだマシと呼ぶだけの『船』があった。だが、ここからでは少し距離が離れている。今はもう既に出てしまった『船』を追うだけの時間が惜
となれば、近くにあるこの『小舟』を使うしかないのだが。
「マ、マスターっ。ようやっと追いつくことが・・・・・・・できましたっ。」
ハァハァと荒い息を出すレオナが背に声を掛けてくる。その彼女に応えるために、ケンジは振り向き・・・・・。
一緒にいるはずのケイトの姿が見えないことに疑問した。そのことをレオナに訊こうとしたタイミングで激しい爆音が聞こえた。
その爆音はもう何度も耳にしてるのですっかり身に馴染んだモノだったのでおおよその状況を察することが出来た。
『なるほどな・・・・・・・。ケイトはケツを追っかけて来た「クソッたれ」の相手をするために先に行かせたってわけか。』
「ja。その通りです。よもや、我々の足を払うために残しているとは予想が出来ませんでした。『バイオス』でも頭を使う者がいるとは・・・・・・・。申し訳ありません、マスター。」
『いや、気にするな。足を払う様に残したのは、敵ながらあっぱれ、とは言いたいところだが、相手も細かいところまでは頭が回らなかったらしい。』
見てみろ、とケンジの方を向くレオナに彼は顎をしゃくった。すると、そこには、もう既に壊れていると言っても過言ではないただの『箱』に近い『小舟』がロープに繋がれているのが目に留まった。
『アレ見りゃ分かるが、一人だけだったらすぐに追っかけられる。ちょいと離れたとこに大きめのがあるがそこまで行くまでの時間がねぇ。』
そう言うと、ケンジはレオナの方を向く。
そんな彼が何を言いたいのかを察したレオナは彼を安心させるようにコクリと頷いてみせた。
「了解です、マスター。・・・・・・・・ここは私とケイトで防ぎます。ですので、貴方は敵を追ってください。」
『・・・・・・・・・・・悪いな。』
覚悟を決めた様にそう言うレオナに対し、ケンジはただそれだけの言葉を言った。もっと多くの言葉を掛けるべきなのだろうが、その言葉が思い浮かばなかったのだ。
この時ばかりは、自分が他人とのコミュニュケーションを多く取っていれば良かったと反省したケンジだった。
そう思いながら、ケンジは『小舟』へ駆け出していき、その『小舟』に飛び乗った。
彼が飛び乗ったことを確認したレオナは背中からナイフを一本取り出し、『小舟』を捕まえているロープに向かって投げた。
ナイフを妨げるモノは何一つ存在しないため・・・・・・・真っ直ぐ進んでいくナイフによってロープが切られる。
ロープという地に繋げているモノが何一つなくなった『小舟』は重力に引かれ、徐々に落ちていく。そこでようやく身体を起こしたケンジは、こちらを見ているレオナを見る様に振り向いた。
『あの「クソッたれ」どもを片付け次第・・・・・・・・・・。』
戻ってくると言おうとしたケンジの言葉を遮る様にクスッとレオナは笑うと遠くなっていく彼にはもう聞こえないだろうと思いながら呟く様に言った。
「約束してはダメですよ、マスター。・・・・・・・・女の子には。」
そう言ったと同時に彼の姿は雲の向こう側へと見えなくなった。
彼女は意識を切り替える様にはぁ、と深く息を吐き・・・・・・。
「さて、と。では、マスターの御命令通りにここを死守しますか。」
振り返るのと同時に足一歩、身体を後ろに下げた。すると、先程までレオナが立っていた位置にもう既に意識がなく口を開いた一体の『魔人種』の身体が投げ込まれた。
「おや。まだ生きていましたか、ケイト。」
「・・・・・・・・・・・チーフは?」
口に溜まったであろう血をペッと吐き捨てながらケイトがレオナに寄ってくると、そう訊いてきた。その問いに対して、もう既に分かってるだろうに、と内心で両手を上げながらレオナは答えた。
「行かれましたよ。」
「・・・・・・・・・・・そう。」
行ったと言われても分かっていたという様にケイトはそう静かに言った。
そして、背後を見る様に振り向きながら言葉を続けた。
「・・・・・・・・・・・だったら、守らないとね。」
「えぇ。少々骨が折れますが、我が主の御命令とあれば、従いざるを得ません。」
二人に向かってくる敵に。
ケイトは拳を構え。
レオナは両腕を振い、両裾から煌めく刃を振った。
『・・・・・・・・こちら、管制塔。上空より所属不明の「小型艇」が接近中。エルミア、指示を頼みます。』
『了解。であれば、味方でなければ排除してください。』
『了解しました。』
外すことをすっかり忘れていた無線機からそんな物騒な会話が聞こえ、未だ揺れる『小舟』の中でケンジは急がなければという気持ちに押され、大声で伝えた。
『こちら、「スパルタン」・・・・・・・・・っ!!!』
『スパルタン』の後に続ける番号を呼ぼうとして、一瞬悩み・・・・・・、もう一度、今度は気持ちを抑えながらケンジはそれを伝えた。
『「スパルタン110」。・・・・・・応答願います。・・・・・・・応答頼む。』
『なっ!?110!?・・・・・・・・管制、その通信を拾って!!!』
『ja。』
ケンジが乗っているとは思わなかったからか、慌てた様子のエルミアの声が耳に届く。通信外では大地を稲妻が駆けている様で大きな轟音が聞こえている。
きっと、ウルナが食らっているんだろうな、とケンジは思いながら通信に耳を傾けた。
『110!!貴方はその「舟」で何をしに来たのですか?』
『決着を付けて・・・・・・・・。』
付けて来たと言おうとし、ケンジは咄嗟に言葉を引っ込めた。
危うく誤訳の方を言いそうになった、と記憶を掘り起こしながらもう一度言った。
『決着を付けに来ました・・・・・・・・っ!!』
彼にとっての、最後の戦いの幕がこうして上がった。
もう既に何体を倒したのか、数えるのを放棄した白き装甲に覆われた男性、『ケンジ110』は空になった弾倉を吐き出しながら手に持った銃器を振った。
ここに辿り着くまでにもう何丁の銃が使えなくなったのか、それすらも数えてはいなかった。今こうして手に持っている銃もまだ使えるのか、それすらも定かではない。
だが、目の前には多くの敵がいる。その群れの奥には自身が狙い定めた目標がいるはずだったがのだが、もう既に見えない今となってはまだいるのか、それすらも分からない。
ただ分かっていることがある。
それは。
自身がまだ動けるということと目の前にいる敵は自身にとっても敵だということであり。
味方は誰一人、ここにはいないということだ。
『・・・・・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・あん?』
ふと何かがおかしいことにケンジは疑問する。だが、何がおかしいのかケンジにとっては理解が出来なかった。
一度、落ち着こうと思ったのか、ケンジは敵地にも関わらず、深く、深く息を吸い・・・・・・深く息を吐いた。
そして、今の自身の状態を確かめようと軽く見渡してみる。
両手には今もう慣れ親しんでいる銃器がある。・・・・・・・慣れ親しんだとは言ってもまだ使えるかは定かではないが。背には何もない。ただ風が強く吹き付けるだけだ。だが、その風も今は何も感じない。それが『機械人種』であるからかは分からなかったが。
もう既に幾年も戦い続けている身としてはそんなことなどどうでもいい。
今は、たった一人。
それだけが分かればいいのだから。
そうだ、とケンジは自身が一人であることを自覚した。
そう思うのと同時に、再び疑問に思った。
誰もいない・・・・・・・・・・?
何故いないのか、とそう思ったのだ。
確か、ケンジは一人ではなかったはずだ。いつも隣に、正確には右後ろに控えているはずの誰かが。
そして、ケンジに寄り添うように背を重ねてくる誰かがいたはずだ。
そうだ、とケンジは思い出した。
ここには一人で来たのではない、誰かと共に来たのだ、と。
そして、こう思った。
『スパルタン』は英雄などではない、ただの死にたがりのバカのことだ、と。
そのことを思い出すと、すぐにその違和感に気が付いた。
いつも背に着けているマントがないことに。
いつも装備している左腕の盾と右腕の杭打ち機がないことに。
故にケンジは確信した。
これは誰かが見せた夢なのだ、と。
そう結論付けると、ケンジは己の頬を叩いた。
夢の中で己の頬を叩いて起きるというのは古き文化からの名残だ。
その為に、それによって目を覚ますということはほぼケンジの中で決定していたのだが・・・・・・・・・。
『・・・・・・・・・・・・・・っ。・・・・・・・・こいつぁ、どういう冗談だ?』
起きるという確証があってケンジは頬を叩いたのだが、現実に戻る気配はなかった。その事に疑問を持つのと同時にふと脳裏に今の現状の解決策が思い付く。
その解決策を実行に移そうとし、手元に握られている銃器を見る様に目を落とす。そこにあるのは今も壊れるまでにもう残りわずかと言った具合の銃器がある。
状態を見れば一発出せればいい方だと言える状態だったが、一つだけケンジには確信が出来ていた。
それは・・・・・・・・。
『ハッ。ドたまを吹き飛ばすのには何発もいらねぇ。一発出りゃ上等だ。』
そうだ。
誰かを倒すのであれば一発よりかは何発か撃てた方がいい。一発程度で刈られるほどまでの自信はない。確実に倒すことを考えるのであれば、何発か撃てた方が確実性は増す。だが、それは相手を倒す場合の話だ。
自分に使うのであれば、使うのは一発だけでいい。何発も使うまでに銃器を握っている保証もない。
一発、ただ一発だけだ。
ケンジは冷静にそう思いながら、側頭部に銃口を押し当てる。ケンジが何をしようとしているのか理解したのか何かが走ってくる姿が視界隅に映る。
だが、その姿を見るや否やケンジはニヤリと頬を歪める様に笑った。しかし悲しいかな、ケンジの顔は白い装甲に覆われている為にその口元を何かは見ることは出来なかった。
それでもいい。
そう思いながら、ケンジは呟いた。
『・・・・・・・・・・あばよ。・・・・・・・・現実で会おうぜ、クソ野郎。』
一つの銃声が響くのと同時に彼は意識を手放した。
『・・・・・・・・・・・・・・・っ。あ~・・・・・・嫌な夢だった。出来れば、もう二度と見たくはねぇな。』
出来れば、この夢から覚めたいもんだがな。
そう呟きながらケンジはむくりと上体を起き上がらせる。起き上がらせると同時に何かが崩れ落ちる音と誰かの声が聞こえるが、それは、今気にすることではない。
憂鬱気になりながらもケンジは今の身体の状態をサッと見渡して確認した。
左腕にはもう既に自身と一体に成りかけている『挽き肉製造機』付きの大盾があるはずだが、今はない。しかし、全くないというわけではなく、背中に重みを感じることが出来た。右腕には自身の手塩に掛けて作った相棒と呼ぶに等しい武器、『パイルバンカー』があった。
その状態を確認できたことで、ここは夢ではないことに静かに安堵の息をケンジは吐いた。あの夢は出来ればもう二度とは見たくない夢だった。
誰もいない、ただ一人で死地にいる夢など。
『・・・・・・・・・・いったい、何の皮肉だ。・・・・・・・ったく。』
今のケンジの状態からで言えば、あの夢も強ち冗談ではない。何故ならば、この世界にいるのは、ケンジ一人だけであり、『プレイヤー』という存在は何処にもいないのだから。
・・・・・・・・・・・そう言われてみれば、あの夢は今の状況を暗示しているのかもしれない。誰もいないただ一人のみの戦場で孤軍奮闘する・・・・・・・背後には己の死しかないという正に決死という状況とも言えたのだから。
だが、今は違う。
『・・・・・・・・・・・・ああ、そうだ。・・・・・・・・・今は、一人じゃねぇ。』
そう、今この瞬間はケンジ一人だけではない。ケンジの他にまだいるのだ。
そんなことを思いながら、崩れ落ちたであろう何かに視線を向ける。
・・・・・・・・そこには。
思い切りと言っても過言ではない勢いでどかされたにも関わらず、すやすやという寝息を立てながら熟睡している緑色の髪を短く切り添えている女性、ケイトがいた。
『・・・・・・・・・・・しっかし、よく寝られるもんだな。・・・・・・・普通はあんなんされたら起きるもんだろうに。・・・・・・・こんなに熟睡できるなんざぁ羨ましい限りだぜ。』
なんでだろうな、と言葉にはせずに顔面に掛かった髪をケンジは起こさない様にと細心の注意を掛けながらサッと払ってやる。だが、その事がくすぐたかったのか、フフフッ、とケイトは薄く笑った。そのせいで、ケンジは起こしちまったか!?と思っていたのだが、数秒後に聞こえ始めた彼女の寝息に彼は安堵した。
そこで、ふと周りを見渡してみると、姿が見えない一人がいることに気付き、寝息を立てるケイトを起こさぬようにそっと離れるのであった。
そして、歩く当てもなくケンジは歩き始める。
空はもう既に暗い。いくら『天上世界』とは言えども、朝と夜は別らしい。そこはゲームの世界と同じだった。・・・・・・・いや、どれもゲームの頃と同じか。
・・・・・・・・・ただ。
あの頃は生きることに必死だったせいで夜空を見上げることもなく、こうして、歩く当てもなく歩いていくということもなかった。一人での死を避けるために集団行動を基本とし、時間を限っての行動だった。何をするにも時間が限られ、物資も限られていた。
・・・・・・・・・・・ただ、そういった制限があったのを知っているのは限りなく少ないので知る者はいないだろうが。
故に、とケンジは空を見上げる。
今はもう既に太陽はそこにはなく、そこにあるのは数多くの天の光だ。ゲームでこの光を再現するのは難しいだろう。
だからこそ、ここはゲームとは違うと言えるのかもしれなかったが。
『・・・・・・・・・・・・・そう言えば。』
そう言えば、とケンジはふと思った。
空に見えるこの光を誰かが言っていた・・・・・・気がする。その人物は実在したか架空の存在だったか。向こうにいた頃に会ったであろうか、ここで会ったか。もうそれ自体を知ることはケンジには出来ない。しかし、誰かが言っていたということだけは覚えている。
それは・・・・・・・・。
『・・・・・・・・・天の光は、全て星、か。』
・・・・・・・・・己という存在と敵対するものではなく。
・・・・・・ただ、己という存在を『光』で表しているだけなのだ、と。
自分はここにいるぞ、と。
ただ光っているだけでしかない、と。
そういった意味合いを含んで言ったのであろう。
・・・・・・・・もう既にケンジの中から名前を忘れ去られた誰かが。
しかし、今この瞬間だけは。ケンジはその言葉に共感していた。
『・・・・・・・・・・ああ、その通りだ。敵の、攻撃とかの光じゃねぇ。ただ、そこにいるだけだ。何かするわけじゃねぇ。・・・・・・・・いや、何もしないのか?』
どっちだ?
うむむ、と悩むように唸り始めたケンジの前から声が掛けられた。
「・・・・・・・マスター?・・・・・・・如何なされました?近辺に影は見受けられなかったと思ったのですが。」
すぅ・・・・・・と浮かび上がる様に暗い影から出てきたのは黒とは全く真逆の白一色の服に白のフードを被った人物だった。だが、彼はその人物に警戒することなく普段そうするように声を掛けたのだった。
『・・・・・・・・・レオナか。悪いな、見回りなんかさせて。』
「nien。お気になさらず。もう既に敵影は捕捉しております。故に決戦を前にして身体を休めようと仰った貴方のお言葉に従ったまでのことです。お気になさらず。」
『あっはい。』
気にするな、と言った彼女の言葉にケンジは縮こまった態度で返した。
そうなのだ。
あれから、暫くしていくら進めども自ら定めた敵の存在、『魔人種』と接敵は全くと言っていいほどなく、あれよあれよという間にもう既に捉える程の距離まで来ることが出来た。あとは、ちゃっちゃと一発殲滅するだけなので、戦闘前に身体を休めておこうと決め、ケンジ達三人は休んでいたのだった。
幸い、ここには隠密行動に優れているレオナがいる。奇襲をかけようとした場合はすぐに分かる。
そういったこともあり、レオナに付近の警備を任せていたのだが・・・・・・・。
『・・・・・・・お前も休まないと、だろ?・・・・・・・・一日ずっと起きてるってのは身体に染みるからな。お前も少し休んどけ。・・・・・・今まで休んでた俺が言えることじゃないが、あとは任せてもらっていいんだぜ?』
「nien。それはたとえマスターのお言葉とは言えども、お断りさせていただきます。」
やんわりと休むように言ったケンジの言葉をレオナはばっさりと切り捨てる様に言った。普段の彼女からは予想できない切り返しだったことに彼は衝撃を受けるのと同じくこうも思った。
彼女は命令ではなく、マスターのお言葉と言った。
確かに彼女の言う通り命令でないのであれば、別に従う必要はない。しかし、それが命令ならば、話は別。
彼女はケンジにとっての『サポートキャラ』であり、彼女のにとっては『己を創造したご主人様』だ。それ以上でもなければ、それ以下でもない。
それだけの存在でしかないが故に、言葉に従う必要性は存在しない。
従いさせたければ、命令しろと。
そう彼女は言外に言っているような気がした。故に、ケンジはそれ以上に言わなかった。
『・・・・・・・・・・オーケー。・・・・・・・・・分かった、分かった。お前がそうしたいならそうすればいい。だが、適度には休め。・・・・・・・・分かったか?』
「ja。そのお言葉、しかと胸に刻みつけておきます。」
言外に忘れないという彼女に対して、ケンジは、別にそこまでしなくても良いんじゃないかなぁ、と思ったが、まぁ、そう言うんだったら別にいいか、こいつは無理とか無茶するヤツじゃないし、と気楽に思考を切り替えたのだった。
「それで・・・・・・・・・。如何なされました、マスター?」
どうしたかとレオナはケンジに訊いてくる。その質問に対してどう答えるかな、とケンジは少し考えて、答えた。
『あぁ~・・・・・・・・・、その、なんだ。・・・・・・・・恥ずかしい話なんだが。・・・・・・・・笑わないか?』
「・・・・・・・・・・・・・・・内容によっては、ですが。」
ケンジの質問に対してレオナは答える。その彼女の回答にケンジは、出来れば笑わないとか言って欲しいなぁ、と思いながら口を開いたのだった。
『・・・・・・・いやな?ちょいと変な夢?を見てな。気分を入れ替えようと思ってぶらっと来たわけなんだ。』
「成る程。・・・・・・・・して、その夢とは如何なもので?」
『変な夢だったぜ?いつもしてるものはなくて、ボロボロになっちまった銃を握って戦ってんだ。「ガトリング」はねぇわ、「パイルバンカー」はねぇわ、挙句の果てには「スパルタン」のことを英雄だなんかと思ってやがると来てな?いやぁ~、笑っちまうわな。「スパルタン」は英雄じゃねぇ。ただの死にたがりのバカ野郎ってな。・・・・・・・まぁ、自称してる俺が言えたことじゃねぇんだが。』
ハハハ、笑えるぜ、と乾いた笑いをするケンジをレオナは静かに見つめる。そして、何も話さずにレオナは被っていたフードを外した。
「マスター。」
『あ?どうした、レオナ?』
レオナの突然の行動にケンジは目を瞬かせる。普段、取ることのないフードを取り、ケンジを見るということは滅多にないが、それはケンジに伝えたいことがあるからの行動だとだいたい察していた彼は何も話すことなく、ただ彼女からの言葉を待っていた。
「私たちは貴方方が仰る夢というモノが分かりません。それがどういったモノなのか、それすらも知りません。」
ですが。
「私はここに居て、貴方もここに居ます。・・・・・・・・それだけしか私には分かりません。」
ですので。
「お聞きします、マスター。・・・・・・・・・・その夢、というモノでは貴方は何処にいましたか?」
『・・・・・・・・・成る程な。』
彼女の言いたいことがだいたいわかったケンジは顎に手を置いて、どう言えばいいのかを考えた。
あの夢の中では、少なくともここではない何処かということしか分かっていない。
いや。
何処かというのも定かではないのかもしれない。もしかすれば、ここでのことを夢見ていたのかもしれないし、そもそも何処でもないのかもしれない。
夢というモノが何かと訊かれれば、それに対する答えなどケンジには頭に浮かんでくるはずがなかった。
だが。
だが、一つだけ言えることがあるとすれば。
『そう、訊かれちゃこう答えるしか出来ねぇな。・・・・・・・何処か、だ。』
「何処か、ですか?」
『ああ。』
いいか?
『場所なんざ、いちいち覚えられないからな。ここかもしれないし、ここじゃないかもしれない。ただ、俺の持ってた装備は今してる装備とは全く別だったのは覚えてる。』
だから言えるのさ。
『ここじゃない、何処かだってな。』
「・・・・・・・・・・・・・成る程。」
今の説明で分かるモノか、非常に怪しいモノだったが、分かったという様に頷くレオナに対し、ケンジはただ一人、まぁ、分かるならいいか、と思うことにしたのだった。
しかし、そうであれば今は何処にいるということになるのか。
『いや・・・・・・・・・・、別にいいか・・・・・・・・・。』
「・・・・・・・・・・・・?マスター・・・・・・?」
何かを理解したかのように呟くケンジに対して、流れがよく分からないレオナは彼に訊ねる様に言う。その彼女にケンジはなんでもないという様に片手を振ったのだった。
『いや、気にするな。』
「・・・・・・・・・?貴女がそう仰るのであれば、気にはしませんが。」
よろしいので?と言うレオナにケンジは肯定するように頷いた。
『それで、何だったか・・・・・・・・。』
何を言おうとしたのかケンジは思い出そうとし・・・・・・・・。
『ああ、そうだった。俺が見回りするから、ちと休んでた方がいいんじゃないか?・・・・・・・・まぁ、ケイトのヤツは寝てるけどな。』
「・・・・・・・・・あまり眠気は感じませんけれど。」
『いや、寝る時に寝とかないと身体が上手く動かねぇからな。』
「そうですかね?」
『ヒトって生き物はそういうもんだ。』
まぁ、それより。
『寝ておけ、レオナ。』
「・・・・・・・・・・・であれば、ja。お言葉に甘えまして少し休んでおきます。」
『ああ、そうしとけ。』
渋々といった具合で頷いた彼女に、ケンジはようやくか、と思っていたのだった。正直に言ってしまえば、最初に言った時に素直に従ってくれると嬉しかったのだが。
そう思いながら彼は天を仰ぐ。
その天には今も星の光が煌めいているのだった。
「・・・・・・・・・・・で、チーフ。・・・・・・・・・・・これから、どうするの?」
それからしばし経ち、周りが明るくなり始めたところで寝ていたところまで戻って来たのだが、ケイトは戻った時にはまだ寝ていたので、少し腹が立って起こしてみたところ、起こされたことを不服に思っているのか、頬を少し膨らませながら、今後の方針をそう訊いてきたのだった。
『ああ。レオナのヤツがな?少し歩いたところで「クソッたれ」の群れを確認したらしくてな?景気づけにこれからちょっくら挨拶に行こうと考えてるんだが。』
「・・・・・・・・・・・倒すってこと?」
『まぁ、そうなるな。』
彼が言う、挨拶という言葉を今までの経験から導き出されたであろう答えでケイトは訊いてくる。とは言えどもケンジにとっては元よりそのつもりだったので肯定した。
「しかし、連中・・・・・・・・・コホン、失敬。彼らにはマスターにも言いましたが、多くモノを移動させるような大きなものがあります。果たして、私たちが移動を終える前に潰せるかどうかは・・・・・・・。」
『・・・・・・・・・・・・神のみぞ知る、ってか。』
「ja。と言いましてもまだ姿は見えましたので大丈夫かと思いますが。」
レオナの言葉にケンジはため息で応えた。
『おいおい、レオナ。まだ大丈夫ってのはもう間に合わないって言ってるもんだぜ?』
「そうでしょうか?」
『そうなんだよ。』
世の中ってのはよく分からないもんでな。
そう呟きながらケンジは立ち上がると、虚空をタップして『メニュー画面』を出し、操作をする。
『・・・・・・・・・・・残りが五割ちょいか。・・・・・・・連中を食らい潰すには残弾が厳しいところだが、ないよりかはマシか。・・・・・・・・・・・まぁ、無くなったら無くなったで俺には「パイルバンカー」と「ガトリング」がある。なんとかなるだろ、うん。』
気楽にそう言うケンジの言葉にケイトはレオナの方を向いて頷いた。その彼女の反応にその反応はたぶん違うと思うのだけれどどう伝えればいいのか、と悩み・・・・・・・何を伝えようとはしなかったのだった。
それが聞こえたのはそうした緩い雰囲気の時だった。
「・・・・・・・・・っ。」
警報の様にも聞こえる警笛の様な甲高い音が聞こえる。どんな音でも過敏に感じられるようにステータスを弄っているレオナは顔をしかめる様に身を震わせる。
そんな彼女の反応をケンジは見ると、すぐに状況を理解した。
『「あの生意気なクソッたれ」か!?』
「・・・・・・・・・・恐らくはっ。」
未だに鳴りやまぬ警笛に負けない様に、しかし、苦しい様に応えるレオナに彼はどうすればいいかを考える様に俯き・・・・・・自分の方を見る瞳に気が付いた。
『・・・・・・ケイト。行けるな?』
行けるか?とではなく行けるな?とほぼ決定事項の様に思える彼の言葉に対してケイトは頼りにされていることが嬉しいとでも言うように、パァと表情を明るくすると頷いて応えた。
「・・・・・・・・・・・ja!!!・・・・・・・・・・・問題ない!!!」
『それじゃ、任せる。』
「・・・・・・・・・・・任された!!」
ケンジが任せると言った途端に弾かれる様に飛び出るケイトの背を遠巻きに見ながら、右手に銃器を、左腕を背に回し盾を付けると自身の身体の一部となっていると言っても過言ではない「挽き肉製造機」のトリガーを触れた。
『・・・・・・・ったく、嬉しがちゃってまぁ。出来れば残しておいて欲しいもんだが、あの様子じゃ残りそうにもないな。・・・・・・・・・とは言っても人様の残飯処理が好きってわけじゃねぇんだがな。』
そこんとこ、間違えるなよ?
と訊く様に言いながらまだ唸っているレオナに手を伸ばす。
『動けるか?』
「・・・・・・・・・・っ。ja。申し訳ありません、マスター。警戒用に敷いた『マーカー』にやり返されるとは。・・・・・・・・何も返す言葉が御座いません。」
『気にするな。元はと言えば、「暗殺者」仕様にステ振りした俺の責任なんだ。悔やむならこれからを悔やまないでくれ。・・・・・・・いや、そうじゃないな。恨むなら俺を恨んでくれ。』
「・・・・・・・・っ。・・・・・・・・・まさか。それは有り得ません。創造主である貴方を恨むなど、その様なこと、私が出来ましょうか。」
『そりゃ、嬉しいねぇ。・・・・・・・・まぁ、元気が出たところで。』
レオナの手を掴んで立ち上がらせると、彼女の身体をケンジは自身へと寄せた。
「なっ!?マ、マスターっ!?こ、これはどういう!?」
ことなのでしょうか、と口から出る前に彼の顔が自身ではなく寄って来るであろう駆け足が聞こえる方へと向いていることで理解した。
彼は何か変な理由があってこの様なことをしているのではない、と。
その事を理解したレオナであったが、つい先日にもこれに似たなことがあったな、とふと思い、彼の口元を見て、自身の頬が熱くなるのを自覚した。
一方、身を引き寄せただけのケンジはレオナがそんな風なことを思っているとはつい知らず、こちらに駆けてくる足音の方へと右手に握った銃器を向け・・・・・・・・、躊躇うことなくトリガーを引いた。
愛用している『ガトリングランチャー』とは違い、遥か軽いと思える軽快な銃音が鳴り響く。
僅か数秒足らずの短い時間で全ての弾丸を吐き出したのか銃器からは空回り音が鳴り渡る。少し離れた場所では何かが何体か倒れる音が聞こえた。
『とりあえず、倒せたか。・・・・・・・・・にしても、弾倉一つで数体しか倒せねぇたぁ。相も変わらず「アサルトライフル」は使えねぇな・・・・・・・・・・。まだ「バトルライフル」の方がマシじゃねぇのか?』
いや、魔改造しちまえばもしくは・・・・・・・・・ぐぬぬ。
悩むように呟き始めたケンジに存在を忘れられたと思ったレオナは彼の頼りになり過ぎる胸元から静かに離れようとし・・・・・・・、それが出来ないと悟ると静かに行動をしようとすることを諦めて声を掛けたのだった。
「あの、マスター。その、もう、よろしいでしょうか?」
『・・・・・・・・・あっ?ああ、もういいぞ。悪いな。』
「い、いえ、お気になさらず。」
出来ることなら離れずに彼に寄せられるという滅多に出来ない経験を味わいたかったレオナであったが、悲しいかな、ここは敵地。そんなことをしていれば、敵に捕捉され主共々倒れてしまうのが目に浮かぶというもの。
主たる彼を死なせるなどとは従者にはあってはならない。そのことを改めて認識し、彼を死なせないことを胸の中で深く誓ったのだった。
・・・・・・・・・・・・・・と言ったところで二人を倒せる者がいるとは限らないのだが。
そんなことをレオナが思っていると、少し離れたところで鳴り響く爆音が止んだことを不審に思って彼の方へと顔を向ける。彼女が何を言おうとしているのか悟ったのか、彼は何も言わずに頷いて、新たな得物を出現させると、手に握ったのだった。
そんな彼の動きを見て、レオナは、まさか、と驚愕の思いでケイトが消えていった方を見た。
そして、そんな二人の目の前には・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・チーフ。・・・・・・・・・・・向こうの方は全部終わったよ?」
さも当然と言った具合で肩を揺らしながら、ケイトが現れたのだった。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・なんだよ、ケイトか。』
「・・・・・・・・・・・?・・・・・・・・・・・そうだけど?」
どういった意味でそう言ったのかを理解できないケイトは何が変なのかを彼に訊く様に言ったが、彼はそんなケイトに銃器を持った右手を上げて、銃口を上にすると、気にするなという様に振ったのだった。
『それで、ケイト。なんかあったのか?終わったにしちゃ、随分遅かったみたいだけど。』
「そうです、ケイト。なにかあったのですか?」
何かあったのかと訊いてくる二人の質問に対し、ケイトは眉をしかめると少し待てという様に片手を前に出し、数分の間唸った。
『お、おい?何があったんだ?それじゃ、お兄さんたち、全然分からねぇんだが?』
「ja。マスターの仰る通りです。ケイト、なにか分かったので?」
待てというのに全く待たない様子の二人の質問にケイトは嘆息すると、渋々といった具合で応えた。
「・・・・・・・・・・・それなんだけど。・・・・・・・・・・・なんか間に合わなかったみたいでさ。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・は?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?」
ケイトが何を言っているのか理解することが出来ずに呆けたような返事をする二人であったが、それが何を意味するのか理解したケンジは現実へすぐに復帰した。
『なん・・・・・だと・・・・・・・?ってこたぁ、アレか。もういないってか?』
「・・・・・・・・・・・nein。・・・・・・・・・・・そうじゃない。」
『そうじゃない?だったら、どういう意味だ?』
「・・・・・・・・・・・なんか昨日より減ってる。」
『・・・・・・・・・・・・・・・どういうことだ?』
ケイトの言葉の意味が理解できずに思わず、まだ復帰できていないレオナにケンジはそう思わず訊いたが、彼女が何かを言う前に、何を指すのかを理解した。
『んだと!?ってこたぁ、・・・・・・・・・・・クソッたれが!!!!間に合うか!?』
背中のマント下に納める様に左腕を入れ、腕を抜くとそこには何もなく・・・・・・・・。そのことに誰かが何かを言うよりも前にケンジは走り出した。
「えっ!?マ、マスター!?どちらに行かれるので!?」
突然走り出した彼の動作にレオナは慌てた様子で彼が付けていマントの黒い背に大きな声で問いながら、追い掛ける様に駆け出した。
『決まってるだろ!!』
後ろに振り返ることもなく、ケンジは後ろにいる二人に聞こえる様に大声を出した。
『アイツらが全員、降りる前に食らい潰す!!!』
「ヨシ、コレデ残ッテルノハイナイナ!?」
「ハッ!!残リハ偵察ニ出テイル連中ダケデス!!」
「了解シタ!!!シバシ待テ!!!」
「ハッ!!!」
ヒトに近い外見ではないが、誰もがヒトとは答えない正に人でなしと呼ぶに相応しい者が違う者にそう声を掛けて、自身よりも遥かに大きな『船』から外へと出てくる。
「全ク。何故、『魔人種』タル我ラガ『人類種』等ト・・・・・・・。」
「そう言うのは人がいないところで呟くモノだと思うのだがね?・・・・・・・・うん?」
そう呟く人でなしが少し離れるのを待っていたとでも言うかの様に一人の人間が現れる。
「オ、オ前ッ!!聞イテイタノカ!?」
「別に?・・・・・・・・ただまぁ、聞こえて来たものだからねぇ?・・・・・・・それで?君はなにか不服なのかな?」
その人間は人でなしに恐れることなく、むしろ尊大な態度で接し、人でなしはその人間に対して恐怖心を持った様子で怯えながら答えていた。
・・・・・・・・・・普通であれば、恐怖を与える側だというのに、だ。
「不服ナド!!!アルワケガ無カロウ!!!」
「そうだよねぇ・・・・・・・?あるわけがないよねぇ?君たちが恐れることなんて、さ。」
「ア、アァ。ソウダ、ソノ通リダ。地上ハ我等ノ手ニ。天ハオ前ノ手ニ。ソレガ契約ダ。」
「ああ、そうだ。それが僕と君らで取り決めた契約だ。その点には何も言わないよ。」
ただね?
「どうも、誰かが上がって来たみたいでねぇ・・・・・・・・・?少し予定が変わりそうなんだよねぇ。」
「誰カガ?」
そう言いながら、笑う彼に対し人でなしは不審に思ったのかそう訊いたが、彼は何も答えなかった。
「・・・・・・・・・・・まぁ、それに対しては一応手は打ってあるから心配には及ばないんだけどね。」
ただ、君たちも知ってるだろうけど。
「もうここにはいない『スパルタン』とかっていう連中が来てるんじゃないかと思ってね?いや、分からないからただの推測でしかないんだけど。」
「『スパルタン』?何ダ、ソレハ?」
「おや、ご存じでない?実在したであろう伝説の存在とか言われてるんだけど。」
「イヤ、知ランナ。」
「ふぅ~ん。そうか。・・・・・・知らないのか。」
意味ありげに言う彼に人でなしは不審に思った様子で目を細めて彼を見る。
しかし、そう見られても彼は小さな微笑みを浮かべるだけだった。
「まぁ、いいや。・・・・・・・・・それで?支度は出来たのかい?」
「ア?・・・・・・・アア、終ワッタ。何時デモ大丈夫ダ。」
「そうかい、それは何よりだ。」
安心したかの様に彼はそう呟き、思い付いたかのようにこう付け加えた。
「ああ、そうだ。今更なんだけど、ボクも付いて行ってもいいかい?いや、君ら『バイオス』の力を見くびってるわけじゃないんだ。ただ、『地上世界』の連中が地に伏せる光景を見たくて、ね。」
「・・・・・・・・?ソウカ?」
「うん、構わないかな?」
そう言った彼を人でなしは不審に思ったのか再び、細めた目で見るが見ただけで何が分かるでもないかと開き直ると、頷きながら答えた。
「構ワン。元ヨリ我等ト貴様デ決メタモノダ。問題等ナイ。・・・・・・・・ソウダロウ?」
「それは信用してくれてる、そう受け取って問題ないのかな?」
「アア。」
それは良かった!!と嬉しがる彼に人でなしは何を嬉しがってるのか、理解できずに首を捻っていたが考えることを放棄すると、『船』へと歩いていくのだった。
その人でなしの背を追う様に青年は歩き出し・・・・・・・・何かを感じ取ったのか、後ろを振り返った。
しかし、そこには誰もいなかった。
『クソッたれがっ!!!まだ、出るんじゃねぇ!!!』
もう既に錨を上げ、降下し始める『船』と呼ぶにはお粗末極まりないモノに向けてケンジは怒声を放ちながら駆ける足を緩めることなく進んでいく。
しかし、そんな彼の努力も虚しく、その『船』は雲の向こう側へと姿を隠してしまった。
『クソがっ!!間に合わなかったか!!ほんの少し出るのが早かったらっ。』
怒りを感じながら、地面を蹴るケンジの眼に、先程見えた『船』よりも小さい、よくても『小舟』だろうと思えるモノがあった。幸いなことに、人が一人乗る程度の余裕はありそうに見えた。
そこより離れたところにはそんな『小舟』よりもまだマシと呼ぶだけの『船』があった。だが、ここからでは少し距離が離れている。今はもう既に出てしまった『船』を追うだけの時間が惜
となれば、近くにあるこの『小舟』を使うしかないのだが。
「マ、マスターっ。ようやっと追いつくことが・・・・・・・できましたっ。」
ハァハァと荒い息を出すレオナが背に声を掛けてくる。その彼女に応えるために、ケンジは振り向き・・・・・。
一緒にいるはずのケイトの姿が見えないことに疑問した。そのことをレオナに訊こうとしたタイミングで激しい爆音が聞こえた。
その爆音はもう何度も耳にしてるのですっかり身に馴染んだモノだったのでおおよその状況を察することが出来た。
『なるほどな・・・・・・・。ケイトはケツを追っかけて来た「クソッたれ」の相手をするために先に行かせたってわけか。』
「ja。その通りです。よもや、我々の足を払うために残しているとは予想が出来ませんでした。『バイオス』でも頭を使う者がいるとは・・・・・・・。申し訳ありません、マスター。」
『いや、気にするな。足を払う様に残したのは、敵ながらあっぱれ、とは言いたいところだが、相手も細かいところまでは頭が回らなかったらしい。』
見てみろ、とケンジの方を向くレオナに彼は顎をしゃくった。すると、そこには、もう既に壊れていると言っても過言ではないただの『箱』に近い『小舟』がロープに繋がれているのが目に留まった。
『アレ見りゃ分かるが、一人だけだったらすぐに追っかけられる。ちょいと離れたとこに大きめのがあるがそこまで行くまでの時間がねぇ。』
そう言うと、ケンジはレオナの方を向く。
そんな彼が何を言いたいのかを察したレオナは彼を安心させるようにコクリと頷いてみせた。
「了解です、マスター。・・・・・・・・ここは私とケイトで防ぎます。ですので、貴方は敵を追ってください。」
『・・・・・・・・・・・悪いな。』
覚悟を決めた様にそう言うレオナに対し、ケンジはただそれだけの言葉を言った。もっと多くの言葉を掛けるべきなのだろうが、その言葉が思い浮かばなかったのだ。
この時ばかりは、自分が他人とのコミュニュケーションを多く取っていれば良かったと反省したケンジだった。
そう思いながら、ケンジは『小舟』へ駆け出していき、その『小舟』に飛び乗った。
彼が飛び乗ったことを確認したレオナは背中からナイフを一本取り出し、『小舟』を捕まえているロープに向かって投げた。
ナイフを妨げるモノは何一つ存在しないため・・・・・・・真っ直ぐ進んでいくナイフによってロープが切られる。
ロープという地に繋げているモノが何一つなくなった『小舟』は重力に引かれ、徐々に落ちていく。そこでようやく身体を起こしたケンジは、こちらを見ているレオナを見る様に振り向いた。
『あの「クソッたれ」どもを片付け次第・・・・・・・・・・。』
戻ってくると言おうとしたケンジの言葉を遮る様にクスッとレオナは笑うと遠くなっていく彼にはもう聞こえないだろうと思いながら呟く様に言った。
「約束してはダメですよ、マスター。・・・・・・・・女の子には。」
そう言ったと同時に彼の姿は雲の向こう側へと見えなくなった。
彼女は意識を切り替える様にはぁ、と深く息を吐き・・・・・・。
「さて、と。では、マスターの御命令通りにここを死守しますか。」
振り返るのと同時に足一歩、身体を後ろに下げた。すると、先程までレオナが立っていた位置にもう既に意識がなく口を開いた一体の『魔人種』の身体が投げ込まれた。
「おや。まだ生きていましたか、ケイト。」
「・・・・・・・・・・・チーフは?」
口に溜まったであろう血をペッと吐き捨てながらケイトがレオナに寄ってくると、そう訊いてきた。その問いに対して、もう既に分かってるだろうに、と内心で両手を上げながらレオナは答えた。
「行かれましたよ。」
「・・・・・・・・・・・そう。」
行ったと言われても分かっていたという様にケイトはそう静かに言った。
そして、背後を見る様に振り向きながら言葉を続けた。
「・・・・・・・・・・・だったら、守らないとね。」
「えぇ。少々骨が折れますが、我が主の御命令とあれば、従いざるを得ません。」
二人に向かってくる敵に。
ケイトは拳を構え。
レオナは両腕を振い、両裾から煌めく刃を振った。
『・・・・・・・・こちら、管制塔。上空より所属不明の「小型艇」が接近中。エルミア、指示を頼みます。』
『了解。であれば、味方でなければ排除してください。』
『了解しました。』
外すことをすっかり忘れていた無線機からそんな物騒な会話が聞こえ、未だ揺れる『小舟』の中でケンジは急がなければという気持ちに押され、大声で伝えた。
『こちら、「スパルタン」・・・・・・・・・っ!!!』
『スパルタン』の後に続ける番号を呼ぼうとして、一瞬悩み・・・・・・、もう一度、今度は気持ちを抑えながらケンジはそれを伝えた。
『「スパルタン110」。・・・・・・応答願います。・・・・・・・応答頼む。』
『なっ!?110!?・・・・・・・・管制、その通信を拾って!!!』
『ja。』
ケンジが乗っているとは思わなかったからか、慌てた様子のエルミアの声が耳に届く。通信外では大地を稲妻が駆けている様で大きな轟音が聞こえている。
きっと、ウルナが食らっているんだろうな、とケンジは思いながら通信に耳を傾けた。
『110!!貴方はその「舟」で何をしに来たのですか?』
『決着を付けて・・・・・・・・。』
付けて来たと言おうとし、ケンジは咄嗟に言葉を引っ込めた。
危うく誤訳の方を言いそうになった、と記憶を掘り起こしながらもう一度言った。
『決着を付けに来ました・・・・・・・・っ!!』
彼にとっての、最後の戦いの幕がこうして上がった。
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