デリートマン

わいんだーずさかもと

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第27話【デリートマンの決断④】

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ログインしている状態になっていたので、メッセージを送った。

「消したい人間がおる」

すぐに返信が返ってきた。

「お久しぶりです。田坂さま。ええ。そうではないかと思い、久しぶりにデリートサイトを立ち上げました」

こいつらは常におれのデータを取っている。おれの考えていることなど筒抜けなのだ。

「なあ、消す前に、ちょっといい?」

自分の変化について、確認しようと思った。

「はい。なんでしょう?」

「まあ、もう知ってると思うけど、彼女に「別人」って言われた。

  前も聞いたけど、あんたから見て、おれは変わったかな?」

「それは正直、難しい質問なのですよ。田坂さま。

  質問の内容が

  『以前の田坂さまと様子が変わってきたか?』」

  ということでしたら、答えはYESです。以前の田坂さましか知らず久しぶりに会った人から見れば、人が変わったように見えるでしょう。こちらで収集しているデータにもはっきりと違いが出てきております。

  ただ、私どもは田坂さまの変化についてある程度は予想しておりました。ですので、そういう意味では、その変化も含めて田坂さまなので、私どもからすれば予想通りということになります。ですので前回同じ質問をされた際は、

  『我々の選んだデリートマンに、間違いはなかった』

  とお答えしました」

そうだったな。おれが人消すことにためらいがなくなるのをこいつらは予想してたってことだ。

「わかった。これから人を消すけど、正直、よくわからなくなってきてる。

  もう罪悪感とかそういうのはない。消えるべき人間は消えるべきやと思う。そう確信してるけど、それはおれの正義で、正しいかはわからん。

  この自分が信じてることは正しいのかな?少なくても彼女は考え方が違った」

だから、ようこは出ていったのだ。

「前回も同じような質問がありましたね。金城麻里さんを消したとき、

  『共犯の灰田さん、阿久沢さんを消さないのは正解か?』

  という内容でしたね。

  おそらく、その類の質問には明確な答えがありません。なぜなら、

  『正しいか、正しくないか』

  これは人が判断することであって、全員が同じ判断になることなどありえないからです。ある人から見て『正義』であっても、ある人から見ればそれは『悪』になるかもしれない。

  世間的に『正しい』とされていることなど、およそ大多数の人の判断が『正しい』となっているにすぎない。世の中に『絶対に正しいこと』など存在しないのですよ。

  ただ、これだけははっきりと言えます。

  私どもから見れば田坂さんの考え方、そして行動は正しい。

  是非、そのまま迷わず行動を続けていただきたく思います」

そうかもしれない。

自分の信じたものの善悪を問うこと自体、もしかしたらナンセンスなのかもしれない。自分の正義があれば、それでいい。

「わかった。質問終わり。

  じゃあ、ぼちぼち消そうかな。不要な人間を」

SNSからダウンロードして保存している恐川の写真を見る。

「承知致しました。

  では、画像ファイルのアップロードをお願いします」

デリートサイトのアップロードボタンから、恐川龍の画像ファイルを選択し、アップロードした。前回の金城麻里のとき同様、ボタンを押すのに何の躊躇いもなかった。

「ファイルアップロードありがとうございました。恐川龍さんの削除依頼を受け付けましたので、明日の0時に恐川龍さんを削除いたします。

  次に田坂さまから消える思い出の選択をお願いします」

前回と同じく、現在からみて一番遠い過去の思い出を選択した。

またこれで、自分が壊れていくのだろう。

「選択ありがとうございます。田坂さま。

  それでは、これで手続きはすべて終了となりますが、他に何かご質問はございますか?」

「ないよ、大丈夫」

「承知しました。田坂さま。

  では、私も本日はこれで失礼致します。それでは」

デリートサイトが閉じられた。

テレビを見ると、被害者少年の父親の会見が再び流れていた。

(なぜこの人が、こんな思いをしなければいけないのだ)

可哀そうすぎて見ていられない。

「おじさん、今日、クズを消し去るよ。だから、もう大丈夫。明日にはあなたの息子はそばにいる」

画面に向かってそう言い、テレビを消した。そして、自分もベッドに横になった。

目を閉じると、疲れが押し寄せてきた。体が鉛のように重くなる。

「今日は疲れた…」

押し寄せてくる疲れに抗うことなくベッドに身体を埋めると、そのまま闇の中へ沈んでいくような感覚に襲われた…




朝目覚めると8時になっていた。今日は休みだが、休みの日でもだいたいこのくらいの時間に目が覚める。

水を飲み、コップ片手にテレビをつけた。

画面の中では人気キャスターがいつもの口調で話している。

「それでは次のニュースです。1週間前に起きてしまった悲しい事件、全貌が明らかになって…」

(ウソだろ…)

持っているコップを落としてた。水が辺りに散らばり、自分の足にもかかった。

しかし、目を画面から離すことができなかった。

「本当に…なんと言ったらいいか…。この事件、1週間経った今でも涙が出てきます」

ゲストのコメンテーターがハンカチで涙を拭いていた。

(主犯の恐川を消した。だから、この悲しい事件も消えるはすだった。なのに…)

「殺害された子、まだ中学1年生なんですよね…お父さんも…」

(なんで…なんでまたこの子が殺されてるんだ…)

同じ事件が起こっていた。殺害された場所や日にちは変わっていたが、殺害された子は同じだった。そして、父親の会見が画面に映された。

「なぜ、この子が…、この子が…何をしたというんですか…」

(なんで…この子が…)

「もう、あの子の笑顔に会えないと思うと…」

「なんでこの子が殺されてんだよ!!」

落ちていたグラスを拾って全力でテレビへ投げつけた。液晶の画面が砕け散った。

「何でだよ…」

真っ暗になった画面は何も答えてくれなかった。

急いでSNSで事件の情報を確認すると、犯人が特定されていた。犯人は前回の3人から4人になっており、いずれも未成年。1人は前回見た名前と同じだった。しかし…、

「お前…誰だよ?」

主犯格とされる犯人が変わっていた。

「お前も…消してやる。いや、もうお前ら全員だ。クズどもが…。お前ら…全員消してやるよ」

特定されている犯人達の写真を保存しながら、そう決心した。
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