歩夢さん

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バイトの子たち

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 翌日、大御神と女神は本殿から雛祭りをご覧になった。私は社務所で他の巫女たちと同じように裏方業務に従事した。普通の巫女と同じ仕事をするのは初めてだった。
 アルバイトの巫女も多く、それに紛れて一緒に仕事をした。大学生の女の子が多く、他と違う私の装束を可愛い可愛いと褒めてくれた。同年代の女の子と上下の関係がない中で話すのも初めてだった。

「さくちゃん東京の子なんや。なんで巫女になったん?」

「そう言う家系なの。」

「へー。そう言うんがあるんや。うちは普通のサラリーマン。」

「うちもー。」

「継げるもんなんてない。来年から就活せなあかん…。」

「うちも…。」

「就活?」

初めて耳にする言葉も多い。

「あー、就職のためにいろんな会社に面接に行くんやけど。めっちゃしんどい。」

「そうなんだ…。」

何も知らないんだな、と自分の世界の狭さを痛感した。
巫女のアルバイトがあることもここで初めて知った。東の神社はいくつかの家の娘たちが代々巫女をしている。

学生四人の話に混じり、普通ってこう言うことなのかな、と初めて意識した。

「大巫女様。」

 後ろから別の巫女に話しかけられた。他の巫女に聞こえないように声をひくめている。

「さくちゃん?」

「ちょっと呼ばれたみたい。これお願いしてもいいですか?」

「ええよー。」

 伝えてあった時間よりやや早い気もするが、他の巫女に掃除道具を預かってもらい急いで社殿へ向かった。巫女に言われた通り本殿へ向かうと、大御神が椅子からお立ちになり、私の方へいらっしゃった。

「では、女神。また来月。」

その大御神の言葉に、女神は立ち上がった。

「もうお帰りなのですね。また一月会えないのは寂しいです。」

「朔、本殿の裏に出口があるらしいから車を回してもらえるかい?」

「用意してございます。」

「ありがとう。」

私にそう言ってから女神の方に振り向いた。

「お世話になった、巫女、貴女にも。」

そう言って、本殿の横にある扉をお開けになり、降りていってしまった。
私は女神と巫女に、膝と手をつき頭を下げた。

「大変お世話になりました。今後ともよろしくお願いいたします。」

「…。」

「朔?」

扉の外から呼ばれ、私は立ち上がりもう一度深く礼をして本殿を出た。
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