19 / 32
新しい男
しおりを挟む
紅雷が幹部に昇格し3ヶ月、ようやく幹部候補である役付きの新任が決定した。それまでは雪音が二人分を回していたが、引き継ぎが済めば雪音も重責から半分解放される。
本部に呼び出され、ボスから新任の紹介を受けた。
「新しく役付きに任命された長澤蓮二です。よろしくお願いします。」
「雪音です。よろしくお願いします。」
長澤はキャリア的には雪音の後輩だが、年齢的には3つほど雪音より年上だ。雪音の受けた印象は、いかつく真面目そうでおとなしい男。反対に長澤は雪音の実力や正確を掴めずにいた。
「では長澤さん、早速仕事説明するんで来てもらってもいいですか。」
「敬語も敬称もいりませんよ、雪音さん。あなたの方が先輩で上司なんですから。」
長澤はもともと堅い職業についていたため、上下関係をはっきりさせたがった。雪音は逆にこの組織での関係性のみで生きてきたので、堅苦しい上下関係も年上から持ち上げられる感覚もどこか居心地悪く感じた。
「・・・先輩後輩とか気にしてないんで、そっちこそ年下の私を持ち上げる必要ないですよ。これから一緒に仕事するんだしあんま堅苦しいとやりにくいです。」
「そうですか。気をつけます。」
「お互い楽にやりましょう。」
雪音は今までかなりの自由を許されてきた。数年間この自由の中で仕事をしてきたため、長澤のような真面目そうな構成員と仕事をするのは無駄に緊張を覚えてしまう。
「あなたにやってもらう仕事は一通りこんな感じです。今日早速上から頼まれてる事案があるので一緒に行きましょうか。」
「はい。わかりました。」
2時間ほど、雪音は長澤に仕事の説明や引き継ぎをしていた。しかし長澤は雪音を未だ掴めずにいた。
他の構成員たちの間で、雪音はいろんな噂をされていた。好成績はボスに体を売っているから、幹部に親がいる、紅雷に仕事を肩代わりさせている・・・。いい噂はほとんどない。長澤はそれを鵜呑みにしている訳ではないものの、やはり警戒はする。今の所、噂とは違う人物に見えているがまだわからない。役付きの任務は完璧にこなせる上に説明も上手な頭のいい人であることは確かだ。
仕事の話をしていた小会議室から雪音と長澤は共に退室した。エレベーターホールで幹部室に戻ってきた紅雷と二人が出くわす。
「お疲れ様です、紅雷さん。」
長澤は礼儀正しく頭を下げた。雪音に対する態度も十分礼儀があるが、さらにそれ以上に敬意を表している紅雷の態度に雪音は(あぁやっぱり)と思う。
「お疲れ様。・・・あぁ、俺の後任の人?」
雪音と一緒にいるところから紅雷は推測し、雪音に訊く。
「そう。長澤さん。」
「ふーん、頑張ってね。」
「はい!ありがとうございます!!」
長澤は嬉々とした顔で答える。
紅雷は長澤の笑顔は見ずに、幹部室へと消えていった。
本部に呼び出され、ボスから新任の紹介を受けた。
「新しく役付きに任命された長澤蓮二です。よろしくお願いします。」
「雪音です。よろしくお願いします。」
長澤はキャリア的には雪音の後輩だが、年齢的には3つほど雪音より年上だ。雪音の受けた印象は、いかつく真面目そうでおとなしい男。反対に長澤は雪音の実力や正確を掴めずにいた。
「では長澤さん、早速仕事説明するんで来てもらってもいいですか。」
「敬語も敬称もいりませんよ、雪音さん。あなたの方が先輩で上司なんですから。」
長澤はもともと堅い職業についていたため、上下関係をはっきりさせたがった。雪音は逆にこの組織での関係性のみで生きてきたので、堅苦しい上下関係も年上から持ち上げられる感覚もどこか居心地悪く感じた。
「・・・先輩後輩とか気にしてないんで、そっちこそ年下の私を持ち上げる必要ないですよ。これから一緒に仕事するんだしあんま堅苦しいとやりにくいです。」
「そうですか。気をつけます。」
「お互い楽にやりましょう。」
雪音は今までかなりの自由を許されてきた。数年間この自由の中で仕事をしてきたため、長澤のような真面目そうな構成員と仕事をするのは無駄に緊張を覚えてしまう。
「あなたにやってもらう仕事は一通りこんな感じです。今日早速上から頼まれてる事案があるので一緒に行きましょうか。」
「はい。わかりました。」
2時間ほど、雪音は長澤に仕事の説明や引き継ぎをしていた。しかし長澤は雪音を未だ掴めずにいた。
他の構成員たちの間で、雪音はいろんな噂をされていた。好成績はボスに体を売っているから、幹部に親がいる、紅雷に仕事を肩代わりさせている・・・。いい噂はほとんどない。長澤はそれを鵜呑みにしている訳ではないものの、やはり警戒はする。今の所、噂とは違う人物に見えているがまだわからない。役付きの任務は完璧にこなせる上に説明も上手な頭のいい人であることは確かだ。
仕事の話をしていた小会議室から雪音と長澤は共に退室した。エレベーターホールで幹部室に戻ってきた紅雷と二人が出くわす。
「お疲れ様です、紅雷さん。」
長澤は礼儀正しく頭を下げた。雪音に対する態度も十分礼儀があるが、さらにそれ以上に敬意を表している紅雷の態度に雪音は(あぁやっぱり)と思う。
「お疲れ様。・・・あぁ、俺の後任の人?」
雪音と一緒にいるところから紅雷は推測し、雪音に訊く。
「そう。長澤さん。」
「ふーん、頑張ってね。」
「はい!ありがとうございます!!」
長澤は嬉々とした顔で答える。
紅雷は長澤の笑顔は見ずに、幹部室へと消えていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる