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ラジン国編
167.電気ウナギならぬ電気ノムル
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ラウンジはピリピリと痛いくらいに、空気が張り詰めていた。いや、本当にピリピリしていた。
雪乃は枝先で額を押さえる。
「ノムルさん、落雷も竜巻も、禁止です」
「え?」
ヴィヴィが雪乃の言葉に釣られるように、ラウンジの入り口を見た。雪乃とヴィヴィの動向に注目していた他の魔法使い達も、一斉に顔を向ける。
そこには、バチバチと光る静電気を帯びた、電気ウナギならぬ電気ノムルが、魔王の笑顔を貼り付けて立っていた。
「えー? じゃあ氷漬け……はユキノちゃんに影響が出るから駄目かー。となると、火?」
「さらに駄目です」
「んじゃあ、水攻めかな?」
つーっと、ノムルの杖がゆるりと動く。
「っ?!」
ラウンジは水槽へと早変わりしていた。
しかし流石は魔法ギルドといったところか。空気の膜で顔を覆ったり、エラを作って呼吸をしたり、溺れる者はいないようだ。
ちなみに雪乃とぴー助は、ノムルが作った気泡の中にいるため、ローブの裾すら濡れていない。
そのまま水の中をすいーっと、ノムルの元へと回収された。
「ぴー」
水槽から出たぴー助は、床に着地を決める。
雪乃はといえば、気泡からそのままノムルの片腕に座るように、抱きかかえられた。
「ユキノちゃん、駄目だよ? 知らない人に付いて行っちゃあ」
「すみませんでした。しかし特に実害は受けていませんよ?」
「本当に、甘いんだから」
と、杖がこつんと音を立てた。
「「「ぎやあああぁぁぁぁーーーっ?!」」」
電気クラゲが舞うように、水槽の中がきらびやかに輝く。残念ながら、漫画のように骨が透けて見えることはないようだ。
「さ、お部屋に帰るよ」
何もなかったかのように、ノムルは踵を返してラウンジを後にする。
ノムルの肩越しにラウンジを見た雪乃は、複雑な気持ちだ。
「放っておいても大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫だよ? あの程度で死ぬようなやわな魔法使いは、ここにはいないから」
「そうですか。安心しました」
「ぴー」
納得するところではないのだが、もうお約束になってきているので、雪乃も受け入れてしまっている。
「ところで、虹色に輝くクリームを見たのですが、あれは魔法ですか?」
「うん? なんだろうね? 後で頼んでみれば分かるよ」
「よろしくお願いします」
「りょーかい」
長閑な親子の会話を、ノムルについてきたディランは呆然として見つめていた。
確かにノムルの言うとおり、この程度で命を落とす者は、水槽の中にはいない。電撃で怪我を負った者はいるが、治癒魔法で治せる程度だ。
しかし、しかしである。
「やりすぎでは?」
思わず呟いた。
ノムルの奇行や暴走には慣れていたつもりのディランだったが、今回はいつもよりひどい。
確かにノムルは、必要とあれば容赦なく相手を叩き潰す。
しかし理由がない限り、攻撃魔法は使用しないというのが、魔法ギルドに所属する魔法使いたちの共通認識だった。
「ノムル様をここまで怒らせるとは……。いったい彼らは、何をしでかしたんだ?」
首を傾げながらも、ディランは職員達に指示を出し、水槽から魔法使いたちを救助するとともに、水を消していった。
「それにしても、一瞬にしてこれだけの水を作り出すとは、流石ノムル様です!」
惨状を前にして目を輝かせる彼もまた、何かが壊れているようだ。
その後、ノムルの部屋に謝罪に訪れる魔法使いが後を絶たなかったのだが、ノムルは全てを無視した。
「相手すると喜ぶからねー。見てごらんよ? 口では殊勝なこと言っているけど、目は嬉しそうに輝いてるだろ?」
「本当ですね。マゾなんでしょうか?」
「……。ちょっと違うかな?」
「ぴ?」
モニターの映像を見ながら、ノムルはディランに持ってきてもらったケーキを頬張る。
「これは魔法じゃなくて、ウミヅキの一種をみじん切りにして加えてあるねえ。食感がクニュクニュしてて、ちょっと面白いかな」
「なるほど」
どうやら発光するクラゲのような生き物を、クリームに混ぜ込んでいたようだ。みじん切りにしても発光するとは、異世界生物の生命力、恐るべしといったところか。
そんな出来事があった夜、ノムルの部屋に、ディランと象牙のようにそり立つ髭を持つ男が押しかけてきた。
雪乃とノムルが腰掛けるソファの対面に座った男は、ヴォーリオと名乗る。ヴィヴィの言っていた、彼女の父親だ。
娘とは似ても似つかぬ角ばった顔に、しっかり香油で固められた焦げ茶色の髪は、なぜか二本の角というか、耳というか、コウモリに変身できそうなヘアスタイルだった。
黒いローブはノムルのローブと同じ、金糸や銀糸で織られた帯で縁取られている。
雪乃は彼の頭が気になって仕方がない。
頭蓋骨の形がああなのか、たんこぶがあるのか、わざわざあの髪型にセットしているのか、知りたくて知りたくてたまらないが、必死に我慢する。
気付かれないように視線を逸らすが、視界の隅にそっと捉えて観察を続けた。
「「「……」」」
男達は黙したまま、間に置かれたテーブルに視線を落としている。
「あー……、とりあえず、ヴォーリオ」
「なんでしょう? ノムル様」
「その頭の構造を、説明してもらっても良いかな?」
「……。朝はきちんと抑えているのですが、昼頃から少しずつ……」
どうやら癖毛が理由のようだ。
輝く雪乃の葉を確認して、ノムルは本題に入る。
「それで、用件は?」
「本日の騒動と、そちらのユキノさんについてご説明いただきたく」
渋い声で問うヴォーリオは、鋭い眼差しを雪乃に向けた。
「今日の騒動なら、お前の娘に聞けよ。原因はあいつだ。俺のユキノちゃんにケチつけやがって」
などと言いつつ、抱きしめてきたノムルの頬を、雪乃は枝で突っ張る。
その様子に頭痛を覚えながら、ヴォーリオはもう一つの質問の答えを促がした。
「ユキノちゃんは、俺の可愛い娘なのー」
「……。ですから、いったい、どういった子供なのか、誰の子供なのか、なぜノムル様がそこまでお気に召したのか、どれほどの魔力を」
「どうだって良いだろう? なんでそんなこと説明しなきゃいけないのさ? 俺がユキノちゃんを気に入ったの。それで文句はないだろう?」
ノムルの頬を突っ張ることに必死な雪乃には、項垂れるヴォーリオをフォローする余裕はなかった。
雪乃は枝先で額を押さえる。
「ノムルさん、落雷も竜巻も、禁止です」
「え?」
ヴィヴィが雪乃の言葉に釣られるように、ラウンジの入り口を見た。雪乃とヴィヴィの動向に注目していた他の魔法使い達も、一斉に顔を向ける。
そこには、バチバチと光る静電気を帯びた、電気ウナギならぬ電気ノムルが、魔王の笑顔を貼り付けて立っていた。
「えー? じゃあ氷漬け……はユキノちゃんに影響が出るから駄目かー。となると、火?」
「さらに駄目です」
「んじゃあ、水攻めかな?」
つーっと、ノムルの杖がゆるりと動く。
「っ?!」
ラウンジは水槽へと早変わりしていた。
しかし流石は魔法ギルドといったところか。空気の膜で顔を覆ったり、エラを作って呼吸をしたり、溺れる者はいないようだ。
ちなみに雪乃とぴー助は、ノムルが作った気泡の中にいるため、ローブの裾すら濡れていない。
そのまま水の中をすいーっと、ノムルの元へと回収された。
「ぴー」
水槽から出たぴー助は、床に着地を決める。
雪乃はといえば、気泡からそのままノムルの片腕に座るように、抱きかかえられた。
「ユキノちゃん、駄目だよ? 知らない人に付いて行っちゃあ」
「すみませんでした。しかし特に実害は受けていませんよ?」
「本当に、甘いんだから」
と、杖がこつんと音を立てた。
「「「ぎやあああぁぁぁぁーーーっ?!」」」
電気クラゲが舞うように、水槽の中がきらびやかに輝く。残念ながら、漫画のように骨が透けて見えることはないようだ。
「さ、お部屋に帰るよ」
何もなかったかのように、ノムルは踵を返してラウンジを後にする。
ノムルの肩越しにラウンジを見た雪乃は、複雑な気持ちだ。
「放っておいても大丈夫なのでしょうか?」
「大丈夫だよ? あの程度で死ぬようなやわな魔法使いは、ここにはいないから」
「そうですか。安心しました」
「ぴー」
納得するところではないのだが、もうお約束になってきているので、雪乃も受け入れてしまっている。
「ところで、虹色に輝くクリームを見たのですが、あれは魔法ですか?」
「うん? なんだろうね? 後で頼んでみれば分かるよ」
「よろしくお願いします」
「りょーかい」
長閑な親子の会話を、ノムルについてきたディランは呆然として見つめていた。
確かにノムルの言うとおり、この程度で命を落とす者は、水槽の中にはいない。電撃で怪我を負った者はいるが、治癒魔法で治せる程度だ。
しかし、しかしである。
「やりすぎでは?」
思わず呟いた。
ノムルの奇行や暴走には慣れていたつもりのディランだったが、今回はいつもよりひどい。
確かにノムルは、必要とあれば容赦なく相手を叩き潰す。
しかし理由がない限り、攻撃魔法は使用しないというのが、魔法ギルドに所属する魔法使いたちの共通認識だった。
「ノムル様をここまで怒らせるとは……。いったい彼らは、何をしでかしたんだ?」
首を傾げながらも、ディランは職員達に指示を出し、水槽から魔法使いたちを救助するとともに、水を消していった。
「それにしても、一瞬にしてこれだけの水を作り出すとは、流石ノムル様です!」
惨状を前にして目を輝かせる彼もまた、何かが壊れているようだ。
その後、ノムルの部屋に謝罪に訪れる魔法使いが後を絶たなかったのだが、ノムルは全てを無視した。
「相手すると喜ぶからねー。見てごらんよ? 口では殊勝なこと言っているけど、目は嬉しそうに輝いてるだろ?」
「本当ですね。マゾなんでしょうか?」
「……。ちょっと違うかな?」
「ぴ?」
モニターの映像を見ながら、ノムルはディランに持ってきてもらったケーキを頬張る。
「これは魔法じゃなくて、ウミヅキの一種をみじん切りにして加えてあるねえ。食感がクニュクニュしてて、ちょっと面白いかな」
「なるほど」
どうやら発光するクラゲのような生き物を、クリームに混ぜ込んでいたようだ。みじん切りにしても発光するとは、異世界生物の生命力、恐るべしといったところか。
そんな出来事があった夜、ノムルの部屋に、ディランと象牙のようにそり立つ髭を持つ男が押しかけてきた。
雪乃とノムルが腰掛けるソファの対面に座った男は、ヴォーリオと名乗る。ヴィヴィの言っていた、彼女の父親だ。
娘とは似ても似つかぬ角ばった顔に、しっかり香油で固められた焦げ茶色の髪は、なぜか二本の角というか、耳というか、コウモリに変身できそうなヘアスタイルだった。
黒いローブはノムルのローブと同じ、金糸や銀糸で織られた帯で縁取られている。
雪乃は彼の頭が気になって仕方がない。
頭蓋骨の形がああなのか、たんこぶがあるのか、わざわざあの髪型にセットしているのか、知りたくて知りたくてたまらないが、必死に我慢する。
気付かれないように視線を逸らすが、視界の隅にそっと捉えて観察を続けた。
「「「……」」」
男達は黙したまま、間に置かれたテーブルに視線を落としている。
「あー……、とりあえず、ヴォーリオ」
「なんでしょう? ノムル様」
「その頭の構造を、説明してもらっても良いかな?」
「……。朝はきちんと抑えているのですが、昼頃から少しずつ……」
どうやら癖毛が理由のようだ。
輝く雪乃の葉を確認して、ノムルは本題に入る。
「それで、用件は?」
「本日の騒動と、そちらのユキノさんについてご説明いただきたく」
渋い声で問うヴォーリオは、鋭い眼差しを雪乃に向けた。
「今日の騒動なら、お前の娘に聞けよ。原因はあいつだ。俺のユキノちゃんにケチつけやがって」
などと言いつつ、抱きしめてきたノムルの頬を、雪乃は枝で突っ張る。
その様子に頭痛を覚えながら、ヴォーリオはもう一つの質問の答えを促がした。
「ユキノちゃんは、俺の可愛い娘なのー」
「……。ですから、いったい、どういった子供なのか、誰の子供なのか、なぜノムル様がそこまでお気に召したのか、どれほどの魔力を」
「どうだって良いだろう? なんでそんなこと説明しなきゃいけないのさ? 俺がユキノちゃんを気に入ったの。それで文句はないだろう?」
ノムルの頬を突っ張ることに必死な雪乃には、項垂れるヴォーリオをフォローする余裕はなかった。
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