233 / 385
ルモン大帝国編2
285.例の女の件で
しおりを挟む
城から出ると、フレックの運転する車が待っていた。
「待たせたか?」
「いや、時間通り。城は分刻みで動いてるから、無駄がなくていいな。戻りたくはないけど」
堅苦しい生活を嫌うフレックは、城を見上げながら苦く笑う。
雪乃はじいっとフレックを見つめていたかと思うと、ぺこりと幹を曲げた。
「ごめんなさい」
突然の謝罪に、フレックは目を丸くして瞬く。
「え? 何に対して?」
困惑した様子のフレックに、雪乃は話して良いものかと幹を捻った。理由を察したローズマリナたちは、顔を見あわせる。
事情を最もよく知り、フレックとも親しいナルツが、おもむろに口を開いた。
「例の女の件で、フレックの過去のこととかを知ってしまったんだ」
「申し訳ありませんでした」
雪乃は改めて頭を下げる。
「僕も同罪だ。ごめんよ、フレック」
ムダイも謝罪した。
二人の対応に、フレックのほうが慌てふためく。
「気にしなくていいから。この国の貴族の間では、有名な話だから」
急いで二人に頭を上げさせるフレックは、少し恥ずかしそうな困った顔をしているが、嫌悪感や傷付いた様子は見受けられない。
雪乃はほっと胸を撫で下ろした。
「馬鹿だよね。甘い言葉に惑わされて、まんまと踊らされて。俺だけじゃなく、大勢の人を巻き込んで」
自嘲するように、ぽつり、ぽつりとフレックは語り出した。
「俺の悩みに気付いてさ、背中を押してくれたんだ。俺はその娘に夢中になった。夢中になって彼女の言うことを真に受けて、アークヤー家の令嬢とパトを、冤罪で断罪しようとしたんだよ」
耐えかねたのか、フレックはまぶたを閉じた。長いまつげが苦しげに震える。
雪乃たちは静かに彼の気持ちが落ち着くのを待った。
自らを嘲笑うように、フレックは声を出さずに白い歯を見せ、目尻に皺を寄せる。
「ナルツが気付いてくれなけりゃ、俺は一人の令嬢の人生と、仲間になるはずの男の命を、奪うところだったんだよ。許されるはずがない。この体だって、当然の報いさ」
何か言葉をかけようとした雪乃だが、第三者である雪乃が何かを言ったところで、フレックに気を使わせるだけだろうと思い、言葉を紡げなかった。
「あら、相変わらずお馬鹿ね」
この場にいないはずの人物の声に、一斉に振り向き視線が集まる。そこにいたのは、皇太子妃フランソワだった。
「パトから聞いているわ。あなたのお蔭で、パトも騎士ナルツも無事だったのでしょう? ならばあなたはパトの命を奪いかけたけれど、救ったことにもなるわ。それで帳消しで良いのではなくて?」
飛竜討伐に出向いたナルツたちは、地元冒険者たちの裏切りに遭った。
フレックが飛び出して飛竜の咆哮を逸らしたことにより、他のメンバーは直撃を免れ、致命傷に至らなかったのだ。
その代償として、彼は命を落としかけ、手足を失った。
「それに私のこともそう。たしかにあなたのせいで、人生を棒に振りかけたわ。でもあのまま予定通り婚姻していたと考えると、ぞっとするわ。あんな間抜けで傲慢で、尻拭いばかりしなければならない上に、容易く浮気までするような男の面倒を、一生見なければならなかったのよ? 最悪の人生だったでしょうね」
吊り気味の眦できつく睨みつけるフランソワは、フレックを気遣う内容のはずなのに、なぜか上から目線で傲慢に言い放つ。
フレックは思わず視線を逸らす。
雪乃たちも、そっと斜め下を見た。自分たちは関係ないはずなのだが、一緒に責められているような錯覚を感じた。
ふっと息を漏らしたフランソワは、口元を緩める。
「私もパトも、幸せに生きているわ。あなたはいつまで過去に縛り付けられているつもり? フレック。あなたがそんな状態では、騎士ナルツだって前に進めないじゃない。人の幸せを邪魔するくらいなら、消えなさい!」
優しい言葉は、最後は辛らつな言葉で締めくくられた。
何事もなかったかのようにくるりと踵を返し、皇太子妃フランソワは、城の中へと消えていった。
気まずい雰囲気を漂わせている雪乃たちが、すごすごと乗り込んだ車は、城から遠ざかっていく。
「それで、予定通りでいいか? それとも……」
気を取り直してナルツに確認していたフレックの視線が、心配そうに雪乃に向かう。
「マンドラゴラからの連絡はありませんので、特に問題は起きていないと思います。まだ寝ているのでしょうか?」
「さすがに目は覚めてるでしょう?」
アークヤー公爵邸に残してきた、ノムルのことだと察した雪乃は答えたのだが、ムダイからツッコミが入った。
起きている間は問題を起こすと思い込まれているノムルに、人間たちはわずかばかりの同情を抱くと同時に、それも仕方無しと納得した。
「せっかくだし、少し街でも案内してもらったら?」
「そうですね。前回はまったく記憶にありませんし、ローズマリナさんのお店をどうするかも、決めなければなりませんから」
勧めるムダイに、雪乃はぼんやり答える。
以前ネーデルを訪れた際、雪乃は栄養のある土や水を摂取できず、体調を崩して動けなくなったのだ。ノムルの氷魔法のとばっちりを受けて、冬眠したり開花してしまったのも原因だろうが。
「店?」
ナルツとフレックが、不思議そうにローズマリナを見た。
公爵令嬢であるローズマリナと店というイメージは、一致しなかったのだろう。
「ゴリン国では冒険者の女性向けに、お店を開いていましたの。閉じるつもりでしたけれど、ノムル様がお店ごと運んでくださって。どこか良い土地をご存知ないかしら?」
「は? 店ごと? って、どういうこと?」
おかしな台詞が出てきたと、フレックとナルツは驚愕の目を向ける。
「私も驚いたのですけれども、ノムル様は家ごと空間魔法に収納できるようなの。お蔭で旅の間も野宿することなく、我が家で眠らせていただいたわ」
「おかしいだろう? いや、あの人だったらありなのか?」
フレックは首をフクロウ並みにぐるりと捻り、ナルツは口を半開きに開けている。ローズマリナは困ったように、微笑みを貼り付けていた。
旅の間に慣れてしまった彼女だが、ノムルの魔法が異常であることは理解している。
「冒険者向けの店なら、ギルドマスターに聞いてみればいいんじゃないかな? 昼食は料亭でもと思っていたけど、ギルドの食堂でよければ、今から行ってみるかい?」
「お願いできるかしら?」
店のことは、ネーデルの冒険者ギルドのマスターであるルッツに、丸投げするようだ。
「待たせたか?」
「いや、時間通り。城は分刻みで動いてるから、無駄がなくていいな。戻りたくはないけど」
堅苦しい生活を嫌うフレックは、城を見上げながら苦く笑う。
雪乃はじいっとフレックを見つめていたかと思うと、ぺこりと幹を曲げた。
「ごめんなさい」
突然の謝罪に、フレックは目を丸くして瞬く。
「え? 何に対して?」
困惑した様子のフレックに、雪乃は話して良いものかと幹を捻った。理由を察したローズマリナたちは、顔を見あわせる。
事情を最もよく知り、フレックとも親しいナルツが、おもむろに口を開いた。
「例の女の件で、フレックの過去のこととかを知ってしまったんだ」
「申し訳ありませんでした」
雪乃は改めて頭を下げる。
「僕も同罪だ。ごめんよ、フレック」
ムダイも謝罪した。
二人の対応に、フレックのほうが慌てふためく。
「気にしなくていいから。この国の貴族の間では、有名な話だから」
急いで二人に頭を上げさせるフレックは、少し恥ずかしそうな困った顔をしているが、嫌悪感や傷付いた様子は見受けられない。
雪乃はほっと胸を撫で下ろした。
「馬鹿だよね。甘い言葉に惑わされて、まんまと踊らされて。俺だけじゃなく、大勢の人を巻き込んで」
自嘲するように、ぽつり、ぽつりとフレックは語り出した。
「俺の悩みに気付いてさ、背中を押してくれたんだ。俺はその娘に夢中になった。夢中になって彼女の言うことを真に受けて、アークヤー家の令嬢とパトを、冤罪で断罪しようとしたんだよ」
耐えかねたのか、フレックはまぶたを閉じた。長いまつげが苦しげに震える。
雪乃たちは静かに彼の気持ちが落ち着くのを待った。
自らを嘲笑うように、フレックは声を出さずに白い歯を見せ、目尻に皺を寄せる。
「ナルツが気付いてくれなけりゃ、俺は一人の令嬢の人生と、仲間になるはずの男の命を、奪うところだったんだよ。許されるはずがない。この体だって、当然の報いさ」
何か言葉をかけようとした雪乃だが、第三者である雪乃が何かを言ったところで、フレックに気を使わせるだけだろうと思い、言葉を紡げなかった。
「あら、相変わらずお馬鹿ね」
この場にいないはずの人物の声に、一斉に振り向き視線が集まる。そこにいたのは、皇太子妃フランソワだった。
「パトから聞いているわ。あなたのお蔭で、パトも騎士ナルツも無事だったのでしょう? ならばあなたはパトの命を奪いかけたけれど、救ったことにもなるわ。それで帳消しで良いのではなくて?」
飛竜討伐に出向いたナルツたちは、地元冒険者たちの裏切りに遭った。
フレックが飛び出して飛竜の咆哮を逸らしたことにより、他のメンバーは直撃を免れ、致命傷に至らなかったのだ。
その代償として、彼は命を落としかけ、手足を失った。
「それに私のこともそう。たしかにあなたのせいで、人生を棒に振りかけたわ。でもあのまま予定通り婚姻していたと考えると、ぞっとするわ。あんな間抜けで傲慢で、尻拭いばかりしなければならない上に、容易く浮気までするような男の面倒を、一生見なければならなかったのよ? 最悪の人生だったでしょうね」
吊り気味の眦できつく睨みつけるフランソワは、フレックを気遣う内容のはずなのに、なぜか上から目線で傲慢に言い放つ。
フレックは思わず視線を逸らす。
雪乃たちも、そっと斜め下を見た。自分たちは関係ないはずなのだが、一緒に責められているような錯覚を感じた。
ふっと息を漏らしたフランソワは、口元を緩める。
「私もパトも、幸せに生きているわ。あなたはいつまで過去に縛り付けられているつもり? フレック。あなたがそんな状態では、騎士ナルツだって前に進めないじゃない。人の幸せを邪魔するくらいなら、消えなさい!」
優しい言葉は、最後は辛らつな言葉で締めくくられた。
何事もなかったかのようにくるりと踵を返し、皇太子妃フランソワは、城の中へと消えていった。
気まずい雰囲気を漂わせている雪乃たちが、すごすごと乗り込んだ車は、城から遠ざかっていく。
「それで、予定通りでいいか? それとも……」
気を取り直してナルツに確認していたフレックの視線が、心配そうに雪乃に向かう。
「マンドラゴラからの連絡はありませんので、特に問題は起きていないと思います。まだ寝ているのでしょうか?」
「さすがに目は覚めてるでしょう?」
アークヤー公爵邸に残してきた、ノムルのことだと察した雪乃は答えたのだが、ムダイからツッコミが入った。
起きている間は問題を起こすと思い込まれているノムルに、人間たちはわずかばかりの同情を抱くと同時に、それも仕方無しと納得した。
「せっかくだし、少し街でも案内してもらったら?」
「そうですね。前回はまったく記憶にありませんし、ローズマリナさんのお店をどうするかも、決めなければなりませんから」
勧めるムダイに、雪乃はぼんやり答える。
以前ネーデルを訪れた際、雪乃は栄養のある土や水を摂取できず、体調を崩して動けなくなったのだ。ノムルの氷魔法のとばっちりを受けて、冬眠したり開花してしまったのも原因だろうが。
「店?」
ナルツとフレックが、不思議そうにローズマリナを見た。
公爵令嬢であるローズマリナと店というイメージは、一致しなかったのだろう。
「ゴリン国では冒険者の女性向けに、お店を開いていましたの。閉じるつもりでしたけれど、ノムル様がお店ごと運んでくださって。どこか良い土地をご存知ないかしら?」
「は? 店ごと? って、どういうこと?」
おかしな台詞が出てきたと、フレックとナルツは驚愕の目を向ける。
「私も驚いたのですけれども、ノムル様は家ごと空間魔法に収納できるようなの。お蔭で旅の間も野宿することなく、我が家で眠らせていただいたわ」
「おかしいだろう? いや、あの人だったらありなのか?」
フレックは首をフクロウ並みにぐるりと捻り、ナルツは口を半開きに開けている。ローズマリナは困ったように、微笑みを貼り付けていた。
旅の間に慣れてしまった彼女だが、ノムルの魔法が異常であることは理解している。
「冒険者向けの店なら、ギルドマスターに聞いてみればいいんじゃないかな? 昼食は料亭でもと思っていたけど、ギルドの食堂でよければ、今から行ってみるかい?」
「お願いできるかしら?」
店のことは、ネーデルの冒険者ギルドのマスターであるルッツに、丸投げするようだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる