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魔王復活編
347.ぴー助は目の前の大樹が雪乃だと
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全速力でエルフ領からルグ国まで往復したノムルは、雪乃の元へ戻るとぴー助を放り出し、大樹の周囲をぐるぐると回って彼女の無事を確認する。
一切の傷が付いていないことを確かめると、ようやく息を吐いて緊張を解いた。
「ぴー」
ぴー助の声に、ノムルは視線を動かした。
戸惑い、雪乃を探すかと予想していたぴー助は、嬉しそうに大樹に体を摺り寄せている。まるで母親に甘える雛のように。
本能なのか、それとも魔物にのみ認識できる何かがあるのか、ぴー助は目の前の大樹が雪乃だと、確かに認識していた。
「ピースケ」
空間魔法から取り出した鏡の泉の酒に、ノムルはありったけの魔力を込める。
ぴー助は目を輝かせて凝視した。涎が滴り、舌なめずりまでしている。ちらちらとノムルを上目遣いに見ては、期待とじれったさに尻尾を地面に打ち付けた。
「飲め」
「ぴー!」
どんぶりに並々と注がれた酒に、ぴー助は鼻先をつっ込んで豪快に飲んでいく。最後は丼の底まで舐め取って、一滴残らず飲みきった。
鏡の泉の酒は、竜種にとって何よりの美味である。
ノムルの魔力がこもった鏡の泉の酒を飲んだぴー助は、どんどん成長していく。その姿は立派な成獣。彼の母竜や火竜のハヤトよりも、ずっと大きく育っていた。
「いいか、ぴー助。俺が戻ってくるまで、ユキノちゃんを護れ。ユキノちゃんに近付こうとするやつらはもちろん、この森に近付くやつ等も殲滅しろ」
雪乃が聞いていたら、すぐさま取り消しを求める内容だが、彼女のいない今、止められる存在はいない。
「がううー!」
酒をもらって上機嫌のぴー助は、迷わず了承する。体の成長に合わせて、愛らしかった鳴き声も低く威厳のある声へと変わっていた。
「じゃあ、頼んだぞ?」
「がううーっ!」
大樹の周囲と森を囲む結界を維持するために杖を残し、ノムルは空へと浮かび上がる。そしてそのまま西の方角に飛んでいった。
彼の手には、緑頭巾ちゃんの人形が握られている。愛しい娘に似たガラスの人形は、耳障りな男の声で喋っていた。
その頃、ルモン大帝国帝都ネーデルにあるラトヤ本舗の奥の席では、人目を引く男女合わせて六人が、銘菓カンヨーを味わっていた。
「別にいいんだけど、僕がここにいる意味ってあったのかな?」
赤い髪の男は、ぽつりとこぼす。
赤いシャツに真紅のネクタイとズボンという、いつもに比べるとラフな格好だが、やっぱり赤かった。
同じテーブルに着いている者たちを見回せば、婚約中のナルツとローズマリナがイチャイチャラブラブとしていて、二人の前ではテーブルの上に座ったマンドラゴラのスターベルとティンクルベルが、仲睦まじく身を寄せ合う。
少し視線を動かせば、男装の麗人ララクールが、手の無いフレックのためにカンヨーを食べさせては頬を朱に染めていた。
残るもう一人はと隣に目を向ければ、懐かしさを感じさせる黒髪の魔法使いは、テーブルに座らせたマンドラゴラのマーちゃんと、きゃっきゃうふふ状態だ。
ティンクルベルと共にナルツの下にいたマーちゃんだったが、いつの間にかマグレーンに乗り換えていた。
「ふふ。マーちゃんは本当に可愛くて御利巧ですね」
「わー」
他のマンドラゴラたちに比べて、このマーちゃんというマンドラゴラは大人しく常識的だった。
ムダイとフレックの心を弄んだ過去を持つが、落ち込むムダイを心配しただけだったり、相棒を探してフレックを観察していただけだったりと、ちょっと誤解を生みやすい性格なだけで、悪気はないのだ。
「よく見ると、マンドラゴラって少しずつ色が違うんだね?」
一人寂しく緑茶とカンヨーに舌鼓を打っていたムダイは、ふと気付く。
マーちゃんは少し紫色をしていて、スターベルはオレンジ、ティンクルベルは色が薄い。
「言われてみればそうですね。気付きませんでした」
マグレーンはマーちゃんから、スターベルとティンクルベルに視線を移す。
「わー?」
「わー?」
「わー?」
三匹とも、根を傾げてマグレーンを見上げる。くすりと笑ったマグレーンは、ムダイに顔を向けた。
「そういえば、ムダイさんは魔法ギルドにも登録したんですよね? ノムル様に登録していただいたんですか?」
「いや? 騙されて試しの門を潜らされた」
紹介者のいない魔法使いが魔法ギルドに登録するためには、登録用の門を一人ずつ潜り、試練を受けなければならない。
実際は登録のためではなく、ラジン国に危害を加える者を排除するための、囮の門だったのだが。
「あれをクリアしたんですか?」
「ああ」
門を開けるなり、魔法使いたちから一斉攻撃を受けるという、登録させる気はまったくないだろうと言いたくなるような試練だった。
マグレーンは眉根を寄せ、ムダイを窺うように見る。
「ギルドカードを見せてもらっても?」
「いいよ」
ムダイは逆らわず、魔法ギルドのカードを取り出した。確認したマグレーンは、眉間の皺を深める。
「ハッスルさんという方は、お知り合いですか?」
カンヨーに刺していた楊枝を持つ、ムダイの手が止まる。
「誰それ?」
聞き覚えの無い名前を耳にして、ムダイは訝しげにマグレーンを見た。
「魔法ギルドは紹介者がいないと登録できない仕組みになっているんですよ。ギルドカードにも、紹介者の名前が刻まれます」
そう言って指差したのは、ムダイには理解できなかった文字の羅列だ。
「人の名前だったのか」
どうりで意味が分からなかったわけだと納得したムダイだが、すぐに顔をしかめる。
なぜ見ず知らずの人間が、自分の紹介者――つまりは保証人のようなものだろう――になっているのか。
ムダイの疑念を察したマグレーンは、杖を手に防音魔法を展開した。
「門を潜った後、魔法陣に入りましたよね?」
「ああ」
クリア条件は、ラジン国の国境の町に設置されている魔法陣に入ることだ。
「あの魔法陣、かなり強力な捕獲用の魔法陣なんですよ。竜種でも逃げられないそうです」
「は?」
ムダイは呆けた声を上げてマグレーンをまじまじと見る。
「解放条件は、魔法ギルドのBランク以上の者に、紹介者として登録してもらうことらしいです。俺はCだったので、詳細は知りませんけど」
知らぬ間にハッスル氏に助けられていたようだ。了承もなく紹介者に名を連ねられていたわけだが。
一切の傷が付いていないことを確かめると、ようやく息を吐いて緊張を解いた。
「ぴー」
ぴー助の声に、ノムルは視線を動かした。
戸惑い、雪乃を探すかと予想していたぴー助は、嬉しそうに大樹に体を摺り寄せている。まるで母親に甘える雛のように。
本能なのか、それとも魔物にのみ認識できる何かがあるのか、ぴー助は目の前の大樹が雪乃だと、確かに認識していた。
「ピースケ」
空間魔法から取り出した鏡の泉の酒に、ノムルはありったけの魔力を込める。
ぴー助は目を輝かせて凝視した。涎が滴り、舌なめずりまでしている。ちらちらとノムルを上目遣いに見ては、期待とじれったさに尻尾を地面に打ち付けた。
「飲め」
「ぴー!」
どんぶりに並々と注がれた酒に、ぴー助は鼻先をつっ込んで豪快に飲んでいく。最後は丼の底まで舐め取って、一滴残らず飲みきった。
鏡の泉の酒は、竜種にとって何よりの美味である。
ノムルの魔力がこもった鏡の泉の酒を飲んだぴー助は、どんどん成長していく。その姿は立派な成獣。彼の母竜や火竜のハヤトよりも、ずっと大きく育っていた。
「いいか、ぴー助。俺が戻ってくるまで、ユキノちゃんを護れ。ユキノちゃんに近付こうとするやつらはもちろん、この森に近付くやつ等も殲滅しろ」
雪乃が聞いていたら、すぐさま取り消しを求める内容だが、彼女のいない今、止められる存在はいない。
「がううー!」
酒をもらって上機嫌のぴー助は、迷わず了承する。体の成長に合わせて、愛らしかった鳴き声も低く威厳のある声へと変わっていた。
「じゃあ、頼んだぞ?」
「がううーっ!」
大樹の周囲と森を囲む結界を維持するために杖を残し、ノムルは空へと浮かび上がる。そしてそのまま西の方角に飛んでいった。
彼の手には、緑頭巾ちゃんの人形が握られている。愛しい娘に似たガラスの人形は、耳障りな男の声で喋っていた。
その頃、ルモン大帝国帝都ネーデルにあるラトヤ本舗の奥の席では、人目を引く男女合わせて六人が、銘菓カンヨーを味わっていた。
「別にいいんだけど、僕がここにいる意味ってあったのかな?」
赤い髪の男は、ぽつりとこぼす。
赤いシャツに真紅のネクタイとズボンという、いつもに比べるとラフな格好だが、やっぱり赤かった。
同じテーブルに着いている者たちを見回せば、婚約中のナルツとローズマリナがイチャイチャラブラブとしていて、二人の前ではテーブルの上に座ったマンドラゴラのスターベルとティンクルベルが、仲睦まじく身を寄せ合う。
少し視線を動かせば、男装の麗人ララクールが、手の無いフレックのためにカンヨーを食べさせては頬を朱に染めていた。
残るもう一人はと隣に目を向ければ、懐かしさを感じさせる黒髪の魔法使いは、テーブルに座らせたマンドラゴラのマーちゃんと、きゃっきゃうふふ状態だ。
ティンクルベルと共にナルツの下にいたマーちゃんだったが、いつの間にかマグレーンに乗り換えていた。
「ふふ。マーちゃんは本当に可愛くて御利巧ですね」
「わー」
他のマンドラゴラたちに比べて、このマーちゃんというマンドラゴラは大人しく常識的だった。
ムダイとフレックの心を弄んだ過去を持つが、落ち込むムダイを心配しただけだったり、相棒を探してフレックを観察していただけだったりと、ちょっと誤解を生みやすい性格なだけで、悪気はないのだ。
「よく見ると、マンドラゴラって少しずつ色が違うんだね?」
一人寂しく緑茶とカンヨーに舌鼓を打っていたムダイは、ふと気付く。
マーちゃんは少し紫色をしていて、スターベルはオレンジ、ティンクルベルは色が薄い。
「言われてみればそうですね。気付きませんでした」
マグレーンはマーちゃんから、スターベルとティンクルベルに視線を移す。
「わー?」
「わー?」
「わー?」
三匹とも、根を傾げてマグレーンを見上げる。くすりと笑ったマグレーンは、ムダイに顔を向けた。
「そういえば、ムダイさんは魔法ギルドにも登録したんですよね? ノムル様に登録していただいたんですか?」
「いや? 騙されて試しの門を潜らされた」
紹介者のいない魔法使いが魔法ギルドに登録するためには、登録用の門を一人ずつ潜り、試練を受けなければならない。
実際は登録のためではなく、ラジン国に危害を加える者を排除するための、囮の門だったのだが。
「あれをクリアしたんですか?」
「ああ」
門を開けるなり、魔法使いたちから一斉攻撃を受けるという、登録させる気はまったくないだろうと言いたくなるような試練だった。
マグレーンは眉根を寄せ、ムダイを窺うように見る。
「ギルドカードを見せてもらっても?」
「いいよ」
ムダイは逆らわず、魔法ギルドのカードを取り出した。確認したマグレーンは、眉間の皺を深める。
「ハッスルさんという方は、お知り合いですか?」
カンヨーに刺していた楊枝を持つ、ムダイの手が止まる。
「誰それ?」
聞き覚えの無い名前を耳にして、ムダイは訝しげにマグレーンを見た。
「魔法ギルドは紹介者がいないと登録できない仕組みになっているんですよ。ギルドカードにも、紹介者の名前が刻まれます」
そう言って指差したのは、ムダイには理解できなかった文字の羅列だ。
「人の名前だったのか」
どうりで意味が分からなかったわけだと納得したムダイだが、すぐに顔をしかめる。
なぜ見ず知らずの人間が、自分の紹介者――つまりは保証人のようなものだろう――になっているのか。
ムダイの疑念を察したマグレーンは、杖を手に防音魔法を展開した。
「門を潜った後、魔法陣に入りましたよね?」
「ああ」
クリア条件は、ラジン国の国境の町に設置されている魔法陣に入ることだ。
「あの魔法陣、かなり強力な捕獲用の魔法陣なんですよ。竜種でも逃げられないそうです」
「は?」
ムダイは呆けた声を上げてマグレーンをまじまじと見る。
「解放条件は、魔法ギルドのBランク以上の者に、紹介者として登録してもらうことらしいです。俺はCだったので、詳細は知りませんけど」
知らぬ間にハッスル氏に助けられていたようだ。了承もなく紹介者に名を連ねられていたわけだが。
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