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魔王復活編
349.しかしその災厄に
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剣を抜き放ったムダイは、唇を舐めると腰を落として対峙する瞬間に備える。
勢いを殺すこともなく突っ込んできたノムルは、予備の杖をムダイに向かって振り下ろす。ムダイは全身の関節を使って衝撃を緩和しつつ、剣を構えて正面から受けた。
剣先で受けた杖を鍔元へと下ろすことで威力をそいでいくが、刀身から伝わる力にムダイは手が痺れて柄を離しそうになる。
ムダイは歯を食いしばり、ぐっと力を込めて体を左に引いてノムルを通すと同時に、杖と剣の接点から伝わる力を利用して、地面に着地するノムルの背を狙う。
「甘いっ!」
ノムルの杖が、ムダイの右脇腹を薙ぐ。とっさにかわしたムダイだが、剣の軌道はずれてノムルのローブを裂くだけに留まった。
ムダイの口角が歓喜するように高く釣りあがり、綺麗に並んだ白い歯が覗いた。
「キモイわっ!」
着地直前に身体の向きを変えて仰向けとなったノムルは、逆手に持ち替えた杖で地面を突いて大地を穿ち、落下の衝撃を逃す。
地面が揺れ、砕けた石や土が弾け飛び、ネーデルの町を襲う。
牛ほどの大きさの固まりもあったが、マグレーンを中心とした魔法使いたちが構成していた障壁に阻まれ、町への被害は食い止めた。
しかしその災厄に、その場にいた者たちは息を飲み、恐怖に体をすくませた。腰を抜かし、膝や尻餅を突いている者もいる。
そんな混沌とした中でも、ナルツは冷静に状況を判断していた。
地上の衝撃は防御障壁で食い止めたが、地震は食い止められていない。町にもそれなりの被害が出ているはずだ。
「魔法使いたちはこのまま障壁を維持。その他の者は町に戻り、都民を安全な場所に誘導せよ。騎士は被害の状況を把握し、城へ報告を。急げ!」
鋭く指示を放つ。
心神を喪失しかけていた騎士や冒険者たちは、ナルツの叱咤に反論する余裕も残っておらず、言われるままに駆け出した。
ナルツは視線を前方の戦いに戻すと、障壁の向こうで繰り広げられている赤い勇者と緑の魔王へ意識を向けた。
地面に開いた巨大な穴からは竜巻が空へと向かって立ち昇り、雷光が絶えず線を描く。
竜巻の中には、赤い勇者の姿も見える。ぐるぐると回っている彼は、共に巻き上げられた石を剣で捌き、落雷に焼かれながらも、笑みを絶やすことはない。
ナルツやマグレーンたちの目は、死んだ魚のように虚ろになっていた。
ムダイは大きく振りかぶった剣を打ち下ろして風を薙ぎ払うと、竜巻から抜け出す。
すかさずノムルは無数の氷の刃を作り出し、ムダイに放った。
落下しつつも身を捻ってかわし、剣で叩き折っていたムダイだったが、それでも完全には防ぎきれなかったようで、左腕と右の脇腹が血に染まった。
だが彼の勢いは止まらない。爛々と輝く笑顔でノムルに迫る。
「今日はお前の意識を刈るつもりはないんだっての。正気に戻れっ!」
ノムルは次々と魔法で攻撃を加えるが、ムダイは一向に引く気配が無い。
火柱が上がり、滝が現れ、地面が巨大筍の群生地のようになり、雹の嵐となり、局地的に天変地異が荒れ狂っている。
狐と狸の化かし合いも、ここまでひどくはないだろう。
「わー……」
ナルツの肩へと上っていたスターベルでさえ、呆れた声を出して呆然と眺めていた。人間たちにいたっては、もはや理解不能である。
あまりに常識から外れすぎていて返って冷静になったのか、黙々と帝都の保護に尽力している。帝都を覆っていた障壁は解除され、ノムルとムダイを中心に厚く囲う方向に変わっていた。
戦いへと目を戻すと、ムダイは服が破れて露出された肌も赤く染まり、左腕は剣の柄を握ることなく揺れている。だが手や足が折れ、口から血があふれても、その目は恍惚と輝いていた。
間合いを詰めては右手だけで剣を振りかぶり、ノムルを襲う。
「いい加減、諦めろっ!」
水の塊を放ち、二人の間合いが開いたところで、ノムルは障壁を展開しムダイを閉じ込めた。
罠に掛かった野生の猛獣のように、ムダイは障壁を破ろうと剣を振るい、蹴りを繰り出し、暴れ続けている。
もはやどちらが勇者で魔王かさっぱり分からない。
「おい、お前に聞きたいことがあるんだけど」
無駄だろうと思いつつ、ノムルは猛り狂う戦闘狂に言葉をかける。
「何ですか? 勝負してくれるなら、なんでもお答えしますよ?」
予想に反して、暴れ狂うムダイに言葉が通じた。
ノムルは驚きつつも呆れ混じりの半目を向けながら、カードをかざす。大樹となった雪乃の根元に落ちていた、一枚のカードを。
「これはなんて書いてあるんだ?」
ムダイの瞳孔が小さくなり、焦点をノムルから手前に引いていく。目に映ったカードの文字を追い、動きを止めた。
恍惚としていた表情は真顔に戻り、そして――、
「痛っ?! ちょっ、ノムルさん、やりすぎです! これは死にます! って、ゴフッ」
戦闘狂はただのムダイに戻ったようだ。痛みに顔を歪め、血を吐いて咳き込んだ。先ほどまでとは違う意味で、会話のできる状態ではない。
舌打ちを鳴らしたノムルは障壁を解除すると、指先でムダイの体に触れる。とたんに光があふれ出してムダイを包み込み、傷を瞬時に治した。
「おおー。さすがですね」
治った体を確かめるように、ムダイは手を握ったり開いたりしている。
杖なく人に使えばその存在を消滅しかねないノムルの魔力だが、超人ムダイは無事だったようだ。
「いいから、さっさと読め」
ぐいっと、ムダイの顔にカードが押し付けられる。
その無体な行動を気にすることもなく、ムダイはカードを指で挟んで受け取った。
「あー……。これって、ユキノちゃんに落ちてきたカードですよね?」
「ああ。さっさと読め」
魔王様はご機嫌斜めだ。
ムダイはぽりぽりと頬を掻くと、
「『ちぇー。』ですね」
と、書かれている文字を読んだ。
沈黙が落ちた。
「どういう状況だったんですか?」
たまらずムダイは、怪訝な表情を浮かべて問いかける。
カードをむしるように奪い返して確認したノムルは、それをぽいっと投げて空間魔法にしまうと、次のカードを取り出す。
再び受け取ってカードを読んだムダイは、眉を寄せた。
書かれている内容は、彼も予想していた魔王になるための選択肢。
カードを見つめていたムダイは、思わず想像してしまう。強敵を退け、辿り着いた魔王の部屋。待っていたのは、
『魔王の雪乃です。よろしくお願いします』
丁寧にぺこりと頭を下げる、樹人の子供。ついでにお茶とお茶菓子まで用意していそうだ。
「無理。倒せないって」
ムダイはぷるぷると肩を震わせて悶えた。
勢いを殺すこともなく突っ込んできたノムルは、予備の杖をムダイに向かって振り下ろす。ムダイは全身の関節を使って衝撃を緩和しつつ、剣を構えて正面から受けた。
剣先で受けた杖を鍔元へと下ろすことで威力をそいでいくが、刀身から伝わる力にムダイは手が痺れて柄を離しそうになる。
ムダイは歯を食いしばり、ぐっと力を込めて体を左に引いてノムルを通すと同時に、杖と剣の接点から伝わる力を利用して、地面に着地するノムルの背を狙う。
「甘いっ!」
ノムルの杖が、ムダイの右脇腹を薙ぐ。とっさにかわしたムダイだが、剣の軌道はずれてノムルのローブを裂くだけに留まった。
ムダイの口角が歓喜するように高く釣りあがり、綺麗に並んだ白い歯が覗いた。
「キモイわっ!」
着地直前に身体の向きを変えて仰向けとなったノムルは、逆手に持ち替えた杖で地面を突いて大地を穿ち、落下の衝撃を逃す。
地面が揺れ、砕けた石や土が弾け飛び、ネーデルの町を襲う。
牛ほどの大きさの固まりもあったが、マグレーンを中心とした魔法使いたちが構成していた障壁に阻まれ、町への被害は食い止めた。
しかしその災厄に、その場にいた者たちは息を飲み、恐怖に体をすくませた。腰を抜かし、膝や尻餅を突いている者もいる。
そんな混沌とした中でも、ナルツは冷静に状況を判断していた。
地上の衝撃は防御障壁で食い止めたが、地震は食い止められていない。町にもそれなりの被害が出ているはずだ。
「魔法使いたちはこのまま障壁を維持。その他の者は町に戻り、都民を安全な場所に誘導せよ。騎士は被害の状況を把握し、城へ報告を。急げ!」
鋭く指示を放つ。
心神を喪失しかけていた騎士や冒険者たちは、ナルツの叱咤に反論する余裕も残っておらず、言われるままに駆け出した。
ナルツは視線を前方の戦いに戻すと、障壁の向こうで繰り広げられている赤い勇者と緑の魔王へ意識を向けた。
地面に開いた巨大な穴からは竜巻が空へと向かって立ち昇り、雷光が絶えず線を描く。
竜巻の中には、赤い勇者の姿も見える。ぐるぐると回っている彼は、共に巻き上げられた石を剣で捌き、落雷に焼かれながらも、笑みを絶やすことはない。
ナルツやマグレーンたちの目は、死んだ魚のように虚ろになっていた。
ムダイは大きく振りかぶった剣を打ち下ろして風を薙ぎ払うと、竜巻から抜け出す。
すかさずノムルは無数の氷の刃を作り出し、ムダイに放った。
落下しつつも身を捻ってかわし、剣で叩き折っていたムダイだったが、それでも完全には防ぎきれなかったようで、左腕と右の脇腹が血に染まった。
だが彼の勢いは止まらない。爛々と輝く笑顔でノムルに迫る。
「今日はお前の意識を刈るつもりはないんだっての。正気に戻れっ!」
ノムルは次々と魔法で攻撃を加えるが、ムダイは一向に引く気配が無い。
火柱が上がり、滝が現れ、地面が巨大筍の群生地のようになり、雹の嵐となり、局地的に天変地異が荒れ狂っている。
狐と狸の化かし合いも、ここまでひどくはないだろう。
「わー……」
ナルツの肩へと上っていたスターベルでさえ、呆れた声を出して呆然と眺めていた。人間たちにいたっては、もはや理解不能である。
あまりに常識から外れすぎていて返って冷静になったのか、黙々と帝都の保護に尽力している。帝都を覆っていた障壁は解除され、ノムルとムダイを中心に厚く囲う方向に変わっていた。
戦いへと目を戻すと、ムダイは服が破れて露出された肌も赤く染まり、左腕は剣の柄を握ることなく揺れている。だが手や足が折れ、口から血があふれても、その目は恍惚と輝いていた。
間合いを詰めては右手だけで剣を振りかぶり、ノムルを襲う。
「いい加減、諦めろっ!」
水の塊を放ち、二人の間合いが開いたところで、ノムルは障壁を展開しムダイを閉じ込めた。
罠に掛かった野生の猛獣のように、ムダイは障壁を破ろうと剣を振るい、蹴りを繰り出し、暴れ続けている。
もはやどちらが勇者で魔王かさっぱり分からない。
「おい、お前に聞きたいことがあるんだけど」
無駄だろうと思いつつ、ノムルは猛り狂う戦闘狂に言葉をかける。
「何ですか? 勝負してくれるなら、なんでもお答えしますよ?」
予想に反して、暴れ狂うムダイに言葉が通じた。
ノムルは驚きつつも呆れ混じりの半目を向けながら、カードをかざす。大樹となった雪乃の根元に落ちていた、一枚のカードを。
「これはなんて書いてあるんだ?」
ムダイの瞳孔が小さくなり、焦点をノムルから手前に引いていく。目に映ったカードの文字を追い、動きを止めた。
恍惚としていた表情は真顔に戻り、そして――、
「痛っ?! ちょっ、ノムルさん、やりすぎです! これは死にます! って、ゴフッ」
戦闘狂はただのムダイに戻ったようだ。痛みに顔を歪め、血を吐いて咳き込んだ。先ほどまでとは違う意味で、会話のできる状態ではない。
舌打ちを鳴らしたノムルは障壁を解除すると、指先でムダイの体に触れる。とたんに光があふれ出してムダイを包み込み、傷を瞬時に治した。
「おおー。さすがですね」
治った体を確かめるように、ムダイは手を握ったり開いたりしている。
杖なく人に使えばその存在を消滅しかねないノムルの魔力だが、超人ムダイは無事だったようだ。
「いいから、さっさと読め」
ぐいっと、ムダイの顔にカードが押し付けられる。
その無体な行動を気にすることもなく、ムダイはカードを指で挟んで受け取った。
「あー……。これって、ユキノちゃんに落ちてきたカードですよね?」
「ああ。さっさと読め」
魔王様はご機嫌斜めだ。
ムダイはぽりぽりと頬を掻くと、
「『ちぇー。』ですね」
と、書かれている文字を読んだ。
沈黙が落ちた。
「どういう状況だったんですか?」
たまらずムダイは、怪訝な表情を浮かべて問いかける。
カードをむしるように奪い返して確認したノムルは、それをぽいっと投げて空間魔法にしまうと、次のカードを取り出す。
再び受け取ってカードを読んだムダイは、眉を寄せた。
書かれている内容は、彼も予想していた魔王になるための選択肢。
カードを見つめていたムダイは、思わず想像してしまう。強敵を退け、辿り着いた魔王の部屋。待っていたのは、
『魔王の雪乃です。よろしくお願いします』
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