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番外編
『種族:悪役令嬢』になりました。3
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「雪乃嬢、何をしている?」
「え?」
咎めるような厳しい声に、雪乃は驚いて振り返った。
怒りに目を吊り上げたムダイ王子が、雪乃の視界に映る。
「あ、いえ、これは……」
どう説明したものかと、雪乃は口ごもる。その挙動不審な態度に、ムダイは何が起こったのかを察した。
「なんてひどい事を! いくらマンドラゴラ嬢が庶民出身の男爵家令嬢だとしても、こんなことをするなんて。可愛そうに、マンドラゴラ嬢は泣いているではないか」
「えーっと」
教室中が、冷めた視線をムダイ王子に向ける。
破ったのはマンドラゴラであり、泣いているのではなく遊びつかれて眠っているだけだ。そう指摘したかったが、相手は王子だ。下手に口を挟むとどんなとばっちりが飛んでくるかわからない。
全員、見て見ぬふりを貫いた。
「あの、誤解です」
「言い訳をするのか?」
鋭く睨まれて、雪乃は言葉を閉ざす。
最初に教科書を破ったのは雪乃だ。ほんのちょっぴりとはいえ、破ったことに変わりは無い。マンドラゴラだからこんな結果になったが、普通の令嬢ならば、傷つけてしまったかもしれないだろう。
雪乃は俯いた。
「二度とマンドラゴラ嬢に近付くな」
ムダイ王子は汚い者でも見るような目で、雪乃を見下ろした。
ぎゅっとドレスを握り締めた雪乃は、それ以上は何も言えず、自分の席へと戻ってく。
続いてもたらされた指令は、『ヒロインを階段から突き落としてください。達成できない場合、仲間が一人消えます』。
さすがに怪我をさせかねないと、雪乃は青ざめる。
階段を上っていたマンドラゴラを呼び止め、一番下の段まで移動したところで、雪乃は震える枝を思いきって突き出した。
「ごめんなさい! マンドラゴラさん!」
視界を閉じ、悲痛な声で謝罪する。
「わー……」
マンドラゴラの体が傾き、階段から根が離れる。
「あっ」
雪乃は視界が真っ白になり、葉が一枚ひらひらと落ちた。
マンドラゴラはくるりと一回転捻りの後、着地した。ぴしりと根を逸らしてわずかにも動かない。
だがすぐに、ピンクの葉を萎らせた。
「ご、ごめんなさい。怪我はしませんでしたか? すぐに保健室に」
と雪乃はマンドラゴラを枝に乗せようとしたのだが、マンドラゴラは向きを変えて階段を上っていく。最上段も上りきり、踊り場に到達すると、そのまま壁際までとことこと向かっていき、くるりと踵を返した。
そして、
「わーっ!」
猛ダッシュで走ると、階段の縁でジャンプした。
くるくるくるりんくるくるりんと、マンドラゴラはもはや何回転だかわからないほどの回転を加え、捻りも加え、それは見るものを圧巻する演技を披露した。
音もなく着地したマンドラゴラの二股の根は、まったくぶれない。そのまま根を伸ばし、びしっと身体をそらして根をきらりーんと輝かせた。
居合わせた生徒達から、拍手と歓声が上がる。
「す、凄いです! マンドラゴラさん!」
雪乃も両小枝を握り締め、感動に声を上げた。
照れるように根を捩るマンドラゴラ嬢。そこに、ムダイ王子がやってきた。
「なんて女だ、雪乃嬢! マンドラゴラ嬢を階段から突き落とすなんて! 君のような女を妃にするわけにはいかない。婚約は破棄させてもらう!」
マンドラゴラの前に立ったムダイ王子は、切れ長の目を尖らせて、雪乃に向かって宣言した。
「そ、そんな……」
よろりと、雪乃はよろめき、誰かにぶつかった。
振り仰ぐと、そこにはカイが立っていた。
「調度いい。カイ、その女を拘束しろ。マンドラゴラ嬢への傷害罪だ」
左の口角を上げたムダイ王子が、カイへと命じる。
カイの手が動き、雪乃は顔を青ざめさせた。しかし、カイの手は雪乃の頭をぽんぽんと優しく叩いただけだった。
「何を言っている? その令嬢は自分から飛び下りていたぞ? 多くの生徒が目撃している」
その通りだとばかりに、廊下にいた生徒たちは大きく頷く。
「カイこそ何を言っているんだ? マンドラゴラ嬢は」
とムダイ王子が何やら言っているが、生徒たちの視線は階段の上へと向かっていた。一段一段駆け上っていくマンドラゴラが、踊り場へと到達し、その姿が消えていったと思えば、
「わー」
という声と共に、再びマンドラゴラの姿が現れた。
階段の縁を蹴ったマンドラゴラは、先ほどよりも高く跳んでいき、
「わーっ!」
「痛っ?!」
ムダイ王子の額に、見事なラ○ダーキックをお見舞いした。その美技に、生徒たちはほうっと感嘆の息を吐いて酔いしれる。
そんな中、呆然と立ちすくんでいた雪乃は、ひょいっと抱き上げられた。
「いらんのならもらっていく。婚約破棄の宣言は国王陛下に伝えておくから安心しろ」
「え?」
こうして雪乃は、おばかなムダイ王子との婚約を破棄されたのだった。
めでたしめでたし。
―――――――――――――――
ちなみに本物のヒロインはヴィヴィ。なぜかマンドラゴラに取って代わられてしまい、要所要所で叫ぶ予定でした。
どうしてこうなった?(笑)
↓後日談
「いくつか確認したいことがあるんだけど?」
三人の後ろには、暗黒龍を背負った魔王が、闇の中から目を光らせていた。
「なんでお前がユキノちゃんの婚約者なんだ?!」
「落ち着いてください! 俺が選んだわけじゃありませんって。不可抗力です!」
「ふざけんな! 俺の娘は誰にもやらーん!」
眩しい雷光に、雪乃の視界が白黒と点滅する。葉もびりびりと震えていた。
「え?」
咎めるような厳しい声に、雪乃は驚いて振り返った。
怒りに目を吊り上げたムダイ王子が、雪乃の視界に映る。
「あ、いえ、これは……」
どう説明したものかと、雪乃は口ごもる。その挙動不審な態度に、ムダイは何が起こったのかを察した。
「なんてひどい事を! いくらマンドラゴラ嬢が庶民出身の男爵家令嬢だとしても、こんなことをするなんて。可愛そうに、マンドラゴラ嬢は泣いているではないか」
「えーっと」
教室中が、冷めた視線をムダイ王子に向ける。
破ったのはマンドラゴラであり、泣いているのではなく遊びつかれて眠っているだけだ。そう指摘したかったが、相手は王子だ。下手に口を挟むとどんなとばっちりが飛んでくるかわからない。
全員、見て見ぬふりを貫いた。
「あの、誤解です」
「言い訳をするのか?」
鋭く睨まれて、雪乃は言葉を閉ざす。
最初に教科書を破ったのは雪乃だ。ほんのちょっぴりとはいえ、破ったことに変わりは無い。マンドラゴラだからこんな結果になったが、普通の令嬢ならば、傷つけてしまったかもしれないだろう。
雪乃は俯いた。
「二度とマンドラゴラ嬢に近付くな」
ムダイ王子は汚い者でも見るような目で、雪乃を見下ろした。
ぎゅっとドレスを握り締めた雪乃は、それ以上は何も言えず、自分の席へと戻ってく。
続いてもたらされた指令は、『ヒロインを階段から突き落としてください。達成できない場合、仲間が一人消えます』。
さすがに怪我をさせかねないと、雪乃は青ざめる。
階段を上っていたマンドラゴラを呼び止め、一番下の段まで移動したところで、雪乃は震える枝を思いきって突き出した。
「ごめんなさい! マンドラゴラさん!」
視界を閉じ、悲痛な声で謝罪する。
「わー……」
マンドラゴラの体が傾き、階段から根が離れる。
「あっ」
雪乃は視界が真っ白になり、葉が一枚ひらひらと落ちた。
マンドラゴラはくるりと一回転捻りの後、着地した。ぴしりと根を逸らしてわずかにも動かない。
だがすぐに、ピンクの葉を萎らせた。
「ご、ごめんなさい。怪我はしませんでしたか? すぐに保健室に」
と雪乃はマンドラゴラを枝に乗せようとしたのだが、マンドラゴラは向きを変えて階段を上っていく。最上段も上りきり、踊り場に到達すると、そのまま壁際までとことこと向かっていき、くるりと踵を返した。
そして、
「わーっ!」
猛ダッシュで走ると、階段の縁でジャンプした。
くるくるくるりんくるくるりんと、マンドラゴラはもはや何回転だかわからないほどの回転を加え、捻りも加え、それは見るものを圧巻する演技を披露した。
音もなく着地したマンドラゴラの二股の根は、まったくぶれない。そのまま根を伸ばし、びしっと身体をそらして根をきらりーんと輝かせた。
居合わせた生徒達から、拍手と歓声が上がる。
「す、凄いです! マンドラゴラさん!」
雪乃も両小枝を握り締め、感動に声を上げた。
照れるように根を捩るマンドラゴラ嬢。そこに、ムダイ王子がやってきた。
「なんて女だ、雪乃嬢! マンドラゴラ嬢を階段から突き落とすなんて! 君のような女を妃にするわけにはいかない。婚約は破棄させてもらう!」
マンドラゴラの前に立ったムダイ王子は、切れ長の目を尖らせて、雪乃に向かって宣言した。
「そ、そんな……」
よろりと、雪乃はよろめき、誰かにぶつかった。
振り仰ぐと、そこにはカイが立っていた。
「調度いい。カイ、その女を拘束しろ。マンドラゴラ嬢への傷害罪だ」
左の口角を上げたムダイ王子が、カイへと命じる。
カイの手が動き、雪乃は顔を青ざめさせた。しかし、カイの手は雪乃の頭をぽんぽんと優しく叩いただけだった。
「何を言っている? その令嬢は自分から飛び下りていたぞ? 多くの生徒が目撃している」
その通りだとばかりに、廊下にいた生徒たちは大きく頷く。
「カイこそ何を言っているんだ? マンドラゴラ嬢は」
とムダイ王子が何やら言っているが、生徒たちの視線は階段の上へと向かっていた。一段一段駆け上っていくマンドラゴラが、踊り場へと到達し、その姿が消えていったと思えば、
「わー」
という声と共に、再びマンドラゴラの姿が現れた。
階段の縁を蹴ったマンドラゴラは、先ほどよりも高く跳んでいき、
「わーっ!」
「痛っ?!」
ムダイ王子の額に、見事なラ○ダーキックをお見舞いした。その美技に、生徒たちはほうっと感嘆の息を吐いて酔いしれる。
そんな中、呆然と立ちすくんでいた雪乃は、ひょいっと抱き上げられた。
「いらんのならもらっていく。婚約破棄の宣言は国王陛下に伝えておくから安心しろ」
「え?」
こうして雪乃は、おばかなムダイ王子との婚約を破棄されたのだった。
めでたしめでたし。
―――――――――――――――
ちなみに本物のヒロインはヴィヴィ。なぜかマンドラゴラに取って代わられてしまい、要所要所で叫ぶ予定でした。
どうしてこうなった?(笑)
↓後日談
「いくつか確認したいことがあるんだけど?」
三人の後ろには、暗黒龍を背負った魔王が、闇の中から目を光らせていた。
「なんでお前がユキノちゃんの婚約者なんだ?!」
「落ち着いてください! 俺が選んだわけじゃありませんって。不可抗力です!」
「ふざけんな! 俺の娘は誰にもやらーん!」
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