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67.ガスバーナーほどの威力まで
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「やっぱ制御できてきてるな」
空いている手を見つめながら、軽く魔力を取り出し動かす。
今まではマッチに灯る火種ほどの魔力を出力しようとしただけで、火炎放射器のように噴出していたのに、ガスバーナーほどの威力まで抑えられていた。
それが制御できていると言えるのか、一般の魔法使いならば首を傾げるところだろうが。
握りつぶすようにして魔力を霧散させると、ノムルは足を前へと動かす。
「それにしても、この湿原の植物はどうなってるんだ? この魔物化の量は異常だろう? 多量の魔力貯まりがあるのか、それとも何か要因があるのか?」
魔力の多い土地は他にもあるが、植物が魔物化しているという例はほとんど聞かない。
「わー!」
密林を見回していると、マンドラゴラが戻ってきた。
主人であるユキノと違い、彼らは魔植物を恐れることなく元気いっぱいだ。
「今度は何を見つけてきたんだ?」
「わー!」
ぴょんこと飛び跳ねると、意気揚々と根を反らして葉を光らせるマンドラゴラ。どうやら何か珍しい薬草でも見つけてきたようだ。
言葉は分からないが、何を伝えたいのかは、ノムルにもだいたい理解できるようになってきた。
「わー!」
「はいはい」
ついて来いとばかりに駆けだしたマンドラゴラの後を、逆らうことなく追いかける。
「おとーさん」
「なんだ?」
「この世界の人間は、このような摩訶不思議な植物を、薬としてお飲みになっているのでしょうか?」
ノムルの背に額を乗せたまま、ユキノが問うてくる。
彼女は不気味な魔植物たちも薬草として認識しているのだから、言いたいことの意味は分かる。しかし、人間としては否定したい。
「考えてもみろ。これを煎じて飲みたいとか、ちょっと物好き過ぎないか?」
調度そこへ飛び出してきたカマーフラワーを切断しながら、聞き返してみる。
「ギギーッ!」
断末魔らしき悲鳴を上げて、カマーフラワーはご臨終となった。
「……。私には、ちょっと無理です。でも、人間は不思議なものを食べる種族ですから。ナマコとか」
「ナマコ? それも薬草か?」
「いえ、薬草ではなく……。あ」
淡々と話していたユキノが、急に口ごもる。
「えーっと」
どうやら人間に言ってはいけない内容だったのだろう。困ったように言いよどみだした。
やはり完全には信用されていないのかと、苛立ちを覚えてノムルの目が座る。
「えーっと……」
適当に誤魔化すか口を閉じてしまえばいいのに、ユキノは言葉を探し続けている。そして、
「えっと、人間が、ポポテプと呼ぶ生き物です」
と、ようやく言葉にした。
「あー……」
苛立ちが霧散すると同時に、力ない声がこぼれ落ちる。
ポポテプはススクの町でも見た、大きなイナゴのような体を主体とし、頭にはピンポン玉くらいの目玉が無数にあり、尾は長い触手が多数生えており、腹には……(以下略)とまあ、そんなゲテモノだ。
なぜ悩んでいたのかは疑問だったが、人間も一度聞いただけの言葉では、中々思い出せないことは多い。
同じ対象でも、国や地方によって呼び名が違うことはままある。ならば魔物と人間とで、固有名詞が違っても不思議ではないだろう。
「おとーさん?」
不思議そうに声を掛けられて、自分の顔がしかめっ面になっていることに気付く。
「あー、いや、うん。大丈夫、なんだけど……。そうだな。あれを美味いとか言って食う奴もいるからな。てか、あんなの食う奴等は、頭おかしいだろ?」
「ふみゃっ?!」
あんな気味の悪い生き物を嬉々として食す人間が、ノムルには信じられない。アレが人間の食べ物だなどと、ノムルは断固として認める気はない。
最後の一言は、まるで魔王のようにおどろおどろしいオーラがこもっていたのだが、ノムル自身は気付かなかった。
だからなぜ樹人の幼木が震えているのか、周囲を見回して魔植物の気配がないことを確かめると、首を傾げたのだった。
空いている手を見つめながら、軽く魔力を取り出し動かす。
今まではマッチに灯る火種ほどの魔力を出力しようとしただけで、火炎放射器のように噴出していたのに、ガスバーナーほどの威力まで抑えられていた。
それが制御できていると言えるのか、一般の魔法使いならば首を傾げるところだろうが。
握りつぶすようにして魔力を霧散させると、ノムルは足を前へと動かす。
「それにしても、この湿原の植物はどうなってるんだ? この魔物化の量は異常だろう? 多量の魔力貯まりがあるのか、それとも何か要因があるのか?」
魔力の多い土地は他にもあるが、植物が魔物化しているという例はほとんど聞かない。
「わー!」
密林を見回していると、マンドラゴラが戻ってきた。
主人であるユキノと違い、彼らは魔植物を恐れることなく元気いっぱいだ。
「今度は何を見つけてきたんだ?」
「わー!」
ぴょんこと飛び跳ねると、意気揚々と根を反らして葉を光らせるマンドラゴラ。どうやら何か珍しい薬草でも見つけてきたようだ。
言葉は分からないが、何を伝えたいのかは、ノムルにもだいたい理解できるようになってきた。
「わー!」
「はいはい」
ついて来いとばかりに駆けだしたマンドラゴラの後を、逆らうことなく追いかける。
「おとーさん」
「なんだ?」
「この世界の人間は、このような摩訶不思議な植物を、薬としてお飲みになっているのでしょうか?」
ノムルの背に額を乗せたまま、ユキノが問うてくる。
彼女は不気味な魔植物たちも薬草として認識しているのだから、言いたいことの意味は分かる。しかし、人間としては否定したい。
「考えてもみろ。これを煎じて飲みたいとか、ちょっと物好き過ぎないか?」
調度そこへ飛び出してきたカマーフラワーを切断しながら、聞き返してみる。
「ギギーッ!」
断末魔らしき悲鳴を上げて、カマーフラワーはご臨終となった。
「……。私には、ちょっと無理です。でも、人間は不思議なものを食べる種族ですから。ナマコとか」
「ナマコ? それも薬草か?」
「いえ、薬草ではなく……。あ」
淡々と話していたユキノが、急に口ごもる。
「えーっと」
どうやら人間に言ってはいけない内容だったのだろう。困ったように言いよどみだした。
やはり完全には信用されていないのかと、苛立ちを覚えてノムルの目が座る。
「えーっと……」
適当に誤魔化すか口を閉じてしまえばいいのに、ユキノは言葉を探し続けている。そして、
「えっと、人間が、ポポテプと呼ぶ生き物です」
と、ようやく言葉にした。
「あー……」
苛立ちが霧散すると同時に、力ない声がこぼれ落ちる。
ポポテプはススクの町でも見た、大きなイナゴのような体を主体とし、頭にはピンポン玉くらいの目玉が無数にあり、尾は長い触手が多数生えており、腹には……(以下略)とまあ、そんなゲテモノだ。
なぜ悩んでいたのかは疑問だったが、人間も一度聞いただけの言葉では、中々思い出せないことは多い。
同じ対象でも、国や地方によって呼び名が違うことはままある。ならば魔物と人間とで、固有名詞が違っても不思議ではないだろう。
「おとーさん?」
不思議そうに声を掛けられて、自分の顔がしかめっ面になっていることに気付く。
「あー、いや、うん。大丈夫、なんだけど……。そうだな。あれを美味いとか言って食う奴もいるからな。てか、あんなの食う奴等は、頭おかしいだろ?」
「ふみゃっ?!」
あんな気味の悪い生き物を嬉々として食す人間が、ノムルには信じられない。アレが人間の食べ物だなどと、ノムルは断固として認める気はない。
最後の一言は、まるで魔王のようにおどろおどろしいオーラがこもっていたのだが、ノムル自身は気付かなかった。
だからなぜ樹人の幼木が震えているのか、周囲を見回して魔植物の気配がないことを確かめると、首を傾げたのだった。
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