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63.莫迦にするな!
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「莫迦にするな! 俺たちは二人でランクを上げたんだ!」
「そうだ! 二人ならCランクでもやっていけるだろうって、ギルドマスターが結婚祝いに上げてくれたんだ!」
怯えながらもザムが声を荒げれば、シャンも青ざめた顔で虚勢を張る。
度胸だけは大したものだと、冷めた感心をするノムルだが、自分の立場を理解していないのは減点だと呆れを滲ませる。
「二人なら、ねー。結婚祝い、ねー」
冒険者のランクは個人のものだ。徒党を組まなければ規定に達しない者に、上位のランクを名乗る資格はない。ましてや、ご祝儀代わりに与えてよいものではないだろう。
そんなことがまかり通ってしまえば、ランクに対する信頼は地に落ちてしまう。それは依頼主からの不信感につながり、ひいては冒険者全体の死活問題に関わる。
厄介なことに巻き込まれたと嘆息するノムルの耳が、森の奥から近付いてくる不快音を捉えた。
「ちょうどいいや。二人を外に放してくれる?」
「分かった」
イゾーはノムルに問うこともせず、左右の腕でそれぞれ拘束していたシャンとザムを、そのまま広場の先に引き摺っていき、放り捨てるようにして結界の外に追い出した。
シャンとザムは拘束が解けたことにほっとした表情を見せ、握られていた腕をさする。
そんな隙だらけの彼らに呆れながら、ノムルは続いて指示を出す。
「今から現れる魔物を、二人で倒してくれる? それができれば、君たちをCランクと認めてあげるよ」
「はあ!?」
「何を言って……!?」
文句を言おうとした二人だが、異音に気付いてノムルから森へと体を向けた。ブーンっと響く重低音を受けて、シャンとザムは耳を押さえて顔をしかめる。
「なんだ? この音は」
音の正体はすぐに現れた。茂みから、人の胴体ほどの大きさをした体を持つ、魔巨蚊が飛び出してきたのだ。
透明な羽を忙しく動かして飛翔すると同時に発生する音は、耳にした人間に頭痛や眩暈を生じさせる。そうして弱った人間を、先端が尖った槍に似た口で刺し貫くのが、魔巨蚊の攻撃パターンである。
Cランクになり立ての冒険者が一人ならば苦戦することもあるけれど、二人もいれば、確実に討伐できるレベルの魔物だ。
ノムルはシャンとザムを意識の外に捨てると、商人たちの下に向かう。
「悪いねー。面倒に巻き込んで。でもいつまでも騒がれるより、手っ取り早く終わらせたほうがいいだろう?」
商人たちは引きつった顔でノムルを見ていた。
彼らからすれば、たとえランクの低い魔物であっても、危険な魔物であることに変わりない。その眼前に、問題を起こしたとはいえ、人間を放り出すという所業を平然としてのけるノムルは、異様な存在に映ったのだろう。
ノムルを軽視していた金属鎧の三人は、自分たちに飛び火しないよう、数歩身を引いた。
「そうだ! 二人ならCランクでもやっていけるだろうって、ギルドマスターが結婚祝いに上げてくれたんだ!」
怯えながらもザムが声を荒げれば、シャンも青ざめた顔で虚勢を張る。
度胸だけは大したものだと、冷めた感心をするノムルだが、自分の立場を理解していないのは減点だと呆れを滲ませる。
「二人なら、ねー。結婚祝い、ねー」
冒険者のランクは個人のものだ。徒党を組まなければ規定に達しない者に、上位のランクを名乗る資格はない。ましてや、ご祝儀代わりに与えてよいものではないだろう。
そんなことがまかり通ってしまえば、ランクに対する信頼は地に落ちてしまう。それは依頼主からの不信感につながり、ひいては冒険者全体の死活問題に関わる。
厄介なことに巻き込まれたと嘆息するノムルの耳が、森の奥から近付いてくる不快音を捉えた。
「ちょうどいいや。二人を外に放してくれる?」
「分かった」
イゾーはノムルに問うこともせず、左右の腕でそれぞれ拘束していたシャンとザムを、そのまま広場の先に引き摺っていき、放り捨てるようにして結界の外に追い出した。
シャンとザムは拘束が解けたことにほっとした表情を見せ、握られていた腕をさする。
そんな隙だらけの彼らに呆れながら、ノムルは続いて指示を出す。
「今から現れる魔物を、二人で倒してくれる? それができれば、君たちをCランクと認めてあげるよ」
「はあ!?」
「何を言って……!?」
文句を言おうとした二人だが、異音に気付いてノムルから森へと体を向けた。ブーンっと響く重低音を受けて、シャンとザムは耳を押さえて顔をしかめる。
「なんだ? この音は」
音の正体はすぐに現れた。茂みから、人の胴体ほどの大きさをした体を持つ、魔巨蚊が飛び出してきたのだ。
透明な羽を忙しく動かして飛翔すると同時に発生する音は、耳にした人間に頭痛や眩暈を生じさせる。そうして弱った人間を、先端が尖った槍に似た口で刺し貫くのが、魔巨蚊の攻撃パターンである。
Cランクになり立ての冒険者が一人ならば苦戦することもあるけれど、二人もいれば、確実に討伐できるレベルの魔物だ。
ノムルはシャンとザムを意識の外に捨てると、商人たちの下に向かう。
「悪いねー。面倒に巻き込んで。でもいつまでも騒がれるより、手っ取り早く終わらせたほうがいいだろう?」
商人たちは引きつった顔でノムルを見ていた。
彼らからすれば、たとえランクの低い魔物であっても、危険な魔物であることに変わりない。その眼前に、問題を起こしたとはいえ、人間を放り出すという所業を平然としてのけるノムルは、異様な存在に映ったのだろう。
ノムルを軽視していた金属鎧の三人は、自分たちに飛び火しないよう、数歩身を引いた。
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