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99.カマーフラワーだねー
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「カマーフラワーだねー。あの涎、触れると解けるから気を付けてね?」
「え? あれがカマーフラワーですか?」
「そーだよー。追い払うねー?」
「いえ、カマーフラワーなら、薬草ですよね? 吸収しなくては……したくないですけど」
「は?」
カマーフラワーを追い払おうと、ユキノの前に出たノムルだったが、彼女の台詞を聞いて振り返る。
「あれが、薬草?」
「そのはずですが、違うのですか?」
「え? アレは薬草じゃないでしょ?」
ノムルとユキノの視線はマンドラゴラに向かう。
「わー! わー!」
何を言っているのかは分からないが、声音や動きから、どうやら薬草だと言いたいらしい。
「引っこ抜けばいいのかな?」
「ソウデスネ。お願いします」
「わー!」
これもユキノの樹冠から生えるようになるのだろうかと、ノムルは杖を手にしながら、隣にいる樹人の幼木を見下ろしてしまう。
彼女のほうが、どう見たって小さい。樹冠から生やしたら、カマーフラワーの重みに耐えきれず、倒れて起き上がれないだろう。
脳裏に浮かんだ映像を振り払い、ノムルは杖を撫でた。風が発生し、カマーフラワーを浮かびあげる。
「ギ、ギギー」
錆びた鉄同士が擦れ合う音に似た声を上げ、カマーフラワーが抵抗を示した。しかしノムルの魔法に敵うはずもなく、白い髭根を地面から浮き上がらせ、ユキノの前に浮かぶ。
「どーぞー?」
「うう……。取り込みたくありません」
ユキノは恐る恐る枝を伸ばし、小枝の先で触れる。触れたとたん、カマーフラワーは姿を変えた。カミツレに似た、可憐な花に。
「小さくなったねえ」
「よかったです」
ノムルもユキノも、カマーフラワーだったはずの植物をしげしげと見つめてしまう。二人の視線を受けながら、可憐なカマーフラワーは光の粒子となって、ユキノの幹に取り込まれていった。
その直後、空から一枚のカードが降ってくる。
ノムルは反射的に空を見上げた。しかし植物が生い茂り、その隙間から青空が覗いているだけだ。カードを落とした主の姿も気配もない。
そんな妖しいカードに小枝を伸ばそうとしたユキノを、ノムルは慌てて止める。
「得体の知れないものに、不用意に触れないほうがいい」
「大丈夫ですよ。いつものことですから」
「いつものこと?」
眉をひそめつつ、ノムルはユキノが拾ったカードを覗き込む。
カードは濡れているのに、文字は滲みもしていない。それだけで、何らかの魔法が掛けられていると分かる。
しかしそれ以上に問題なのは、書かれている文字だ。古代文字まで学んでいるノムルでさえ記憶にない、奇妙な文字だった。
「え? あれがカマーフラワーですか?」
「そーだよー。追い払うねー?」
「いえ、カマーフラワーなら、薬草ですよね? 吸収しなくては……したくないですけど」
「は?」
カマーフラワーを追い払おうと、ユキノの前に出たノムルだったが、彼女の台詞を聞いて振り返る。
「あれが、薬草?」
「そのはずですが、違うのですか?」
「え? アレは薬草じゃないでしょ?」
ノムルとユキノの視線はマンドラゴラに向かう。
「わー! わー!」
何を言っているのかは分からないが、声音や動きから、どうやら薬草だと言いたいらしい。
「引っこ抜けばいいのかな?」
「ソウデスネ。お願いします」
「わー!」
これもユキノの樹冠から生えるようになるのだろうかと、ノムルは杖を手にしながら、隣にいる樹人の幼木を見下ろしてしまう。
彼女のほうが、どう見たって小さい。樹冠から生やしたら、カマーフラワーの重みに耐えきれず、倒れて起き上がれないだろう。
脳裏に浮かんだ映像を振り払い、ノムルは杖を撫でた。風が発生し、カマーフラワーを浮かびあげる。
「ギ、ギギー」
錆びた鉄同士が擦れ合う音に似た声を上げ、カマーフラワーが抵抗を示した。しかしノムルの魔法に敵うはずもなく、白い髭根を地面から浮き上がらせ、ユキノの前に浮かぶ。
「どーぞー?」
「うう……。取り込みたくありません」
ユキノは恐る恐る枝を伸ばし、小枝の先で触れる。触れたとたん、カマーフラワーは姿を変えた。カミツレに似た、可憐な花に。
「小さくなったねえ」
「よかったです」
ノムルもユキノも、カマーフラワーだったはずの植物をしげしげと見つめてしまう。二人の視線を受けながら、可憐なカマーフラワーは光の粒子となって、ユキノの幹に取り込まれていった。
その直後、空から一枚のカードが降ってくる。
ノムルは反射的に空を見上げた。しかし植物が生い茂り、その隙間から青空が覗いているだけだ。カードを落とした主の姿も気配もない。
そんな妖しいカードに小枝を伸ばそうとしたユキノを、ノムルは慌てて止める。
「得体の知れないものに、不用意に触れないほうがいい」
「大丈夫ですよ。いつものことですから」
「いつものこと?」
眉をひそめつつ、ノムルはユキノが拾ったカードを覗き込む。
カードは濡れているのに、文字は滲みもしていない。それだけで、何らかの魔法が掛けられていると分かる。
しかしそれ以上に問題なのは、書かれている文字だ。古代文字まで学んでいるノムルでさえ記憶にない、奇妙な文字だった。
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