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101.人間たちは、罪もない者たちを
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人間たちは、罪もない者たちを、棲家まで押し入って殺してきたのだ。彼らが知識を持ち、文字を持つのなら、代々語り継がれていても不思議ではない。
人間たちにされた行いを、人間たちの危険性を――。
ノムルの頭の中はぐちゃぐちゃだ。けれど今は自己否定に沈んでいる場合ではない。無理矢理に思考を斬り捨てて、ユキノに意識を戻す。
「それで、なんて書いてあったの?」
「『カマーフラワー(赤)。レシピを取得するには、残り十九株必要です』です」
レシピというのは、調薬のことだろう。料理も混じっているのかもしれないけれど。
「一株取り込めば得られるわけじゃないのか。不思議な能力だなあ」
次々と出てくる謎に、ノムルの脳はそろそろ容量を超過しそうだった。心なしか、頭痛や眩暈を覚える。
「(赤)っていうことは、他の色も採取しないといけないってことだよね? 何色あるのかなあ?」
「え?」
「ん?」
ぽつりとノムルがこぼした指摘を受けて、ユキノの葉が萎れた。
「ノムルさんがいてくれて、良かったです」
心底から湧き出てきたような声だ。ユキノがカマーフラワーと戦って勝てるはずがない。ノムルがいなければ、一株だって取り込めなかっただろう。
「あっはっはー。役に立てたみたいだねえ」
空笑いを響かせて、ノムルはユキノと共に湿原を行く。
「わー!」
「お、今度は……」
マンドラゴラの声を聞いて顔を向けたノムルとユキノは、凍り付いた。
「ユキノちゃん?」
「なんでしょう?」
「アレも薬草?」
「わー!」
「ソウミタイデスネ」
二人の視線の先には、巨大化した釣り餌を団子状態にしたみたいな物体が、はみ出た何かをにょろりんと揺らし、マンドラゴラを追いかけていた。
揺れるたび、にょろりんっと揺れていたものが、びったんびったんと激しく揺れる。
形だけでも目に焼き付いてきそうで見たくないのに、緑に赤い斑点が浮かんでいて、中々趣味のよろしい色をしてなさる。
「ギョーッ!」
「わー!」
マンドラゴラがノムルとユキノに駆け寄ってくるせいで、得体の知れない物体もどんどん近付いてくる。
「いやあああーっ!?」
解凍されたユキノが悲鳴を上げたと思うと、ノムルのローブにしがみ付いてきた。
ノムルもちょっと限界だ。というより、アレをユキノに吸収させるのは、遠慮したい。
「ごめん、ユキノちゃん。あれはいったん飛ばすよ?」
「お願いしますううーっ!」
「わー?」
不満を声に出すマンドラゴラに構ってなどいられない。ノムルは風を巻き起こし、その物体を吹き飛ばした。
「ギョーッ!?」
「わー……」
ソレが見えなくなったところで、ノムルはユキノの樹冠に手を乗せる。
人間たちにされた行いを、人間たちの危険性を――。
ノムルの頭の中はぐちゃぐちゃだ。けれど今は自己否定に沈んでいる場合ではない。無理矢理に思考を斬り捨てて、ユキノに意識を戻す。
「それで、なんて書いてあったの?」
「『カマーフラワー(赤)。レシピを取得するには、残り十九株必要です』です」
レシピというのは、調薬のことだろう。料理も混じっているのかもしれないけれど。
「一株取り込めば得られるわけじゃないのか。不思議な能力だなあ」
次々と出てくる謎に、ノムルの脳はそろそろ容量を超過しそうだった。心なしか、頭痛や眩暈を覚える。
「(赤)っていうことは、他の色も採取しないといけないってことだよね? 何色あるのかなあ?」
「え?」
「ん?」
ぽつりとノムルがこぼした指摘を受けて、ユキノの葉が萎れた。
「ノムルさんがいてくれて、良かったです」
心底から湧き出てきたような声だ。ユキノがカマーフラワーと戦って勝てるはずがない。ノムルがいなければ、一株だって取り込めなかっただろう。
「あっはっはー。役に立てたみたいだねえ」
空笑いを響かせて、ノムルはユキノと共に湿原を行く。
「わー!」
「お、今度は……」
マンドラゴラの声を聞いて顔を向けたノムルとユキノは、凍り付いた。
「ユキノちゃん?」
「なんでしょう?」
「アレも薬草?」
「わー!」
「ソウミタイデスネ」
二人の視線の先には、巨大化した釣り餌を団子状態にしたみたいな物体が、はみ出た何かをにょろりんと揺らし、マンドラゴラを追いかけていた。
揺れるたび、にょろりんっと揺れていたものが、びったんびったんと激しく揺れる。
形だけでも目に焼き付いてきそうで見たくないのに、緑に赤い斑点が浮かんでいて、中々趣味のよろしい色をしてなさる。
「ギョーッ!」
「わー!」
マンドラゴラがノムルとユキノに駆け寄ってくるせいで、得体の知れない物体もどんどん近付いてくる。
「いやあああーっ!?」
解凍されたユキノが悲鳴を上げたと思うと、ノムルのローブにしがみ付いてきた。
ノムルもちょっと限界だ。というより、アレをユキノに吸収させるのは、遠慮したい。
「ごめん、ユキノちゃん。あれはいったん飛ばすよ?」
「お願いしますううーっ!」
「わー?」
不満を声に出すマンドラゴラに構ってなどいられない。ノムルは風を巻き起こし、その物体を吹き飛ばした。
「ギョーッ!?」
「わー……」
ソレが見えなくなったところで、ノムルはユキノの樹冠に手を乗せる。
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