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大陸の魔鳥
シルバーナイフ作戦 後編
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異変は、警報ではなく沈黙として現れた。
「……妙だな」
オウルアイの声が、わずかに硬くなる。
「予定していたレーダーサイト、いくつかが沈黙したままだ。壊した覚えはないな?」
「こちらクラウ1。攻撃はしていない」
フーシェンは即答した。
敵防空網が沈黙しているのは、こちらにとって都合がいいはずだった。
だが、空戦で生き残ってきた者ほど、その状況を歓迎しない。
「敵が目を閉じているのか、それとも――」
ブリュンヒルデの言葉は、続かなかった。
「反応確認!」
スナイパーが叫ぶ。
「北西、高度一万!高速接近!」
レーダーに、複数の反応が一気に浮かび上がる。
散開していた点が、無駄のない動きで収束していく。
「迎撃だ。数は……八、いや十以上 敵機種はMiG-31」
オウルアイが即座に判断する。
「名のある部隊だが、レギンレイヴではない。
識別コード、ハーギア連邦空軍第七戦術飛行群」
フーシェンは短く息を吐いた。
「予想通りだ。連中、ここを嗅ぎつけたな」
敵編隊は、整った隊形を維持したまま距離を詰めてくる。
無駄な機動はない。過不足のない速度。
だが、どこか機械的だった。
「教本通り、って感じだな」
スウィンダラーが言う。
「悪くはない。でも……」
リカは、敵の進路を見つめながら言葉を継いだ。
「私たちを止めるには、少し遅い」
フーシェンは即断した。
「クラウ隊、作戦続行。目標を優先する。迎撃は必要最小限だ」
「了解」
司令部は、すでに眼下にあった。
市街地の外れ、低い丘に埋め込まれたコンクリートの塊。
偽装は巧妙だったが、完全ではない。
「クラウ2、クラウ3、対空砲を叩け。
クラウ4、5、司令部直上から入る」
「了解!」
機体が散開する。
敵迎撃機が追いすがるが、間に合わない。
リカは高度を下げ、一気に突入した。
対空砲火が上がる。
だが照準は甘い。敵は混乱している。
「投下!」
ブリュンヒルデの声とほぼ同時に、リカも兵装を切り離した。
精密誘導弾が、吸い込まれるように司令部施設へ落ちていく。
次の瞬間、地面が盛り上がった。
鈍い衝撃。
続いて、内部から噴き出すような爆炎。
「命中確認。司令部機能、停止」
オウルアイの声が、わずかに上ずる。
「通信ノードも沈黙した。敵の指揮系統が――」
言葉の途中で、敵迎撃機が強引に割り込んできた。
「近い!」
スナイパーが叫ぶ。
空戦は短く、激しかった。
敵は技量がある。だが、状況が悪すぎた。
クラウ隊はすでに目的を果たしている。
敵は、守るものを失っていた。
「離脱する!」
フーシェンの指示で、全機が一斉に反転する。
敵は追ってくるが、統制が取れていない。
司令部を失った空は、目に見えて鈍くなっていた。
「……逃げ切れるな」
ブリュンヒルデが言う。
「ええ」
リカは答えた。
「でも、これで終わりじゃない」
その予感は、正しかった。
ヒュースポイントへの帰投途中、オウルアイから短い通信が入る。
「前線各部隊より報告。敵航空活動、広範囲で停止。上陸部隊、前進開始」
続けて、別の声が割り込む。
「こちら第三機甲旅団。空が静かだ……クラウ隊がやったのか?」
誰かが答える前に、別の通信が重なる。
「隕石部隊のおかげだ。道が開いた」
その呼び名に、リカは一瞬だけ目を伏せた。
「……隕石、ね」
「悪くないでしょ」
ブリュンヒルデが言う。
「落ちた場所、全部ひっくり返してきたんだから」
ヒュースポイントの滑走路に降り立った時、迎えは予想以上だった。
整備員、参謀、他部隊の搭乗員。
誰も拍手はしない。ただ、道が自然と開いていた。
「クラウ隊」
誰かがそう呼ぶ。
「隕石部隊」
その言葉が、否定されることはなかった。
フーシェンは機体を降り、部下たちを一度だけ見回した。
「……よく帰ってきた」
それだけだった。
だがその夜、前線の通信網には、確かに刻まれた。
――敵中枢を叩いたのは、クラウ隊。
――隕石部隊が、戦線を動かした。
英雄譚としてではない。
戦争の現実として。
そしてそれは、次に来るより大きな戦いへの、避けられない前触れでもあった。
「……妙だな」
オウルアイの声が、わずかに硬くなる。
「予定していたレーダーサイト、いくつかが沈黙したままだ。壊した覚えはないな?」
「こちらクラウ1。攻撃はしていない」
フーシェンは即答した。
敵防空網が沈黙しているのは、こちらにとって都合がいいはずだった。
だが、空戦で生き残ってきた者ほど、その状況を歓迎しない。
「敵が目を閉じているのか、それとも――」
ブリュンヒルデの言葉は、続かなかった。
「反応確認!」
スナイパーが叫ぶ。
「北西、高度一万!高速接近!」
レーダーに、複数の反応が一気に浮かび上がる。
散開していた点が、無駄のない動きで収束していく。
「迎撃だ。数は……八、いや十以上 敵機種はMiG-31」
オウルアイが即座に判断する。
「名のある部隊だが、レギンレイヴではない。
識別コード、ハーギア連邦空軍第七戦術飛行群」
フーシェンは短く息を吐いた。
「予想通りだ。連中、ここを嗅ぎつけたな」
敵編隊は、整った隊形を維持したまま距離を詰めてくる。
無駄な機動はない。過不足のない速度。
だが、どこか機械的だった。
「教本通り、って感じだな」
スウィンダラーが言う。
「悪くはない。でも……」
リカは、敵の進路を見つめながら言葉を継いだ。
「私たちを止めるには、少し遅い」
フーシェンは即断した。
「クラウ隊、作戦続行。目標を優先する。迎撃は必要最小限だ」
「了解」
司令部は、すでに眼下にあった。
市街地の外れ、低い丘に埋め込まれたコンクリートの塊。
偽装は巧妙だったが、完全ではない。
「クラウ2、クラウ3、対空砲を叩け。
クラウ4、5、司令部直上から入る」
「了解!」
機体が散開する。
敵迎撃機が追いすがるが、間に合わない。
リカは高度を下げ、一気に突入した。
対空砲火が上がる。
だが照準は甘い。敵は混乱している。
「投下!」
ブリュンヒルデの声とほぼ同時に、リカも兵装を切り離した。
精密誘導弾が、吸い込まれるように司令部施設へ落ちていく。
次の瞬間、地面が盛り上がった。
鈍い衝撃。
続いて、内部から噴き出すような爆炎。
「命中確認。司令部機能、停止」
オウルアイの声が、わずかに上ずる。
「通信ノードも沈黙した。敵の指揮系統が――」
言葉の途中で、敵迎撃機が強引に割り込んできた。
「近い!」
スナイパーが叫ぶ。
空戦は短く、激しかった。
敵は技量がある。だが、状況が悪すぎた。
クラウ隊はすでに目的を果たしている。
敵は、守るものを失っていた。
「離脱する!」
フーシェンの指示で、全機が一斉に反転する。
敵は追ってくるが、統制が取れていない。
司令部を失った空は、目に見えて鈍くなっていた。
「……逃げ切れるな」
ブリュンヒルデが言う。
「ええ」
リカは答えた。
「でも、これで終わりじゃない」
その予感は、正しかった。
ヒュースポイントへの帰投途中、オウルアイから短い通信が入る。
「前線各部隊より報告。敵航空活動、広範囲で停止。上陸部隊、前進開始」
続けて、別の声が割り込む。
「こちら第三機甲旅団。空が静かだ……クラウ隊がやったのか?」
誰かが答える前に、別の通信が重なる。
「隕石部隊のおかげだ。道が開いた」
その呼び名に、リカは一瞬だけ目を伏せた。
「……隕石、ね」
「悪くないでしょ」
ブリュンヒルデが言う。
「落ちた場所、全部ひっくり返してきたんだから」
ヒュースポイントの滑走路に降り立った時、迎えは予想以上だった。
整備員、参謀、他部隊の搭乗員。
誰も拍手はしない。ただ、道が自然と開いていた。
「クラウ隊」
誰かがそう呼ぶ。
「隕石部隊」
その言葉が、否定されることはなかった。
フーシェンは機体を降り、部下たちを一度だけ見回した。
「……よく帰ってきた」
それだけだった。
だがその夜、前線の通信網には、確かに刻まれた。
――敵中枢を叩いたのは、クラウ隊。
――隕石部隊が、戦線を動かした。
英雄譚としてではない。
戦争の現実として。
そしてそれは、次に来るより大きな戦いへの、避けられない前触れでもあった。
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