ACES IN SKIES

みにみ

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大陸の魔鳥

名を得た空、削られる地

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青を基調とした新しいエンブレムは、整備庫の壁に投影されていた。
隕石が大気を裂きながら落ちていく軌跡。
その中心で、五本の剣が星型に交わっている。
刃は光を帯び、わずかに角度を違えながらも、同じ方向を指していた。

クラウ・ソラス

隊の名の由来となった、五振りの剣。
「……意外と悪くねぇな」
最初に声を出したのはスウィンダラーだった。
腕を組み、少し距離を取って眺めている。
「もっと軍章然としたやつかと思ってたけどさ」

「なんだかんだ、あたしたちらしいかもね」
リカはそう言って、小さく笑った。
派手すぎず、だが意味だけははっきりしている。
落ちる隕石と、それに重なる剣。
破壊と意志、その両方を隠さない。
「……この五本の剣のうち」
ぽつりと、スウィンダラーが続けた。

「何本が、戦争集結まで残ってるかな」

一瞬、空気が止まる。
「ちょっと、スウィンダラー!」
ブリュンヒルデが即座に声を荒げた。
「そういうの、気味悪いって!」

「そーだそーだー」
軽い調子でスナイパーが続く。
だが、その声にもいつもの冗談めいた余裕はなかった。
「……やれやれ」
最後にフーシェンが苦笑いする。
「縁起でもないことを言うな。
 このマークはな、全機が揃っているから意味がある」

誰も返事はしなかった。
否定もしなかった。
ただ、五本の剣を、それぞれが違う角度から見つめていた。


その頃、地上では空とはまったく別の戦争が進んでいた。
FCF連合軍の上陸部隊は、計画通り前進していた。
補給線も確保され、装甲部隊も歩兵も、連携は保たれている。
だが、ある境界線を越えた瞬間、様相が変わった。
「……射程に入った」
誰かがそう呟いた。
直後、空が鳴った。
雷ではない。
砲声でもない。
もっと短く、乾いた衝撃。
そして、遅れて地面が震えた。
ハーギア軍のDTS――戦略対地打撃システム。
その射程に踏み込んだ部隊の上空から、見えない“雨”が降り注いだ。
着弾の直前、空気が歪む。
次の瞬間、地表全体が押し潰されるような衝撃に包まれる。
特殊対地砲弾。
爆発は一瞬だが、その前後で生じる圧力の変化が、周囲を無差別に破壊する。
「伏せろ!」
叫びは、衝撃に掻き消された。
土嚢も、車両の装甲も、完全な盾にはならない。
直接の命中を免れても、圧し寄せる力が、兵士たちを叩き伏せる。
通信が途切れ、再開し、また途切れる。

「こちら第三中隊……被害、拡大中……」
「第八軽装甲偵察旅団!生き残りがいれば応答せよ!」
「第七戦車中隊 9番車 前方の8台の応答がない!窒息死したか!?」
声は震えていたが、まだ冷静だった。
訓練の成果でもあり、恐怖に慣れてしまった証でもあった。
だが、同じ状況が何度も繰り返される。
進めば撃たれる。
止まれば態勢を立て直せない。
この状態が長引けば、いずれ部隊は削り切られる。
それを、誰もが理解していた。
「このままじゃ……」
参謀の誰かが言いかけて、口を閉じた。
ハーギア軍が、この“鉄の雨”を維持できる限り、戦況は再び膠着する。
いや、押し返される可能性すらある。
その報告は、FCF連合上級戦闘司令部にも届いていた。
壁一面に広がる戦況図。
青と赤の線が、何度も引き直された跡がある。
「時間がない」
誰かが言う。
「地上部隊はよくやっているが、DTSを放置したままでは限界だ」
「だが、あれは簡単に叩ける代物じゃない」
沈黙が落ちる。
やがて、一人が静かに口を開いた。
「……なら、空を使う」
その言葉に、数人が顔を上げた。
「DTSは強力だが、万能ではない。運用には制約がある。その隙を突く」
「成功率は?」
「高くはない」

正直な答えだった。
「だが、成功すれば戦局は動く」
再び、沈黙。
誰もが理解していた。
それが、どれほど危険な作戦になるかを。
「……候補は?」
問われ、少し間があった。
「現時点で、最も成功率が高いのは――」
名前は、まだ口に出されなかった。

同じ頃、クラウ隊の面々は、整備庫を後にしていた。
新しいエンブレムは、まだどこか他人事のようだった。
名が広がり、評価が上がっても、次の出撃が来ることに変わりはない。
リカは、ふと振り返って壁を見た。
五本の剣。
そのどれもが、まだ欠けていない。
「……全部、残すよ」
誰にも聞こえないほどの声で、そう呟く。
その決意を、彼女たちはまだ知らない。
上級司令部が考案した“ある作戦”も。
そして、それがどれほど彼女たちを試すものになるかも。
空は、静かだった。
だが、その静けさは、嵐の前触れだった。
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