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大陸の魔鳥
血で血は拭えない
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空は、まだ震えていた。
DTSの残骸が吐き出した熱と塵が、上昇気流となって空域を歪めている。
その歪みを、五つの影が切り裂いた。
「レギンレイヴ編隊、侵入」
オウルアイの声は、事実だけを告げる。
だがその名が持つ重みは、全機が知っていた。
サーリア9率いるハーギア第18臨戦。
FCFが最も警戒し、最も因縁を重ねてきた敵エース部隊。
「全機、散開。高度差をつけろ」
フーシェンの指示に、クラウ隊は即応する。
だが、疲労は隠せない。
DTS攻略で燃料も弾薬も削られ、機体も限界に近い。
「向こうは満タンだな」
スナイパーが呟く。
「関係ない」
リカ――TACネーム、アリスは短く言った。
「ここは、引けない」
「敵、分離!」
レギンレイヴが、五機一斉に散った。
その動きは洗練され、迷いがない。
「来るぞ!」
次の瞬間、レーダー警報が鳴り響く。
「ミサイル、複数!」
「回避!」
空が、再び戦場に変わる。
ミサイルの航跡、フレアの閃光、チャフの雲。
その混乱の中で、リカは気づいた。
――一機、意図的に私を狙っている。
機動が違う。
角度も、間合いも、全てが“個”を見ている。
「……サーリア15か」
その名は、ハーギア側でも知られた存在だった。
サーリア9の右腕。
レギンレイヴ随一の近接戦闘能力。
「クラウ5、分断されるな!」
フーシェンの声が飛ぶ。
「了解……だが、来る!」
リカは操縦桿を引き、F-15を垂直に近い上昇へ叩き込む。
サーリア15の機体が、背後から突き上げてきた。
機体はSu-30LMK。
推力偏向ノズルを活かした異常な姿勢制御。
「……速い」
リカは呻く。
一瞬の遅れが、命取りになる。
ミサイル警報。
至近距離。
「っ!」
フレア。
機体を反転させ、急降下。
ミサイルが視界を掠め、爆散する。
「避けた……?」
サーリア15の声が、敵味方共通周波数に乗った。
《――さすがね、FCFの隕石》
挑発ではない。
事実確認のような声。
「……名乗る気はない」
リカは答えない。
代わりに、旋回で応じる。
二機が、絡み合う。
高度は下がり、速度は落ち、ミサイルは次々と消費される。
「ガンレンジに入る!」
スナイパーの声が遠くに聞こえる。
だが、誰も割り込めない。
この二機の空域は、異様な密度を持っていた。
サーリア15は、巧みだった。
推力偏向で、常識外の姿勢から機首を向けてくる。
「……読まれてる」
リカは、何度も撃ち合う中で悟る。
相手は、ただ反応しているのではない。
“次”を見ている。
「それでも……!」
F-15の大出力を活かし、リカは速度を取り戻す。
縦の機動。
高度差。
一瞬、優位を取った。
「今だ!」
機銃。
弾道が、サーリア15の機体をかすめる。
「……っ」
向こうも、同時に撃っていた。
衝撃。
「警告!右尾翼損傷!」
機体が、片側に流れる。
「くそ……!」
サーリア15の弾が、近接信管で炸裂したのだ。
「クラウ5、被弾!」
フーシェンの声が荒くなる。
「飛べるか!」
「……飛べる。だが、制御が重い」
尾翼の一部が吹き飛び、安定性が落ちている。
《――それでも、落ちないのね》
サーリア15の声は、どこか安堵していた。
《あなたと、ちゃんと戦える》
その言葉に、リカは一瞬、息を詰めた。
ミサイルは、もうない。
双方とも。
残るは、機銃のみ。
旋回。
反転。
失速寸前の押し合い。
「……時間は、こっちにある」
リカは呟く。
燃料計を見る。
相手も、限界だ。
サーリア15は、最後に賭けた。
無理な姿勢。
限界角度からの突進。
「……来る!」
リカは、機体をあえて落とす。
相手の予測より、半拍遅らせる。
その瞬間。
照準が、重なる。
「……!」
引き金。
20mm弾が、一直線に走る。
サーリア15の機体が、震えた。
エンジン部から火が噴く。
《――ああ……》
通信に、声が残った。
《サーリア9……ごめんなさい》
機体が、回転しながら落ちていく。
爆発は、なかった。
「……撃墜確認」
オウルアイが、静かに告げる。
■ 余韻
リカは、追わなかった。
ただ、その空域を見つめていた。
「……」
勝った。
だが、何かが胸に残る。
《こちらサーリア9……》
敵編隊長の声が入る。
《よくやったな、FCFのエース》
怒りも、叫びもない。
《今日は、ここまでだ》
レギンレイヴは、反転した。
撤退。
「……引いた?」
スウィンダラーが呆然とする。
「そうだ」
フーシェンが答えた。
「そして……勝った」
リカは、壊れた尾翼を必死に制御しながら、前を向く。
――血で血は、拭えない。
だが、この空を渡すわけにはいかなかった
DTSの残骸が吐き出した熱と塵が、上昇気流となって空域を歪めている。
その歪みを、五つの影が切り裂いた。
「レギンレイヴ編隊、侵入」
オウルアイの声は、事実だけを告げる。
だがその名が持つ重みは、全機が知っていた。
サーリア9率いるハーギア第18臨戦。
FCFが最も警戒し、最も因縁を重ねてきた敵エース部隊。
「全機、散開。高度差をつけろ」
フーシェンの指示に、クラウ隊は即応する。
だが、疲労は隠せない。
DTS攻略で燃料も弾薬も削られ、機体も限界に近い。
「向こうは満タンだな」
スナイパーが呟く。
「関係ない」
リカ――TACネーム、アリスは短く言った。
「ここは、引けない」
「敵、分離!」
レギンレイヴが、五機一斉に散った。
その動きは洗練され、迷いがない。
「来るぞ!」
次の瞬間、レーダー警報が鳴り響く。
「ミサイル、複数!」
「回避!」
空が、再び戦場に変わる。
ミサイルの航跡、フレアの閃光、チャフの雲。
その混乱の中で、リカは気づいた。
――一機、意図的に私を狙っている。
機動が違う。
角度も、間合いも、全てが“個”を見ている。
「……サーリア15か」
その名は、ハーギア側でも知られた存在だった。
サーリア9の右腕。
レギンレイヴ随一の近接戦闘能力。
「クラウ5、分断されるな!」
フーシェンの声が飛ぶ。
「了解……だが、来る!」
リカは操縦桿を引き、F-15を垂直に近い上昇へ叩き込む。
サーリア15の機体が、背後から突き上げてきた。
機体はSu-30LMK。
推力偏向ノズルを活かした異常な姿勢制御。
「……速い」
リカは呻く。
一瞬の遅れが、命取りになる。
ミサイル警報。
至近距離。
「っ!」
フレア。
機体を反転させ、急降下。
ミサイルが視界を掠め、爆散する。
「避けた……?」
サーリア15の声が、敵味方共通周波数に乗った。
《――さすがね、FCFの隕石》
挑発ではない。
事実確認のような声。
「……名乗る気はない」
リカは答えない。
代わりに、旋回で応じる。
二機が、絡み合う。
高度は下がり、速度は落ち、ミサイルは次々と消費される。
「ガンレンジに入る!」
スナイパーの声が遠くに聞こえる。
だが、誰も割り込めない。
この二機の空域は、異様な密度を持っていた。
サーリア15は、巧みだった。
推力偏向で、常識外の姿勢から機首を向けてくる。
「……読まれてる」
リカは、何度も撃ち合う中で悟る。
相手は、ただ反応しているのではない。
“次”を見ている。
「それでも……!」
F-15の大出力を活かし、リカは速度を取り戻す。
縦の機動。
高度差。
一瞬、優位を取った。
「今だ!」
機銃。
弾道が、サーリア15の機体をかすめる。
「……っ」
向こうも、同時に撃っていた。
衝撃。
「警告!右尾翼損傷!」
機体が、片側に流れる。
「くそ……!」
サーリア15の弾が、近接信管で炸裂したのだ。
「クラウ5、被弾!」
フーシェンの声が荒くなる。
「飛べるか!」
「……飛べる。だが、制御が重い」
尾翼の一部が吹き飛び、安定性が落ちている。
《――それでも、落ちないのね》
サーリア15の声は、どこか安堵していた。
《あなたと、ちゃんと戦える》
その言葉に、リカは一瞬、息を詰めた。
ミサイルは、もうない。
双方とも。
残るは、機銃のみ。
旋回。
反転。
失速寸前の押し合い。
「……時間は、こっちにある」
リカは呟く。
燃料計を見る。
相手も、限界だ。
サーリア15は、最後に賭けた。
無理な姿勢。
限界角度からの突進。
「……来る!」
リカは、機体をあえて落とす。
相手の予測より、半拍遅らせる。
その瞬間。
照準が、重なる。
「……!」
引き金。
20mm弾が、一直線に走る。
サーリア15の機体が、震えた。
エンジン部から火が噴く。
《――ああ……》
通信に、声が残った。
《サーリア9……ごめんなさい》
機体が、回転しながら落ちていく。
爆発は、なかった。
「……撃墜確認」
オウルアイが、静かに告げる。
■ 余韻
リカは、追わなかった。
ただ、その空域を見つめていた。
「……」
勝った。
だが、何かが胸に残る。
《こちらサーリア9……》
敵編隊長の声が入る。
《よくやったな、FCFのエース》
怒りも、叫びもない。
《今日は、ここまでだ》
レギンレイヴは、反転した。
撤退。
「……引いた?」
スウィンダラーが呆然とする。
「そうだ」
フーシェンが答えた。
「そして……勝った」
リカは、壊れた尾翼を必死に制御しながら、前を向く。
――血で血は、拭えない。
だが、この空を渡すわけにはいかなかった
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