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大陸の魔鳥
奇襲開始
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夜明け前。
空と海の境界が、まだ溶け合っている時間帯。
月は雲に隠れ、港は最低限の灯火だけを残して静まり返っていた。
ジャセネガ・ポーワ軍港。
そこに眠るのは、世界最大級の水上戦力――西遣艦隊。
誰もが「不沈」と呼び、
誰もが「正面からは無理だ」と口を揃えた化け物。
だが、その夜。
空だけは、眠っていなかった。
「――全機、侵入高度を維持。
低空、シーブレイクラインをなぞれ」
オウルアイの声は静かだった。
だが、その裏に張りついた緊張は、通信に乗ってはっきり伝わってくる。
高度二百フィート以下。
海面すれすれを舐めるように、攻撃機の編隊が進む。
機体の影が、黒い水面に溶ける。
波頭が、エンジン排気で砕け散る。
誰も喋らない。
レーダーは最低限。
ここで音を立てる者は、即座に死ぬ。
港の輪郭が見えた。
巨大なクレーン。
係留された艦影の群れ。
まるで鋼鉄で作られた都市だ。
「……でけぇな」
スウィンダラーが、思わず呟く。
「見とれてる暇はないわよ」
ブリュンヒルデの声は落ち着いていた。
F-15Cの操縦桿を握る手は、微動だにしない。
二機はツーマンセル。
F-15EXとF-15C。
役割は明確だ。
制空と、対艦攻撃。
空と海を同時に縫い止める“釘”。
「――攻撃開始、Tマイナス五」
オウルアイ。
「四、三――」
世界が、息を止めた。
「二、一――」
「全機、攻撃を許可する!
無敵といわれた西遣艦隊を沈めろ!幸運を祈る!」
その瞬間だった。
港の奥、空母の一隻。
静かだった甲板に、突然――火柱が立った。
ドン。
遅れて、腹に響く爆音。
「命中確認!」
「やったぞ、燃えてる!」
格納庫を貫いた初弾が、誘爆を引き起こす。
艦載機用の燃料が、一気に炎へと変わった。
闇の中で、巨大な船体が赤く染まる。
次の瞬間、港が目を覚ました。
「対空砲火来るぞ!」
海面が、光で裂ける。
CIWS、機関砲、SAM。
あらゆる対空火器が、一斉に火を噴いた。
弾道が、夜を縫う。
「低い!もっと低く!」
攻撃機が、海面を舐める。
砲火が、そのすぐ上を走る。
ギリギリ。
だが、狙われていない。
「いいぞ……沈んだ船が、他の艦の邪魔をしてる!」
燃える空母が、港内の動線を塞ぐ。
退避も、回避も、ままならない。
それが、奇襲の狙いだった。
「クラウ隊、制空圏確保に移る」
フーシェン少佐の声。
冷静で、芯がある。
「艦載機、迎撃機を優先排除。
この港から一機も飛ばすな」
「了解!」
クラウ隊が散開する。
「スウィンダラー右舷の駆逐戦隊、見える?」
「確認。四隻……いや、五隻か」
「じゃ、とりあえず一本やっちゃって」
スウィンダラーのF-15EXが、機首を振る。
「対艦兵装ロック解除 攻撃、入る」
「援護する」
二機の距離は、ぴたりと保たれている。
互いの死角を、完全に補い合う配置。
「――ウェポンズフリー ファイヤ!」
スウィンダラーのミサイルが、低空で海を這う。
直後、ブリュンヒルデが高度を取り、上から被せる。
「チャフ、フレア展開……でも、遅い」
駆逐艦の一隻が、爆発。
艦首が折れ、炎が噴き上がる。
「一隻沈黙!」
「次、左!」
無線は短く、無駄がない。
だが、そこには確かな余裕があった。
「まるで――」
ブリュンヒルデが言う。
「まな板の鯉、ってやつ?」
「言うと思った」
スウィンダラーが笑う。
港の別方向では、フェンリル師団が突入していた。
「近接攻撃隊、行くぞ!」
重武装。
弾幕覚悟。
巡洋艦の間を、突っ切る。
「被弾、だが問題なし!」
「そのまま行け!弾幕を抜けろ!」
機体が揺れる。
警報が鳴る。
それでも、止まらない。
「――投下!」
巡洋艦の中央部に、爆発。
船体が、持ち上がるように歪む。
「巡洋艦アドミラル・ハリコフ撃破!」
敵側の通信が、悲鳴に変わる。
「港を抜け出したのは、これだけか?!」
「本艦上空にも敵機多数!」
「全艦、回避行動を取れ!」
だが、遅い。
停泊中。
動線は塞がれ。
燃える船が、障害物になる。
「総員退艦せよ!総員退艦せよ!」
命令が飛び交う中、
さらに一隻、また一隻と沈んでいく。
「停泊中の艦船からの抵抗は軽微!」
フェンリルの誰かが叫ぶ。
「弾薬不足の者は帰投しろ!無理はするな!」
「……いや」
別の声。
「機体の調子がいい。
生き残れそうだ」
それは、誇りだった。
DTSで叩き落とされ、
多くを失った彼らが、再び主役に返り咲く瞬間。
クラウ隊は、空を完全に支配していた。
上がろうとした艦載機は、全て離陸前に叩き落とされる。
迎撃に来た機影は、数秒で消える。
「この空は――」
スウィンダラー。
「完全に、俺たちのものだな」
「ええ」
ブリュンヒルデが答える。
「誰にも渡さない」
その頃。
まだ、戦場の外側。
高度と速度を殺し、
闇に溶ける一機の影があった。
YF-23 “Gray Ghost”。
アリス――リカは、まだ動かない。
通信を聞きながら、
ただ、港全体を見下ろしていた。
燃える艦。
沈む鉄。
制空を握る仲間たち。
――嵐は、もう始まっている。
そして、この嵐の本当の中心は、
まだ、姿を見せていなかった
空と海の境界が、まだ溶け合っている時間帯。
月は雲に隠れ、港は最低限の灯火だけを残して静まり返っていた。
ジャセネガ・ポーワ軍港。
そこに眠るのは、世界最大級の水上戦力――西遣艦隊。
誰もが「不沈」と呼び、
誰もが「正面からは無理だ」と口を揃えた化け物。
だが、その夜。
空だけは、眠っていなかった。
「――全機、侵入高度を維持。
低空、シーブレイクラインをなぞれ」
オウルアイの声は静かだった。
だが、その裏に張りついた緊張は、通信に乗ってはっきり伝わってくる。
高度二百フィート以下。
海面すれすれを舐めるように、攻撃機の編隊が進む。
機体の影が、黒い水面に溶ける。
波頭が、エンジン排気で砕け散る。
誰も喋らない。
レーダーは最低限。
ここで音を立てる者は、即座に死ぬ。
港の輪郭が見えた。
巨大なクレーン。
係留された艦影の群れ。
まるで鋼鉄で作られた都市だ。
「……でけぇな」
スウィンダラーが、思わず呟く。
「見とれてる暇はないわよ」
ブリュンヒルデの声は落ち着いていた。
F-15Cの操縦桿を握る手は、微動だにしない。
二機はツーマンセル。
F-15EXとF-15C。
役割は明確だ。
制空と、対艦攻撃。
空と海を同時に縫い止める“釘”。
「――攻撃開始、Tマイナス五」
オウルアイ。
「四、三――」
世界が、息を止めた。
「二、一――」
「全機、攻撃を許可する!
無敵といわれた西遣艦隊を沈めろ!幸運を祈る!」
その瞬間だった。
港の奥、空母の一隻。
静かだった甲板に、突然――火柱が立った。
ドン。
遅れて、腹に響く爆音。
「命中確認!」
「やったぞ、燃えてる!」
格納庫を貫いた初弾が、誘爆を引き起こす。
艦載機用の燃料が、一気に炎へと変わった。
闇の中で、巨大な船体が赤く染まる。
次の瞬間、港が目を覚ました。
「対空砲火来るぞ!」
海面が、光で裂ける。
CIWS、機関砲、SAM。
あらゆる対空火器が、一斉に火を噴いた。
弾道が、夜を縫う。
「低い!もっと低く!」
攻撃機が、海面を舐める。
砲火が、そのすぐ上を走る。
ギリギリ。
だが、狙われていない。
「いいぞ……沈んだ船が、他の艦の邪魔をしてる!」
燃える空母が、港内の動線を塞ぐ。
退避も、回避も、ままならない。
それが、奇襲の狙いだった。
「クラウ隊、制空圏確保に移る」
フーシェン少佐の声。
冷静で、芯がある。
「艦載機、迎撃機を優先排除。
この港から一機も飛ばすな」
「了解!」
クラウ隊が散開する。
「スウィンダラー右舷の駆逐戦隊、見える?」
「確認。四隻……いや、五隻か」
「じゃ、とりあえず一本やっちゃって」
スウィンダラーのF-15EXが、機首を振る。
「対艦兵装ロック解除 攻撃、入る」
「援護する」
二機の距離は、ぴたりと保たれている。
互いの死角を、完全に補い合う配置。
「――ウェポンズフリー ファイヤ!」
スウィンダラーのミサイルが、低空で海を這う。
直後、ブリュンヒルデが高度を取り、上から被せる。
「チャフ、フレア展開……でも、遅い」
駆逐艦の一隻が、爆発。
艦首が折れ、炎が噴き上がる。
「一隻沈黙!」
「次、左!」
無線は短く、無駄がない。
だが、そこには確かな余裕があった。
「まるで――」
ブリュンヒルデが言う。
「まな板の鯉、ってやつ?」
「言うと思った」
スウィンダラーが笑う。
港の別方向では、フェンリル師団が突入していた。
「近接攻撃隊、行くぞ!」
重武装。
弾幕覚悟。
巡洋艦の間を、突っ切る。
「被弾、だが問題なし!」
「そのまま行け!弾幕を抜けろ!」
機体が揺れる。
警報が鳴る。
それでも、止まらない。
「――投下!」
巡洋艦の中央部に、爆発。
船体が、持ち上がるように歪む。
「巡洋艦アドミラル・ハリコフ撃破!」
敵側の通信が、悲鳴に変わる。
「港を抜け出したのは、これだけか?!」
「本艦上空にも敵機多数!」
「全艦、回避行動を取れ!」
だが、遅い。
停泊中。
動線は塞がれ。
燃える船が、障害物になる。
「総員退艦せよ!総員退艦せよ!」
命令が飛び交う中、
さらに一隻、また一隻と沈んでいく。
「停泊中の艦船からの抵抗は軽微!」
フェンリルの誰かが叫ぶ。
「弾薬不足の者は帰投しろ!無理はするな!」
「……いや」
別の声。
「機体の調子がいい。
生き残れそうだ」
それは、誇りだった。
DTSで叩き落とされ、
多くを失った彼らが、再び主役に返り咲く瞬間。
クラウ隊は、空を完全に支配していた。
上がろうとした艦載機は、全て離陸前に叩き落とされる。
迎撃に来た機影は、数秒で消える。
「この空は――」
スウィンダラー。
「完全に、俺たちのものだな」
「ええ」
ブリュンヒルデが答える。
「誰にも渡さない」
その頃。
まだ、戦場の外側。
高度と速度を殺し、
闇に溶ける一機の影があった。
YF-23 “Gray Ghost”。
アリス――リカは、まだ動かない。
通信を聞きながら、
ただ、港全体を見下ろしていた。
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