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蒼海の凶鳥
ポーラリア奪還戦
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――夜明け前、都市を取り戻す
午前三時四十分。
ヒュースポイント北方、第四空軍管区シリラット基地。
格納庫のシャッターはすでに開き、薄青い夜明け前の空気が機体の間を流れていた。
灯火管制下の滑走路には、必要最低限の誘導灯だけが点っている。
「……静かだな」
スウィンダラーが、インターコム越しに呟く。
冗談めいた調子だが、その声にはわずかな緊張が混じっていた。
「嵐の前ってやつでしょ」
ブリュンヒルデが即座に返す。
「どうせあと一時間で、うるさくなるわよ」
リカ――コールサイン、アリスは、二人のやり取りを聞きながら計器を確認していた。
YF-23〈グレイ・ゴースト〉のコクピットは、F-15とはまるで別物だ。
静かで、深く、どこか機体そのものが呼吸しているような感覚がある。
「……全機、聞こえる?」
フーシェンの声が入る。
クラウ隊隊長。少佐。
「今回の任務は、派手だ。でも目的は単純。
地上部隊が生きて進める空を作る。それだけよ」
誰も軽口を叩かない。
全員が、これが「解放作戦」であることを理解している。
四時ちょうど。
オウルアイからのブリーフィングが、全機に共有された。
『開戦とともに踏みにじられた都市ポーラリアを、ハーギア軍から解放する』
静かな声だが、内容は重い。
『敵の主な抵抗拠点は二つ。
旧市街地、国道三号線付近の戦車部隊。
そして新市街地、行政官庁街に展開する対戦車ヘリ部隊』
ホログラムに、都市図が浮かび上がる。
古い石造りの旧市街。
碁盤目状に整備された新市街。
『また、後方の空港および発進する航空機も脅威となる。
本作戦は明朝開始。視界は限定的だ。
抵抗拠点を排除し、都市制圧を支援せよ』
一拍置いて。
『解放は、もうすぐそこだ』
午前四時。
エンジンスタート。
フェンリル師団の重低音が先に唸りを上げ、
続いてゴーレム、アバランチ、そしてクラウ隊。
五機分の排気が、夜気を震わせる。
「クラウ隊、タキシー開始」
滑走路へ。
午前五時四十分。
太陽はまだ地平線の下。
だが、東の空がわずかに白み始めていた。
『作戦開始』
オウルアイの声が、全周に響く。
『旧市街、新市街、ならびに空港の敵を掃討せよ』
「クラウ隊、了解」
フーシェンが即応する。
「編隊、散開。各自、担当エリアへ」
都市が見えてきた。
ポーラリア。
瓦礫に覆われた屋根。
黒く焦げた建物。
戦争が「止まった」まま放置された街。
「……旧市街地は方位140、すぐそこだ」
スナイパーが告げる。
「こちらグレシア7。国道東側、地雷原を確認」
地上部隊――グレシア旅団からの報告が次々に飛び込む。
『こちらグレシア4。各自の判断で交戦を許可する』
「了解」
クラウ隊は高度を下げた。
建物の影を縫うように進む。
「敵戦車、確認!」
ブリュンヒルデ。
国道沿い、瓦礫の陰から砲塔が覗く。
「……全く騒がしい連中だな」
スウィンダラーがぼやきつつ、照準を合わせる。
「JDAM、行くぞ」
F-15EXから投下された爆弾が、静かに落ちていく。
次の瞬間、国道沿いの陣地が、煙と衝撃に包まれた。
瓦礫が跳ね上がり、戦車の影が消える。
「命中」
短い報告。
リカは、別方向を見ていた。
旧市街のアーチ状構造物。
そこに、不自然な集中がある。
「……アーチ付近、強固な陣地」
スナイパーが言う。
「増援、要請する」
「ほいよっと」
スウィンダラーが即応した。
再びJDAM。
今度はより低く、正確に。
爆発の後、アーチの影は完全に崩れた。
リカは、一瞬だけ目を伏せた。
「……ちっ、嫌なもん見ちまった」
スウィンダラーの声が、珍しく低い。
「気にするな」
フーシェンが言う。
「進め。地上が待ってる」
『本部、こちらグレシア3。
国道3号の目標16、航空支援により壊滅!』
旧市街の戦況が、明らかに傾いていく。
「次、新市街だ」
ブリュンヒルデ。
行政官庁街は、旧市街とは違う。
広い通り。
高層の建物。
そして――空。
「対戦車ヘリ、来るわよ」
その予測は、正しかった。
ローター音。
低空から、一斉に浮かび上がる影。
「数、結構いるな」
スナイパー。
「フェンリル、出番よ」
フーシェンが指示を飛ばす。
『了解。突っ込む』
重武装のフェンリル師団が、高度を下げる。
対空火器の弾幕を承知の上で。
ミサイルが交差し、
ヘリが次々と炎を上げて落ちていく。
「こちらグレシア7、新市街中央部、前進可能!」
地上部隊の声が、少しだけ明るくなった。
リカは、高度を維持したまま全体を見渡していた。
旧市街。
新市街。
そして、その奥――空港。
まだ、終わっていない。
「……次は、空港だね」
誰に言うでもなく、リカは呟いた。
夜明けは、もうすぐそこまで来ていた。
午前三時四十分。
ヒュースポイント北方、第四空軍管区シリラット基地。
格納庫のシャッターはすでに開き、薄青い夜明け前の空気が機体の間を流れていた。
灯火管制下の滑走路には、必要最低限の誘導灯だけが点っている。
「……静かだな」
スウィンダラーが、インターコム越しに呟く。
冗談めいた調子だが、その声にはわずかな緊張が混じっていた。
「嵐の前ってやつでしょ」
ブリュンヒルデが即座に返す。
「どうせあと一時間で、うるさくなるわよ」
リカ――コールサイン、アリスは、二人のやり取りを聞きながら計器を確認していた。
YF-23〈グレイ・ゴースト〉のコクピットは、F-15とはまるで別物だ。
静かで、深く、どこか機体そのものが呼吸しているような感覚がある。
「……全機、聞こえる?」
フーシェンの声が入る。
クラウ隊隊長。少佐。
「今回の任務は、派手だ。でも目的は単純。
地上部隊が生きて進める空を作る。それだけよ」
誰も軽口を叩かない。
全員が、これが「解放作戦」であることを理解している。
四時ちょうど。
オウルアイからのブリーフィングが、全機に共有された。
『開戦とともに踏みにじられた都市ポーラリアを、ハーギア軍から解放する』
静かな声だが、内容は重い。
『敵の主な抵抗拠点は二つ。
旧市街地、国道三号線付近の戦車部隊。
そして新市街地、行政官庁街に展開する対戦車ヘリ部隊』
ホログラムに、都市図が浮かび上がる。
古い石造りの旧市街。
碁盤目状に整備された新市街。
『また、後方の空港および発進する航空機も脅威となる。
本作戦は明朝開始。視界は限定的だ。
抵抗拠点を排除し、都市制圧を支援せよ』
一拍置いて。
『解放は、もうすぐそこだ』
午前四時。
エンジンスタート。
フェンリル師団の重低音が先に唸りを上げ、
続いてゴーレム、アバランチ、そしてクラウ隊。
五機分の排気が、夜気を震わせる。
「クラウ隊、タキシー開始」
滑走路へ。
午前五時四十分。
太陽はまだ地平線の下。
だが、東の空がわずかに白み始めていた。
『作戦開始』
オウルアイの声が、全周に響く。
『旧市街、新市街、ならびに空港の敵を掃討せよ』
「クラウ隊、了解」
フーシェンが即応する。
「編隊、散開。各自、担当エリアへ」
都市が見えてきた。
ポーラリア。
瓦礫に覆われた屋根。
黒く焦げた建物。
戦争が「止まった」まま放置された街。
「……旧市街地は方位140、すぐそこだ」
スナイパーが告げる。
「こちらグレシア7。国道東側、地雷原を確認」
地上部隊――グレシア旅団からの報告が次々に飛び込む。
『こちらグレシア4。各自の判断で交戦を許可する』
「了解」
クラウ隊は高度を下げた。
建物の影を縫うように進む。
「敵戦車、確認!」
ブリュンヒルデ。
国道沿い、瓦礫の陰から砲塔が覗く。
「……全く騒がしい連中だな」
スウィンダラーがぼやきつつ、照準を合わせる。
「JDAM、行くぞ」
F-15EXから投下された爆弾が、静かに落ちていく。
次の瞬間、国道沿いの陣地が、煙と衝撃に包まれた。
瓦礫が跳ね上がり、戦車の影が消える。
「命中」
短い報告。
リカは、別方向を見ていた。
旧市街のアーチ状構造物。
そこに、不自然な集中がある。
「……アーチ付近、強固な陣地」
スナイパーが言う。
「増援、要請する」
「ほいよっと」
スウィンダラーが即応した。
再びJDAM。
今度はより低く、正確に。
爆発の後、アーチの影は完全に崩れた。
リカは、一瞬だけ目を伏せた。
「……ちっ、嫌なもん見ちまった」
スウィンダラーの声が、珍しく低い。
「気にするな」
フーシェンが言う。
「進め。地上が待ってる」
『本部、こちらグレシア3。
国道3号の目標16、航空支援により壊滅!』
旧市街の戦況が、明らかに傾いていく。
「次、新市街だ」
ブリュンヒルデ。
行政官庁街は、旧市街とは違う。
広い通り。
高層の建物。
そして――空。
「対戦車ヘリ、来るわよ」
その予測は、正しかった。
ローター音。
低空から、一斉に浮かび上がる影。
「数、結構いるな」
スナイパー。
「フェンリル、出番よ」
フーシェンが指示を飛ばす。
『了解。突っ込む』
重武装のフェンリル師団が、高度を下げる。
対空火器の弾幕を承知の上で。
ミサイルが交差し、
ヘリが次々と炎を上げて落ちていく。
「こちらグレシア7、新市街中央部、前進可能!」
地上部隊の声が、少しだけ明るくなった。
リカは、高度を維持したまま全体を見渡していた。
旧市街。
新市街。
そして、その奥――空港。
まだ、終わっていない。
「……次は、空港だね」
誰に言うでもなく、リカは呟いた。
夜明けは、もうすぐそこまで来ていた。
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