If太平洋戦争        日本が懸命な判断をしていたら

みにみ

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来たるべき敵

ピケット駆逐艦の不運

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松島海軍航空基地の滑走路から
日本の運命をかけた航空隊が次々と飛び立っていった。
一式陸攻、彗星艦爆、天山艦攻、そして零戦。
総勢184機からなる混成部隊は、編隊を組み、一路、東方の海域へと向かう。


朝日を浴びて鈍く光る彼らの機体には
それぞれ「故郷の空を守る」という、静かで強い決意が宿っていた。
零戦隊のベテランパイロット、清水中尉は
隣を飛ぶ若き搭乗員に手信号で「落ち着け」と合図を送る。
若者の顔は緊張でこわばっていたが、清水の励ましに小さく頷いた。
彼らは知っていた。この空の先に待つのは、米海軍の最新鋭機動部隊であり
生還は絶望的であるということを。しかし、彼らは恐れていなかった。
ただ、後続の爆撃機隊を、そして日本の本土を守ることだけを考えていた。

彼らの下方では、太平洋の荒波が唸りを上げていた。
遠くには、昨日の夜戦で犠牲となった艦艇の残骸が漂っているかもしれない。
その犠牲の上に、自分たちが今、ここにいるのだ。
彼らは、その思いを胸に、速度を上げていった。


その頃、米ハルゼー機動艦隊は、日本の攻撃隊の接近を
艦隊レーダーで探知していた。空母「エセックス」の艦橋では
艦長が冷静に指示を出していた。

「日本の攻撃機隊が接近中。
 直ちにF6Fヘルキャット戦闘機隊を発艦させ、迎撃せよ!」

飛行甲板では、F6Fヘルキャット戦闘機が
次々とカタパルトから飛び立っていく。分厚い装甲と
2000馬力の強力なエンジンを持つヘルキャットは
日本の零戦を圧倒する性能を誇っていた。パイロットたちは
日本の艦隊が九州沖にいると思っていたため
まさかこの距離で日本の航空隊と交戦するとは予想しておらず
興奮と同時に警戒心を強めていた。彼らは、日本の航空隊が
本土の基地から燃料ギリギリで飛んできていることを知っており
この迎撃で全滅させられると確信していた。


米ヘルキャット隊が日本の攻撃隊に接近したとき
日本の零戦隊はすでに迎撃の準備を整えていた。
彼らは、あえて攻撃隊より高高度を飛行し、高高度優位を保っていた。

「下方より、敵機多数!」

零戦隊の隊長が叫び、全機に突撃命令を下す。

「かかれ!一片の悔いも残すな!」

零戦は、一斉にヘルキャット隊へと急降下していった。
初弾の優位を活かし、零戦隊は最初の攻撃で
十数機のヘルキャットを撃墜するという戦果を上げた。
しかし、数と性能で勝るヘルキャットは
すぐに態勢を立て直し、零戦隊に反撃を開始した。

「右にヘルキャット!」

零戦のパイロットが叫ぶ。ヘルキャットの機銃の火線が
零戦の機体を捉え、火花が散る。
零戦は、その優れた運動性能でヘルキャットの攻撃を回避しようとするが
ヘルキャットの数はあまりにも多かった。四方から囲まれた零戦が次々と撃墜されていく。

しかし、零戦隊は決して引き下がらない。
彼らの使命は、ヘルキャット隊を爆撃機隊から引き離し
対空砲火圏への進入を援護することだ。彼らは、自らを盾として
ヘルキャット隊と激しいドッグファイトを繰り広げた。


零戦隊の決死の奮闘により、日本の爆撃機隊は
ついに米艦隊の対空砲火圏に突入した。艦隊の前方に展開していた
ピケット駆逐艦「ディディ」と「ランズダウン」は
日本の攻撃隊の接近を真っ先に捉え、激しい対空砲火を開始した。

「敵機、接近!高度1700メートル!」

駆逐艦「ディディ」の艦橋で、レーダー員が叫ぶ。
艦長は、双眼鏡で夜空を仰ぎ、迫り来る日本の攻撃機を確認した。

「全砲門、撃ち方始め!機関砲も撃て!」

艦長の号令と共に、駆逐艦「ディディ」と「ランズダウン」の全ての対空砲が火を噴いた。
両用砲の炸裂弾が夜空を彩り、40mmボフォース機関砲や
20mmエリコン機関砲から放たれる曳光弾が、まるで夜空を流れる星のように
日本の攻撃隊へと向かっていく。それは
まるで夜空に描かれた壮大な花火のようであり
同時に、死を呼ぶ鉄の雨だった。

日本の爆撃機隊は、その鉄の雨をかいくぐり、駆逐艦へと肉薄した。
一式陸攻が放つ魚雷が、海面に白い航跡を残し、駆逐艦へと向かう。
彗星艦爆は、急降下爆撃で、駆逐艦を狙った。

「魚雷だ!回避!左舷推進機後進一杯 右舷推進機一杯!」

「ディディ」の艦長が叫び、艦艇は必死に回避運動を行う。
しかし、日本の攻撃は、あまりにも正確だった。

ドォン!

「ディディ」の艦腹に、一式陸攻が放った魚雷が直撃した。
衝撃で艦体が大きく揺れ、乗員が床に叩きつけられる。
機関部が破壊され、火災が発生した。

「機関停止!艦の制御不能!」

レーダー員が叫ぶ。その直後、彗星艦爆が投下した爆弾が
再び「ディディ」の艦橋に命中した。激しい爆発と共に、艦橋は破壊され
艦長以下、主要な幹部が死傷した。「ディディ」は
その場で航行不能に陥り、炎を上げながら海面に漂い始めた。


僚艦の「ランズダウン」も、同じ運命をたどった。
駆逐艦の対空砲は、次々と日本の攻撃機を撃墜していくが
その数はあまりにも多かった。

「敵機、再び!今度は雷撃機だ!」

「ランズダウン」の艦長が叫ぶ。天山艦攻が、低空を飛行し
魚雷を放った。魚雷は、正確に「ランズダウン」の艦首に命中した。

ドォン!

轟音と共に、艦首が吹き飛んだ。「ランズダウン」は、その巨体を大きく揺らし
急速に浸水を始めた。艦長は、もはや艦を救うことはできないと判断し
総員退艦命令を下した。乗員たちは、次々と海に飛び込んでいく。

「ランズダウン」の艦体が、ゆっくりと海へと沈んでいく。
駆逐艦は、その最後の瞬間まで、米艦隊を守るために戦い抜いたのだ。

しかし、この駆逐艦撃沈は、ほんの始まりに過ぎなかった。
日本の攻撃機隊は、駆逐艦の防御網を突破し
ついに米空母部隊へと肉薄していく。彼らの攻撃は
米空母に大きな損害を与えるだろう。そして
その犠牲の先に、彼らが望んだ「故郷の空」は、果たして守られるのだろうか。
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