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太平洋の天使
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大和の主砲から放たれた9発の砲弾は
夜空を切り裂く流星群のごとく
朝鮮半島の東海岸へと吸い込まれていった。
数秒にも満たない飛翔時間だったが
その間、艦隊全体に張り詰めた緊張感が漂っていた。
そして、その数秒が永遠にも感じられた後
遠方の陸地から、地鳴りのような轟音が響き渡った。
最初の着弾は、まさに地獄の業火そのものだった。
遥か彼方の沿岸部に、突如として眩い閃光が走り
その直後に、それまでの砲撃とは比較にならない、凄まじい爆発音が轟いた。
その音は、鼓膜を突き破るかのような衝撃を伴い
数キロ離れた大和の艦体にまで微かな振動となって伝わってきた。
それは、単なる爆発音ではなく、大地そのものが悲鳴を上げているかのような
根源的な恐怖を呼び起こす響きだった。
1.2トンの巨弾、零式通常弾は、その圧倒的な質量と運動エネルギーをもって
目標の地中に深く食い込んだ。北朝鮮軍が誇る強固なトーチカ群や
何層にも掘られた地下壕は、この一撃の前には何の抵抗もできなかった。
砲弾は、分厚いコンクリートの壁をやすやすと貫き
堅固な岩盤を砕きながら、敵陣地の深部へと到達した。
そして、その地下深くで、砲弾内部に充填された炸薬が炸裂したのである。
その瞬間、地表はまるで巨大な怪物の顎のように開き
巨大な土煙と岩石の破片が数百メートルもの高さに吹き上がった。
爆風は、周囲の木々を根こそぎなぎ倒し、小さな建物であれば粉々に吹き飛ばした。
目標となっていた北朝鮮軍のトーチカ群は
まるで粘土細工であったかのように、一瞬にして消し去られた。
その場所には、ただ巨大なクレーターがぽっかりと口を開け
黒焦げになった土砂が周囲に散乱しているだけだった。
地下壕の入り口は完全に塞がれ、内部にいた兵士たちの運命は
想像を絶するものであった。
爆発によって舞い上がった煙と土砂は、巨大なキノコ雲のように空高く立ち上り、
夜明け前の薄暗い空を覆い尽くした。数分経っても
その煙は消えることなく、まるで戦場の傷跡を物語るかのように
空に居座り続けた。広大な範囲にわたって
地形そのものが変形するほどの破壊力であった。
小高い丘は削り取られ、平坦な地面には巨大な穴がいくつも穿たれていた。
それは、かつてそこに強固な陣地が存在したとは信じられないほどの
徹底的な破壊だった。
この圧倒的な光景を、大和の艦橋から
そして僚艦のミズーリやニュージャージーの甲板から
米軍兵士や国連軍兵士たちが固唾を飲んで見守っていた。
彼らはこれまでにも、多くの艦砲射撃を経験してきた。
アイオワ級戦艦の40センチ砲の威力も知っていた。
しかし、大和の46センチ砲がもたらした破壊は
彼らの想像を遥かに超えるものだった。
「なんてこった…あれがヤマトの力か…!」
ミズーリの艦橋で、一人の若い士官が呆然とした声で呟いた。
彼の隣にいたベテランの下士官は、口元を引き締め
ただ頷くことしかできなかった。彼らの目に映るのは
単なる火薬の爆発ではなかった。
それは、絶対的な力、そして、長きにわたる膠着状態を打ち破る
可能性を秘めた、希望の光であった。
「まるで、神の怒りのようだ…」
別の兵士が、畏敬の念を込めて呟いた。大和の放つ砲弾は
もはや人間の作った兵器という範疇を超え
超自然的な力を持つ存在として映ったのだ。
その威容と破壊力は、彼らが抱えていた戦場の絶望感を打ち破る
強烈な衝撃を与えた。
彼らにとって、大和はまさに「地獄からの使者」だった。
北朝鮮軍にとっては悪夢の権化だが、国連軍にとっては、その存在こそが
これまで突破できなかった堅固な防御線を打ち破り
多くの兵士の命を救う「希望の光」となった。
大和の咆哮は、彼らが抱いていた閉塞感を吹き飛ばし
再び前進できるという確信を与えたのである。
パーカー少佐は、大和の艦橋で、その破壊された目標地点を双眼鏡で確認していた。
彼の顔には、この作戦の成功に対する確信と
そして大和の力がもたらす未来への期待が浮かんでいた。
彼の隣に立つ徳永特務中尉もまた、その光景を静かに見つめていた。
彼の目には、かつて祖国の盾として造られた大和が
今、異なる旗の下で、しかし、間違いなく「人々の命を救う」という
新たな使命を果たしていることへの、複雑な安堵感が浮かんでいた。
一方、大和の砲撃を受けた北朝鮮軍兵士たち
そしてそれを支援する中国人民志願軍兵士たちにとって
その光景は言いようのない恐怖と絶望以外の何物でもなかった。
彼らは、これまで米軍の艦砲射撃を受けてきたが、
その威力はせいぜい地表の陣地を破壊する程度であった。
しかし、今回の砲撃は、その概念を根底から覆すものだった。
地下壕の奥深くで、砲弾が炸裂した瞬間、兵士たちは
これまでの空襲や砲撃では経験したことのない
地中深くからの衝撃波に襲われた。激しい揺れ、耳をつんざくような爆音
そして窒息しそうなほどの土埃と煙が、狭い空間に充満した。
一部の地下壕は、文字通り押し潰され
内部にいた兵士たちは、生きたまま埋葬される形となった。
かろうじて生き残った兵士たちも、その精神は完全に打ち砕かれていた。
彼らは、これまで聞いたことのない
そして想像を絶する破壊力を目の当たりにしたのだ。
「日帝の艦だ…! 化物が、地獄から蘇った…!」
彼らの間では、恐怖に駆られた叫びが響き渡った。
「ヤマト」という言葉は、瞬く間に最前線の兵士たちの間に広まり
それは、文字通り「死」を意味するようになった。
彼らは、なぜ日本の戦艦が、米軍の旗を掲げて現れたのか理解できなかった。
その不気味な復活は、彼らにとって超常的な現象
あるいは悪夢の再来としか思えなかったのだ。
かつて植民地支配を受けた日本への根深い憎悪と
その象徴たる「ヤマト」の復活は
彼らの心に拭い去ることのできないトラウマを刻み込んだ。
大和の砲撃は、物理的な破壊だけでなく、心理的な打撃も与え
北朝鮮軍の士気を著しく低下させた。多くの兵士が戦意を喪失し
パニックに陥って逃走を図る者もいた。司令部からの厳命にもかかわらず
砲撃を受けた前線部隊は、完全に機能不全に陥った。
それは、戦術的な勝利に留まらず、敵の継戦意欲そのものを奪い取る
壊滅的な効果を生み出したのである。
大和の最初の砲撃は、朝鮮戦争の戦況に大きな転換点をもたらした。
その鋼鉄の咆哮は、国連軍に希望をもたらし
北朝鮮軍には絶望を植え付けた。
そして、太平洋の遥か彼方から蘇った巨艦は、その存在をもって
戦場の空気を一変させたのである。大和は
まさに「地獄からの使者」であり、「希望の光」として、新たな伝説を刻み始めたのだった。
夜空を切り裂く流星群のごとく
朝鮮半島の東海岸へと吸い込まれていった。
数秒にも満たない飛翔時間だったが
その間、艦隊全体に張り詰めた緊張感が漂っていた。
そして、その数秒が永遠にも感じられた後
遠方の陸地から、地鳴りのような轟音が響き渡った。
最初の着弾は、まさに地獄の業火そのものだった。
遥か彼方の沿岸部に、突如として眩い閃光が走り
その直後に、それまでの砲撃とは比較にならない、凄まじい爆発音が轟いた。
その音は、鼓膜を突き破るかのような衝撃を伴い
数キロ離れた大和の艦体にまで微かな振動となって伝わってきた。
それは、単なる爆発音ではなく、大地そのものが悲鳴を上げているかのような
根源的な恐怖を呼び起こす響きだった。
1.2トンの巨弾、零式通常弾は、その圧倒的な質量と運動エネルギーをもって
目標の地中に深く食い込んだ。北朝鮮軍が誇る強固なトーチカ群や
何層にも掘られた地下壕は、この一撃の前には何の抵抗もできなかった。
砲弾は、分厚いコンクリートの壁をやすやすと貫き
堅固な岩盤を砕きながら、敵陣地の深部へと到達した。
そして、その地下深くで、砲弾内部に充填された炸薬が炸裂したのである。
その瞬間、地表はまるで巨大な怪物の顎のように開き
巨大な土煙と岩石の破片が数百メートルもの高さに吹き上がった。
爆風は、周囲の木々を根こそぎなぎ倒し、小さな建物であれば粉々に吹き飛ばした。
目標となっていた北朝鮮軍のトーチカ群は
まるで粘土細工であったかのように、一瞬にして消し去られた。
その場所には、ただ巨大なクレーターがぽっかりと口を開け
黒焦げになった土砂が周囲に散乱しているだけだった。
地下壕の入り口は完全に塞がれ、内部にいた兵士たちの運命は
想像を絶するものであった。
爆発によって舞い上がった煙と土砂は、巨大なキノコ雲のように空高く立ち上り、
夜明け前の薄暗い空を覆い尽くした。数分経っても
その煙は消えることなく、まるで戦場の傷跡を物語るかのように
空に居座り続けた。広大な範囲にわたって
地形そのものが変形するほどの破壊力であった。
小高い丘は削り取られ、平坦な地面には巨大な穴がいくつも穿たれていた。
それは、かつてそこに強固な陣地が存在したとは信じられないほどの
徹底的な破壊だった。
この圧倒的な光景を、大和の艦橋から
そして僚艦のミズーリやニュージャージーの甲板から
米軍兵士や国連軍兵士たちが固唾を飲んで見守っていた。
彼らはこれまでにも、多くの艦砲射撃を経験してきた。
アイオワ級戦艦の40センチ砲の威力も知っていた。
しかし、大和の46センチ砲がもたらした破壊は
彼らの想像を遥かに超えるものだった。
「なんてこった…あれがヤマトの力か…!」
ミズーリの艦橋で、一人の若い士官が呆然とした声で呟いた。
彼の隣にいたベテランの下士官は、口元を引き締め
ただ頷くことしかできなかった。彼らの目に映るのは
単なる火薬の爆発ではなかった。
それは、絶対的な力、そして、長きにわたる膠着状態を打ち破る
可能性を秘めた、希望の光であった。
「まるで、神の怒りのようだ…」
別の兵士が、畏敬の念を込めて呟いた。大和の放つ砲弾は
もはや人間の作った兵器という範疇を超え
超自然的な力を持つ存在として映ったのだ。
その威容と破壊力は、彼らが抱えていた戦場の絶望感を打ち破る
強烈な衝撃を与えた。
彼らにとって、大和はまさに「地獄からの使者」だった。
北朝鮮軍にとっては悪夢の権化だが、国連軍にとっては、その存在こそが
これまで突破できなかった堅固な防御線を打ち破り
多くの兵士の命を救う「希望の光」となった。
大和の咆哮は、彼らが抱いていた閉塞感を吹き飛ばし
再び前進できるという確信を与えたのである。
パーカー少佐は、大和の艦橋で、その破壊された目標地点を双眼鏡で確認していた。
彼の顔には、この作戦の成功に対する確信と
そして大和の力がもたらす未来への期待が浮かんでいた。
彼の隣に立つ徳永特務中尉もまた、その光景を静かに見つめていた。
彼の目には、かつて祖国の盾として造られた大和が
今、異なる旗の下で、しかし、間違いなく「人々の命を救う」という
新たな使命を果たしていることへの、複雑な安堵感が浮かんでいた。
一方、大和の砲撃を受けた北朝鮮軍兵士たち
そしてそれを支援する中国人民志願軍兵士たちにとって
その光景は言いようのない恐怖と絶望以外の何物でもなかった。
彼らは、これまで米軍の艦砲射撃を受けてきたが、
その威力はせいぜい地表の陣地を破壊する程度であった。
しかし、今回の砲撃は、その概念を根底から覆すものだった。
地下壕の奥深くで、砲弾が炸裂した瞬間、兵士たちは
これまでの空襲や砲撃では経験したことのない
地中深くからの衝撃波に襲われた。激しい揺れ、耳をつんざくような爆音
そして窒息しそうなほどの土埃と煙が、狭い空間に充満した。
一部の地下壕は、文字通り押し潰され
内部にいた兵士たちは、生きたまま埋葬される形となった。
かろうじて生き残った兵士たちも、その精神は完全に打ち砕かれていた。
彼らは、これまで聞いたことのない
そして想像を絶する破壊力を目の当たりにしたのだ。
「日帝の艦だ…! 化物が、地獄から蘇った…!」
彼らの間では、恐怖に駆られた叫びが響き渡った。
「ヤマト」という言葉は、瞬く間に最前線の兵士たちの間に広まり
それは、文字通り「死」を意味するようになった。
彼らは、なぜ日本の戦艦が、米軍の旗を掲げて現れたのか理解できなかった。
その不気味な復活は、彼らにとって超常的な現象
あるいは悪夢の再来としか思えなかったのだ。
かつて植民地支配を受けた日本への根深い憎悪と
その象徴たる「ヤマト」の復活は
彼らの心に拭い去ることのできないトラウマを刻み込んだ。
大和の砲撃は、物理的な破壊だけでなく、心理的な打撃も与え
北朝鮮軍の士気を著しく低下させた。多くの兵士が戦意を喪失し
パニックに陥って逃走を図る者もいた。司令部からの厳命にもかかわらず
砲撃を受けた前線部隊は、完全に機能不全に陥った。
それは、戦術的な勝利に留まらず、敵の継戦意欲そのものを奪い取る
壊滅的な効果を生み出したのである。
大和の最初の砲撃は、朝鮮戦争の戦況に大きな転換点をもたらした。
その鋼鉄の咆哮は、国連軍に希望をもたらし
北朝鮮軍には絶望を植え付けた。
そして、太平洋の遥か彼方から蘇った巨艦は、その存在をもって
戦場の空気を一変させたのである。大和は
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