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米軍への痛撃
ハルゼーの怒り
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1944年3月下旬。真珠湾司令部。
ジョージ・O・パターソン中将の裏切りと
彼の率いていた第4打撃群(STG-4)の大部分が日本側に寝返ったという事実は
最高司令部にとって、単なる軍事的な損失を超えた
存在そのものを揺るがす危機だった。米海軍史上、最新鋭の空母、戦艦二隻、重巡二隻
そして最新技術が一挙に敵に奪われるという
前代未聞の事態に、司令官たちは血の気が引いていた。
特に、パターソンが「全滅覚悟の囮任務」を拒否した経緯
そして離脱艦隊に血を流させず、「大義」を掲げて去ったという事実は
ハルゼー提督らの非合理的な指導体制の内なる崩壊を象徴していた。
作戦室は、パターソンが去った時とは
比べ物にならないほどの、暗く、激しい怒りと混乱に満ちていた。
ウィリアム・F・ハルゼー提督は、顔を紫色に変え、机を激しく叩いた。
彼の葉巻の煙は、部屋全体の怒りを具現化しているかのようだった。
「裏切りだ!徹底した裏切りだ!あのクソッタレのパターソンめが!
あの合理主義者を装った臆病者が
こんなことをしでかすとは!奴は自分の信念のために国を売ったのだ!」
「提督」キンケイド提督が、緊張した面持ちで口を開いた。
「問題は、単なる艦艇の喪失ではありません。
奴が、VT信管、高性能レーダー、そして統合射撃管制ノウハウといった
我々の最大の優位性を、あのジャップどもに手渡したことです」
ハルゼーは、怒りを込めて唾を吐いた。
「そうだ!あのジャップどもに、我々の切り札が渡った!
奴らはあれをどう使う!?夜戦だ!あの夜戦狂いのジャップどもに
レーダー誘導の射撃術など渡ってしまったら
我々の艦隊は闇の中で透明な敵に撃ち抜かれることになる!」
司令官たちは、パターソンが裏切り直前に言った言葉、
「貴方方は、人命をチップと見なす、腐敗した賭博師です」という
痛烈な批判を思い出さずにはいられなかった。
彼らは、パターソンの行動が、彼らの非合理的な体制に対する
最も計算され尽くした、冷徹な復讐であることを理解し始めていた。
この危機的状況の中、ハルゼー提督は、パターソンを最もよく知る人物を呼んだ。
ジェームズ・ハリソン少将。パターソンとは海軍兵学校以来の親友であり
共に戦術研究に励んだ同志だった。彼は、パターソンと同じく
冷静沈着な指揮官として知られていたが
パターソンのような過激な合理主義者ではなかった。
ハリソンは、作戦室に入ると、部屋全体を支配する怒りと憎悪の渦に直面した。
ハルゼー提督は、憎しみに満ちた目でハリソンを見つめた。
「ハリソン少将。お前とパターソンは、海軍の双璧と言われていた。
奴がこんな大罪を犯すなど、貴様は知っていたのか!?」
ハリソンは、背筋を伸ばし、冷静に答えた。
「提督。私はジョージ・パターソンの友人でありましたが
彼の裏切りについて事前に知るよしもありません。
しかし、彼の行動は、彼の『人命は艦よりも重い』という哲学
そして上層部の命令に対する彼の根深い不満に起因していることは想像できます」
「不満だと!?それが国を売る理由になるのか!」
ハルゼーが机を叩いた。
「奴は、我々を腐敗した賭博師と呼んだそうだ。笑わせる!
奴こそが、我々の勝利という盤面をひっくり返そうとする、卑劣な狂人だ!」
ハルゼーは、顔を近づけ、ハリソンを射るような視線を送った。
「貴様に、奴を追う『掃討部隊』の指揮官を命じる。
貴様は奴の戦術を最もよく知る男だ。奴はどこへ向かう?奴は何を企んでいる?」
ハリソンは、胸に鉛の塊が落ちたような重さを感じた。
親友の追跡者。それは、軍人としての責務と
個人的な友情との間で、彼を永遠に引き裂くことを意味した。
「パターソンは、無意味な特攻を嫌う。
彼の行動は、必ず合理的な目的に基づいています」
ハリソンは沈思した。
「彼が技術を手土産にジャップに接触したとすれば
それは戦局を根本的に変えるためです。単なるゲリラ戦ではなく
科学的な優位性を証明するための、限定的な、しかし決定的な作戦を行うでしょう」
ハルゼー提督は、ハリソンの冷静な分析に満足し
彼の任命を正式に決定した。ハリソン少将は、戦艦ノースカロライナを旗艦とする
掃討部隊の指揮官として、パターソンとその独立遊撃艦隊を追うことになった。
司令部を辞したハリソンは、真珠湾を見下ろす丘の上で
一人静かに立っていた。眼下には
彼が愛し、パターソンが裏切った米海軍の艦隊が広がる。
ハリソンは、ポケットから古い写真を一枚取り出した。
それは、海軍兵学校の卒業記念。
パターソンと彼、そして先に戦死したマッカーシー大佐が
笑顔で並んでいる写真だった。
「ジョージ、人命が艦よりも重いというお前の理想は分かる。
だが、お前がその理想のために国を裏切れば
お前が救おうとしたその命までが、お前を憎むだろう」
ハリソンは、過去のパターソンとの議論を思い出した。
パターソンは、体制の腐敗を批判し、ハリソンは、体制内での改善を主張した。
パターソンは、革命家の気質を持ち、ハリソンは改革派だった。
そして今、革命家は反逆者となり、改革派は追跡者となった。
「ジョージ…お前が本当に、ジャップどもの道具になったのか?」ハリソンは呟いた。
彼は、パターソンの行動に「何らかの大義」が潜んでいることを感じずにはいられなかった。
パターソンは、単なる復讐心や金銭のために裏切る男ではない。
彼の裏切りは、体制に対する、最も純粋な哲学的な挑戦だったのだ。
もし、パターソンの「大義」が、本当に無駄な人命の消耗を止めることであったとしたら?
もし、ハルゼーらの非合理的な指揮が、本当に日米双方の若者を殺し続けているとしたら?
ハリソンは、自らの任務の矛盾に苦しんだ。
軍人としての責務: 裏切り者を殲滅し、最新技術が敵に利用されるのを阻止すること。
これは、アメリカ海軍将校としての絶対的な責務である。
友情と理解: パターソンの動機を理解し、彼が「腐敗した賭博師」と呼んだ
上層部の非合理性を、彼自身も内心では認めていること。
「もし、お前の目的が、戦争を早期に、そして合理的に終結させることだとしたら
私はいったい何のために、お前を撃沈しなければならないのだ?」
彼の苦悩は深かった。彼は、パターソンを追う任務を負うことで
上層部への忠誠心を示すと同時に、パターソンの掲げた大義を否定しなければならなかった。
しかし、その大義が、彼自身の胸の奥深くに響き続けていた。
ハリソン提督は、感情を完全に押し殺し、冷徹な追跡者としての役割を受け入れた。
彼は、パターソンの戦術を知り尽くしているからこそ、最も効果的な追跡計画を立案した。
彼は、掃討部隊の士官たちを集め、最初の訓示を行った。
「諸君。我々が追うべき敵は、単なる裏切り者ではない。
彼は、我々の技術、戦術、そして弱点を完全に把握している。
奴は、科学と合理性を武器に、我々を内側から崩壊させようとするだろう」
ハリソンは、パターソンがパラオ近海で
黒田少将と合流したという情報を受け取っていた。
「奴の狙いは、夜戦だ。奴のアラバマとサウスダコタは
我々のどの艦よりも優れたレーダー誘導射撃能力を持っているはずだ。
我々は、夜間戦闘を避け、奴らが得意とする技術戦ではなく
我々の得意とする航空優勢と物量で奴らを追い詰める」
ハリソンは、彼の親友の戦術を正確に予測し、それを逆手に取る戦略を立てた。
彼の戦略は、パターソンとの長年の議論と訓練に基づいていた。
追跡ルートの特定: 独立遊撃艦隊が本土を目指したルートを予測し
主要な補給線や米軍の前進拠点から離れた海域で捕捉する。
夜間戦闘の厳禁: 掃討部隊の艦艇に、夜間における独立遊撃艦隊との交戦を厳しく禁じる。
航空優勢の確保: 航空母艦レキシントンとヨークタウンを中核とし
昼間に徹底した航空攻撃で敵艦隊を消耗させる。
「我々が奴らを捕捉するまで、決して油断するな。
奴は、世界で最も危険な敵となった。
彼は、我々の最も深い秘密を知っているからだ」
ハリソンは、戦艦ノースカロライナの艦橋で、故郷から遠ざかる海の向こう
パターソンの艦隊がいるはずの闇を見つめた。
「ジョージ、なぜだ?なぜお前は、この国と
私たちとの友情を、その『大義』とやらのために捨てたんだ?」
彼の心は、親友への友情、裏切り者への怒り
そしてパターソンの行動に潜む合理的な疑問という
三つの感情によって深く引き裂かれていた。
真珠湾司令部では、ハルゼー提督が、パターソンと
その艦隊をどう扱うかについて、非公式な指示を出していた。
彼は、パターソンへの憎悪を隠そうとしなかった。
「聞け!もしハリソンが奴らを捕捉したら、交渉は一切無用だ!
あの裏切り者の空母『龍鶴』も、アラバマもサウスダコタも、全て海の底へ沈めろ!
特にパターソン!奴は生かしておく価値もない!」
ハルゼーは、パターソンの合理主義が
自身の英雄主義という指揮哲学を根本から否定したことを許せなかった。
「あの臆病者が掲げた『大義』など、単なる反逆の言い訳だ。
奴は、ジャップどもに魂を売ったのだ。我々の歴史から
ジョージ・O・パターソンという名前は、永遠に抹消されるべきだ!」
ハルゼーの言葉は、単なる軍事的な判断ではなく
個人的な、感情的な復讐の色彩を帯びていた。
彼は、この裏切りを、自己の権威と軍歴に対する、最も深刻な侮辱と受け止めていた。
ハリソン提督は、このハルゼーの激しい憎悪を理解していた。
だからこそ、彼は、この追跡任務が、パターソンとの友情の墓場になることを知っていた。
しかし、軍人として、彼は任務を遂行しなければならない。
戦艦ノースカロライナは、夜明けと共に錨を上げ、西へ針路を取った。
ハリソンの心は、重く冷たい鋼鉄で覆われていた。
彼は、親友の裏切りの背後にある真の動機を理解しながらも
彼を追跡し、殲滅しなければならないという
軍人の宿命を背負って、太平洋の闇へと漕ぎ出した。
この瞬間、裏切り者と追跡者の、壮大な、そして悲劇的な追撃戦の幕が切って落とされたのだ。
ジョージ・O・パターソン中将の裏切りと
彼の率いていた第4打撃群(STG-4)の大部分が日本側に寝返ったという事実は
最高司令部にとって、単なる軍事的な損失を超えた
存在そのものを揺るがす危機だった。米海軍史上、最新鋭の空母、戦艦二隻、重巡二隻
そして最新技術が一挙に敵に奪われるという
前代未聞の事態に、司令官たちは血の気が引いていた。
特に、パターソンが「全滅覚悟の囮任務」を拒否した経緯
そして離脱艦隊に血を流させず、「大義」を掲げて去ったという事実は
ハルゼー提督らの非合理的な指導体制の内なる崩壊を象徴していた。
作戦室は、パターソンが去った時とは
比べ物にならないほどの、暗く、激しい怒りと混乱に満ちていた。
ウィリアム・F・ハルゼー提督は、顔を紫色に変え、机を激しく叩いた。
彼の葉巻の煙は、部屋全体の怒りを具現化しているかのようだった。
「裏切りだ!徹底した裏切りだ!あのクソッタレのパターソンめが!
あの合理主義者を装った臆病者が
こんなことをしでかすとは!奴は自分の信念のために国を売ったのだ!」
「提督」キンケイド提督が、緊張した面持ちで口を開いた。
「問題は、単なる艦艇の喪失ではありません。
奴が、VT信管、高性能レーダー、そして統合射撃管制ノウハウといった
我々の最大の優位性を、あのジャップどもに手渡したことです」
ハルゼーは、怒りを込めて唾を吐いた。
「そうだ!あのジャップどもに、我々の切り札が渡った!
奴らはあれをどう使う!?夜戦だ!あの夜戦狂いのジャップどもに
レーダー誘導の射撃術など渡ってしまったら
我々の艦隊は闇の中で透明な敵に撃ち抜かれることになる!」
司令官たちは、パターソンが裏切り直前に言った言葉、
「貴方方は、人命をチップと見なす、腐敗した賭博師です」という
痛烈な批判を思い出さずにはいられなかった。
彼らは、パターソンの行動が、彼らの非合理的な体制に対する
最も計算され尽くした、冷徹な復讐であることを理解し始めていた。
この危機的状況の中、ハルゼー提督は、パターソンを最もよく知る人物を呼んだ。
ジェームズ・ハリソン少将。パターソンとは海軍兵学校以来の親友であり
共に戦術研究に励んだ同志だった。彼は、パターソンと同じく
冷静沈着な指揮官として知られていたが
パターソンのような過激な合理主義者ではなかった。
ハリソンは、作戦室に入ると、部屋全体を支配する怒りと憎悪の渦に直面した。
ハルゼー提督は、憎しみに満ちた目でハリソンを見つめた。
「ハリソン少将。お前とパターソンは、海軍の双璧と言われていた。
奴がこんな大罪を犯すなど、貴様は知っていたのか!?」
ハリソンは、背筋を伸ばし、冷静に答えた。
「提督。私はジョージ・パターソンの友人でありましたが
彼の裏切りについて事前に知るよしもありません。
しかし、彼の行動は、彼の『人命は艦よりも重い』という哲学
そして上層部の命令に対する彼の根深い不満に起因していることは想像できます」
「不満だと!?それが国を売る理由になるのか!」
ハルゼーが机を叩いた。
「奴は、我々を腐敗した賭博師と呼んだそうだ。笑わせる!
奴こそが、我々の勝利という盤面をひっくり返そうとする、卑劣な狂人だ!」
ハルゼーは、顔を近づけ、ハリソンを射るような視線を送った。
「貴様に、奴を追う『掃討部隊』の指揮官を命じる。
貴様は奴の戦術を最もよく知る男だ。奴はどこへ向かう?奴は何を企んでいる?」
ハリソンは、胸に鉛の塊が落ちたような重さを感じた。
親友の追跡者。それは、軍人としての責務と
個人的な友情との間で、彼を永遠に引き裂くことを意味した。
「パターソンは、無意味な特攻を嫌う。
彼の行動は、必ず合理的な目的に基づいています」
ハリソンは沈思した。
「彼が技術を手土産にジャップに接触したとすれば
それは戦局を根本的に変えるためです。単なるゲリラ戦ではなく
科学的な優位性を証明するための、限定的な、しかし決定的な作戦を行うでしょう」
ハルゼー提督は、ハリソンの冷静な分析に満足し
彼の任命を正式に決定した。ハリソン少将は、戦艦ノースカロライナを旗艦とする
掃討部隊の指揮官として、パターソンとその独立遊撃艦隊を追うことになった。
司令部を辞したハリソンは、真珠湾を見下ろす丘の上で
一人静かに立っていた。眼下には
彼が愛し、パターソンが裏切った米海軍の艦隊が広がる。
ハリソンは、ポケットから古い写真を一枚取り出した。
それは、海軍兵学校の卒業記念。
パターソンと彼、そして先に戦死したマッカーシー大佐が
笑顔で並んでいる写真だった。
「ジョージ、人命が艦よりも重いというお前の理想は分かる。
だが、お前がその理想のために国を裏切れば
お前が救おうとしたその命までが、お前を憎むだろう」
ハリソンは、過去のパターソンとの議論を思い出した。
パターソンは、体制の腐敗を批判し、ハリソンは、体制内での改善を主張した。
パターソンは、革命家の気質を持ち、ハリソンは改革派だった。
そして今、革命家は反逆者となり、改革派は追跡者となった。
「ジョージ…お前が本当に、ジャップどもの道具になったのか?」ハリソンは呟いた。
彼は、パターソンの行動に「何らかの大義」が潜んでいることを感じずにはいられなかった。
パターソンは、単なる復讐心や金銭のために裏切る男ではない。
彼の裏切りは、体制に対する、最も純粋な哲学的な挑戦だったのだ。
もし、パターソンの「大義」が、本当に無駄な人命の消耗を止めることであったとしたら?
もし、ハルゼーらの非合理的な指揮が、本当に日米双方の若者を殺し続けているとしたら?
ハリソンは、自らの任務の矛盾に苦しんだ。
軍人としての責務: 裏切り者を殲滅し、最新技術が敵に利用されるのを阻止すること。
これは、アメリカ海軍将校としての絶対的な責務である。
友情と理解: パターソンの動機を理解し、彼が「腐敗した賭博師」と呼んだ
上層部の非合理性を、彼自身も内心では認めていること。
「もし、お前の目的が、戦争を早期に、そして合理的に終結させることだとしたら
私はいったい何のために、お前を撃沈しなければならないのだ?」
彼の苦悩は深かった。彼は、パターソンを追う任務を負うことで
上層部への忠誠心を示すと同時に、パターソンの掲げた大義を否定しなければならなかった。
しかし、その大義が、彼自身の胸の奥深くに響き続けていた。
ハリソン提督は、感情を完全に押し殺し、冷徹な追跡者としての役割を受け入れた。
彼は、パターソンの戦術を知り尽くしているからこそ、最も効果的な追跡計画を立案した。
彼は、掃討部隊の士官たちを集め、最初の訓示を行った。
「諸君。我々が追うべき敵は、単なる裏切り者ではない。
彼は、我々の技術、戦術、そして弱点を完全に把握している。
奴は、科学と合理性を武器に、我々を内側から崩壊させようとするだろう」
ハリソンは、パターソンがパラオ近海で
黒田少将と合流したという情報を受け取っていた。
「奴の狙いは、夜戦だ。奴のアラバマとサウスダコタは
我々のどの艦よりも優れたレーダー誘導射撃能力を持っているはずだ。
我々は、夜間戦闘を避け、奴らが得意とする技術戦ではなく
我々の得意とする航空優勢と物量で奴らを追い詰める」
ハリソンは、彼の親友の戦術を正確に予測し、それを逆手に取る戦略を立てた。
彼の戦略は、パターソンとの長年の議論と訓練に基づいていた。
追跡ルートの特定: 独立遊撃艦隊が本土を目指したルートを予測し
主要な補給線や米軍の前進拠点から離れた海域で捕捉する。
夜間戦闘の厳禁: 掃討部隊の艦艇に、夜間における独立遊撃艦隊との交戦を厳しく禁じる。
航空優勢の確保: 航空母艦レキシントンとヨークタウンを中核とし
昼間に徹底した航空攻撃で敵艦隊を消耗させる。
「我々が奴らを捕捉するまで、決して油断するな。
奴は、世界で最も危険な敵となった。
彼は、我々の最も深い秘密を知っているからだ」
ハリソンは、戦艦ノースカロライナの艦橋で、故郷から遠ざかる海の向こう
パターソンの艦隊がいるはずの闇を見つめた。
「ジョージ、なぜだ?なぜお前は、この国と
私たちとの友情を、その『大義』とやらのために捨てたんだ?」
彼の心は、親友への友情、裏切り者への怒り
そしてパターソンの行動に潜む合理的な疑問という
三つの感情によって深く引き裂かれていた。
真珠湾司令部では、ハルゼー提督が、パターソンと
その艦隊をどう扱うかについて、非公式な指示を出していた。
彼は、パターソンへの憎悪を隠そうとしなかった。
「聞け!もしハリソンが奴らを捕捉したら、交渉は一切無用だ!
あの裏切り者の空母『龍鶴』も、アラバマもサウスダコタも、全て海の底へ沈めろ!
特にパターソン!奴は生かしておく価値もない!」
ハルゼーは、パターソンの合理主義が
自身の英雄主義という指揮哲学を根本から否定したことを許せなかった。
「あの臆病者が掲げた『大義』など、単なる反逆の言い訳だ。
奴は、ジャップどもに魂を売ったのだ。我々の歴史から
ジョージ・O・パターソンという名前は、永遠に抹消されるべきだ!」
ハルゼーの言葉は、単なる軍事的な判断ではなく
個人的な、感情的な復讐の色彩を帯びていた。
彼は、この裏切りを、自己の権威と軍歴に対する、最も深刻な侮辱と受け止めていた。
ハリソン提督は、このハルゼーの激しい憎悪を理解していた。
だからこそ、彼は、この追跡任務が、パターソンとの友情の墓場になることを知っていた。
しかし、軍人として、彼は任務を遂行しなければならない。
戦艦ノースカロライナは、夜明けと共に錨を上げ、西へ針路を取った。
ハリソンの心は、重く冷たい鋼鉄で覆われていた。
彼は、親友の裏切りの背後にある真の動機を理解しながらも
彼を追跡し、殲滅しなければならないという
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(「小説家になろう」に投稿している「新選組、西南戦争へ」の加筆修正版です)
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