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ミッドウェーの盾
直撃弾
日本時間6月5日12時30分
ミッドウェー海域の薄雲の下では
日米両艦隊の運命を分かつ新たな戦いが幕を開けようとしていた。
疲弊し、母艦の大部分を失った日本艦隊は、
もはや逃走を続けることを選ばなかった。
巻風少将率いる水上戦闘部隊は
阿部中将の許可を得て、追撃してくる米海軍艦隊に対し
反転し交戦後撃破せんとしていた。
巻風少将の座乗する「筑波」を先頭に
「生駒」がその隣に続く。その背後には
第十七駆逐隊の駆逐艦「磯風」「浦風」「浜風」「谷風」が護衛の陣形を取り
最後尾には、まさに巨大な盾と矛である
金剛型高速戦艦「榛名」「霧島」が、その堂々たる艦影を見せていた。
彼らは、米艦隊と同航戦の形を取りながら、徐々に敵との距離を詰めていく。
「距離、三〇〇〇〇メートル!」
測的員の声が、「筑波」の艦橋に響き渡る。
海野信一郎少尉は、双眼鏡越しに
霞む水平線上に点々と浮かぶ米艦隊の艦影を捉えていた。
重巡「ミネアポリス」を筆頭に
その巨体を揺らしながら接近してくる敵艦隊は
数の上では圧倒的な優位を誇っていた。しかし、この距離ならば
日本艦隊の誇る長射程の主砲が一方的に火を噴くことができる。
互いに母艦航空隊を持たないこの水上戦闘において
最初に重要な役割を担うのは、弾着観測機だった
両艦隊は、主砲発射に先立ち、観測機を射出した
まず、米艦隊からOS2U水上観測機がカタパルトの轟音と共に
空へと舞い上がる。
続いて、日本艦隊からも、「榛名」と「霧島」
そして「筑波」と「生駒」から、零式水上観測機が次々と発艦していく
彼らは、迫りくる砲撃戦の渦中を飛行し
弾着を観測して射撃を修正するという、極めて危険な任務を負っていた。
昼12時35分、静寂を破る轟音が、ミッドウェーの空に響き渡った。
「榛名、霧島、撃ち方始め!」
巻風少将の命令が、「筑波」の艦橋に伝達される。
まず、戦艦「榛名」と「霧島」の八門の35.6cm砲が、火を噴いた。
ドドドドォォォンッ!
と、地球が揺れるかのような轟音と共に
巨大な砲弾が白い閃光を放ちながら空へと舞い上がる
その砲弾は、遥か彼方の米艦隊へと、ゆっくりと、しかし確実に
その死の弾道を辿っていく。その姿は、まるで荒ぶる神々の雷鳴のようだった。
続いて、一呼吸置いた直後、「筑波」と「生駒」の31cm主砲もまた
その火力を解き放った。
ドォォォンッ!
と、戦艦に匹敵する砲声が響き渡り、徹甲弾が空を切り裂いていく。
その轟音は、艦の全身を揺るがし、海野の体は激しい衝撃に叩きつけられた。
艦橋の中には、火薬の焦げ付いた匂いがし
海野の耳には、耳鳴りのような高音が響いていた。
「次弾装填急げ 即応弾が足りんぞ!弾庫から揚弾しろ!」
砲塔内部からの報告が、海野のヘッドフォンに伝わってくる。
砲員たちは、汗と油にまみれ、しかしその表情には
この瞬間のために訓練を重ねてきた者だけが持つ
研ぎ澄まされた集中力が宿っていた。
揚弾筒からは、次々と次の弾薬が運び上げられ
装填作業が急ピッチで進められる。
最初の弾着は、敵艦隊の手前、遥か遠方の海面を叩いた。
巨大な水柱が、ボォォォン!という鈍い音と共に空へと舞い上がる。
観測機からの修正指示が入り、艦橋の射撃盤員たちが照準を微調整する。
そして、第二斉射、第三斉射と、射撃は繰り返された。
日本艦隊は、長射程砲の訓練に重点を置いてきた成果を、今、遺憾なく発揮していた。
米艦隊もまた、日本の射撃に対し、応射を開始した
彼らの8インチ砲も火を噴き、弾丸が日本艦隊の方向に飛来する
しかし、その弾道は、日本艦隊の砲弾よりも明らかに短く
正確性を欠いていた。日本艦隊が
その長射程で安全圏から一方的に攻撃できるという
この状況でのアドバンテージは、あまりにも大きかった。
「弾着、右舷前方!距離誤差五〇メートル!」
「修正、右八!角度下三!」
射撃盤員の指揮を取る海野は、冷静に指示を飛ばし続ける。
彼の脳裏には、これまで訓練で叩き込まれてきた射撃理論と
目の前の海面を舞い上がる水柱のイメージが、鮮明に結びついていた。
そして、第五斉射も命中なし そして第六斉射。
「筑波、第六斉射、発射用意!」
「撃て!」
巻風少将の鋭い命令が響き渡る。
ドドォォォンッ! と
再び「筑波」の主砲が火を噴いた。
弾着の瞬間、海野は、双眼鏡の視野の中に、一つの白い水柱が、
敵の一番艦である重巡洋艦「ミネアポリス」の直近に
他の水柱とは異なる形で立ち上がるのを目撃した。
「命中弾!一番砲塔並びに右舷中央部に直撃弾!」
弾着観測機からの興奮した報告が、無線に飛び込んできた。
海野は、双眼鏡を強く握りしめた。
確かに、巨大な閃光が「ミネアポリス」の艦体から立ち上り
黒煙が噴き出しているのが見えた。誘爆は起きなかったものの
ミネアポリスの戦闘力は、その二発の直撃弾によって
半減したと判断された。主砲塔の機能は停止し
右舷中央部からは、炎が小さく上がっていた。
「よしっ!」
海野は、思わず小さく拳を握りしめた。
「筑波」の砲は、その威力を確実に敵艦に叩き込んだのだ。
艦橋には、興奮と歓喜の声が沸き起こった。
「やれるぞ!日本海軍万歳!」
海野は、隣の松本に声をかけた。
「流石はあなたが育てた砲塔員たちです
第六斉射で当ててくれましたよ」
松本は、口元に微かな笑みを浮かべ、力強く頷いた。
「第五斉射で当てるつもりだったんですがね
まぁ何はともあれ弾着が出たのならこちらのものです」
彼の声には、誇りが満ちていた。
この時、日本海軍の艦艇で戦う全ての兵士の胸には、久しく忘れられていた
あの「日本海海戦」以来の艦隊砲撃戦に対する
純粋な喜びと、興奮がこみ上げていた。
かつて、東郷平八郎元帥率いる連合艦隊が
ロシア艦隊を一方的に撃滅したあの伝説の戦い
その勝利の伝統が、今、ミッドウェーの洋上で
再び息を吹き返そうとしているかのように思われた。
米艦隊の側では、まさに混乱の極みにあった。
先頭を進んでいた旗艦「ミネアポリス」に
突如として直撃弾が降り注いだのだ
彼らは、これまで日本艦隊に「筑波」や「生駒」という
強力な超大型重巡洋艦が存在しているとは知らなかった
日本の厳重な防諜の結果、彼らは全く予期しない、かつてない火力の集中に晒されたのである。
「何だあの火力は!?あの重巡は何だ!?データにはないぞ!」
「ミネアポリス」の艦橋では、キンケイド少将が絶叫した。
彼の顔は、驚愕と怒りで歪んでいた。
彼らは、日本艦隊が、単なる駆逐艦と戦艦だけでなく、
未曾有の射程と火力を併せ持つ重巡洋艦まで擁しているという事実に、
大きな衝撃を受けていた。
その直後、さらなる悲劇が米艦隊を襲った。
「第八斉射、放て!」
巻風少将の命令が、再び響き渡る。
「榛名」と「霧島」の巨大な三五.六cm主砲が再び唸りを上げた。
ドォォォォォン!と、揺るがすような轟音と共に、
巨大な砲弾が空へと飛び立つ。
その砲弾は、弾着観測機の精密な修正を経て、
第二番艦である軽巡洋艦「アトランタ」へと吸い込まれていくかのように見えた。
「命中!アトランタに命中弾!」
次々と報告が入る。
「アトランタ、被弾!複数命中!」
轟音と共に、「アトランタ」の艦体は、まるで木製の模型のように
一瞬にして崩壊した。35.6cm砲弾の直撃弾9発を
軽巡洋艦の脆弱な艦体が一瞬にして受け止めることなど不可能だった
巨大な火柱が空へと舞い上がり、黒煙が瞬時に艦全体を覆い尽くす
その艦影は、瞬く間に洋上から消え去った。
「轟沈…!アトランタ、轟沈!」
無線からの絶叫が、米艦隊全体に響き渡った。
その光景は、米海軍の指揮官たちに、絶望的な衝撃を与えた。
彼らは、まさに目の前で
自軍の艦が、圧倒的な火力の前に、抵抗する間もなく消滅するのを見たのだ。
従来の重巡洋艦に対して圧倒的な射程というアドバンテージを持つ日本艦隊は
ここまで、一方的に攻撃を続けることができていた
米艦隊は、その射程圏外から、ただ砲弾の雨を浴びるばかりで
有効な反撃を行うことができていなかった
ミッドウェーの洋上は、今、日本海軍の誇る砲術の牙が
米海軍を容赦なく砕き始めた
ミッドウェー沖は新たな戦場の舞台となっていた。
ミッドウェー海域の薄雲の下では
日米両艦隊の運命を分かつ新たな戦いが幕を開けようとしていた。
疲弊し、母艦の大部分を失った日本艦隊は、
もはや逃走を続けることを選ばなかった。
巻風少将率いる水上戦闘部隊は
阿部中将の許可を得て、追撃してくる米海軍艦隊に対し
反転し交戦後撃破せんとしていた。
巻風少将の座乗する「筑波」を先頭に
「生駒」がその隣に続く。その背後には
第十七駆逐隊の駆逐艦「磯風」「浦風」「浜風」「谷風」が護衛の陣形を取り
最後尾には、まさに巨大な盾と矛である
金剛型高速戦艦「榛名」「霧島」が、その堂々たる艦影を見せていた。
彼らは、米艦隊と同航戦の形を取りながら、徐々に敵との距離を詰めていく。
「距離、三〇〇〇〇メートル!」
測的員の声が、「筑波」の艦橋に響き渡る。
海野信一郎少尉は、双眼鏡越しに
霞む水平線上に点々と浮かぶ米艦隊の艦影を捉えていた。
重巡「ミネアポリス」を筆頭に
その巨体を揺らしながら接近してくる敵艦隊は
数の上では圧倒的な優位を誇っていた。しかし、この距離ならば
日本艦隊の誇る長射程の主砲が一方的に火を噴くことができる。
互いに母艦航空隊を持たないこの水上戦闘において
最初に重要な役割を担うのは、弾着観測機だった
両艦隊は、主砲発射に先立ち、観測機を射出した
まず、米艦隊からOS2U水上観測機がカタパルトの轟音と共に
空へと舞い上がる。
続いて、日本艦隊からも、「榛名」と「霧島」
そして「筑波」と「生駒」から、零式水上観測機が次々と発艦していく
彼らは、迫りくる砲撃戦の渦中を飛行し
弾着を観測して射撃を修正するという、極めて危険な任務を負っていた。
昼12時35分、静寂を破る轟音が、ミッドウェーの空に響き渡った。
「榛名、霧島、撃ち方始め!」
巻風少将の命令が、「筑波」の艦橋に伝達される。
まず、戦艦「榛名」と「霧島」の八門の35.6cm砲が、火を噴いた。
ドドドドォォォンッ!
と、地球が揺れるかのような轟音と共に
巨大な砲弾が白い閃光を放ちながら空へと舞い上がる
その砲弾は、遥か彼方の米艦隊へと、ゆっくりと、しかし確実に
その死の弾道を辿っていく。その姿は、まるで荒ぶる神々の雷鳴のようだった。
続いて、一呼吸置いた直後、「筑波」と「生駒」の31cm主砲もまた
その火力を解き放った。
ドォォォンッ!
と、戦艦に匹敵する砲声が響き渡り、徹甲弾が空を切り裂いていく。
その轟音は、艦の全身を揺るがし、海野の体は激しい衝撃に叩きつけられた。
艦橋の中には、火薬の焦げ付いた匂いがし
海野の耳には、耳鳴りのような高音が響いていた。
「次弾装填急げ 即応弾が足りんぞ!弾庫から揚弾しろ!」
砲塔内部からの報告が、海野のヘッドフォンに伝わってくる。
砲員たちは、汗と油にまみれ、しかしその表情には
この瞬間のために訓練を重ねてきた者だけが持つ
研ぎ澄まされた集中力が宿っていた。
揚弾筒からは、次々と次の弾薬が運び上げられ
装填作業が急ピッチで進められる。
最初の弾着は、敵艦隊の手前、遥か遠方の海面を叩いた。
巨大な水柱が、ボォォォン!という鈍い音と共に空へと舞い上がる。
観測機からの修正指示が入り、艦橋の射撃盤員たちが照準を微調整する。
そして、第二斉射、第三斉射と、射撃は繰り返された。
日本艦隊は、長射程砲の訓練に重点を置いてきた成果を、今、遺憾なく発揮していた。
米艦隊もまた、日本の射撃に対し、応射を開始した
彼らの8インチ砲も火を噴き、弾丸が日本艦隊の方向に飛来する
しかし、その弾道は、日本艦隊の砲弾よりも明らかに短く
正確性を欠いていた。日本艦隊が
その長射程で安全圏から一方的に攻撃できるという
この状況でのアドバンテージは、あまりにも大きかった。
「弾着、右舷前方!距離誤差五〇メートル!」
「修正、右八!角度下三!」
射撃盤員の指揮を取る海野は、冷静に指示を飛ばし続ける。
彼の脳裏には、これまで訓練で叩き込まれてきた射撃理論と
目の前の海面を舞い上がる水柱のイメージが、鮮明に結びついていた。
そして、第五斉射も命中なし そして第六斉射。
「筑波、第六斉射、発射用意!」
「撃て!」
巻風少将の鋭い命令が響き渡る。
ドドォォォンッ! と
再び「筑波」の主砲が火を噴いた。
弾着の瞬間、海野は、双眼鏡の視野の中に、一つの白い水柱が、
敵の一番艦である重巡洋艦「ミネアポリス」の直近に
他の水柱とは異なる形で立ち上がるのを目撃した。
「命中弾!一番砲塔並びに右舷中央部に直撃弾!」
弾着観測機からの興奮した報告が、無線に飛び込んできた。
海野は、双眼鏡を強く握りしめた。
確かに、巨大な閃光が「ミネアポリス」の艦体から立ち上り
黒煙が噴き出しているのが見えた。誘爆は起きなかったものの
ミネアポリスの戦闘力は、その二発の直撃弾によって
半減したと判断された。主砲塔の機能は停止し
右舷中央部からは、炎が小さく上がっていた。
「よしっ!」
海野は、思わず小さく拳を握りしめた。
「筑波」の砲は、その威力を確実に敵艦に叩き込んだのだ。
艦橋には、興奮と歓喜の声が沸き起こった。
「やれるぞ!日本海軍万歳!」
海野は、隣の松本に声をかけた。
「流石はあなたが育てた砲塔員たちです
第六斉射で当ててくれましたよ」
松本は、口元に微かな笑みを浮かべ、力強く頷いた。
「第五斉射で当てるつもりだったんですがね
まぁ何はともあれ弾着が出たのならこちらのものです」
彼の声には、誇りが満ちていた。
この時、日本海軍の艦艇で戦う全ての兵士の胸には、久しく忘れられていた
あの「日本海海戦」以来の艦隊砲撃戦に対する
純粋な喜びと、興奮がこみ上げていた。
かつて、東郷平八郎元帥率いる連合艦隊が
ロシア艦隊を一方的に撃滅したあの伝説の戦い
その勝利の伝統が、今、ミッドウェーの洋上で
再び息を吹き返そうとしているかのように思われた。
米艦隊の側では、まさに混乱の極みにあった。
先頭を進んでいた旗艦「ミネアポリス」に
突如として直撃弾が降り注いだのだ
彼らは、これまで日本艦隊に「筑波」や「生駒」という
強力な超大型重巡洋艦が存在しているとは知らなかった
日本の厳重な防諜の結果、彼らは全く予期しない、かつてない火力の集中に晒されたのである。
「何だあの火力は!?あの重巡は何だ!?データにはないぞ!」
「ミネアポリス」の艦橋では、キンケイド少将が絶叫した。
彼の顔は、驚愕と怒りで歪んでいた。
彼らは、日本艦隊が、単なる駆逐艦と戦艦だけでなく、
未曾有の射程と火力を併せ持つ重巡洋艦まで擁しているという事実に、
大きな衝撃を受けていた。
その直後、さらなる悲劇が米艦隊を襲った。
「第八斉射、放て!」
巻風少将の命令が、再び響き渡る。
「榛名」と「霧島」の巨大な三五.六cm主砲が再び唸りを上げた。
ドォォォォォン!と、揺るがすような轟音と共に、
巨大な砲弾が空へと飛び立つ。
その砲弾は、弾着観測機の精密な修正を経て、
第二番艦である軽巡洋艦「アトランタ」へと吸い込まれていくかのように見えた。
「命中!アトランタに命中弾!」
次々と報告が入る。
「アトランタ、被弾!複数命中!」
轟音と共に、「アトランタ」の艦体は、まるで木製の模型のように
一瞬にして崩壊した。35.6cm砲弾の直撃弾9発を
軽巡洋艦の脆弱な艦体が一瞬にして受け止めることなど不可能だった
巨大な火柱が空へと舞い上がり、黒煙が瞬時に艦全体を覆い尽くす
その艦影は、瞬く間に洋上から消え去った。
「轟沈…!アトランタ、轟沈!」
無線からの絶叫が、米艦隊全体に響き渡った。
その光景は、米海軍の指揮官たちに、絶望的な衝撃を与えた。
彼らは、まさに目の前で
自軍の艦が、圧倒的な火力の前に、抵抗する間もなく消滅するのを見たのだ。
従来の重巡洋艦に対して圧倒的な射程というアドバンテージを持つ日本艦隊は
ここまで、一方的に攻撃を続けることができていた
米艦隊は、その射程圏外から、ただ砲弾の雨を浴びるばかりで
有効な反撃を行うことができていなかった
ミッドウェーの洋上は、今、日本海軍の誇る砲術の牙が
米海軍を容赦なく砕き始めた
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