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ミッドウェーの盾
夜戦突入
日本時間6月5日、ミッドウェー海域の洋上は
壮絶な艦隊砲撃戦の余韻に包まれていた
日本艦隊の圧倒的な長距離砲撃は、米艦隊に多大な損害を与え
軽巡洋艦「アトランタ」を轟沈させ、重巡洋艦「ミネアポリス」を大破させた
しかし、その激烈な戦いも、刻一刻と近づく日没には抗えなかった。
西の空は、まるで戦場の血を映すかのように
深いオレンジ色に染まり始めていた。陽は徐々に水平線へと沈み
昼間の明るい光は、ゆっくりと、しかし確実にその輝きを失っていく
それに伴い、艦隊間の視程は急速に悪化していった
遠方で交わされていた砲弾の飛来数も減少し、轟音の代わりに
波が艦体にぶつかる音や、風の唸り声が、戦場に一時的な静寂をもたらした
それは、嵐の前の、不気味な静けさだった。
「筑波」の艦橋から、海野信一郎少尉は
その夕焼けの海を凝視していた。燃え盛るような橙色と
深い藍色の混じり合う空は、まるで一枚の絵画のように美しかった
しかし、その美しさの中に潜む、新たな戦いの予感に
海野の心は引き締められていた。昼間の激しい消耗は
彼の肉体を極限まで疲弊させていたが
これから始まるであろう夜戦への緊張感が、彼を眠りから遠ざけていた
体中が、次の戦いの準備のために、高揚しているような感覚だった。
「総員、夜戦準備!急げ!」
巻風少将の、冷静だが、どこか高揚した声が艦橋に響き渡る
夜戦――それは、日本海軍が世界に誇る、十八番の戦術だった
日露戦争の日本海海戦以来、日本海軍は
この暗闇の中での艦隊砲撃戦と魚雷攻撃に
血のにじむような訓練と研究を重ねてきたのだ
九三式酸素魚雷という、強力無比な秘密兵器を持ち
優れた光学機器と、何よりも夜間戦闘に特化した兵士たちの練度が
彼らの揺るぎない自信の源だった。
「砲術科、夜間照準器に切り替え!砲身の冷却急げ」
海野は、疲労を押し殺し、正確な指示を飛ばした
主砲の砲身は、昼間の連続射撃で熱を帯びている。
このままでは、夜間の射撃精度に影響が出る
砲術員たちは、汗だくになりながら、慣れた手つきで砲身に冷水をかけ
冷却作業を進めていく。弾薬庫からは
再び徹甲弾が揚弾筒で運び上げられていた
夜戦では、敵艦の急所を一撃で貫く徹甲弾こそが、決定打となり得る。
駆逐艦の艦内では、各所で夜戦への移行作業が迅速に進められていた。
魚雷発射管は、油圧の唸りを上げて旋回し
装填員たちが九三式酸素魚雷の最終点検を行っていた
巨大な魚雷が、発射管の中で鈍い光を放つ
榛名では探照灯が、暗闇の海面を切り裂く準備を整え
星弾を装填された副砲は、夜空を照らすための火力を待っていた
兵士たちの顔には、疲労の色が濃く浮かんでいたが
彼らの目には、夜戦への決意と、昼間の優位をさらに決定的なものにしようとする
静かな闘志が宿っていた。彼らは
この夜戦こそが、ミッドウェーの戦いの最終的な趨勢を決めるものだと理解していたのだ。
一方、米艦隊もまた、刻一刻と迫る夜戦への準備を始めていた。
トーマス・C・キンケイド少将は、自身の旗艦「ミネアポリス」が大破したため
残存する重巡洋艦「ニューオーリンズ」へと移乗していた。
彼の顔は、疲労困憊の中にも、不屈の闘志が宿っていた。
「全艦、レーダーを最大限に活用せよ!
対魚雷警戒を厳重に!照明弾の準備を急げ!」
キンケイド少将の命令が、米艦隊の各艦に響き渡った。
彼らは、日本海軍ほど夜戦慣れしていない。
しかし、米海軍はレーダー技術において優位にあり
この夜戦ではその技術が彼らの大きな武器となるはずだった。
彼は、レーダーの索敵能力と、駆逐艦が放つ魚雷による反撃に望みを託していた。
「この夜戦が、奴らを完全に撃滅する最後のチャンスだ!
ここで叩き潰さねば、奴らは生き残って、我々にさらなる厄介をもたらすだろう!」
キンケイド少将は、参謀たちに語りかけた。
彼の言葉には、昼間の屈辱的な敗北と、そして日本艦隊の不屈の反撃に対する
激しい報復の念が込められていた。
彼は、この夜戦で、日本艦隊の残存戦力を完全に排除することこそが
ミッドウェーでの勝利を確固たるものにする唯一の道だと認識していた。
完全に闇に包まれたミッドウェーの洋上は深い沈黙に支配されていた
両艦隊は、互いの存在を探り合うかのように
ゆっくりと、しかし確実に距離を詰めていた。レーダーは
微かな信号音を送り出し、闇の中の敵影を捉えようと努めていた
耳を澄ませれば、遠くで聞こえる波の音や、自艦のスクリューが水を掻く音が
極度の緊張感をさらに高める。全ての視覚情報が遮断された状況下で
聴覚と、そして第六感ともいうべき直感だけが、彼らの頼りだった。
その緊迫した沈黙を、最初に破ったのは、日本艦隊だった。
ドォォォォォン!
「榛名」の艦体から、一瞬、稲妻のような閃光が走ったかと思うと
星弾が夜空へと打ち上げられた。ゆっくりと弧を描いて上昇する星弾は
やがて最高点に達し、そこで炸裂した。
パァァァン!
と、耳をつんざくような破裂音と共に
星弾から放たれた無数のマグネシウムフレアが
まばゆいばかりの白い光を放ちながら
パラシュートでゆっくりと降下していく
その光は、瞬く間に戦場全体を白く照らし出した。
海野の双眼鏡の視野の中に、星弾の光に浮かび上がる米艦隊の艦影が
鮮明に映し出された。重巡洋艦の巨大な船体
そしてその周囲を護る駆逐艦の細いシルエット
まるで白昼のような光景が、闇夜に一瞬だけ出現したのだ
その光の中に浮かび上がる敵艦の姿は、次の戦闘の引き金となった
日本艦隊の全ての砲門が、照らし出された目標へと旋回する
ミッドウェーの洋上は、今、新たな血戦の幕開けを告げていた
壮絶な艦隊砲撃戦の余韻に包まれていた
日本艦隊の圧倒的な長距離砲撃は、米艦隊に多大な損害を与え
軽巡洋艦「アトランタ」を轟沈させ、重巡洋艦「ミネアポリス」を大破させた
しかし、その激烈な戦いも、刻一刻と近づく日没には抗えなかった。
西の空は、まるで戦場の血を映すかのように
深いオレンジ色に染まり始めていた。陽は徐々に水平線へと沈み
昼間の明るい光は、ゆっくりと、しかし確実にその輝きを失っていく
それに伴い、艦隊間の視程は急速に悪化していった
遠方で交わされていた砲弾の飛来数も減少し、轟音の代わりに
波が艦体にぶつかる音や、風の唸り声が、戦場に一時的な静寂をもたらした
それは、嵐の前の、不気味な静けさだった。
「筑波」の艦橋から、海野信一郎少尉は
その夕焼けの海を凝視していた。燃え盛るような橙色と
深い藍色の混じり合う空は、まるで一枚の絵画のように美しかった
しかし、その美しさの中に潜む、新たな戦いの予感に
海野の心は引き締められていた。昼間の激しい消耗は
彼の肉体を極限まで疲弊させていたが
これから始まるであろう夜戦への緊張感が、彼を眠りから遠ざけていた
体中が、次の戦いの準備のために、高揚しているような感覚だった。
「総員、夜戦準備!急げ!」
巻風少将の、冷静だが、どこか高揚した声が艦橋に響き渡る
夜戦――それは、日本海軍が世界に誇る、十八番の戦術だった
日露戦争の日本海海戦以来、日本海軍は
この暗闇の中での艦隊砲撃戦と魚雷攻撃に
血のにじむような訓練と研究を重ねてきたのだ
九三式酸素魚雷という、強力無比な秘密兵器を持ち
優れた光学機器と、何よりも夜間戦闘に特化した兵士たちの練度が
彼らの揺るぎない自信の源だった。
「砲術科、夜間照準器に切り替え!砲身の冷却急げ」
海野は、疲労を押し殺し、正確な指示を飛ばした
主砲の砲身は、昼間の連続射撃で熱を帯びている。
このままでは、夜間の射撃精度に影響が出る
砲術員たちは、汗だくになりながら、慣れた手つきで砲身に冷水をかけ
冷却作業を進めていく。弾薬庫からは
再び徹甲弾が揚弾筒で運び上げられていた
夜戦では、敵艦の急所を一撃で貫く徹甲弾こそが、決定打となり得る。
駆逐艦の艦内では、各所で夜戦への移行作業が迅速に進められていた。
魚雷発射管は、油圧の唸りを上げて旋回し
装填員たちが九三式酸素魚雷の最終点検を行っていた
巨大な魚雷が、発射管の中で鈍い光を放つ
榛名では探照灯が、暗闇の海面を切り裂く準備を整え
星弾を装填された副砲は、夜空を照らすための火力を待っていた
兵士たちの顔には、疲労の色が濃く浮かんでいたが
彼らの目には、夜戦への決意と、昼間の優位をさらに決定的なものにしようとする
静かな闘志が宿っていた。彼らは
この夜戦こそが、ミッドウェーの戦いの最終的な趨勢を決めるものだと理解していたのだ。
一方、米艦隊もまた、刻一刻と迫る夜戦への準備を始めていた。
トーマス・C・キンケイド少将は、自身の旗艦「ミネアポリス」が大破したため
残存する重巡洋艦「ニューオーリンズ」へと移乗していた。
彼の顔は、疲労困憊の中にも、不屈の闘志が宿っていた。
「全艦、レーダーを最大限に活用せよ!
対魚雷警戒を厳重に!照明弾の準備を急げ!」
キンケイド少将の命令が、米艦隊の各艦に響き渡った。
彼らは、日本海軍ほど夜戦慣れしていない。
しかし、米海軍はレーダー技術において優位にあり
この夜戦ではその技術が彼らの大きな武器となるはずだった。
彼は、レーダーの索敵能力と、駆逐艦が放つ魚雷による反撃に望みを託していた。
「この夜戦が、奴らを完全に撃滅する最後のチャンスだ!
ここで叩き潰さねば、奴らは生き残って、我々にさらなる厄介をもたらすだろう!」
キンケイド少将は、参謀たちに語りかけた。
彼の言葉には、昼間の屈辱的な敗北と、そして日本艦隊の不屈の反撃に対する
激しい報復の念が込められていた。
彼は、この夜戦で、日本艦隊の残存戦力を完全に排除することこそが
ミッドウェーでの勝利を確固たるものにする唯一の道だと認識していた。
完全に闇に包まれたミッドウェーの洋上は深い沈黙に支配されていた
両艦隊は、互いの存在を探り合うかのように
ゆっくりと、しかし確実に距離を詰めていた。レーダーは
微かな信号音を送り出し、闇の中の敵影を捉えようと努めていた
耳を澄ませれば、遠くで聞こえる波の音や、自艦のスクリューが水を掻く音が
極度の緊張感をさらに高める。全ての視覚情報が遮断された状況下で
聴覚と、そして第六感ともいうべき直感だけが、彼らの頼りだった。
その緊迫した沈黙を、最初に破ったのは、日本艦隊だった。
ドォォォォォン!
「榛名」の艦体から、一瞬、稲妻のような閃光が走ったかと思うと
星弾が夜空へと打ち上げられた。ゆっくりと弧を描いて上昇する星弾は
やがて最高点に達し、そこで炸裂した。
パァァァン!
と、耳をつんざくような破裂音と共に
星弾から放たれた無数のマグネシウムフレアが
まばゆいばかりの白い光を放ちながら
パラシュートでゆっくりと降下していく
その光は、瞬く間に戦場全体を白く照らし出した。
海野の双眼鏡の視野の中に、星弾の光に浮かび上がる米艦隊の艦影が
鮮明に映し出された。重巡洋艦の巨大な船体
そしてその周囲を護る駆逐艦の細いシルエット
まるで白昼のような光景が、闇夜に一瞬だけ出現したのだ
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