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ミッドウェーの盾
利点と欠点
「全艦隊、夜戦開始!第十七駆逐隊、魚雷発射用意!」
巻風少将の命令が、「筑波」の艦橋に響き渡った
彼の声は、冷静でありながらも、夜戦を得意とする日本海軍の自信に満ちていた
日本の駆逐隊は、世界に誇る
九三式酸素魚雷――のちに呼ばれる通称「ロングランス」を搭載している
その長大な射程と、米軍魚雷を凌駕する破壊力は
夜間戦闘において、決定的な武器となる。
駆逐艦「磯風」「浦風」「浜風」「谷風」からなる第十七駆逐隊は
星弾の光に照らされた米艦隊へと、文字通り突進していった
波を蹴立て、艦首を高く上げながら全速力で進む彼らの姿は
闇夜の猟犬さながらだった。それぞれの艦から
白い航跡を残して、九三式酸素魚雷が次々と放たれる
暗闇の中を突き進む魚雷は、まるで死の使者のようだった。
米艦隊では、レーダーが日本艦隊の接近を探知し始めていたが
彼らは日本海軍の魚雷の性能を過小評価していた
魚雷の航跡は、高速で、かつ水深が深い場所を航行するため
目視ではほとんど捉えることができない
さらに、この時の米軍レーダー(日本では電探と呼称)には
一つの目標を探知し続けると周囲の探知ができないという致命的な欠点があった
このため、一つの目標にロックオンすると
他の方向からの接近や、複数の敵艦の存在を把握することが困難になるのだ
四方八方から射撃される中では、彼らのレーダーは
その意味をほとんどなさないに等しかった
米艦隊は、迫り来る魚雷の脅威を認識することなく、回避行動を取ることを考えなかった。
その僅かな間隙を突き、日本艦隊はさらに攻勢を強めた
星弾が次々と打ち上げられ、戦場を煌々と照らし出す
そして、その照明の中に、最も大きく
最も魅力的な標的として浮かび上がったのは、戦艦「霧島」だった
探照灯を照射し、自ら敵の注意を引きつけるかのように
その巨大な艦影を浮かび上がらせる。
「探照灯照射!目標、敵重巡!」
霧島からの探照灯の光が、まるで一条の神光のように闇を貫き
米艦隊の重巡洋艦「ニューオーリンズ」の艦体を捉えた
その瞬間、米艦隊の全ての砲門が、「霧島」へと集中した。
「霧島に集中射撃!」
探照灯は諸刃の刃だ
照射すれば味方艦隊の命中率は大きく向上するが
照射した艦は敵艦の格好の目標となってしまう
キンケイド少将の怒号が「ニューオーリンズ」艦橋に響く
彼らは、光を放つ巨大な艦を、最も優先すべき標的と見定めたのだ
轟音と共に、米重巡洋艦の20.3センチ主砲
駆逐艦の五インチ砲が一斉に火を噴いた。砲弾の雨が「霧島」へと降り注ぐ。
しかし、日本艦隊も黙ってはいない。
「筑波」「生駒」「榛名」「霧島」の主砲が
照明に照らされた米重巡洋艦を狙って、一斉に火を噴いた。ドドォォォォォン!
と、地を揺るがすような轟音と共に、31cm砲と35.6cm砲の砲弾が
夜空を切り裂いていく。砲口から噴き出す火炎が、闇夜に巨大な閃光を刻んだ。
「筑波、左舷に敵弾!」
海野の耳に、けたたましい着弾音が響いた
艦体が激しく揺れ、海野は手すりにしがみついた
艦橋の近く、上部構造物から火花が散り、煙が上がる
米駆逐艦からの五インチ砲弾が「筑波」の艦体に命中したのだ
一発、また一発と、小型の砲弾が命中する。計四発の被弾
小規模な火災が発生し、通信機器の一部が損傷した。
「負傷者発生!応急班、急げ!」
「筑波」の艦内は、被弾の衝撃と混乱に包まれた
しかし、海野は、その混乱の中でも、冷静に指示を出し続けた。
「主砲、射撃を続けろ!敵重巡洋艦に全弾を叩き込め!」
砲術員たちは、被弾の衝撃にも動じず、砲撃を続けた
彼らの目には、日本の夜戦能力への絶対的な自信が宿っていた
彼らは、敵からの砲弾を浴びながらも、ひたすら主砲を叩き込み続けた。
その頃、第十七駆逐隊の一角を担っていた「谷風」に地獄が訪れた
米駆逐艦からの集中砲火を浴びたのだ
闇夜を切り裂くように飛来した二八発もの五インチ砲弾が
「谷風」の艦体を容赦なく叩いた。そのうち数発が
装填中だった予備魚雷に直撃した。轟音と共に、連鎖的な大爆発が起こった
艦首が大きく持ち上がり、艦体は真っ二つに折れて、瞬時に夜の海へと姿を消した。
谷風轟沈――。
「谷風、轟沈…!」
僚艦の「磯風」から、絶叫にも似た報告が無線で入る。
眼前で僚艦が消滅した光景は、日本艦隊に大きな衝撃と悲しみをもたらした。
しかし、立ち止まっている暇はない。戦いは、さらに激しさを増していた。
日本艦隊の正確な砲撃と、九三式酸素魚雷の猛威は、米艦隊にとって悪夢と化した。
ドォォォォォォン!
「ニューオリンズ」の艦体に、日本艦隊の主砲弾が複数命中した。
砲塔が吹き飛び、艦体中央部からは激しい炎が噴き上がった
さらにその直後、脇腹から巨大な水柱が立ち上がる。魚雷が命中したのだ
傾斜を増した「ニューオリンズ」は、わずか数分のうちに
炎上しながら転覆し、ミッドウェーの海へと沈んでいった。
その数分後、今度は「ノーザンプトン」が
複数の砲弾と魚雷の直撃を受けた。主砲が沈黙し
機関部から黒煙が噴き出す。艦橋も吹き飛ばされ
瞬く間に戦闘力を喪失。傾斜を増しながら沈没した。
さらに、キンケイド少将が旗艦としていた「ヴィンセンス」にも
日本艦隊の苛烈な集中砲火が降り注いだ。次々と命中弾を受け
艦体は火だるまとなる。それでもなお、米兵たちは勇敢に戦い続けたが
最後は機関部への被弾が致命傷となり、巨大な爆発と共に艦体は崩壊し、闇の中へと消えていった。
「また沈んだ!」「ヴィンセンスもだ!こんなことがあってたまるか!」
米艦隊の指揮官たちの焦燥と絶望が
無線を飛び交った。彼らは、日本の夜戦能力
特に九三式酸素魚雷の恐ろしさを、その身をもって体験していた。
米駆逐艦隊もまた、壊滅的な被害を受けていた
「ウォーデン」「モナハン」「バルチ」「ベンハム」「モーリー」の五隻が
日本艦隊の駆逐艦や巡洋艦からの砲撃
あるいは魚雷攻撃によって次々と撃沈された
彼らは、夜戦の混乱の中で、日本艦隊の巧みな連携、特に探照灯と
魚雷の組み合わせの犠牲となった。闇夜に白い航跡を残して突き進む魚雷の脅威は
彼らのレーダーの欠点も相まって、回避を極めて困難にしていた。
しかし、日本艦隊もまた、その代償は小さくなかった
米駆逐艦の決死の魚雷攻撃が、ついに高速で航行する戦艦「霧島」を捉えたのだ
四本の魚雷が立て続けに「霧島」の艦体に命中した
ドォォォォォン!と、地を揺るがすような大爆発が起こり
巨大な水柱が夜空へと舞い上がった。「霧島」の艦体は大きく揺れ
機関部から黒煙が噴き出す。艦内の照明が消え、浸水警報が鳴り響く。
「霧島、航行不能!」
絶望的な報告が、日本艦隊に伝達された
日本の誇る戦艦の一隻が、このミッドウェーの夜の海で
ついに戦線から脱落したのだ。艦内の混乱は極限に達し、浸水と火災が乗組員を襲った。
闇夜に響く断続的な砲声と、爆発音は、徐々に遠ざかり
そして数を減らしていった。双方の損害が甚大になり
疲労が極限に達したことで、激しい戦闘は、ゆっくりと
しかし確実に収束へと向かっていた。ミッドウェーの洋上は
血塗られた火花を散らす、もう一つの死闘の舞台となっていた。
巻風少将の命令が、「筑波」の艦橋に響き渡った
彼の声は、冷静でありながらも、夜戦を得意とする日本海軍の自信に満ちていた
日本の駆逐隊は、世界に誇る
九三式酸素魚雷――のちに呼ばれる通称「ロングランス」を搭載している
その長大な射程と、米軍魚雷を凌駕する破壊力は
夜間戦闘において、決定的な武器となる。
駆逐艦「磯風」「浦風」「浜風」「谷風」からなる第十七駆逐隊は
星弾の光に照らされた米艦隊へと、文字通り突進していった
波を蹴立て、艦首を高く上げながら全速力で進む彼らの姿は
闇夜の猟犬さながらだった。それぞれの艦から
白い航跡を残して、九三式酸素魚雷が次々と放たれる
暗闇の中を突き進む魚雷は、まるで死の使者のようだった。
米艦隊では、レーダーが日本艦隊の接近を探知し始めていたが
彼らは日本海軍の魚雷の性能を過小評価していた
魚雷の航跡は、高速で、かつ水深が深い場所を航行するため
目視ではほとんど捉えることができない
さらに、この時の米軍レーダー(日本では電探と呼称)には
一つの目標を探知し続けると周囲の探知ができないという致命的な欠点があった
このため、一つの目標にロックオンすると
他の方向からの接近や、複数の敵艦の存在を把握することが困難になるのだ
四方八方から射撃される中では、彼らのレーダーは
その意味をほとんどなさないに等しかった
米艦隊は、迫り来る魚雷の脅威を認識することなく、回避行動を取ることを考えなかった。
その僅かな間隙を突き、日本艦隊はさらに攻勢を強めた
星弾が次々と打ち上げられ、戦場を煌々と照らし出す
そして、その照明の中に、最も大きく
最も魅力的な標的として浮かび上がったのは、戦艦「霧島」だった
探照灯を照射し、自ら敵の注意を引きつけるかのように
その巨大な艦影を浮かび上がらせる。
「探照灯照射!目標、敵重巡!」
霧島からの探照灯の光が、まるで一条の神光のように闇を貫き
米艦隊の重巡洋艦「ニューオーリンズ」の艦体を捉えた
その瞬間、米艦隊の全ての砲門が、「霧島」へと集中した。
「霧島に集中射撃!」
探照灯は諸刃の刃だ
照射すれば味方艦隊の命中率は大きく向上するが
照射した艦は敵艦の格好の目標となってしまう
キンケイド少将の怒号が「ニューオーリンズ」艦橋に響く
彼らは、光を放つ巨大な艦を、最も優先すべき標的と見定めたのだ
轟音と共に、米重巡洋艦の20.3センチ主砲
駆逐艦の五インチ砲が一斉に火を噴いた。砲弾の雨が「霧島」へと降り注ぐ。
しかし、日本艦隊も黙ってはいない。
「筑波」「生駒」「榛名」「霧島」の主砲が
照明に照らされた米重巡洋艦を狙って、一斉に火を噴いた。ドドォォォォォン!
と、地を揺るがすような轟音と共に、31cm砲と35.6cm砲の砲弾が
夜空を切り裂いていく。砲口から噴き出す火炎が、闇夜に巨大な閃光を刻んだ。
「筑波、左舷に敵弾!」
海野の耳に、けたたましい着弾音が響いた
艦体が激しく揺れ、海野は手すりにしがみついた
艦橋の近く、上部構造物から火花が散り、煙が上がる
米駆逐艦からの五インチ砲弾が「筑波」の艦体に命中したのだ
一発、また一発と、小型の砲弾が命中する。計四発の被弾
小規模な火災が発生し、通信機器の一部が損傷した。
「負傷者発生!応急班、急げ!」
「筑波」の艦内は、被弾の衝撃と混乱に包まれた
しかし、海野は、その混乱の中でも、冷静に指示を出し続けた。
「主砲、射撃を続けろ!敵重巡洋艦に全弾を叩き込め!」
砲術員たちは、被弾の衝撃にも動じず、砲撃を続けた
彼らの目には、日本の夜戦能力への絶対的な自信が宿っていた
彼らは、敵からの砲弾を浴びながらも、ひたすら主砲を叩き込み続けた。
その頃、第十七駆逐隊の一角を担っていた「谷風」に地獄が訪れた
米駆逐艦からの集中砲火を浴びたのだ
闇夜を切り裂くように飛来した二八発もの五インチ砲弾が
「谷風」の艦体を容赦なく叩いた。そのうち数発が
装填中だった予備魚雷に直撃した。轟音と共に、連鎖的な大爆発が起こった
艦首が大きく持ち上がり、艦体は真っ二つに折れて、瞬時に夜の海へと姿を消した。
谷風轟沈――。
「谷風、轟沈…!」
僚艦の「磯風」から、絶叫にも似た報告が無線で入る。
眼前で僚艦が消滅した光景は、日本艦隊に大きな衝撃と悲しみをもたらした。
しかし、立ち止まっている暇はない。戦いは、さらに激しさを増していた。
日本艦隊の正確な砲撃と、九三式酸素魚雷の猛威は、米艦隊にとって悪夢と化した。
ドォォォォォォン!
「ニューオリンズ」の艦体に、日本艦隊の主砲弾が複数命中した。
砲塔が吹き飛び、艦体中央部からは激しい炎が噴き上がった
さらにその直後、脇腹から巨大な水柱が立ち上がる。魚雷が命中したのだ
傾斜を増した「ニューオリンズ」は、わずか数分のうちに
炎上しながら転覆し、ミッドウェーの海へと沈んでいった。
その数分後、今度は「ノーザンプトン」が
複数の砲弾と魚雷の直撃を受けた。主砲が沈黙し
機関部から黒煙が噴き出す。艦橋も吹き飛ばされ
瞬く間に戦闘力を喪失。傾斜を増しながら沈没した。
さらに、キンケイド少将が旗艦としていた「ヴィンセンス」にも
日本艦隊の苛烈な集中砲火が降り注いだ。次々と命中弾を受け
艦体は火だるまとなる。それでもなお、米兵たちは勇敢に戦い続けたが
最後は機関部への被弾が致命傷となり、巨大な爆発と共に艦体は崩壊し、闇の中へと消えていった。
「また沈んだ!」「ヴィンセンスもだ!こんなことがあってたまるか!」
米艦隊の指揮官たちの焦燥と絶望が
無線を飛び交った。彼らは、日本の夜戦能力
特に九三式酸素魚雷の恐ろしさを、その身をもって体験していた。
米駆逐艦隊もまた、壊滅的な被害を受けていた
「ウォーデン」「モナハン」「バルチ」「ベンハム」「モーリー」の五隻が
日本艦隊の駆逐艦や巡洋艦からの砲撃
あるいは魚雷攻撃によって次々と撃沈された
彼らは、夜戦の混乱の中で、日本艦隊の巧みな連携、特に探照灯と
魚雷の組み合わせの犠牲となった。闇夜に白い航跡を残して突き進む魚雷の脅威は
彼らのレーダーの欠点も相まって、回避を極めて困難にしていた。
しかし、日本艦隊もまた、その代償は小さくなかった
米駆逐艦の決死の魚雷攻撃が、ついに高速で航行する戦艦「霧島」を捉えたのだ
四本の魚雷が立て続けに「霧島」の艦体に命中した
ドォォォォォン!と、地を揺るがすような大爆発が起こり
巨大な水柱が夜空へと舞い上がった。「霧島」の艦体は大きく揺れ
機関部から黒煙が噴き出す。艦内の照明が消え、浸水警報が鳴り響く。
「霧島、航行不能!」
絶望的な報告が、日本艦隊に伝達された
日本の誇る戦艦の一隻が、このミッドウェーの夜の海で
ついに戦線から脱落したのだ。艦内の混乱は極限に達し、浸水と火災が乗組員を襲った。
闇夜に響く断続的な砲声と、爆発音は、徐々に遠ざかり
そして数を減らしていった。双方の損害が甚大になり
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