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第三章 氷の国
最終話 逃げる男、追う女
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そこに現れたのは、フラムも良く知る旅の剣士フリードだった。
防寒着を身に纏っている。
「おお、エドアールじゃないか。どうしてこんな所に? ああ、その前に何か壊しちまったみたいだけど、悪かったかな」
「まあ、出来ればそのまま連れて帰りたかったんだが、連れて行かれるよりはいいだろう。お前も覚えているだろう。先生が暗殺を請け負った科学者のアルドだよ」
「アルド? アルド……そう言えば聞いたような。でも、先生が暗殺したって言うか、何処か別の場所で聞いたような……」
「相変わらずだな、お前は。過ぎた事は直ぐ忘れてしまうからな。それで、お前こそ何でこんな所に居るんだ。ここはコンヘラルドだぞ」
「分かってるよ。近くに用事があって来たついでにお前に挨拶だけでもしておこうとしてたんだからさ。ここで会えてよかったよ」
「でも、何であんなに必死に走ってたんだ?」
「いや、偶然あいつに出会っちまってだな。必死で森の中を走ってたら、そいつにぶつかってしまってさ」
「あいつ? ああそうか、エレーナか。そろそろ気持ちを受け入れてやったらどうなんだ?」
「バカ言うなよ。あいつはそう言うんじゃなくて、俺の剣の腕を━━」
「フリード!」
フリードがやって来た方向から、今度は女性の声が聞こえて来た。
フリードが露骨に嫌な顔をする。
「それじゃあ、またいつか会いに来るからな」
「おい、フリード」
呼び止める声が聞こえたのかどうか、フリードはいつもの風の様な速さで、颯爽と駆け去って行った。
「突然現れていつの間にか居なくなるか、変わらないな……」
エドアールが呆れていると、先程声が聞こえて来た方から、剣を携えた女が姿を見せた。
「あれ、エドアールじゃないの。こんな所で何してんの?」
「やっぱりエレーナか」
「やっぱりって、あ! フリードがここに来たのね」
「まだフリードを追い掛けているのか?」
「当り前じゃないの。剣の勝負で私が勝ったら結婚するって約束してるんだから」
「一方的にお前が言っているだけだろう」
「そんな事はどうでもいいのよ。それよりフリードよ。どっちに行ったの?」
「あっちだったな」
「ああそう。じゃあまたね!」
女剣士エレーナは、慌ただしく去って行った。
「二人とも変わってないな」
「エドアール様、お知り合いなのですか?」
集まって来た兵士達の一人が訊く。
「二人とも、同じ先生の下で剣を学んだ友だ」
「そうなんですか。でもよろしいんですか? 先に行った男が去った方とはあらぬ方向を教えていたみたいですが」
「いいんだよ。アルドを連れて行かれそうになったのを防いでくれた礼だ。ただ……」
エドアールはバラバラになっているアルドの山積みの氷を見て、渋い顔をする。
「連れて行かれなかったのはいいが、連れて帰れと言われていただけに、母上は納得してくれはしないだろうな。それに、あの女には逃げられてしまったからな、もし逃せば城門を潜らせないと仰っておられたが、母上の事だ、それだけでは済まんだろうし、どうしたものか……」
「あの、その罰は私達も……」
「さあ、どうだろうな。母上が厳しい方である事はお前たちも知っておろう」
肩を落とした兵士達の顔が、あからさまに青ざめて行く。
「まあ、気にするな。お前達は俺ほどの罰は受けんだろう。だから、お前達はそのアルドを持って城に戻り、事の顛末を母上に報告してくれ」
「エドアール様はいかがなさるのですか?」
「俺か? 俺は別荘に逃げる」
「はい!?」
兵士達が戸惑いを見せる中、エドアールは物凄い速さで走り去ってしまった。
「あの人達の先生って、逃げ方まで教えてたのか?」
「かもしれないな……」
残された兵士達は仕方なくバラバラになったアルドを城に持ち帰り、エドアールに言われた通りに事の顛末をアインベルクに報告した。
心配された罰の方は兵士達とあってか、エドアールが言っていた事もなかったのだが、兵士たるもの、魔獣召喚士たるものと、長々と訓示をたれられ、帰る時にはみんなフラフラになっていたのは、ある意味罰だったのかもしれない。
逃げ出したエドアールは、その後に城に連れ戻されて大きな罰を受けたとか、旅に出て逃げ廻っていたとか、定かではない。
《第四章へと続く》
防寒着を身に纏っている。
「おお、エドアールじゃないか。どうしてこんな所に? ああ、その前に何か壊しちまったみたいだけど、悪かったかな」
「まあ、出来ればそのまま連れて帰りたかったんだが、連れて行かれるよりはいいだろう。お前も覚えているだろう。先生が暗殺を請け負った科学者のアルドだよ」
「アルド? アルド……そう言えば聞いたような。でも、先生が暗殺したって言うか、何処か別の場所で聞いたような……」
「相変わらずだな、お前は。過ぎた事は直ぐ忘れてしまうからな。それで、お前こそ何でこんな所に居るんだ。ここはコンヘラルドだぞ」
「分かってるよ。近くに用事があって来たついでにお前に挨拶だけでもしておこうとしてたんだからさ。ここで会えてよかったよ」
「でも、何であんなに必死に走ってたんだ?」
「いや、偶然あいつに出会っちまってだな。必死で森の中を走ってたら、そいつにぶつかってしまってさ」
「あいつ? ああそうか、エレーナか。そろそろ気持ちを受け入れてやったらどうなんだ?」
「バカ言うなよ。あいつはそう言うんじゃなくて、俺の剣の腕を━━」
「フリード!」
フリードがやって来た方向から、今度は女性の声が聞こえて来た。
フリードが露骨に嫌な顔をする。
「それじゃあ、またいつか会いに来るからな」
「おい、フリード」
呼び止める声が聞こえたのかどうか、フリードはいつもの風の様な速さで、颯爽と駆け去って行った。
「突然現れていつの間にか居なくなるか、変わらないな……」
エドアールが呆れていると、先程声が聞こえて来た方から、剣を携えた女が姿を見せた。
「あれ、エドアールじゃないの。こんな所で何してんの?」
「やっぱりエレーナか」
「やっぱりって、あ! フリードがここに来たのね」
「まだフリードを追い掛けているのか?」
「当り前じゃないの。剣の勝負で私が勝ったら結婚するって約束してるんだから」
「一方的にお前が言っているだけだろう」
「そんな事はどうでもいいのよ。それよりフリードよ。どっちに行ったの?」
「あっちだったな」
「ああそう。じゃあまたね!」
女剣士エレーナは、慌ただしく去って行った。
「二人とも変わってないな」
「エドアール様、お知り合いなのですか?」
集まって来た兵士達の一人が訊く。
「二人とも、同じ先生の下で剣を学んだ友だ」
「そうなんですか。でもよろしいんですか? 先に行った男が去った方とはあらぬ方向を教えていたみたいですが」
「いいんだよ。アルドを連れて行かれそうになったのを防いでくれた礼だ。ただ……」
エドアールはバラバラになっているアルドの山積みの氷を見て、渋い顔をする。
「連れて行かれなかったのはいいが、連れて帰れと言われていただけに、母上は納得してくれはしないだろうな。それに、あの女には逃げられてしまったからな、もし逃せば城門を潜らせないと仰っておられたが、母上の事だ、それだけでは済まんだろうし、どうしたものか……」
「あの、その罰は私達も……」
「さあ、どうだろうな。母上が厳しい方である事はお前たちも知っておろう」
肩を落とした兵士達の顔が、あからさまに青ざめて行く。
「まあ、気にするな。お前達は俺ほどの罰は受けんだろう。だから、お前達はそのアルドを持って城に戻り、事の顛末を母上に報告してくれ」
「エドアール様はいかがなさるのですか?」
「俺か? 俺は別荘に逃げる」
「はい!?」
兵士達が戸惑いを見せる中、エドアールは物凄い速さで走り去ってしまった。
「あの人達の先生って、逃げ方まで教えてたのか?」
「かもしれないな……」
残された兵士達は仕方なくバラバラになったアルドを城に持ち帰り、エドアールに言われた通りに事の顛末をアインベルクに報告した。
心配された罰の方は兵士達とあってか、エドアールが言っていた事もなかったのだが、兵士たるもの、魔獣召喚士たるものと、長々と訓示をたれられ、帰る時にはみんなフラフラになっていたのは、ある意味罰だったのかもしれない。
逃げ出したエドアールは、その後に城に連れ戻されて大きな罰を受けたとか、旅に出て逃げ廻っていたとか、定かではない。
《第四章へと続く》
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