百合好き転生令嬢は、黒髪に生まれたことで親族たちから疎まれていますが、念願通り百合に囲まれ今日も幸せです

tataku

文字の大きさ
15 / 42

第15話 姫様のお世辞はとても上手だ

しおりを挟む
 ああ、とうとう――当日が来てしまった。

 女王様との面会、嫌だなぁ。

 鬱になってしまいそうだよ。

 うつうつ。

「レナ様、朝ですよ? そろそろ、起きてくださいね」

 可愛いカトレアが、私のベットへと近づいてくる。

 私は無駄と知りながらも、布団を顔に被せて、無言の抗議を行った。

 分かってくれ、カトレア。

 私のこの苦しみを!

「何か久々ですね、レナ様が駄駄を捏ねるの」

 その言い方は止めてくれ。

 何か子供扱いされているみたいで、すごく嫌だ!

「ほらほら、レナ様、起きてくださいね~」
 
 子供をあやす様な声音で言われる。カトレアのくせに、生意気な!
  
 思ったより力強く、そして無遠慮に布団を剥ぎ取られ、無言の抗議はあっさりと跳ね返された。

「レナ様?」

 無言を貫く私を見て、カトレアは首を傾げる。

 私は無駄と分かりつつも、体を丸め、寝返りを打ち、カトレアから視線を外した。

 けれど、彼女はいそいそと反対側まで回り込むと、私たちは再び顔を合わせることとなった。

「レナ様。お願いですから、起きてくださいね」

 両手をベットの上に置き、身を乗り出して私の顔を覗き込んでくる。

 カトレアの大きな桃が、激しく自己主張していた。そのため、勝手に手が動き出す。

 だけど私は、無意識に伸ばしかけた手を――寸前で止めることに成功した。
 
 私は安堵の息を吐き、ゆっくりと上体を起こす。

 誕生日の日に、カトレアの胸を触って追いかけられたときのことを、思い出してしまった。本当、馬鹿な記憶だ。
 
「えっと……今、触ろうとしました?」

 とろいくせに、中々にするどい。

「ソンナコトナイヨォ」

 私はわざと臭くカタコトで喋った。

 ここはもう、冗談で流すに限る。

「な、何でいつも、朝なんですか?」

 ん?
 
 カトレアは胸を押さえ、顔を真っ赤にして、私を見つめてくる。

「い、いっつも朝ばかりエッチないたずらをしようとするんですからぁ。……よ、夜なら、私――ちゃんと準備して待ってますから」

 私は慌ててベットから飛び出す。

「さ、さぁ、着替えようかなぁ~」

 場の空気を変えるため、私は鼻歌を奏でる。

「レナ様の……へたれぇ」

 いやいや、へたれじゃないよ?
 
 エッチないたずらをしたら、いっつも顔を真っ赤にして怒ってたじゃん?

 なのに、どういうこと?

 ねぇ、どういうこと!?
 

 
 * * *


 
 派手な赤いロングドレスに着替える。
 
 いつもよりフリルたっぷりな衣装となっており、鏡に映る私は少し――いや、かなり滑稽に見える。地味な黒い髪の毛、地味な顔ではこの衣装が可愛そうだ。
 
 こけしが西洋のドレスを着るものではない。そんなの、世界の常識だよね?
 
 妹も全く同じものを着るのだけど、ラナの綺麗な赤髪と、目鼻立ちがしっかりとした顔にはよく似合う。
 
 愛しの妹の、引き立て役として活躍できるのならば、まぁ――悪い気はしない。

「レナ様、よくお似合いですよ」

 カトレアは目をキラキラとさせ、そんな馬鹿なことを口走った。

 

 部屋を出ると、ちょうどラナと鉢合わせ。その後ろにはマーガレットの姿。
 
 私は、2人に挨拶をした。

「姉様も、その衣装を着ると、普段よりはしっかりとした人間に見えますよ」

 と、ラナは上機嫌そうに言った。
 
 どうやら彼女も、目が節穴のようだ。



 * * *

 

 お母様とメイド長に挨拶し、食事を済ませる。
  
 姫様は約束通り、9時に姿を見せた。

 なんと、姫様おひとりのお出迎えである!

 いくらお城から近いとはいえ、普通ありえないのでは?
 
 姫様は、昨日と同じ姫騎士らしい格好。
 
 あ、いや、別に残念じゃありませんよ? ドレス姿を期待していた訳じゃありませんからね!

「おはようございます、皆様!」

 朝っぱらから、凄い元気な姫様。

 うん、悪くない。
 

 
 メイド3人組に見送られ、城へと向かう。
 
 カトレアたちは、あとで明日のパーティーの準備を手伝うとのこと。その仕事も、向こうからの依頼ではなく、メイド長から申し出たらしい。

 私だったら、絶対に部屋でゴロゴロ一択である!
 

 
 外へ出ると、精鋭部隊の皆が待っていて、私達に頭を下げた。昨日からずっとこの屋敷を護ってくれていたようだ。

「皆、ありがとうね」

 私のそんな言葉で、笑みを浮かべてくれる。

 精鋭部隊の皆は、本当に良い人達で、忠誠心が強い。私の黒髪に対しても――特に気にすることなく、私と妹を別け隔てなく接してくれる。だから私も、彼女たちには心を開いている。

 お母様が精鋭部隊の隊員を選ぶ基準――それは何よりも心を重視する。実力など、後でどうとでもなる――というスパルタ的な思考の持ち主。他人には厳しいが、家族には激甘――それが、うちのお母様である。

  
 
 精鋭部隊の隊長であるバーバラは、城の前まで付いて来てくれた。
 
 彼女はお母様の3つ下の32歳で、私とラナが赤ん坊の頃からのお付き合い。魔法だけでなく、剣の腕も超一流で、よく私と妹に剣の稽古を付けてくれている。私はまぁ、あまりついていけず、見学をしていることが殆どであるけど。

 
 彼女はお母様からも信頼されている数少ない人間の1人。寡黙な人間だが、凄く優しい人。しかも、めちゃくちゃスタイルがよくて美人! 立派な赤い髪は後ろで一纏めにしている。

 悪いところがあるとすれば、それはもう――頑張り過ぎるとこ!

「バーバラ、全然休んでないでしょ」
「いえ、そんなことはありませんよ。レナお嬢様」
「それは嘘。だって顔を見れば分かるよ、そんなの」

 バーバラは少しだけ、困ったように笑う。

 一体、何年の付き合いだと思ってるんだか。

 本当、やれやれである。

「この後、ちゃんと休んでよね」
「はい、分かりました。しっかりと、休まさせていただきます」
「本当に?」
「ええ、本当です」
「そっか、ならばよし!」

 私は親指を上へと突き上げた。

 バーバラも、同じように親指を上に向けてくれる。

「じゃあ、行ってくるね」 

 私が手を振ると、バーバラも手を振り返してくれた。
 
 彼女の静かな、優しげな笑顔が、私は昔から大好きだ。私だけでなく、バーバラは私たち家族にめちゃくちゃ愛されている。

「レナ様は、家臣にも優しいのですね。愛されているのが、よく伝わってきます」

 私が優しい?

 何故、そう思ったのかは分からないけど――。

「それは全くの勘違いです、姫様。私は誰にでも優しくできる人間なんかじゃないですよ? 彼女は家臣じゃなくて、私にとっては、家族みたいなものですから。家族に優しくするのは普通ですよね? だから、私は別に、優しくなんてないです」
「家族……ですか?」
「はい」

 姫様は何故か驚いた感じで、少し目を真ん丸くした後、垂れ目をかなり下げ、笑った。

「とてもいいですね、それは」
「はい、家族が増えることは、とてもいい事です」
「レナ様は、やはりお優しい人だと思います」

 はい? 何故そうなった?

「姫様、ちゃんと聞いてました?」

 ちゃんと聞いていたならば、そんな結論にはならないと思うけども?

 妹が服の裾を引っ張ってくる。抗議しているのだろう。確かに、姫様に対して失礼だったか?

「レナ様は、やはり面白い方ですね」

 姫様は上品に口元を押さえ、静かに笑う。
 
 馬鹿にされている? だけど、不思議と嫌な感じはなかった。

「いい忘れていましたが、赤いドレス。とってもお似合いですよ。凄く綺麗です」

 そんな見え透いたお世辞に、顔が熱くなるのを感じた。私は又、姫様の顔をしばらく見られなくなりそうだ。

「姉様、顔、すっごく真っ赤ですよ?」

 妹は服の裾を引っ張り、そんなことを言った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

俺は美少女をやめたい!

マライヤ・ムー
ファンタジー
美少女になってしまった俺が男に戻る方法は、100人の女の子のくちびるを奪うこと!   けがれなき乙女の園、ささやく魔導書、うなるチェーンソー、そして咲き乱れる百合の花。

処理中です...