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第15話 姫様のお世辞はとても上手だ
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ああ、とうとう――当日が来てしまった。
女王様との面会、嫌だなぁ。
鬱になってしまいそうだよ。
うつうつ。
「レナ様、朝ですよ? そろそろ、起きてくださいね」
可愛いカトレアが、私のベットへと近づいてくる。
私は無駄と知りながらも、布団を顔に被せて、無言の抗議を行った。
分かってくれ、カトレア。
私のこの苦しみを!
「何か久々ですね、レナ様が駄駄を捏ねるの」
その言い方は止めてくれ。
何か子供扱いされているみたいで、すごく嫌だ!
「ほらほら、レナ様、起きてくださいね~」
子供をあやす様な声音で言われる。カトレアのくせに、生意気な!
思ったより力強く、そして無遠慮に布団を剥ぎ取られ、無言の抗議はあっさりと跳ね返された。
「レナ様?」
無言を貫く私を見て、カトレアは首を傾げる。
私は無駄と分かりつつも、体を丸め、寝返りを打ち、カトレアから視線を外した。
けれど、彼女はいそいそと反対側まで回り込むと、私たちは再び顔を合わせることとなった。
「レナ様。お願いですから、起きてくださいね」
両手をベットの上に置き、身を乗り出して私の顔を覗き込んでくる。
カトレアの大きな桃が、激しく自己主張していた。そのため、勝手に手が動き出す。
だけど私は、無意識に伸ばしかけた手を――寸前で止めることに成功した。
私は安堵の息を吐き、ゆっくりと上体を起こす。
誕生日の日に、カトレアの胸を触って追いかけられたときのことを、思い出してしまった。本当、馬鹿な記憶だ。
「えっと……今、触ろうとしました?」
とろいくせに、中々にするどい。
「ソンナコトナイヨォ」
私はわざと臭くカタコトで喋った。
ここはもう、冗談で流すに限る。
「な、何でいつも、朝なんですか?」
ん?
カトレアは胸を押さえ、顔を真っ赤にして、私を見つめてくる。
「い、いっつも朝ばかりエッチないたずらをしようとするんですからぁ。……よ、夜なら、私――ちゃんと準備して待ってますから」
私は慌ててベットから飛び出す。
「さ、さぁ、着替えようかなぁ~」
場の空気を変えるため、私は鼻歌を奏でる。
「レナ様の……へたれぇ」
いやいや、へたれじゃないよ?
エッチないたずらをしたら、いっつも顔を真っ赤にして怒ってたじゃん?
なのに、どういうこと?
ねぇ、どういうこと!?
* * *
派手な赤いロングドレスに着替える。
いつもよりフリルたっぷりな衣装となっており、鏡に映る私は少し――いや、かなり滑稽に見える。地味な黒い髪の毛、地味な顔ではこの衣装が可愛そうだ。
こけしが西洋のドレスを着るものではない。そんなの、世界の常識だよね?
妹も全く同じものを着るのだけど、ラナの綺麗な赤髪と、目鼻立ちがしっかりとした顔にはよく似合う。
愛しの妹の、引き立て役として活躍できるのならば、まぁ――悪い気はしない。
「レナ様、よくお似合いですよ」
カトレアは目をキラキラとさせ、そんな馬鹿なことを口走った。
部屋を出ると、ちょうどラナと鉢合わせ。その後ろにはマーガレットの姿。
私は、2人に挨拶をした。
「姉様も、その衣装を着ると、普段よりはしっかりとした人間に見えますよ」
と、ラナは上機嫌そうに言った。
どうやら彼女も、目が節穴のようだ。
* * *
お母様とメイド長に挨拶し、食事を済ませる。
姫様は約束通り、9時に姿を見せた。
なんと、姫様おひとりのお出迎えである!
いくらお城から近いとはいえ、普通ありえないのでは?
姫様は、昨日と同じ姫騎士らしい格好。
あ、いや、別に残念じゃありませんよ? ドレス姿を期待していた訳じゃありませんからね!
「おはようございます、皆様!」
朝っぱらから、凄い元気な姫様。
うん、悪くない。
メイド3人組に見送られ、城へと向かう。
カトレアたちは、あとで明日のパーティーの準備を手伝うとのこと。その仕事も、向こうからの依頼ではなく、メイド長から申し出たらしい。
私だったら、絶対に部屋でゴロゴロ一択である!
外へ出ると、精鋭部隊の皆が待っていて、私達に頭を下げた。昨日からずっとこの屋敷を護ってくれていたようだ。
「皆、ありがとうね」
私のそんな言葉で、笑みを浮かべてくれる。
精鋭部隊の皆は、本当に良い人達で、忠誠心が強い。私の黒髪に対しても――特に気にすることなく、私と妹を別け隔てなく接してくれる。だから私も、彼女たちには心を開いている。
お母様が精鋭部隊の隊員を選ぶ基準――それは何よりも心を重視する。実力など、後でどうとでもなる――というスパルタ的な思考の持ち主。他人には厳しいが、家族には激甘――それが、うちのお母様である。
精鋭部隊の隊長であるバーバラは、城の前まで付いて来てくれた。
彼女はお母様の3つ下の32歳で、私とラナが赤ん坊の頃からのお付き合い。魔法だけでなく、剣の腕も超一流で、よく私と妹に剣の稽古を付けてくれている。私はまぁ、あまりついていけず、見学をしていることが殆どであるけど。
彼女はお母様からも信頼されている数少ない人間の1人。寡黙な人間だが、凄く優しい人。しかも、めちゃくちゃスタイルがよくて美人! 立派な赤い髪は後ろで一纏めにしている。
悪いところがあるとすれば、それはもう――頑張り過ぎるとこ!
「バーバラ、全然休んでないでしょ」
「いえ、そんなことはありませんよ。レナお嬢様」
「それは嘘。だって顔を見れば分かるよ、そんなの」
バーバラは少しだけ、困ったように笑う。
一体、何年の付き合いだと思ってるんだか。
本当、やれやれである。
「この後、ちゃんと休んでよね」
「はい、分かりました。しっかりと、休まさせていただきます」
「本当に?」
「ええ、本当です」
「そっか、ならばよし!」
私は親指を上へと突き上げた。
バーバラも、同じように親指を上に向けてくれる。
「じゃあ、行ってくるね」
私が手を振ると、バーバラも手を振り返してくれた。
彼女の静かな、優しげな笑顔が、私は昔から大好きだ。私だけでなく、バーバラは私たち家族にめちゃくちゃ愛されている。
「レナ様は、家臣にも優しいのですね。愛されているのが、よく伝わってきます」
私が優しい?
何故、そう思ったのかは分からないけど――。
「それは全くの勘違いです、姫様。私は誰にでも優しくできる人間なんかじゃないですよ? 彼女は家臣じゃなくて、私にとっては、家族みたいなものですから。家族に優しくするのは普通ですよね? だから、私は別に、優しくなんてないです」
「家族……ですか?」
「はい」
姫様は何故か驚いた感じで、少し目を真ん丸くした後、垂れ目をかなり下げ、笑った。
「とてもいいですね、それは」
「はい、家族が増えることは、とてもいい事です」
「レナ様は、やはりお優しい人だと思います」
はい? 何故そうなった?
「姫様、ちゃんと聞いてました?」
ちゃんと聞いていたならば、そんな結論にはならないと思うけども?
妹が服の裾を引っ張ってくる。抗議しているのだろう。確かに、姫様に対して失礼だったか?
「レナ様は、やはり面白い方ですね」
姫様は上品に口元を押さえ、静かに笑う。
馬鹿にされている? だけど、不思議と嫌な感じはなかった。
「いい忘れていましたが、赤いドレス。とってもお似合いですよ。凄く綺麗です」
そんな見え透いたお世辞に、顔が熱くなるのを感じた。私は又、姫様の顔をしばらく見られなくなりそうだ。
「姉様、顔、すっごく真っ赤ですよ?」
妹は服の裾を引っ張り、そんなことを言った。
女王様との面会、嫌だなぁ。
鬱になってしまいそうだよ。
うつうつ。
「レナ様、朝ですよ? そろそろ、起きてくださいね」
可愛いカトレアが、私のベットへと近づいてくる。
私は無駄と知りながらも、布団を顔に被せて、無言の抗議を行った。
分かってくれ、カトレア。
私のこの苦しみを!
「何か久々ですね、レナ様が駄駄を捏ねるの」
その言い方は止めてくれ。
何か子供扱いされているみたいで、すごく嫌だ!
「ほらほら、レナ様、起きてくださいね~」
子供をあやす様な声音で言われる。カトレアのくせに、生意気な!
思ったより力強く、そして無遠慮に布団を剥ぎ取られ、無言の抗議はあっさりと跳ね返された。
「レナ様?」
無言を貫く私を見て、カトレアは首を傾げる。
私は無駄と分かりつつも、体を丸め、寝返りを打ち、カトレアから視線を外した。
けれど、彼女はいそいそと反対側まで回り込むと、私たちは再び顔を合わせることとなった。
「レナ様。お願いですから、起きてくださいね」
両手をベットの上に置き、身を乗り出して私の顔を覗き込んでくる。
カトレアの大きな桃が、激しく自己主張していた。そのため、勝手に手が動き出す。
だけど私は、無意識に伸ばしかけた手を――寸前で止めることに成功した。
私は安堵の息を吐き、ゆっくりと上体を起こす。
誕生日の日に、カトレアの胸を触って追いかけられたときのことを、思い出してしまった。本当、馬鹿な記憶だ。
「えっと……今、触ろうとしました?」
とろいくせに、中々にするどい。
「ソンナコトナイヨォ」
私はわざと臭くカタコトで喋った。
ここはもう、冗談で流すに限る。
「な、何でいつも、朝なんですか?」
ん?
カトレアは胸を押さえ、顔を真っ赤にして、私を見つめてくる。
「い、いっつも朝ばかりエッチないたずらをしようとするんですからぁ。……よ、夜なら、私――ちゃんと準備して待ってますから」
私は慌ててベットから飛び出す。
「さ、さぁ、着替えようかなぁ~」
場の空気を変えるため、私は鼻歌を奏でる。
「レナ様の……へたれぇ」
いやいや、へたれじゃないよ?
エッチないたずらをしたら、いっつも顔を真っ赤にして怒ってたじゃん?
なのに、どういうこと?
ねぇ、どういうこと!?
* * *
派手な赤いロングドレスに着替える。
いつもよりフリルたっぷりな衣装となっており、鏡に映る私は少し――いや、かなり滑稽に見える。地味な黒い髪の毛、地味な顔ではこの衣装が可愛そうだ。
こけしが西洋のドレスを着るものではない。そんなの、世界の常識だよね?
妹も全く同じものを着るのだけど、ラナの綺麗な赤髪と、目鼻立ちがしっかりとした顔にはよく似合う。
愛しの妹の、引き立て役として活躍できるのならば、まぁ――悪い気はしない。
「レナ様、よくお似合いですよ」
カトレアは目をキラキラとさせ、そんな馬鹿なことを口走った。
部屋を出ると、ちょうどラナと鉢合わせ。その後ろにはマーガレットの姿。
私は、2人に挨拶をした。
「姉様も、その衣装を着ると、普段よりはしっかりとした人間に見えますよ」
と、ラナは上機嫌そうに言った。
どうやら彼女も、目が節穴のようだ。
* * *
お母様とメイド長に挨拶し、食事を済ませる。
姫様は約束通り、9時に姿を見せた。
なんと、姫様おひとりのお出迎えである!
いくらお城から近いとはいえ、普通ありえないのでは?
姫様は、昨日と同じ姫騎士らしい格好。
あ、いや、別に残念じゃありませんよ? ドレス姿を期待していた訳じゃありませんからね!
「おはようございます、皆様!」
朝っぱらから、凄い元気な姫様。
うん、悪くない。
メイド3人組に見送られ、城へと向かう。
カトレアたちは、あとで明日のパーティーの準備を手伝うとのこと。その仕事も、向こうからの依頼ではなく、メイド長から申し出たらしい。
私だったら、絶対に部屋でゴロゴロ一択である!
外へ出ると、精鋭部隊の皆が待っていて、私達に頭を下げた。昨日からずっとこの屋敷を護ってくれていたようだ。
「皆、ありがとうね」
私のそんな言葉で、笑みを浮かべてくれる。
精鋭部隊の皆は、本当に良い人達で、忠誠心が強い。私の黒髪に対しても――特に気にすることなく、私と妹を別け隔てなく接してくれる。だから私も、彼女たちには心を開いている。
お母様が精鋭部隊の隊員を選ぶ基準――それは何よりも心を重視する。実力など、後でどうとでもなる――というスパルタ的な思考の持ち主。他人には厳しいが、家族には激甘――それが、うちのお母様である。
精鋭部隊の隊長であるバーバラは、城の前まで付いて来てくれた。
彼女はお母様の3つ下の32歳で、私とラナが赤ん坊の頃からのお付き合い。魔法だけでなく、剣の腕も超一流で、よく私と妹に剣の稽古を付けてくれている。私はまぁ、あまりついていけず、見学をしていることが殆どであるけど。
彼女はお母様からも信頼されている数少ない人間の1人。寡黙な人間だが、凄く優しい人。しかも、めちゃくちゃスタイルがよくて美人! 立派な赤い髪は後ろで一纏めにしている。
悪いところがあるとすれば、それはもう――頑張り過ぎるとこ!
「バーバラ、全然休んでないでしょ」
「いえ、そんなことはありませんよ。レナお嬢様」
「それは嘘。だって顔を見れば分かるよ、そんなの」
バーバラは少しだけ、困ったように笑う。
一体、何年の付き合いだと思ってるんだか。
本当、やれやれである。
「この後、ちゃんと休んでよね」
「はい、分かりました。しっかりと、休まさせていただきます」
「本当に?」
「ええ、本当です」
「そっか、ならばよし!」
私は親指を上へと突き上げた。
バーバラも、同じように親指を上に向けてくれる。
「じゃあ、行ってくるね」
私が手を振ると、バーバラも手を振り返してくれた。
彼女の静かな、優しげな笑顔が、私は昔から大好きだ。私だけでなく、バーバラは私たち家族にめちゃくちゃ愛されている。
「レナ様は、家臣にも優しいのですね。愛されているのが、よく伝わってきます」
私が優しい?
何故、そう思ったのかは分からないけど――。
「それは全くの勘違いです、姫様。私は誰にでも優しくできる人間なんかじゃないですよ? 彼女は家臣じゃなくて、私にとっては、家族みたいなものですから。家族に優しくするのは普通ですよね? だから、私は別に、優しくなんてないです」
「家族……ですか?」
「はい」
姫様は何故か驚いた感じで、少し目を真ん丸くした後、垂れ目をかなり下げ、笑った。
「とてもいいですね、それは」
「はい、家族が増えることは、とてもいい事です」
「レナ様は、やはりお優しい人だと思います」
はい? 何故そうなった?
「姫様、ちゃんと聞いてました?」
ちゃんと聞いていたならば、そんな結論にはならないと思うけども?
妹が服の裾を引っ張ってくる。抗議しているのだろう。確かに、姫様に対して失礼だったか?
「レナ様は、やはり面白い方ですね」
姫様は上品に口元を押さえ、静かに笑う。
馬鹿にされている? だけど、不思議と嫌な感じはなかった。
「いい忘れていましたが、赤いドレス。とってもお似合いですよ。凄く綺麗です」
そんな見え透いたお世辞に、顔が熱くなるのを感じた。私は又、姫様の顔をしばらく見られなくなりそうだ。
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