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第二章
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「ボランティア……ということですね」
「ボラ……という言葉はわかりませんが、クリスティアーヌ様にやる気があるなら私の友人が医師として勤めている診療所で人手を探しております」
「奥様に病人のお世話など……」
「いえ、探しているのはそこで働く人たちの子どもを預かる場所の人材なのです」
「ベビーシッター……ですか」
「……クリスティアーヌ様は色々と私どもが知らない言葉を話される。ということはあちらでもそういった制度があるのですか」
「ベビーシッターは個人に雇われて子どもの面倒をみることが多いので、家庭教師みたいなものでしょうか。もっとたくさんになると、保育園と言って、資格を持った保育士という職業の人たちがお金をもらって親が仕事の間に子どもの面倒をみます。だいたい生後半年くらいの乳児から六歳くらいまでを年齢に分けて。それより大きい子は学校に通います。後、幼稚園と言って三歳から六歳までの子に学校にはいるまでの間に預かって教育する制度もあります。保育園は地域につくる場合と職場に作ってそこで働く人の子どもを預かる場合があります」
「そう、正にそれです!そうですか、お話してよかった。クリスティアーヌ様…『愛理』様がすでにご存じとは、これは心強い。どうですか?是非お手伝いいただけませんか」
「でも、私……何の資格も持っていませんし」
「あちらでは資格が必要だったかもわかりませんが、こちらではそんなもの必要ありません。ようはやる気です。ダレク、マリアンナ、まさかこれも反対されるのですか?」
先生が二人に訊ねる。
二人は横目で互いに視線を交わし、どう答えるか考えている。
「それに、友人もそれなりに腕のある医者です。クリスティアーヌ様の記憶喪失についても何かお役に立てるかもしれません。これまではこちらの主治医のスベン先生にお任せしていましたが、他の医者に診てもらうこともしてみては?ルイスレーン様も国中の名医を集めても、と書いておりましたし」
「社会奉仕なら……人助けに尽力されるのは、貴族の勤めでもありますし」
ダレクが渋々ながら認めてくれた。
「他のお医者に診ていただくのもいいかもしれませんね。ですが奥様におしめを洗濯させるんですか?」
「いや、そこまで人手がないわけでは……」
「私、おしめくらい洗えます。それに、世の中の役に立つことかできたら、自信が持てるようになるんじゃないかしら」
もちろん、洗濯機などないが魔石を使えば何とかなるのではないか。
二人は不承不承ながら納得してくれた。
そして今、私は先生に連れられて王都の街中に出てきていた。
使用人たちが着ている普段着にできるだけ似た洋服を着て、髪は首の後ろでひとつにリボンで纏めている。
結婚するまではとても質素な生活をしていたと聞いているので、案外雰囲気に馴染んでいるんじゃないかと思っている。
お供を付けず外出することに最初は揉めた。
それでもぞろぞろと人を連れては目立つし、侯爵邸の使用人を私の勝手で別のことに連れ出すわけには、いかない。
当面は先生が付き添ってくれることで話がついた。
「先生とそのお医者様はどれくらい親しいのですか?」
「一緒に王立アカデミーで机を並べて以来の仲です。かれこれ三十年以上の付き合いになります。私はアカデミーを卒業してそのままアカデミーで教鞭を取りまして、国王陛下などを教えました。派閥争いがいやで途中で辞めてあちこちの貴族の家庭教師をしております。ルイスレーン様は家庭教師になって初めての生徒です。友人は王立病院の医務官になって王室の主治医まで勤めましたが、最近引退して今度は診療所を始めたところです」
王立アカデミーの教師に王室の主治医?
さらっと話しているけど、すごく偉い人なんじゃ?
「ボラ……という言葉はわかりませんが、クリスティアーヌ様にやる気があるなら私の友人が医師として勤めている診療所で人手を探しております」
「奥様に病人のお世話など……」
「いえ、探しているのはそこで働く人たちの子どもを預かる場所の人材なのです」
「ベビーシッター……ですか」
「……クリスティアーヌ様は色々と私どもが知らない言葉を話される。ということはあちらでもそういった制度があるのですか」
「ベビーシッターは個人に雇われて子どもの面倒をみることが多いので、家庭教師みたいなものでしょうか。もっとたくさんになると、保育園と言って、資格を持った保育士という職業の人たちがお金をもらって親が仕事の間に子どもの面倒をみます。だいたい生後半年くらいの乳児から六歳くらいまでを年齢に分けて。それより大きい子は学校に通います。後、幼稚園と言って三歳から六歳までの子に学校にはいるまでの間に預かって教育する制度もあります。保育園は地域につくる場合と職場に作ってそこで働く人の子どもを預かる場合があります」
「そう、正にそれです!そうですか、お話してよかった。クリスティアーヌ様…『愛理』様がすでにご存じとは、これは心強い。どうですか?是非お手伝いいただけませんか」
「でも、私……何の資格も持っていませんし」
「あちらでは資格が必要だったかもわかりませんが、こちらではそんなもの必要ありません。ようはやる気です。ダレク、マリアンナ、まさかこれも反対されるのですか?」
先生が二人に訊ねる。
二人は横目で互いに視線を交わし、どう答えるか考えている。
「それに、友人もそれなりに腕のある医者です。クリスティアーヌ様の記憶喪失についても何かお役に立てるかもしれません。これまではこちらの主治医のスベン先生にお任せしていましたが、他の医者に診てもらうこともしてみては?ルイスレーン様も国中の名医を集めても、と書いておりましたし」
「社会奉仕なら……人助けに尽力されるのは、貴族の勤めでもありますし」
ダレクが渋々ながら認めてくれた。
「他のお医者に診ていただくのもいいかもしれませんね。ですが奥様におしめを洗濯させるんですか?」
「いや、そこまで人手がないわけでは……」
「私、おしめくらい洗えます。それに、世の中の役に立つことかできたら、自信が持てるようになるんじゃないかしら」
もちろん、洗濯機などないが魔石を使えば何とかなるのではないか。
二人は不承不承ながら納得してくれた。
そして今、私は先生に連れられて王都の街中に出てきていた。
使用人たちが着ている普段着にできるだけ似た洋服を着て、髪は首の後ろでひとつにリボンで纏めている。
結婚するまではとても質素な生活をしていたと聞いているので、案外雰囲気に馴染んでいるんじゃないかと思っている。
お供を付けず外出することに最初は揉めた。
それでもぞろぞろと人を連れては目立つし、侯爵邸の使用人を私の勝手で別のことに連れ出すわけには、いかない。
当面は先生が付き添ってくれることで話がついた。
「先生とそのお医者様はどれくらい親しいのですか?」
「一緒に王立アカデミーで机を並べて以来の仲です。かれこれ三十年以上の付き合いになります。私はアカデミーを卒業してそのままアカデミーで教鞭を取りまして、国王陛下などを教えました。派閥争いがいやで途中で辞めてあちこちの貴族の家庭教師をしております。ルイスレーン様は家庭教師になって初めての生徒です。友人は王立病院の医務官になって王室の主治医まで勤めましたが、最近引退して今度は診療所を始めたところです」
王立アカデミーの教師に王室の主治医?
さらっと話しているけど、すごく偉い人なんじゃ?
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