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第二章
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先生たちの経歴にちょっと引きぎみになりながら、私たちはある建物に辿り着いた。
二階建てのそこそこ立派な建物だ。
「子どもたちを預かる場所は隣を借りることになっています。ここはもともと小さな宿屋でしたが、主がここを引き払って地方へ行ってしまったので長い間空き家になっていました」
そう言って先生は玄関横の呼び鈴を引っ張った。
「おい、ヤブ医者のニコラス、いるか?」
「せ、先生」
言うに事欠いて王室の主治医だった人をヤブ医者扱いするなんて。
奥からバタバタと足音が聞こえて、両開きの扉の片側がバタンと開いた。
「なんだ、誰かと思ったらエセ学者のジオラルじゃないか」
現れたのは赤毛の体格のいい男の人だった。
もともと色黒なのかそれとも日に焼けたのか、顎の先に少し髭を蓄え、精悍な顔立ちをしている。
クセの強いくるくるした髪型が大仏様みたいだ。
「相変わらず口が悪いな」
「お互い様だ。それで、今日は何のようだ?」
肘まで白衣の袖を捲り、開けた扉に寄りかかりながらニコラスさんが訊ねる。
「客を連れてきた」
「客?」
その時になって初めて彼はフォルトナー先生の側に立つ私に気づいた。
「患者か?にしては偉く元気そうだ」
「まあ、それもあるが、前に言っていただろう、診療所で働く人たちの子どもを見てくれる人を探していると」
「……まさか、このお嬢ちゃんが?おれはもっと年配の子育てを経験した人を考えていたのだが……それで、どこが悪いんだ?」
遠慮がない人なのか、明らかに私を見て落胆されてしまった。
「まあ、そう言わずここで立ち話もなんだから、中に入れてくれないか。詳しく説明するから」
「お、おい……」
先生はニコラスさんが何か言う前にずかずかと中に入り、私にも入ってくるように手招きする。
「しょうがないなぁ……今は助手も出払っていて何ももてなしはできないぞ。それに患者だと言うならそっちじゃない」
「心配ご無用。お茶が飲みたかったらもっと旨い所に行くよ。今日は意見を聞きたかっただけだから、それも奥で話すよ」
何度も来たことがあるのか、先生は案内も待たずどんどん先に進んでいく。
「お邪魔します」
私が頭を下げて中に入ると、ニコラスさんは玄関を後ろ手で閉めて私を観察する。
「ジオラルが連れて来たんだから、それなりに出来るんだろうが、良いところのお嬢ちゃんが遊び半分に出来ることじゃないぞ」
先に行ってしまった先生を追いかける形で二人で並んで歩きながら、こちらに一瞥することなくニコラスさんが呟いた。
「わかっているつもりです」
何もやってこなかったわけではない。ひととおりの家事はできるつもりだ。料理だって、こちらの世界の道具にはまだ慣れないが、芋の皮だって剥ける。
診療所はそれほど広くはないので、あっという間に目的地へ辿り着いた。
「遅いぞ。早くこっちに来て座りなさい」
部屋に入るとすでに先生は長椅子に腰掛け、私に隣へ座るように指示する。
「お前なぁ……まるで自分の家みたいに寛ぐな」
文句を言いながら彼は私の背中を押して先生の隣へ行くよう促し、自分は向かいの椅子に腰を降ろした。
「で?玄関で話したことは本当なのか?うちの従業員の子どもを本当にこのお嬢ちゃんが見れるのか?患者というならどこが悪いんだ?」
お嬢ちゃんという言葉が私をばかにしていることはわかっている。彼にしてみれば期待していた人材ではないことは百も承知だ。
だけど、私はどうしても言いたい。
「それ、モラハラのセクハラですから。あなた、雇い主のくせにそんなこともわからないんですか」
二階建てのそこそこ立派な建物だ。
「子どもたちを預かる場所は隣を借りることになっています。ここはもともと小さな宿屋でしたが、主がここを引き払って地方へ行ってしまったので長い間空き家になっていました」
そう言って先生は玄関横の呼び鈴を引っ張った。
「おい、ヤブ医者のニコラス、いるか?」
「せ、先生」
言うに事欠いて王室の主治医だった人をヤブ医者扱いするなんて。
奥からバタバタと足音が聞こえて、両開きの扉の片側がバタンと開いた。
「なんだ、誰かと思ったらエセ学者のジオラルじゃないか」
現れたのは赤毛の体格のいい男の人だった。
もともと色黒なのかそれとも日に焼けたのか、顎の先に少し髭を蓄え、精悍な顔立ちをしている。
クセの強いくるくるした髪型が大仏様みたいだ。
「相変わらず口が悪いな」
「お互い様だ。それで、今日は何のようだ?」
肘まで白衣の袖を捲り、開けた扉に寄りかかりながらニコラスさんが訊ねる。
「客を連れてきた」
「客?」
その時になって初めて彼はフォルトナー先生の側に立つ私に気づいた。
「患者か?にしては偉く元気そうだ」
「まあ、それもあるが、前に言っていただろう、診療所で働く人たちの子どもを見てくれる人を探していると」
「……まさか、このお嬢ちゃんが?おれはもっと年配の子育てを経験した人を考えていたのだが……それで、どこが悪いんだ?」
遠慮がない人なのか、明らかに私を見て落胆されてしまった。
「まあ、そう言わずここで立ち話もなんだから、中に入れてくれないか。詳しく説明するから」
「お、おい……」
先生はニコラスさんが何か言う前にずかずかと中に入り、私にも入ってくるように手招きする。
「しょうがないなぁ……今は助手も出払っていて何ももてなしはできないぞ。それに患者だと言うならそっちじゃない」
「心配ご無用。お茶が飲みたかったらもっと旨い所に行くよ。今日は意見を聞きたかっただけだから、それも奥で話すよ」
何度も来たことがあるのか、先生は案内も待たずどんどん先に進んでいく。
「お邪魔します」
私が頭を下げて中に入ると、ニコラスさんは玄関を後ろ手で閉めて私を観察する。
「ジオラルが連れて来たんだから、それなりに出来るんだろうが、良いところのお嬢ちゃんが遊び半分に出来ることじゃないぞ」
先に行ってしまった先生を追いかける形で二人で並んで歩きながら、こちらに一瞥することなくニコラスさんが呟いた。
「わかっているつもりです」
何もやってこなかったわけではない。ひととおりの家事はできるつもりだ。料理だって、こちらの世界の道具にはまだ慣れないが、芋の皮だって剥ける。
診療所はそれほど広くはないので、あっという間に目的地へ辿り着いた。
「遅いぞ。早くこっちに来て座りなさい」
部屋に入るとすでに先生は長椅子に腰掛け、私に隣へ座るように指示する。
「お前なぁ……まるで自分の家みたいに寛ぐな」
文句を言いながら彼は私の背中を押して先生の隣へ行くよう促し、自分は向かいの椅子に腰を降ろした。
「で?玄関で話したことは本当なのか?うちの従業員の子どもを本当にこのお嬢ちゃんが見れるのか?患者というならどこが悪いんだ?」
お嬢ちゃんという言葉が私をばかにしていることはわかっている。彼にしてみれば期待していた人材ではないことは百も承知だ。
だけど、私はどうしても言いたい。
「それ、モラハラのセクハラですから。あなた、雇い主のくせにそんなこともわからないんですか」
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