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第九章
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「ね、閨って………」
直接的過ぎる言葉にバカみたいに動揺して口ごもる。
「夫婦なのだから、そうなっても不思議ではない。記憶のこともあるし、怖がらせるつもりもない。あなたがいいと言うまで待つつもりでいたが……余計な気遣いだったか」
腕に添えた彼の親指が肌を撫でる。その仕草が私の肌を粟立たせた。
「私はいつでもあなたとの初夜をやり直したいと思っている。だが、それはあくまで二人合意の上だ。あなたが嫌なら、いいと言うまで待つつもりだった」
「だった?」
「先ほどのことであなたもやぶさかではないように感じたが、私の勘違いか」
う……真顔でそう訊かれるとぐうの音も出ない。
だって『愛理』では只一人。『クリスティアーヌ』では多分初めて。ろくなデートもしないまま極端に少ない男性遍歴しかない私でもわかる。
さっきのキスと愛撫はぐっときた。
嫌だと思って抵抗したならきっと彼も途中で止めてくれただろう。だけど私は嫌がるどころか続きを期待してしまった。
「どうなのだ、アイリ」
ここで彼はトドメのひと推し……『クリスティアーヌ』でなく『アイリ』と呼んだ。
彼の『アイリ』は『愛理』ではなく、「あ」の部分でなく「リ」を強調している。
記憶の中で呼ばれていた発音と違い、何だか「クリスティアーヌ」でもなく、「愛理」でもない、別の誰かになった気になる。
良く言えば私は「クリスティアーヌ」と「愛理」のハイブリッド?どっちつかずのきらいもあるが、後ろ向きに考えても始まらない。
逃げないと決めたのだから。
「勘違い……ではないです」
あんまり私が素直に認めたので、ルイスレーン様が逆に面食らっている。
でもすぐに気を取り直して目を細めた。
「でも……」
「どうした?」
「あの……黙っていたこと……すいません。そのことで私はいくら叱られてもいいですが、マディソンのことは叱らないでください。口止めしたのは私ですから……」
「わかっている。彼女を責めるつもりはない。あなたが全部その責を負うというなら、そうしよう」
彼女にお咎めなしと聞いて安心したが、彼の目に怪しい光が見えて、一体どんなお叱りを受けるのかと不安になった。
「そんなに怯えないでいい。何も体罰を加えようと言うのではない」
結婚式の夜、怯えて泣いていたのを見て何もしなかったくらいだから、酷いことはしないとはわかっていた。
「その点は信用していますが……」
「だが、子爵のことはあなたの意見は聞かない。彼が誰にクリスティアーヌを売ろうとしていたのかも含めて私に任せてくれるか?」
まだ剥き出しのままの私の左腕に触れる。
「そのことについては、何も口出しはしません……でも、出来れば法に則って対処をお願いします」
「あなたは……私が闇討ちでもすると思っているのか?」
「いえそのような……」
「冗談だ。わかっている。彼についてはこのこと以外にも色々と叩けば埃が出る。私怨だけで追求する気はない。昨日も言ったが、彼の罪状がひとつ増えただけで、元々の計画には何の変更もない。ただし、私の拳が一発加わるかもしれないが」
彼には気の毒だが、法のもとに罰せられる罪が彼にあるならそれは彼の自業自得だ。
「それより、さっきの話だが……あなたも異存がないと言うことでいいのか」
彼の目にさっきまでと違う感情が見えてどきりとする。確かに気持ちはあるし、逃げるつもりもないが、やはりいざとなると腰が引ける。それもこれも自信がないからだ。
「あ、あの……私……上手には……出来ないと思いますので……がっかりしないでくださいね」
終わってこんな筈ではなかったと言われないように告知したつもりだったが、ルイスレーン様が目をつり上がらせたのを見て、あ、また地雷を踏んだかなと察した。
直接的過ぎる言葉にバカみたいに動揺して口ごもる。
「夫婦なのだから、そうなっても不思議ではない。記憶のこともあるし、怖がらせるつもりもない。あなたがいいと言うまで待つつもりでいたが……余計な気遣いだったか」
腕に添えた彼の親指が肌を撫でる。その仕草が私の肌を粟立たせた。
「私はいつでもあなたとの初夜をやり直したいと思っている。だが、それはあくまで二人合意の上だ。あなたが嫌なら、いいと言うまで待つつもりだった」
「だった?」
「先ほどのことであなたもやぶさかではないように感じたが、私の勘違いか」
う……真顔でそう訊かれるとぐうの音も出ない。
だって『愛理』では只一人。『クリスティアーヌ』では多分初めて。ろくなデートもしないまま極端に少ない男性遍歴しかない私でもわかる。
さっきのキスと愛撫はぐっときた。
嫌だと思って抵抗したならきっと彼も途中で止めてくれただろう。だけど私は嫌がるどころか続きを期待してしまった。
「どうなのだ、アイリ」
ここで彼はトドメのひと推し……『クリスティアーヌ』でなく『アイリ』と呼んだ。
彼の『アイリ』は『愛理』ではなく、「あ」の部分でなく「リ」を強調している。
記憶の中で呼ばれていた発音と違い、何だか「クリスティアーヌ」でもなく、「愛理」でもない、別の誰かになった気になる。
良く言えば私は「クリスティアーヌ」と「愛理」のハイブリッド?どっちつかずのきらいもあるが、後ろ向きに考えても始まらない。
逃げないと決めたのだから。
「勘違い……ではないです」
あんまり私が素直に認めたので、ルイスレーン様が逆に面食らっている。
でもすぐに気を取り直して目を細めた。
「でも……」
「どうした?」
「あの……黙っていたこと……すいません。そのことで私はいくら叱られてもいいですが、マディソンのことは叱らないでください。口止めしたのは私ですから……」
「わかっている。彼女を責めるつもりはない。あなたが全部その責を負うというなら、そうしよう」
彼女にお咎めなしと聞いて安心したが、彼の目に怪しい光が見えて、一体どんなお叱りを受けるのかと不安になった。
「そんなに怯えないでいい。何も体罰を加えようと言うのではない」
結婚式の夜、怯えて泣いていたのを見て何もしなかったくらいだから、酷いことはしないとはわかっていた。
「その点は信用していますが……」
「だが、子爵のことはあなたの意見は聞かない。彼が誰にクリスティアーヌを売ろうとしていたのかも含めて私に任せてくれるか?」
まだ剥き出しのままの私の左腕に触れる。
「そのことについては、何も口出しはしません……でも、出来れば法に則って対処をお願いします」
「あなたは……私が闇討ちでもすると思っているのか?」
「いえそのような……」
「冗談だ。わかっている。彼についてはこのこと以外にも色々と叩けば埃が出る。私怨だけで追求する気はない。昨日も言ったが、彼の罪状がひとつ増えただけで、元々の計画には何の変更もない。ただし、私の拳が一発加わるかもしれないが」
彼には気の毒だが、法のもとに罰せられる罪が彼にあるならそれは彼の自業自得だ。
「それより、さっきの話だが……あなたも異存がないと言うことでいいのか」
彼の目にさっきまでと違う感情が見えてどきりとする。確かに気持ちはあるし、逃げるつもりもないが、やはりいざとなると腰が引ける。それもこれも自信がないからだ。
「あ、あの……私……上手には……出来ないと思いますので……がっかりしないでくださいね」
終わってこんな筈ではなかったと言われないように告知したつもりだったが、ルイスレーン様が目をつり上がらせたのを見て、あ、また地雷を踏んだかなと察した。
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