【本編完結】政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません

七夜かなた

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番外編 公開模擬試合

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「命中!」

これまでの四人のうち三人が失敗した一本目は見事に成功した。

「命中!」
「命中!」
「命中!」
「命中!」

続けて四本、合計五本を命中させる。

「命中!」
「命中!」

七本目まで成功させる。今日のトップだ。

「あら、これは……なかなかね」

二人のお妃様も期待を込めて見守る。

爪が手のひらに食い込む位、握る拳に力が入る。

「命中!」

最後の的に中央ではないものの矢が突き刺さると、周りから大きな歓声が上がった。

「すごいわ!」
「さすがね」
「はい」

二人に両脇から肩を叩かれ、素直に頷いた。

「あら……」

最後の矢を射抜いた勢いのまま、馬を走らせルイスレーンがこちらに向かって走ってくる。

髪をなびかせルイスレーンが私のいる観覧席の下にたどり着いた。

「ルイスレーン……素敵だったわ」

少し見下ろす形で馬上の彼に声をかける。周りがすごく注目しているのがわかり、とても恥ずかしい。

すっと彼が左手を差しだし、その手に手を伸ばす。

「ありがとう」
「あ!」

彼が握り返し、手を引かれて前のめりになる。引かれた手の甲に彼が唇をあてた。

「わあ!」
「きゃあ……」

周りから更に歓声や悲鳴が上がった。

「あの……ルイスレーン……」

熱い唇の感触に背筋が歓喜でぞくりとした。

「矢射ちは邪気を祓い、魔を退ける。迷信だが、これでそなたの憑き物は落ちた。そなたは私にとっていつまでも清らかな女神。穢れは全て浄められた」

やっぱり。彼は私に纏わる黒い噂を払拭しようと高官にも関わらずこの矢射ちに出場してくれた。

「ありがとう……」

もし八本全てを命中させられなかったら、副官としての権威が失墜するとまではいかなくても、傷が付いたかもしれない。勝算があったのだろうが、ここ最近の彼の手に見慣れない傷やタコが出来ていた理由がわかった。

「閣下……そろそろ」

部下が声をかけ、陛下たちの方に促す。見ると他の四人は既に初めの位置につき、陛下たちの御前に控えている。

「た、大変……ルイスレーン……」

ここから陛下たちの表情までは見えないが、陛下や殿下たちを待たせていたことに私は慌てふためいた。

「ああ……大丈夫だ。私の意図は陛下たちもわかってくれている」

ルイスレーン自身は反対にいやに落ち着いている。

「そ、それでも……あまりお待たせしては」

言いながらまだ握られた手を、自分から振り払うことができない。今日のために彼が積み重ねてきた努力がわかる。それが全て私のためだとわかり、鳥肌が立つほどの高揚感を感じた。

「わかった……もう行く。この後も観ていてくれ」

柔らかく微笑み、馬の手綱を握って陛下たちの前に向かうルイスレーンの背中を見詰める。

「リンドバルク卿が自らあんなことを言うなんて」

「これで表だってあなたに何か言う人はいなくなったわね。彼が自ら祓い浄めたのだから」

他の四人と合流し、陛下から何か言葉をかけられているルイスレーンを見て、胸がいっぱいになった私の耳に、お妃様たちの言葉が耳に入る。

「私のため……」

八本全てを命中させるために彼は密かに努力していた。私が快復して彼は通常勤務に戻っていたが、夜はずっと早く帰ってきてくれている。その中で弓の練習もしていた。

「最初からやってくれるわね。でもオリヴァー様も負けていないわよ。ここからが本番ですから」
「あらアンドレア様もなかなかのものよ」

二人のお妃様が互いにそれぞれの夫が一番だと言い合っているのを聞きながら、私はルイスレーンの唇が触れた右手の甲にそっと自分の唇を寄せた。
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