【本編完結】政略結婚から逃げたいのに旦那様から逃げられません

七夜かなた

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番外編 公開模擬試合

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矢射ちに出場する五人が鎖帷子を身に付け馬に乗って現れた。五頭の馬が等間隔に並び行進してくる。
初めて見る中世の騎士のような出で立ちに心がときめいた。
今は鎖帷子で戦場に出ることはない。あれはあくまで儀式のための装いだ。
矢筒を斜めに掛けて弓矢を手に持っている。

ざわざわと周囲がざわつく。

何があったのかわからず隣にいるお妃様たちを見ると、ぽかんと口を開けて五人を凝視している。

「……うそ……信じられない」

五人の一番最後に現れた人物を見て呟いた。黒馬に跨がるダークブロンドの髪をした一際背の高い人物。

「ルイスレーン」

そう言えば、帰還パレードの時彼は黒馬に乗っていたと聞いた。実際私は子どもたちの手洗いの世話のために見ることが出来なかった。

「矢射ちは邪気を祓い、魔を退けると言う意味もあるから、こういう時に験担ぎで最初に行われるのよ」

エレノア妃が教えてくれた。

神事で行われていた流鏑馬とますます似ている。

「侯爵が矢射ちに出るなんて驚いたわ。彼ほどの立場の者が出ることは有り得ないのに」

イヴァンジェリン妃がこちらを見る。

さっき天幕で会った時も何も言わなかった。彼がこちらを見る。彼の表情は変わらなかったが、驚いている私を見て彼が心の中で面白がっているのがわかった。

「邪気祓い……」

彼が矢射ちに出た理由が何となくわかった。

五人が中央の私たちより一段高い位置にいる国王陛下と両殿下の前で居並ぶ。

黒い馬が前へ進み出て中央で止まる。

「エリンバウアの崇高なる太陽である国王陛下、若き太陽の両殿下を護る盾として、迎え来る敵を討つ槍として我ら等しく太陽王の元、国と民と王家に忠誠をここに誓う」

「おおお!」
「エリンバウア万歳!」
「栄光あれ!」

馬上のまま胸に拳を当て口上を述べるルイスレーンが頭を垂れると、周りの兵士たちが一斉に叫び声を上げた。

陛下が頷き、片手を上げると辺りが一瞬で静まり返る。陛下の一挙手一投足に注目していて、とても統制が取れている。

「励めよ」

「は!」

陛下の激励を受け再びルイスレーンが馬を移動させ、最後尾に着くと、先頭の馬に乗った兵士が動いて大きく回って出発点まで移動する。その際私たちの前を通りすぎ、皆が恭しく頭を下げていった。

良く見える位置に来た時、ルイスレーンがちらりとこちらを見て目を細めたのでドキリとした。

隣の王妃様たちを見ると、扇で口許を隠しこちらを楽しそうに見ているので、赤くなった顔を見られないように顔を背けた。

「昔……リンドバルク侯爵が今よりもう少し若い頃、全ての的を射抜いたと聞いたことがあるわ」

イヴァンジェリン妃が言う。さっきなかなか難しいと言ってなかった?それが本当なら凄いことだ。

「まあ、今でもご健在かしらね」

エレノア妃がそれを聞いてちらりとまた私を見る。

「どうでしょうか……今でも鍛練は欠かされてはいないでしょうが……」

邸で何人かと剣を交えたのは見たことがあるし、ギオーヴさんにも士官学校でのルイスレーンの成績は良かったと聞いていたが、本当のところ彼の腕前はよく知らない。

大きな旗が振られ、一人目の射者がスタートした。

ひとつ目は外した。次は当て、その次も当たったが、結局八つの内、半分を外した。
二人目も同じ、三人目は五つ。

「最初のひとつ目が難しいみたいね」

「そのようですわね。今のところ今の三人目の方だけですものね。ひとつ目を当てたのは」

「オリヴァー様もひとつ目が難しいと仰っていましたわ」

四人目は今までの最高の六つを当てた。

「いよいよリンドバルク卿の番よ」

黒い馬に乗ったルイスレーンが登場すると、ひときわ高い歓声が上がった。

旗が振り上げられたのを見て息を飲み、祈るように手を組む。

遠すぎて表情までは読めないが、馬上でピンと背筋を伸ばし、背中の矢筒に手を伸ばしている。

旗が下ろされ、「はっ」という掛け声と共に馬が走り出した。

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