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突然泣き出した私にメリッサさんが駆け寄って抱き締めてくれた。
「私……ジーン様に何てことを……」
助けようとしてくれたのは分かるが、望んでもいなかったことをさせてしまった。
「何を言っているのです。自分の身をまず心配しなさい。命と貞操、二つを天秤にかけるまでもなく、命を救うことを優先したのです。あなたが失ったものを考えたらジーン様は何も失っておりません」
「でも…………」
「婚約しようと決めたのなら、ジーン様以外に誰が出来たと言うのです」
「だ、だめ、それはダメ!」
驚いて思わず大声を上げた。
「どうしてダメなのだ」
低く冷めた声が聞こえて体が硬直した。
「ジーン様」
振り返ったメリッサさんの向こう、扉の前でジーン様が険しい顔で立っていた。
どこかに行っていたのだろう、それとも出掛けるところなのか、黒の上下の外出着を着て立っている。
「様子を見に来たら話し声が聞こえた。なぜ、私ではダメなのだ」
「そ、それは……」
舌が固まったかのようにうまく回らない。
「メリッサ……外せ」
いつの間にかメリッサさんの衣服にすがり付いていた。ジーン様はゆっくりと近づき、上から見下ろし命令する。
「無理はさせないでくださいね。まだ目覚めたばかりで混乱しているのです」
「わかっている」
何故かメリッサさんはジーン様の命令に従い、握り締める私の手を解いて離れていく。
「ジーン様とよく話し合いなさい」
見捨てられた気分になって扉をいつまでも見ていると、とげとげした声が聞こえた。
「どうして、私はダメなのだ?婚約を受け入れたではないか」
目が合えば気持ちがばれてしまうのがわかっているので、顔を臥せたままで話し出す。
「助けていただきありがとうございます。でも……ジーン様が……責任を感じる必要はありません。私は気にしません……例の方が無事陛下がお決めになった方との婚姻を済ませジーン様に憂いが失くなれば、予定どおり婚約破棄でもなんでも」
「どうして婚約破棄が前提なのだ」
「こんなことでジーン様を縛りたくありません。ジーン様はもっと身分の高い誰もが認める美しい女性をいくらでも娶れる立場です。私のような者が周りを彷徨いては、その方に失礼です。命を救っていただきありがとうございます。でも、このことは忘れてください。どちらにしても私はよく覚えておりません。覚えていないので、今回のことは無かったことにしましょう」
「……もう一度言ってみなさい」
「ですから、無かったことに……」
肩を押されて寝台に押し付けられる。
「こちらを見なさい」
思わず彼と目を合わせてしまい、慌てて顔を反らそうとするのを、顎を掴まれ引き戻される。
「無かったことに?」
「はい。ジーン様は治療をされただけ、せ、精液という薬を私には注いでくれただけです」
そうだ。あれは治療。媚薬を飲まされた私に必要なものを与えてくれただけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「そんなに私とは添い遂げたくないのか」
「そういう意味では……でも」
「本当に……覚えていないのか?」
「………………はい」
詳細は思い出せないだけで、感触は覚えている。薬のせいもあったかとは思うが、初めて知る快感は今でもはっきりと思い出せる。
「嘘だな……なら、なぜここはこんな風になっている」
薄い夜着の生地を押し上げる尖った乳首にジーン様が生地越しに軽く触れた。
「そ、それは………」
そこに触れられた記憶が甦り、声が上擦る。
顔が、首が忽ち赤く色づいたのが、鏡を見なくてもわかった。
「口より体の方が正直だな」
軽く羽が触れるようにギリギリの所でジーン様の指が服越しに先を掠める。
「ん………」
「まだ薬が残っているのか?」
囁くジーン様の息が耳にかかり、まだ余韻の残る体が反応する。
「私は卑怯者になるつもりはない。覚悟を決めて自分の判断で行ったことに責任は持つ。既に陛下に婚約の許しを得る書状をもらった」
「え!」
私が寝ている間にそこまで?
「嫌なら方法はひとつ。君が他に好きな男がいるなら、その名を言うことだ。そうすれば書状は破棄し、その男と君が添い遂げられるように手助けしてあげよう」
「そんな……」
「私……ジーン様に何てことを……」
助けようとしてくれたのは分かるが、望んでもいなかったことをさせてしまった。
「何を言っているのです。自分の身をまず心配しなさい。命と貞操、二つを天秤にかけるまでもなく、命を救うことを優先したのです。あなたが失ったものを考えたらジーン様は何も失っておりません」
「でも…………」
「婚約しようと決めたのなら、ジーン様以外に誰が出来たと言うのです」
「だ、だめ、それはダメ!」
驚いて思わず大声を上げた。
「どうしてダメなのだ」
低く冷めた声が聞こえて体が硬直した。
「ジーン様」
振り返ったメリッサさんの向こう、扉の前でジーン様が険しい顔で立っていた。
どこかに行っていたのだろう、それとも出掛けるところなのか、黒の上下の外出着を着て立っている。
「様子を見に来たら話し声が聞こえた。なぜ、私ではダメなのだ」
「そ、それは……」
舌が固まったかのようにうまく回らない。
「メリッサ……外せ」
いつの間にかメリッサさんの衣服にすがり付いていた。ジーン様はゆっくりと近づき、上から見下ろし命令する。
「無理はさせないでくださいね。まだ目覚めたばかりで混乱しているのです」
「わかっている」
何故かメリッサさんはジーン様の命令に従い、握り締める私の手を解いて離れていく。
「ジーン様とよく話し合いなさい」
見捨てられた気分になって扉をいつまでも見ていると、とげとげした声が聞こえた。
「どうして、私はダメなのだ?婚約を受け入れたではないか」
目が合えば気持ちがばれてしまうのがわかっているので、顔を臥せたままで話し出す。
「助けていただきありがとうございます。でも……ジーン様が……責任を感じる必要はありません。私は気にしません……例の方が無事陛下がお決めになった方との婚姻を済ませジーン様に憂いが失くなれば、予定どおり婚約破棄でもなんでも」
「どうして婚約破棄が前提なのだ」
「こんなことでジーン様を縛りたくありません。ジーン様はもっと身分の高い誰もが認める美しい女性をいくらでも娶れる立場です。私のような者が周りを彷徨いては、その方に失礼です。命を救っていただきありがとうございます。でも、このことは忘れてください。どちらにしても私はよく覚えておりません。覚えていないので、今回のことは無かったことにしましょう」
「……もう一度言ってみなさい」
「ですから、無かったことに……」
肩を押されて寝台に押し付けられる。
「こちらを見なさい」
思わず彼と目を合わせてしまい、慌てて顔を反らそうとするのを、顎を掴まれ引き戻される。
「無かったことに?」
「はい。ジーン様は治療をされただけ、せ、精液という薬を私には注いでくれただけです」
そうだ。あれは治療。媚薬を飲まされた私に必要なものを与えてくれただけ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「そんなに私とは添い遂げたくないのか」
「そういう意味では……でも」
「本当に……覚えていないのか?」
「………………はい」
詳細は思い出せないだけで、感触は覚えている。薬のせいもあったかとは思うが、初めて知る快感は今でもはっきりと思い出せる。
「嘘だな……なら、なぜここはこんな風になっている」
薄い夜着の生地を押し上げる尖った乳首にジーン様が生地越しに軽く触れた。
「そ、それは………」
そこに触れられた記憶が甦り、声が上擦る。
顔が、首が忽ち赤く色づいたのが、鏡を見なくてもわかった。
「口より体の方が正直だな」
軽く羽が触れるようにギリギリの所でジーン様の指が服越しに先を掠める。
「ん………」
「まだ薬が残っているのか?」
囁くジーン様の息が耳にかかり、まだ余韻の残る体が反応する。
「私は卑怯者になるつもりはない。覚悟を決めて自分の判断で行ったことに責任は持つ。既に陛下に婚約の許しを得る書状をもらった」
「え!」
私が寝ている間にそこまで?
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「そんな……」
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