50 / 68
49
しおりを挟む
ジーン様は店内を見てまわり、宝石を散りばめた髪留めを手に取った。
ジーン様は私の髪をかきあげ、髪留めを付けた。
「思った通り君の髪に映える。これを貰おう」
思ってもみなかった贈り物だった。
「とてもお似合いですよ」
オーナーが店にある大きな卓上の鏡を向けてくれた。
右のこめかみ辺りに付けられた髪留めがお店の灯りに反射して輝いている。
「ありがとう……ございます。大事にします」
ジーン様から婚約者としての初めての贈り物。
一生の宝だ。
「私も何か……」
「それは必要ない。私の贈り物を付けて喜んでくれる君が見られた。何かを貰いたかったから贈ったのではない。気を遣わなくていい。それに贈り物はこれで終わりではない。いちいち返していてはきりがないぞ」
「お羨ましいですな。ご婚約、おめでとうございます」
オーナーがジーン様の言葉を聞いて呟いた。
そんなことを言われたことがなかった。
「お待たせ」
そこへ買い物を終えたティアナさんが近寄ってきた。
「あら素敵な髪留め。ジーンの見立てにしては趣味がいいわね」
「私にしては、は余計だ。もういいのか?」
「ええ、荷物はお屋敷に届けて貰うわ。さあ、次に行きましょう、時間が勿体ないわ」
急き立てるようにティアナさんはそこから次々と歩いて店をまわった。
行く先々で品物の物色に時間を費やす。
そしてどこへ行ってもジーン様と私はオーナーの接待を受け、婚約祝いにと何かを勧められた。
「ジーン……行く先々で何かを買わなくても……」
「言っただろう?これで終わりではないと」
「でも……」
「何を遠慮しているの。男が女のためにお金を遣うのは当たり前でしょ。ジーンが気にするなと言っているのだから、黙って受けとればいいの」
「そう言うことだ。この件に関してはティアナの意見が正しい」
三軒目の宝石点でダイヤのネックレスを買おうとしたジーンを止めた。
二対一。結局私は言い負かされてそこでもジーン様はネックレスに加えて対のイヤリングも買った。もちろん、ティアナさんの分も。
「喉が乾いたわ。どこかでお茶でもしない?」
既に買い物を始めて四時間が経っていた。
「お茶ならさっきの店でも出してくれただろう?」
「それとこれとは別よ。私はちゃんとしたお茶を頂ける店で飲みたいの」
「この先にカフェがあります。この時間ならそれほど混んでいないでしょう」
「じゃあ、そこに案内して」
三人で歩いてカフェに向かう。
途中でも何人かに声をかけられ、お祝いを言われた。
「本当に田舎ね。皆があなたのことを知っているのね」
「田舎もバカにしたものではない。都会とは違う良さがある」
「バカにしているわけではないわ。うちも観光地とは言え田舎だから」
田舎を特に毛嫌いしているわけではないようだ。
カフェにはすぐ着いた。
ここも他の所と同様、店に入ると全員の注目を浴びた。
お茶の時間を過ぎているのでお客はまばらだった。
「これは閣下…ようこそいらっしゃいしました。こちらへどうぞ、個室へ案内いたします。」
店主が応対に出て来て、個室へ案内しようとする。
「いや、ここで大丈夫だ。気を遣わなくていい」
「ですが…」
「変に気を遣われても困る。ここへ来る度にこれでは次から来られなくなる」
「そう言うことでしたら、こちらへ」
店主が私達を案内したのは二階の日当たりの良い所だった。
「ここは何がおいしいの?」
ティアナさんはメニューを見ない。いつも一緒にいる人が(主に男性)が注文するそうだ。
「相変わらずだな」
「そのかわり頼んでくれたものは文句を言わずに食べるわ」
「それは誰も君の嫌いなものを頼まないからだ」
「皆私の好みを熟知してくれているのよ」
「そうとも言えるな。これとこれを。セレニアも同じものでいいか」
「はい」
ジーン様が三人分のお茶とケーキを注文する。
「疲れたのではないか?」
二人のやり取りを見ていると疎外感が沸き上がってくる。自然と暗い顔をしていたのを疲労と思ったのかジーン様が訊ねる。
「大丈夫です。普段と違う買い物の仕方に圧倒されただけです」
「いつもあんな買い物をしているわけではない」
「わかっていますけど、びっくりしました。私には初めてのことばかりで」
「あれくらいで驚いていてはだめよ。首都へ行けばジーンは国王の叔父でもあるのだから、その伴侶のあなたもそう言う目で見られるわ」
「私……」
自分が目の前のジーン様しか見ていなかったことに気づく。
「ティアナ、そうセレニアを怯えさせるな。何も特別なことはない。陛下は仰々しいことはお嫌いだから、お会いすることがあっても堅苦しく思うことはない」
「やはり、陛下に……お会いしないわけには……」
「婚約の許可を頂いたから、結婚式までには一度ご挨拶にとは思っている」
国王陛下との謁見にひきつく。
「困ります、お客様」
その時、下から言い争う声が聞こえてきた。
ジーン様は私の髪をかきあげ、髪留めを付けた。
「思った通り君の髪に映える。これを貰おう」
思ってもみなかった贈り物だった。
「とてもお似合いですよ」
オーナーが店にある大きな卓上の鏡を向けてくれた。
右のこめかみ辺りに付けられた髪留めがお店の灯りに反射して輝いている。
「ありがとう……ございます。大事にします」
ジーン様から婚約者としての初めての贈り物。
一生の宝だ。
「私も何か……」
「それは必要ない。私の贈り物を付けて喜んでくれる君が見られた。何かを貰いたかったから贈ったのではない。気を遣わなくていい。それに贈り物はこれで終わりではない。いちいち返していてはきりがないぞ」
「お羨ましいですな。ご婚約、おめでとうございます」
オーナーがジーン様の言葉を聞いて呟いた。
そんなことを言われたことがなかった。
「お待たせ」
そこへ買い物を終えたティアナさんが近寄ってきた。
「あら素敵な髪留め。ジーンの見立てにしては趣味がいいわね」
「私にしては、は余計だ。もういいのか?」
「ええ、荷物はお屋敷に届けて貰うわ。さあ、次に行きましょう、時間が勿体ないわ」
急き立てるようにティアナさんはそこから次々と歩いて店をまわった。
行く先々で品物の物色に時間を費やす。
そしてどこへ行ってもジーン様と私はオーナーの接待を受け、婚約祝いにと何かを勧められた。
「ジーン……行く先々で何かを買わなくても……」
「言っただろう?これで終わりではないと」
「でも……」
「何を遠慮しているの。男が女のためにお金を遣うのは当たり前でしょ。ジーンが気にするなと言っているのだから、黙って受けとればいいの」
「そう言うことだ。この件に関してはティアナの意見が正しい」
三軒目の宝石点でダイヤのネックレスを買おうとしたジーンを止めた。
二対一。結局私は言い負かされてそこでもジーン様はネックレスに加えて対のイヤリングも買った。もちろん、ティアナさんの分も。
「喉が乾いたわ。どこかでお茶でもしない?」
既に買い物を始めて四時間が経っていた。
「お茶ならさっきの店でも出してくれただろう?」
「それとこれとは別よ。私はちゃんとしたお茶を頂ける店で飲みたいの」
「この先にカフェがあります。この時間ならそれほど混んでいないでしょう」
「じゃあ、そこに案内して」
三人で歩いてカフェに向かう。
途中でも何人かに声をかけられ、お祝いを言われた。
「本当に田舎ね。皆があなたのことを知っているのね」
「田舎もバカにしたものではない。都会とは違う良さがある」
「バカにしているわけではないわ。うちも観光地とは言え田舎だから」
田舎を特に毛嫌いしているわけではないようだ。
カフェにはすぐ着いた。
ここも他の所と同様、店に入ると全員の注目を浴びた。
お茶の時間を過ぎているのでお客はまばらだった。
「これは閣下…ようこそいらっしゃいしました。こちらへどうぞ、個室へ案内いたします。」
店主が応対に出て来て、個室へ案内しようとする。
「いや、ここで大丈夫だ。気を遣わなくていい」
「ですが…」
「変に気を遣われても困る。ここへ来る度にこれでは次から来られなくなる」
「そう言うことでしたら、こちらへ」
店主が私達を案内したのは二階の日当たりの良い所だった。
「ここは何がおいしいの?」
ティアナさんはメニューを見ない。いつも一緒にいる人が(主に男性)が注文するそうだ。
「相変わらずだな」
「そのかわり頼んでくれたものは文句を言わずに食べるわ」
「それは誰も君の嫌いなものを頼まないからだ」
「皆私の好みを熟知してくれているのよ」
「そうとも言えるな。これとこれを。セレニアも同じものでいいか」
「はい」
ジーン様が三人分のお茶とケーキを注文する。
「疲れたのではないか?」
二人のやり取りを見ていると疎外感が沸き上がってくる。自然と暗い顔をしていたのを疲労と思ったのかジーン様が訊ねる。
「大丈夫です。普段と違う買い物の仕方に圧倒されただけです」
「いつもあんな買い物をしているわけではない」
「わかっていますけど、びっくりしました。私には初めてのことばかりで」
「あれくらいで驚いていてはだめよ。首都へ行けばジーンは国王の叔父でもあるのだから、その伴侶のあなたもそう言う目で見られるわ」
「私……」
自分が目の前のジーン様しか見ていなかったことに気づく。
「ティアナ、そうセレニアを怯えさせるな。何も特別なことはない。陛下は仰々しいことはお嫌いだから、お会いすることがあっても堅苦しく思うことはない」
「やはり、陛下に……お会いしないわけには……」
「婚約の許可を頂いたから、結婚式までには一度ご挨拶にとは思っている」
国王陛下との謁見にひきつく。
「困ります、お客様」
その時、下から言い争う声が聞こえてきた。
2
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!
柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる