その断罪に異議あり! 断罪を阻止したらとんだとばっちりにあいました

七夜かなた

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第一章 婚約破棄と断罪

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「ふざけるなベルタ! こ、これは嘘だ! これこそでっち上げだ! し、信じるな」
「いいえ、嘘ではありません」

 慌てふためくアレッサンドロの声を遮りそういったのはのは、さっき映像に映っていた男子生徒だった。

「マックス、お前、こんなことをしてただで済むと思うな」
 
 その男子生徒に向かってアレッサンドロが唸る。

「みなさん、私はさっきご覧いただいたとおり、ここにいるアレッサンドロ殿下に脅されて、彼の課題を押し付けられました。しかも、あれは一度ではありませんし、被害者は私だけではありません」

 マックスが叫ぶと、大勢の男子生徒が彼の後ろに並んだ。

「ベルテ、これもお前の差金か!」

 アレッサンドロが唾を飛ばさん勢いでベルテに叫んだ。

「それだけではありません! 先程の生徒会予算も、殿下は私的な目的で何度も横領しておりました」

 次にアレッサンドロの背後で、生徒会副会長が一歩前に進み出て叫んだ。

「リシャール、お前…お前もベルテの仲間か」
「きっかけはベルテ様ですが、これはあなたと書記であるカトリーヌ嬢を除く、生徒会全員の総意です。もっともカトリーヌ嬢もあなたも、生徒会の仕事を我々三人に丸投げでしたけどね」


 アレッサンドロは事務能力が皆無で、企画や後始末など面倒なことは何もせず、公の場で生徒会長ヅラだけをして、ふんぞり返っていた。

 彼曰く、こんなしみったれた地味な作業は自分のするべき仕事ではないということだった。
 

「横領だと? ふざけたことを」
「ふざけているのは、お兄様です」
「なんだと?」
「いつまでも同じ手口が通用すると思ったら大間違いです。壊れてもいない備品を壊れたと言って、新しい備品を買う。そのお金を生徒会の運営費から掠め取る。そうかと思えば今回のように生徒会主催の行事に必要な物資を特定の業者に発注する。それら全てがブーレット男爵が経営する商会からなのは、はたして偶然でしょうか」
「う、そ、それは…」
「そ、それはアレッサンドロ様だから、父も赤字覚悟で安く納入していたのです。同じ仕入れるなら、安くしてくれる方がいいのは当然ですよね。だから、アレッサンドロ様もうちの商会を利用してくださったのです」

 カトリーヌが慌てて説明する。
 
「そ、そうだ。男爵は儲けなど度外視で私のためにと…」
「安く…なら、どうして経費は右肩上がりで増えているのですか? 学園にも生徒会の運営費用について、増額を申し出ましたよね。偽の帳簿を作って」
「に、偽物だと、ベルテ、調子に乗るのもいい加減にしろ、お前は誰に向かってそんな偉そうな口をきく」
「もちろん、あなたです」

 アレッサンドロの睨みなど、まったく気にかける様子もなくベルテは答えた。


「あなたが学園に申請した生徒会運営活動の報告は、まったくのデタラメです」
「う、うるさいうるさいうるさい! 小賢しい女だな、お前は! 少し頭がいいからなんだ! お前もディランも生意気なんだよ」

 ディランはこの国のもう一人の王子で、アレッサンドロとベルテの異母弟だ。
 母親は第二側妃で、今年十歳になる。
 ベルテも成績はいい方だが、ディランは十歳にして大人びていて、遥かに頭がいい。
 勉強嫌いなアレッサンドロは、それも気に入らないらしい。

「私とディランのことは、今のあなたの状況にまったく関係ありません。身分を笠に着て、他の生徒を脅して自分の課題を押し付けたり、嘘の帳簿で学園から不正にお金を引き出したり、その浮いたお金を着服したのは、あなたで、私でもディランでもありません」
「うるさい! とにかく全部でたらめで捏造だ!」
「はたしてそうかな」

 喚き散らすアレッサンドロの声を遮って、そこに別の人物の声が聞こえた。

「な…」
「ひ!」

 アレッサンドロは目を見開いて、パーティー会場の入り口を見て言葉を詰まらせる。
 カトリーヌは息を吸い込み、悲鳴を飲み込んだ。

「話は聞かせてもらいました。アレッサンドロ様」
「が、学園長…」

 そこに立っていたのは、この学園の学園長オルレアン・ドーサ卿だった。そしてその横には…

「アレッサンドロ、このような場でベルクトフ侯爵令嬢に婚約破棄を言い渡すなど、どういう了見だ」
「ち、ちち…父上」

 その横にはこの国の王であり、アレッサンドロとベルテの父でもある、エドマンド・デュクス・シャルボイエその人がいた。

「アレッサンドロ様!」

 カトリーヌがアレッサンドロに向かって叫ぶ。
 アレッサンドロはこれまでの威勢などどこに行ったのか、その場にヘナヘナと崩れ落ちた。
 
 
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