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第八章 約束
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学園から戻ると、ベルテは父から話があるので執務室へ来るように言われた。
(何かな?)
この前呼び出されたときは、ヴァレンタインとの婚約の話をされた。
警戒しながら執務室に向かうと、既にヴァレンタインもそこにいた。
「ベルテ様、こんにちは」
「こ、こんにちは」
戸惑うベルテに対して、ヴァレンタインはベルテに会えたのが嬉しそうだ。
(好きな人……いるのよね)
片思いなのか両思いなのかわからないが、彼に意中の人がいると聞かされたばかりで、どう顔を作っていいかわからず、無表情でベルテは父の示す場所、ヴァレンタインの隣に座った。
「婚約者に会ったのだからもう少し嬉しそうな顔をしろ」
「好きで婚約したわけではありません」
「ベルテ、お前は……すまない。ベルクトフ。愛想がない娘だ」
ベルテの返答に父は目くじらを立て、ヴァレンタインに謝った。
「気にしておりません。照れていらっしゃるのでしょう」
「て、ちが…」
「ベルクトフが気にしていないならいい」
違うと言おうとしたが、父が先に話しだしたので、ベルテに反論する機会がなかった。
「まあいい。それより、さっきの話だが、本当か?」
「はい。是非、ベルテ様が錬金術師の養成所に進学することをお認めください」
「えっ!」
自分の進学のことが話題とは思わず、ベルテは驚いて声を上げ彼を見た。
「お約束しましたよね」
驚いているベルテに、ヴァレンタインが言った。
「そ、それはそうですけど」
「本当にそなたは国家錬金術師を目指したいと思っているのか?」
「はい。もちろんです」
「お祖父様か…」
ベルテが錬金術師を目指すのが曽祖父の影響だとわかっているので、父は難しい顔をした。
「きっかけはそうですが、大お祖父様は私に錬金術師になれとはおっしゃいませんでした。これは私の希望です」
「道は険しいぞ。それにそなたは女だ。さらに条件は厳しい」
「わかっています。でも、私の力が及ばず望みが叶えられなかったら、その時は諦めます」
「あえて厳しい道を進まなくても……しかし、ベルクトフはそれを認めるのだな」
「私との婚約で、ベルテ様に何も諦めてほしくはないのです」
ベルテは隣に座るヴァレンタインの顔を見上げた。確かに婚約を受け入れる代わりに、そう言ってくれてはいたが、本当に行動してくれるとは思っていなかった。
「ふむ」
国王は顎に手を当て、二人の顔を見比べ思案する。
「それでベルクトフが納得しているのなら、挑戦することに余として異論はない」
「ほ、本当に?」
あっさりと父が承諾したので、ベルテは聞き返した。
「なんだ? 錬金術師になりたいというのは、婚約を断る口実だったか? それとも自信がないのか?」
「い、いえ、そう言うわけでは……」
「錬金術師の数が増えるのは悪いことではない。しかし、王女だからと大目に見てもらえるほど甘い世界ではないぞ」
「わかっています。覚悟はしています」
「ならいい。学園に進学する旨についての意向は、余から伝えておく。話は以上だ。二人共下がっていい」
「わ、わかりました」
「では、お時間を取っていただき、ありがとうございます」
二人で挨拶して執務室を出る。
「あの…ありがとうございます」
執務室を出てすぐベルテはお礼を言った。
「元々私から提案したことですし、それも条件のひとつですし」
「でも、本当に約束を守ってくれるとは思いませんでした」
「私はそのような不誠実な男と思われていたということですか」
「い、いえ、決してそのような…すみません」
取り繕っても仕方がないと、ベルテは素直に謝った。
「ですが、私が出来るのはここまでです。後はベルテ様の頑張りに掛かっていますから」
「わかっています」
「素直ですね。表情も感情が隠せていないし、心配になります」
「心配?」
「ええ。変な輩に誑かされないか」
「た、たぶ…そ、そんな愚かではありません」
「そうですか?」
「あなたこそ、私のことを馬鹿にしすぎです」
「馬鹿になどしていませんよ。純粋で可愛らしいと思っています」
「か、……そんなわけ…」
「可愛らしいですよ。私にとってベルテ様は可愛い婚約者です」
「簡単に『可愛い』という男は信用できませんわ」
「本当にそう思っているのですから」
「………」
ああ言えばこう言うで、ベルテは何も言えなくなってしまう。
元から経験値も違うのだから、太刀打ち出来るはずがないのだ。
「ところで次の週末は、予定を空けておいていただけますか?」
「え?」
悔しいと思っていると、ヴァレンタインが話題を変えてきた。
「お約束したデート、いたしましょう」
「デート?」
「ええ武闘大会の時にお話しましたよね。それとも何かご予定がおありですか?」
「いえ、そういうわけでは……」
週末はいつも錬金術の研究をしてた。特に誰かと約束した予定ではない。
「では、そういうことで、朝、いつも学園に行く時間くらいにお迎えに上がります。楽な軽装でかまいません」
「え、そんな朝早くですか?」
「ええ。せっかくのベルテ様との一日、たっぷり楽しみたいですから」
「何をするのですか?」
「王都の街へ出ましょう。買い物して食事をして、過ごしましょう」
(何かな?)
この前呼び出されたときは、ヴァレンタインとの婚約の話をされた。
警戒しながら執務室に向かうと、既にヴァレンタインもそこにいた。
「ベルテ様、こんにちは」
「こ、こんにちは」
戸惑うベルテに対して、ヴァレンタインはベルテに会えたのが嬉しそうだ。
(好きな人……いるのよね)
片思いなのか両思いなのかわからないが、彼に意中の人がいると聞かされたばかりで、どう顔を作っていいかわからず、無表情でベルテは父の示す場所、ヴァレンタインの隣に座った。
「婚約者に会ったのだからもう少し嬉しそうな顔をしろ」
「好きで婚約したわけではありません」
「ベルテ、お前は……すまない。ベルクトフ。愛想がない娘だ」
ベルテの返答に父は目くじらを立て、ヴァレンタインに謝った。
「気にしておりません。照れていらっしゃるのでしょう」
「て、ちが…」
「ベルクトフが気にしていないならいい」
違うと言おうとしたが、父が先に話しだしたので、ベルテに反論する機会がなかった。
「まあいい。それより、さっきの話だが、本当か?」
「はい。是非、ベルテ様が錬金術師の養成所に進学することをお認めください」
「えっ!」
自分の進学のことが話題とは思わず、ベルテは驚いて声を上げ彼を見た。
「お約束しましたよね」
驚いているベルテに、ヴァレンタインが言った。
「そ、それはそうですけど」
「本当にそなたは国家錬金術師を目指したいと思っているのか?」
「はい。もちろんです」
「お祖父様か…」
ベルテが錬金術師を目指すのが曽祖父の影響だとわかっているので、父は難しい顔をした。
「きっかけはそうですが、大お祖父様は私に錬金術師になれとはおっしゃいませんでした。これは私の希望です」
「道は険しいぞ。それにそなたは女だ。さらに条件は厳しい」
「わかっています。でも、私の力が及ばず望みが叶えられなかったら、その時は諦めます」
「あえて厳しい道を進まなくても……しかし、ベルクトフはそれを認めるのだな」
「私との婚約で、ベルテ様に何も諦めてほしくはないのです」
ベルテは隣に座るヴァレンタインの顔を見上げた。確かに婚約を受け入れる代わりに、そう言ってくれてはいたが、本当に行動してくれるとは思っていなかった。
「ふむ」
国王は顎に手を当て、二人の顔を見比べ思案する。
「それでベルクトフが納得しているのなら、挑戦することに余として異論はない」
「ほ、本当に?」
あっさりと父が承諾したので、ベルテは聞き返した。
「なんだ? 錬金術師になりたいというのは、婚約を断る口実だったか? それとも自信がないのか?」
「い、いえ、そう言うわけでは……」
「錬金術師の数が増えるのは悪いことではない。しかし、王女だからと大目に見てもらえるほど甘い世界ではないぞ」
「わかっています。覚悟はしています」
「ならいい。学園に進学する旨についての意向は、余から伝えておく。話は以上だ。二人共下がっていい」
「わ、わかりました」
「では、お時間を取っていただき、ありがとうございます」
二人で挨拶して執務室を出る。
「あの…ありがとうございます」
執務室を出てすぐベルテはお礼を言った。
「元々私から提案したことですし、それも条件のひとつですし」
「でも、本当に約束を守ってくれるとは思いませんでした」
「私はそのような不誠実な男と思われていたということですか」
「い、いえ、決してそのような…すみません」
取り繕っても仕方がないと、ベルテは素直に謝った。
「ですが、私が出来るのはここまでです。後はベルテ様の頑張りに掛かっていますから」
「わかっています」
「素直ですね。表情も感情が隠せていないし、心配になります」
「心配?」
「ええ。変な輩に誑かされないか」
「た、たぶ…そ、そんな愚かではありません」
「そうですか?」
「あなたこそ、私のことを馬鹿にしすぎです」
「馬鹿になどしていませんよ。純粋で可愛らしいと思っています」
「か、……そんなわけ…」
「可愛らしいですよ。私にとってベルテ様は可愛い婚約者です」
「簡単に『可愛い』という男は信用できませんわ」
「本当にそう思っているのですから」
「………」
ああ言えばこう言うで、ベルテは何も言えなくなってしまう。
元から経験値も違うのだから、太刀打ち出来るはずがないのだ。
「ところで次の週末は、予定を空けておいていただけますか?」
「え?」
悔しいと思っていると、ヴァレンタインが話題を変えてきた。
「お約束したデート、いたしましょう」
「デート?」
「ええ武闘大会の時にお話しましたよね。それとも何かご予定がおありですか?」
「いえ、そういうわけでは……」
週末はいつも錬金術の研究をしてた。特に誰かと約束した予定ではない。
「では、そういうことで、朝、いつも学園に行く時間くらいにお迎えに上がります。楽な軽装でかまいません」
「え、そんな朝早くですか?」
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「何をするのですか?」
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