その断罪に異議あり! 断罪を阻止したらとんだとばっちりにあいました

七夜かなた

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第八章 約束

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「あなたたち、そこで何をしているのですか。もうすぐ授業が始まりますよ」

 ベルテ達に教授のカーラ女史が声をかけた。

「ベルテ様、またあなたですか。最近、あなたの周りが騒がしいみたいですが、あまり学園の秩序を乱す行動をされますと、成績に響きますよ」

 騒ぎの中心にベルテがいると知ると、女史は彼女を槍玉に挙げる。 
 女史は普通科で淑女教育なるものを教えているので、魔法科のベルテとは普段接点はないが、どうやら彼女も「白薔薇を愛でる会」のメンバーらしく、廊下などでベルテを見かけては難癖をつけてくる。

「申し訳ございません。今から授業に参ります」
「カーラ先生、申し訳ございませんでしたわ」

 ベルテが頭を下げて謝るのに被せて、ルイーズが猫なで声で女史に謝った。

「ルイーズさん、あなたも気をつけてくださいね」

 ルイーズに向ける表情に、ベルテに向けた厳しさは微塵も感じられない。
 明らかにベルテを目の敵にしている態度に、指導者がこれでいいのかと思うが、波風立てたくないベルテは、うつむき加減にやり過ごした。

「失礼いたします」

 女史の脇を通り過ぎるベルテに、冷たい視線が向けられる。
 
(鬱陶しい)

 ヴァレンタイン個人にと言うより、こういうやり取りがベルテには鬱陶しかった。
 ヴァレンタインはヴァレンタインで、やけに攻めて来たが、もしルイーズの言うことが本当なら、ベルテに向けた態度も、すべて計算づくだということだ。

(好きな相手がいるなら、どうして私との婚約を承諾したのよ)

 以前にも言ったが、王族との話が断りにくかったとしても、アレッサンドロとシャンティエの婚約解消騒動の後なら、いくらでも断れた。
 
(それとも、その意中の相手とは結婚できない理由があるのかしら)

 考えられるのは、相手が既婚者か婚約者がいるとか、もしかしたら、同性なのかも知れない。

 同性愛は騎士団のような男社会ではよくあると聞くし、後継ぎでないなら、同性同士の結婚も認められている。
 しかし、彼はベルクトフ家を継ぐ身だから、それを公に出来ないのかも。

 両親にも誰にも言えず、叶わない恋に苦しんでいるかも知れない。

 でもどうしたら、その相手との仲を取り持ってあげられるだろう。
 ベルクトフ家としては、血筋を絶やすわけにはいかないだろうし、その相手が女性なら私が口利きしてあげれば、もしかしたらうまくその相手と結婚できるかも知れない。

(でも男性なら……)

 どうすればいいだろうか。 
 男性が好きな人と結婚して、私が不幸になると思ったら、侯爵やお父様も諦めてくれるかもしれない。
 
(とにかく、彼が好きな人がどんな人かはっきりさせないと。でもどうしたらわかるかな)

 さりげなく聞いてみると言っても、うまく聞けないかも知れない。
 かと言って、ズバリ聞いて素直に教えてくれるだろうか。

「今度、聞いてみようかしら?」

 シャンティエがいると話しづらいなら、二人きりになった時に聞いてみるしかない。

(そう言えば、今度どこかへ行こうとか、言っていたわね)

 これまで彼とはほんの短い時間しか会話をしたことがない。もう少し長く一緒にいれば何となく彼のことがわかるかも知れない。

 そう思ってベルテは次に彼に会った時に何が何でも聞いてみようと決意した。
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