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83 怒ってます
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私は怒っていた。
ウィリアムさんから私の素性について殿下が宰相閣下に問い合わせをしたと聞いた。
メイドが読み書きできることに不審を抱いたからだった。
自分で自分の首を締めた。とはこういうことか。
ウィリアムさんは国王陛下の面前で問い詰められ、私がアイスヴァイン前伯爵の一人娘だと明かさざるを得なかったと、私に謝った。
元貴族という肩書きは今の私の暮らしには必要ではなかったが、秘密にするものでもなかったし、王様を前にしてシラをきりとおすこともできなかっただろう。
それは別にいい。
だが、今後もここでメイドとしてやっていく上で、今は公爵には知らせずにおこうということになり、私は商人の家の娘ということにしておくとウィリアムさんから説明を受けた。
それも別にいい。
ネヴィルさんの代理も護衛も外され、私はただのメイドになった。
護衛として役立たずとなった私に、ここに居続けることができるだろうか。
つい昨日、護衛として頑張ると誓ったばかりなのに、それも出来なくなった。
誰かを護りたいと思って頑張ってきた。
男ならこうはならなかったのではないか。女という、自分ではどうしようもないことで、その望みが断たれるのか。
それが腹立たしい。
殿下は何と言っていたっけ。
(領内に外からも大勢の者がやってきている。見知らぬ者には不用意に近づかないことだ)
ーーー本当に、飴につられてほいほいついていく子どもだと思っているのか
(私の婚約者だと噂が流れたこともあり、変に注目されている)
ーーーだから?そんなの噂にすぎない。私がそれで傷つくと思っているのか
最初にめんどくさいと否定しなかったのは、自分ではないか。何を今さら怖じけ付いてるのか。
こういう噂は女に不利だ。弄ばれて捨てられて泣き寝入りする女性は多い。
男の身分が高く女の身分が低い場合は特に。
でも、私は弄ばれたわけでも、捨てられたわけでもない。
自分の意に反した関係は持たないし、もし、本当に身を任せるならそれも覚悟の上だ。けっして自分の望まぬ関係は結ばない。すべて自己責任だ。
あれで私を遠ざけたつもりでいるなら、私という人間を侮っている。
三十歳で殉職するまで男社会で頑張ってきた。女性警察官もちゃんといたが、私がいた所は圧倒的に男性の比率が高かった。
女だからと舐められないように必死で喰らいついた。
最後はあっけなく弾に当たって殉職してしまったが……
私を遠ざけたことを、そのうちぎゃふんと言わせる。私はそう心に決め、今は引き下がることにした。
怒りモードが顔に出ていたのかもしれない。
廊下でマーサさんと出会い、ちょっとびっくりされてしまった。
先ほど少し前にネヴィルさんが客間から元の自分とフィリアさんの部屋に移動することになり、それを一緒に手伝ったばかりだ。
「キルヒライル様に呼ばれていたのではなかったの?」
「はい、今帰りです」
「そう……何か………怒ってる?」
やっぱり顔に出ていたみたいだ。ぱっと両手で頬を押さえて無理矢理口角をあげる。
「……いいえ……怒っていません。これが私の素です」
マーサさんは疑わしそうに細目でこちらを見たが、本当です。と重ねて言うと、それ以上は何も言わなかった。
「キルヒライル様は何て?」
「ネヴィルさんの代理はもういいから、メイドに戻れということです」
「……そう、それは助かるわ。急に人が増えて大変だったの」
少なくとも、私がメイドに専念することで役に立つことがあったことに、私の怒りは鎮火した。
ウィリアムさんから私の素性について殿下が宰相閣下に問い合わせをしたと聞いた。
メイドが読み書きできることに不審を抱いたからだった。
自分で自分の首を締めた。とはこういうことか。
ウィリアムさんは国王陛下の面前で問い詰められ、私がアイスヴァイン前伯爵の一人娘だと明かさざるを得なかったと、私に謝った。
元貴族という肩書きは今の私の暮らしには必要ではなかったが、秘密にするものでもなかったし、王様を前にしてシラをきりとおすこともできなかっただろう。
それは別にいい。
だが、今後もここでメイドとしてやっていく上で、今は公爵には知らせずにおこうということになり、私は商人の家の娘ということにしておくとウィリアムさんから説明を受けた。
それも別にいい。
ネヴィルさんの代理も護衛も外され、私はただのメイドになった。
護衛として役立たずとなった私に、ここに居続けることができるだろうか。
つい昨日、護衛として頑張ると誓ったばかりなのに、それも出来なくなった。
誰かを護りたいと思って頑張ってきた。
男ならこうはならなかったのではないか。女という、自分ではどうしようもないことで、その望みが断たれるのか。
それが腹立たしい。
殿下は何と言っていたっけ。
(領内に外からも大勢の者がやってきている。見知らぬ者には不用意に近づかないことだ)
ーーー本当に、飴につられてほいほいついていく子どもだと思っているのか
(私の婚約者だと噂が流れたこともあり、変に注目されている)
ーーーだから?そんなの噂にすぎない。私がそれで傷つくと思っているのか
最初にめんどくさいと否定しなかったのは、自分ではないか。何を今さら怖じけ付いてるのか。
こういう噂は女に不利だ。弄ばれて捨てられて泣き寝入りする女性は多い。
男の身分が高く女の身分が低い場合は特に。
でも、私は弄ばれたわけでも、捨てられたわけでもない。
自分の意に反した関係は持たないし、もし、本当に身を任せるならそれも覚悟の上だ。けっして自分の望まぬ関係は結ばない。すべて自己責任だ。
あれで私を遠ざけたつもりでいるなら、私という人間を侮っている。
三十歳で殉職するまで男社会で頑張ってきた。女性警察官もちゃんといたが、私がいた所は圧倒的に男性の比率が高かった。
女だからと舐められないように必死で喰らいついた。
最後はあっけなく弾に当たって殉職してしまったが……
私を遠ざけたことを、そのうちぎゃふんと言わせる。私はそう心に決め、今は引き下がることにした。
怒りモードが顔に出ていたのかもしれない。
廊下でマーサさんと出会い、ちょっとびっくりされてしまった。
先ほど少し前にネヴィルさんが客間から元の自分とフィリアさんの部屋に移動することになり、それを一緒に手伝ったばかりだ。
「キルヒライル様に呼ばれていたのではなかったの?」
「はい、今帰りです」
「そう……何か………怒ってる?」
やっぱり顔に出ていたみたいだ。ぱっと両手で頬を押さえて無理矢理口角をあげる。
「……いいえ……怒っていません。これが私の素です」
マーサさんは疑わしそうに細目でこちらを見たが、本当です。と重ねて言うと、それ以上は何も言わなかった。
「キルヒライル様は何て?」
「ネヴィルさんの代理はもういいから、メイドに戻れということです」
「……そう、それは助かるわ。急に人が増えて大変だったの」
少なくとも、私がメイドに専念することで役に立つことがあったことに、私の怒りは鎮火した。
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******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
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