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84 舞い降りた天使②
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「ジュスト!」
ガクリとなったジュストを見て、ギャレットが青ざめる。まさか…
「ステファン、ジュストは? まさか、ジュスト死」
「落ち着けギャレット、ジュストはこんなことで死ぬ人間ではない」
「で、ででででも…」
ステファンはジュストの鼻の先に手を当て、頸動脈も確認する。
「大丈夫だ。呼吸は安定している。体も傷や痣はあるが骨は、ヒビくらいは入っているだろうが、折れていなさそうだ」
「え、ヒビ」
それを聞いてギャレットの方が痛そうな顔をする。
「気を失う前に見たのがギャレットの顔だからか、この安心しきった顔を見ろ。心配することはない」
「天使?」
気を失ったジュストの顔を見てから、ギャレットとステファンは互いの顔を見合わせた。
「それって、僕のこと? それとも…」
ジュストは三途の川を渡りかけていて、天使が見えたのだろうか?
(あれ? 三途の川なら天使じゃないよな。何だっけ)
「性格はともかく、顔だけは天使だから間違いなくギャレットのことだろう」
「『性格は』ってどういうことだよ!」
ボカリとステファンの肩の辺りを叩く。
「いて、そういうところだよ。天使はそんな暴力を振るわない」
「ステファンが悪いんだからね」
「はいはい、さ、とにかくジュストを連れて出よう」
そこへ担架を持った人たちがやってきて、ジュストを乗せた。
「おにいちゃん大丈夫?」
ジュストが捕らえられていた場所から通路に出ると、ギャレットの服を引っ張って、同じように捕らえられていた子供が尋ねてきた。
色の濃さは違うが、ジュストと同じ赤い目をしている。
ガリガリに痩せて垢がこびりつき、髪もボサボサ、着ている服もボロボロで爪も真っ黒で虱もわいているかもしれない。
「大丈夫だよ。怪我はしているけど、ちゃんとお医者さんに治してもらうから」
プンと異臭が漂ってくる。
ギャレットは膝を突いて、彼の目線に合わせるとにこりと笑った。ジュストも最初保護された時はこんなだったんだろう。
そう思うとギャレットは改めて怒りが湧き上がった。
「おにいちゃん、天使様みたいだね」
一瞬ギャレットに見惚れて、頬を赤らめて少年が言った。
「きっと神様が助けに来てくれると思ったよ」
天真爛漫な笑みに怒りに蝕まれそうになっていたギャレットの心も癒やされる。
「ギャレット、行くぞ」
「うん、さあ、行こう。もう君たちを虐める人はいないよ」
立ち上がってギャレットは彼らに手を伸ばした。
その手を彼らは一瞬戸惑いながらも、握り返した。
カサカサと乾いた手だった。
靴も履いていなくて、ギャレットはそっと抱き上げた。
身長はそこそこあるのに、とても軽い。
子供たちの何人かは歩くことも出来ない状態で、ジュストと同じように運ばれていく。
地下室の階段を上がり地上に出ると、待ち構えていた医師たちに彼らを託した。
そこはベルン家の敷地の中にある建物で、上は礼拝堂になっていた。
マグナスがここに足繁く通えたのも、自分の邸の敷地内だったからだ。
デヴォンは名を偽りベルン家に司祭として雇われていた。
神を祀り祈る場所の下で非道なことが行われていたのだった。
礼拝堂の裏には表門を通らずに密かに出入りできる抜け穴があり、そこからデヴォンは出入りしていた。
そしてその近くには、いくつも地面に穴を掘ってまた土を被せた跡があり、恐らくは捕えられ虐待の後に命を落とした子供たちの遺体が埋められているのだろう。
「ギャレット、こっちだ」
ジュストは既に幌を被せた軍の馬車に乗せられていて、その前でステファンが手招きする。
「俺はまだここに残る。お前はジュストと先に行け、判事待っている」
「わかった」
ステファンたちはこの辺りの司法を司る判事の協力を得て、隣町の豪商の邸を本拠地にしている。
ギャレットは横たわっているジュストの横に座り、その手をぎゅっと握りしめた。
やがて馬車が動き出し、見送るステファンに手を振った。
「ジュスト、無事で良かった」
幌を閉じて密閉された空間に二人きりになると、ギャレットは涙を流しながら、そっとジュストの頬に口づけを落とした。
「大好きだよ、ジュスト。生きててくれてありがとう」
そしてもう一度頭を傾け、ギャレットは命を吹き込むように唇を重ねた。
ガクリとなったジュストを見て、ギャレットが青ざめる。まさか…
「ステファン、ジュストは? まさか、ジュスト死」
「落ち着けギャレット、ジュストはこんなことで死ぬ人間ではない」
「で、ででででも…」
ステファンはジュストの鼻の先に手を当て、頸動脈も確認する。
「大丈夫だ。呼吸は安定している。体も傷や痣はあるが骨は、ヒビくらいは入っているだろうが、折れていなさそうだ」
「え、ヒビ」
それを聞いてギャレットの方が痛そうな顔をする。
「気を失う前に見たのがギャレットの顔だからか、この安心しきった顔を見ろ。心配することはない」
「天使?」
気を失ったジュストの顔を見てから、ギャレットとステファンは互いの顔を見合わせた。
「それって、僕のこと? それとも…」
ジュストは三途の川を渡りかけていて、天使が見えたのだろうか?
(あれ? 三途の川なら天使じゃないよな。何だっけ)
「性格はともかく、顔だけは天使だから間違いなくギャレットのことだろう」
「『性格は』ってどういうことだよ!」
ボカリとステファンの肩の辺りを叩く。
「いて、そういうところだよ。天使はそんな暴力を振るわない」
「ステファンが悪いんだからね」
「はいはい、さ、とにかくジュストを連れて出よう」
そこへ担架を持った人たちがやってきて、ジュストを乗せた。
「おにいちゃん大丈夫?」
ジュストが捕らえられていた場所から通路に出ると、ギャレットの服を引っ張って、同じように捕らえられていた子供が尋ねてきた。
色の濃さは違うが、ジュストと同じ赤い目をしている。
ガリガリに痩せて垢がこびりつき、髪もボサボサ、着ている服もボロボロで爪も真っ黒で虱もわいているかもしれない。
「大丈夫だよ。怪我はしているけど、ちゃんとお医者さんに治してもらうから」
プンと異臭が漂ってくる。
ギャレットは膝を突いて、彼の目線に合わせるとにこりと笑った。ジュストも最初保護された時はこんなだったんだろう。
そう思うとギャレットは改めて怒りが湧き上がった。
「おにいちゃん、天使様みたいだね」
一瞬ギャレットに見惚れて、頬を赤らめて少年が言った。
「きっと神様が助けに来てくれると思ったよ」
天真爛漫な笑みに怒りに蝕まれそうになっていたギャレットの心も癒やされる。
「ギャレット、行くぞ」
「うん、さあ、行こう。もう君たちを虐める人はいないよ」
立ち上がってギャレットは彼らに手を伸ばした。
その手を彼らは一瞬戸惑いながらも、握り返した。
カサカサと乾いた手だった。
靴も履いていなくて、ギャレットはそっと抱き上げた。
身長はそこそこあるのに、とても軽い。
子供たちの何人かは歩くことも出来ない状態で、ジュストと同じように運ばれていく。
地下室の階段を上がり地上に出ると、待ち構えていた医師たちに彼らを託した。
そこはベルン家の敷地の中にある建物で、上は礼拝堂になっていた。
マグナスがここに足繁く通えたのも、自分の邸の敷地内だったからだ。
デヴォンは名を偽りベルン家に司祭として雇われていた。
神を祀り祈る場所の下で非道なことが行われていたのだった。
礼拝堂の裏には表門を通らずに密かに出入りできる抜け穴があり、そこからデヴォンは出入りしていた。
そしてその近くには、いくつも地面に穴を掘ってまた土を被せた跡があり、恐らくは捕えられ虐待の後に命を落とした子供たちの遺体が埋められているのだろう。
「ギャレット、こっちだ」
ジュストは既に幌を被せた軍の馬車に乗せられていて、その前でステファンが手招きする。
「俺はまだここに残る。お前はジュストと先に行け、判事待っている」
「わかった」
ステファンたちはこの辺りの司法を司る判事の協力を得て、隣町の豪商の邸を本拠地にしている。
ギャレットは横たわっているジュストの横に座り、その手をぎゅっと握りしめた。
やがて馬車が動き出し、見送るステファンに手を振った。
「ジュスト、無事で良かった」
幌を閉じて密閉された空間に二人きりになると、ギャレットは涙を流しながら、そっとジュストの頬に口づけを落とした。
「大好きだよ、ジュスト。生きててくれてありがとう」
そしてもう一度頭を傾け、ギャレットは命を吹き込むように唇を重ねた。
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