【完結】TL小説の悪役令息は死にたくないので不憫系当て馬の義兄を今日もヨイショします

七夜かなた

文字の大きさ
88 / 91

88 互いの想い②

しおりを挟む
 ジュストはパチパチと目を瞬かせ、ギャレットの次の言葉を待つ。

「僕もジュストのこと、好きだよ」
「そ…」
「もちろん、弟としてではなく、ちゃんと恋愛感情だからね」

「それは兄としてか」とジュストが言おうとしたのがわかり、ギャレットは続け様に言った。

「ギャレット?」
「僕たち、両想いだね」

(両想いって、こんなに嬉しいんだ。初めてだけど、嬉しい)

 前世では味わったことのない喜びがギャレットの胸に広がった。
 それが顔に現れているのが、鏡を見なくてもわかる。
 
「え、ギャレット、俺のこと…」

 自分から先に告白したくせに、こんなギャレットの反応を想像していなかったのか、ジュストはしどろもどろになっている。

「なに驚いているのさ。先に告白したのはジュストでしょ」
「え、だって、ギャレットは…え」 

(わあ、ジュストって動揺するとこんなふうになるんだ。何だか可愛い)

 いつも完璧でかっこいいジュストが狼狽えている姿は、逆に萌ポイントでギャレットの心を擽った。
 ギャレットはジュストより歳下だけど、前世の年齢を足して底上げすれば、かなり歳上になる。
 まるでおばさまが年端もいかない青年を愛でるような、そんな気持ちになる。

「ジュスト」
「え?」

 気持ちが抑えきれず、ジュストの名前を呼んで、パクパクしている彼の唇を塞いだ。

 ヒュッとジュストが息を呑むのがわかった。

(わ、ジュストの唇って柔らかい)

 初めてのジュストとのキスに、胸の高鳴りと共に下半身に熱が集まった。

 唇同士を重ねただけの軽いキスをして、ギャレットが唇を離してジュストの顔を覗き込むと、大きく見開かれた瞳の奥で、何かが揺らめいた。

(あれ、いきなり過ぎたかな?)

 気が急いてしまって、目が覚めたばかりのジュストにいきなり過ぎたか。

「………!!!」

 そう思っていると、頭の後ろを掴まれてジュストが頭を上げて唇を重ねてきた。

「ん…んんん」

 舌がするりと割り込んできて、絡みつく。

(うそ、これ、ディープキス?)

 前世でも未経験の深いキスに、目がチカチカする。
 他人の唾液と混ざり合うとか信じられないと思っていたが、好きな人と何もかも共有したいという気持ちに、そんなことは気にならなかった。

(気持ちいい。これ)

 ジュストから伝わる熱が脳の奥を痺れさせる。
 後頭部から背中に手が下りていき、窪みに沿って上下する。

「ふ…あ」

 唇が離れて互いの間を唾液の糸が渡る。

「まだ夢の中か…ギャレットが俺とのキスでそんな顔をするなんて」
「そんな…顔?」

 どんな顔をしているのか。きっとブサイクになっているに違いない。

「ジュスト、夢じゃないよ。今、僕たちはキスした」

 人差し指を立てて、ジュストの唇をフニフニと押す。
 たった今キスした唇はしっとりとしていて、またキスしたくなった。

「もう一回…していい?」

 ムラッとした気持ちになり、おねだりする。

「ギャレットのお願いを、俺が断れるわけないだろう?」
 
 そう言って笑うジュストからは病み上がりにも関わらず、色気がダダ漏れだ。
 
「では遠慮なく」

 枕に頭を預けたジュストに、今度は自分から覆いかぶさって鼻先同士を擦り合わせてから、軽く唇を押し付けさっきのような深いキスをした。

「これが夢なら覚めないでほしい。それともこれは人生の最後に神様がくれたご褒美か。この世にこんな幸福があるなんて」

 キスの後でジュストが呟く。

「夢ではないし、ジュストの人生はこれで終わりじゃないよ。まだまだジュストは幸せになる。ジュストの幸せがこれっぽっちなわけない」
「ギャレットとのキスがこれっぽっちなんてわけない」
「そんなに喜んでくれて嬉しいけど、ジュストのことを大事に思っているのは、僕だけじゃないよ。父上たちも、ステファンもレーヌも、王太子殿下も、皆、ジュストを心配していた」 
「うん。そうだね。わかっている」
「でも、ジュストが生きて側にいてくれるのを、一番嬉しく思っているのは、やっぱり僕かな。僕にとっての一番はジュストだから」

 ジュストと同じ枕に頭を預け、惚れ惚れとした気持ちで顔を見つめる。

「俺にとっての一番もギャレットだ」

 ジュストさクルクルのギャレットの巻毛をもて遊び、愛おしげに目を細める。

「ねえ、いつから僕のこと、好きになったの?」
「最初から、ギャレットのことは好きだよ」
「そういう意味で聞いたんじゃない。それに、昔の僕のことは忘れてよ」
 
 昔のギャレットは、我儘でどうしようもないクズな義弟だったはず。ジュストを虐げてきたギャレットを好きになるはずがない。

「この気持ちが弟に対してのものじゃないと思いだしたのは、王太子殿下と留学から戻ってきた頃かな」
「え、それって…」
「久しぶりにギャレットと一緒に寝て、夜中に夢精したギャレットの世話をしただろ?」
「う、それ、覚えて…」

 自分に取って恥ずかしい思い出だ。

「かわいい弟が、お風呂で自慰する姿にときめいた」

 そう言いながら、ジュストはギャレットに微笑みかける。
 溢れる色気にギャレットの胸が高鳴る。

「ギャレット、愛している。俺の身も心もすべて君のものだ」

 ジュストがギャレットの頬に手を添える。

「俺の天使」
「僕も、ジュストが好き。生きててくれてありがとう。手遅れにならなくて良かった」

 見つめあい、どちらからともなく再び唇を重ねる。
 そして身を寄せ合って、二人でそのまま朝まで眠りについた。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

処理中です...