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21 宇宙船?!
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それから一時間もしない内に、再び車に乗って辿り着いたのは、主要空港ではなく、小さな飛行場だった。
「ここは?」
「ここは我々が所有する空港だ。普段は個人客や企業のちょっとした荷物を運送したりしているが、私達が本部のある島へ行く時の出発地でもあります。ここ以外にもアメリカ国内には何箇所かこういう施設があります」
一見すると日本でいう小さな地方空港よりはこじんまりとしている小さな飛行場。平屋の建物は受付カウンターと事務所などがあり、滑走路にはセスナやプロペラ機が並んでいる。
『燕様』
「クラーク」
出迎えたのは体の大きなクマみたいな体格の、カウボーイハットを被った男性。
彼が恭しく燕に頭を下げ、それから和音を見た。
「和音、彼がここの責任者のクラークだ」
燕が和音に彼を紹介する。
「ア、アイム カズネ ナイス トゥー ミーチュー」
思い切りたどたどしい英語で挨拶すると、クラークも「ナイス トゥー ミーチュー」とゆっくり言った。
(もうちょっと英会話とか勉強しておくべきたった)
今までそういう時間もなかったが、これから三年の妊娠期間中、語学の勉強をしようと和音は思った。
「燕、あの、お願いがあります」
「なんですか?」
「もし良ければ私に言葉を教えてくれますか? まずは英会話から、それから色々何でもやってみたい」
これまで学校では義務だから仕方なく勉強をしてきた。成績は悪くはなかったが、特に頑張ってきた感じはない。
けれど英会話などなら、必要になる場面も多いだろうし、習って損はない。
「ええ、あなたが望むなら、いくらでも。でもあまり根を詰めすぎないでくださいね」
燕はまた和音の額にキスをした。
少しずつ、彼からのスキンシップも、戸惑うことなく受け入れられている。
(でも、まだ私からは無理だ)
燕のように自然に出来たらいいが、きっと身構えてしまうだろうと和音は思った。
クラークさんに案内されて、事務所のある建屋の奥へ進む。
社長室っぽい部屋を通り抜け更に奥へ進むと、そこは小さな小部屋になっていた。
てっきり外の滑走路へ向かうと思っていたのに、何をするのだろう。
打ち合わせとかかなとか、でも机とかもないし。そう思いながら和音は黙って付いていく。
何しろ燕に手を握られていて、離れられないのだ。
何もないその部屋に全員が入ると、扉がパタンと締り、部屋全体が動き出した。
「え、な、なんですか?」
和音は思わず燕にしがみついた。
「これはエレベーターです。我々はこれから地下へ行きます」
「地下?」
「ええ、そこに本部へ向かう乗り物があります」
「乗り物?」
和音が知っているエレベーターは、行き先の階の数字があって、今何階か表示があるもので、それとは違う。
感覚としては地下一階か二階分降りただろうか。
部屋式エレベーターが止まり、さっきと反対側が開いた。
「………!!」
そこは学校の体育館くらいの広さがあり、天井も高い空間。
そして目の前には、銀色に輝く飛行船のような卵型の乗り物があった。
飛行機のような羽はなく、ヘリコプターのようなプロペラもない。
空気より軽い気体で飛ぶ飛行船は、大きな気球という感じだが、それはその気体を入れる部分がなかった。
例えるならそれはクジラのようで、お腹の部分が開いて、そこに階段が付いている。恐らくそこから中へ入るのだろう。
驚きつつも燕に手を引かれてその場に足を踏み入れる。
「う、宇宙船?」
思わず和音は呟いた。
「我々は飛空艇と呼んでいます。あれで宇宙にはいけません。そういうふうに造っていませんから。でも、少し手を加えれば行けますよ」
少し手を加えれば、と燕は言った。ということは、形は宇宙船と言うことだ。
飛行機やヘリコプター、気球、それから最近は見ないが飛行船は知っている。
しかし、目の前の乗り物が空を飛んでいるのは見たことがない。
大きさはジャンボジェット機よりは少し小さ目だろうか。
「あれはレーダーにもひっかからない。人の目にも見えないように工夫がされています。稀にカメラなどで捉えられる時がありますが、地球の技術では、まだ実現は不可能なものです」
さらりと言っているが、レーダーに引っかからないのは違法じゃないのか。
「え、じゃ、じゃあ…」
「たまに未確認飛行物体か、とか騒がれたりしますね。流れた情報はこちらでわかる範囲で揉み消しますが、人の記憶までは如何ともし難いですけど。人の口に戸は立てられませんから」
未確認飛行物体…別名U.F.O。それでは本当に宇宙船?
「本部にはあれに乗って行きます」
目の前のその乗り物に向かって燕は指さした。
「ここは?」
「ここは我々が所有する空港だ。普段は個人客や企業のちょっとした荷物を運送したりしているが、私達が本部のある島へ行く時の出発地でもあります。ここ以外にもアメリカ国内には何箇所かこういう施設があります」
一見すると日本でいう小さな地方空港よりはこじんまりとしている小さな飛行場。平屋の建物は受付カウンターと事務所などがあり、滑走路にはセスナやプロペラ機が並んでいる。
『燕様』
「クラーク」
出迎えたのは体の大きなクマみたいな体格の、カウボーイハットを被った男性。
彼が恭しく燕に頭を下げ、それから和音を見た。
「和音、彼がここの責任者のクラークだ」
燕が和音に彼を紹介する。
「ア、アイム カズネ ナイス トゥー ミーチュー」
思い切りたどたどしい英語で挨拶すると、クラークも「ナイス トゥー ミーチュー」とゆっくり言った。
(もうちょっと英会話とか勉強しておくべきたった)
今までそういう時間もなかったが、これから三年の妊娠期間中、語学の勉強をしようと和音は思った。
「燕、あの、お願いがあります」
「なんですか?」
「もし良ければ私に言葉を教えてくれますか? まずは英会話から、それから色々何でもやってみたい」
これまで学校では義務だから仕方なく勉強をしてきた。成績は悪くはなかったが、特に頑張ってきた感じはない。
けれど英会話などなら、必要になる場面も多いだろうし、習って損はない。
「ええ、あなたが望むなら、いくらでも。でもあまり根を詰めすぎないでくださいね」
燕はまた和音の額にキスをした。
少しずつ、彼からのスキンシップも、戸惑うことなく受け入れられている。
(でも、まだ私からは無理だ)
燕のように自然に出来たらいいが、きっと身構えてしまうだろうと和音は思った。
クラークさんに案内されて、事務所のある建屋の奥へ進む。
社長室っぽい部屋を通り抜け更に奥へ進むと、そこは小さな小部屋になっていた。
てっきり外の滑走路へ向かうと思っていたのに、何をするのだろう。
打ち合わせとかかなとか、でも机とかもないし。そう思いながら和音は黙って付いていく。
何しろ燕に手を握られていて、離れられないのだ。
何もないその部屋に全員が入ると、扉がパタンと締り、部屋全体が動き出した。
「え、な、なんですか?」
和音は思わず燕にしがみついた。
「これはエレベーターです。我々はこれから地下へ行きます」
「地下?」
「ええ、そこに本部へ向かう乗り物があります」
「乗り物?」
和音が知っているエレベーターは、行き先の階の数字があって、今何階か表示があるもので、それとは違う。
感覚としては地下一階か二階分降りただろうか。
部屋式エレベーターが止まり、さっきと反対側が開いた。
「………!!」
そこは学校の体育館くらいの広さがあり、天井も高い空間。
そして目の前には、銀色に輝く飛行船のような卵型の乗り物があった。
飛行機のような羽はなく、ヘリコプターのようなプロペラもない。
空気より軽い気体で飛ぶ飛行船は、大きな気球という感じだが、それはその気体を入れる部分がなかった。
例えるならそれはクジラのようで、お腹の部分が開いて、そこに階段が付いている。恐らくそこから中へ入るのだろう。
驚きつつも燕に手を引かれてその場に足を踏み入れる。
「う、宇宙船?」
思わず和音は呟いた。
「我々は飛空艇と呼んでいます。あれで宇宙にはいけません。そういうふうに造っていませんから。でも、少し手を加えれば行けますよ」
少し手を加えれば、と燕は言った。ということは、形は宇宙船と言うことだ。
飛行機やヘリコプター、気球、それから最近は見ないが飛行船は知っている。
しかし、目の前の乗り物が空を飛んでいるのは見たことがない。
大きさはジャンボジェット機よりは少し小さ目だろうか。
「あれはレーダーにもひっかからない。人の目にも見えないように工夫がされています。稀にカメラなどで捉えられる時がありますが、地球の技術では、まだ実現は不可能なものです」
さらりと言っているが、レーダーに引っかからないのは違法じゃないのか。
「え、じゃ、じゃあ…」
「たまに未確認飛行物体か、とか騒がれたりしますね。流れた情報はこちらでわかる範囲で揉み消しますが、人の記憶までは如何ともし難いですけど。人の口に戸は立てられませんから」
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「本部にはあれに乗って行きます」
目の前のその乗り物に向かって燕は指さした。
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