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第56話 ほう、お呼び出しですか、うわぁ、面倒くせえな。
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テシテシ、テシテシ、ポンポン、いつもの朝起こしで私の一日は始まる。この心地よい起こしのおかげで今日も頑張る気力が出てくるというものだ。顔を洗って1階に降りて朝食を頂いてから部屋に戻って4人でまったり過ごしながら今日は何をしようかと考えていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「アイスさん、いますか?」
「いますよ、どうぞ。」
「では、失礼しますね。っと、何ですかこの部屋?」
メラちゃんが部屋に入ると驚いた顔をしている。何で驚いているのだろうか? 別に部屋は特に改造しているわけではないのだけど、一体どうしたんだろうか?
「? 普通に利用しているだけですが、何か問題がありますか?」
「いえ、あまりの綺麗さに驚いているんです。普通は連日宿泊されるとある程度汚れますが、アイスさん達が利用している部屋は汚れていないというか、むしろ綺麗になっているので驚いたんですよ。」
「ああ、そういうことですか。それはここにいるライムが綺麗にしてくれているんですよ。」
「えっ? ライムちゃんがですか? なるほど、そういえば、スライムって汚れなども食べてくれるから一部の貴族はスライムを飼っていると聞いたことがありますが、そういうことですか。」
「はい、何か私が寝ているときに綺麗にしてくれているみたいで。こちらは全く気付きませんでしたよ。」
「それは、羨ましいですね。私もライムちゃんみたいな可愛いスライムを飼いたいです。」
「うんうん、気持ちはよくわかります。けど、ライムはあげませんよ。大事な家族ですからね。」
「ぴーーーー!!」
私がそう言うと、ライムは嬉しそうにその場でピョンピョン跳ね出した。うん、可愛いな。
「ところで、何か私に用があるのでは?」
「あっ、そうでした! 戦姫の方達がアイスさんに用があるそうです。」
「おお、そうですか。こちらに案内してもらうのは大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。しかし、アイスさんも隅に置けませんね。」
「いや、そういう話ではないですよ。それよりも早く案内してください。時間をかければかけるほど、このホーク亭がやばいことになりますよ。」
「は、はい、わかりました!!」
メラちゃんは急いで部屋を出た。ドタドタと凄い音で階段を降りていく。しかし、戦姫の3人がこの部屋に来たことが知られると何かとまずいな。こちらの意図していないところで恨みを買ってしまうな。とはいえ今更どうにかなることではないか。それよりも折角来てくれたのだから、お茶の用意くらいはしておきましょうかね。しかし、考えてみたらこの世界に来てから茶というものを飲んだことがないな。今ある採集物でお茶に出来るものはないかな、、、、。お、これを使ってみますか。名前は知らないけど、オレンジとパイナップルを足して3で割った感じの味がする木の実があったな。それを絞り出してお湯で薄めてみますか。足して2ではなく3で間違いないからね。残りの1は何かわからないけどそんな感じの味かな。
絞り汁1のお湯3で結構いい塩梅になったので、これにしようか、と準備完了となったときにようやくノック音がした。やはり何かあったな、これ。
「ア、アイスさん、お、お待たせしました。」
メラちゃんの声が途切れ途切れだ。大変でしたね。
「メラちゃん、お疲れ様です。入ってもらってください。」
「失礼します。」
私がドアを開けようと思ったら、マーブルが開けに行ってくれた。猫っぽく飛びながらドアを開ける。ちなみにドアは開き戸みたいな感じだ。しかし器用だよね。
ドアが開くと、疲労困憊のメラちゃんと、そのメラちゃんを心配そうに見つめる戦姫の3人がいた。
「おはようございます、アンジェリカさん、セイラさん、ルカさん。本来は2人部屋なので狭いですがどうぞ、お入りください。」
「ごきげんよう、アイスさん、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃん。失礼いたしますわ。」
「アイスさん、おはよう。マーブルちゃん達もおはよう。」
「ウサちゃん達、おはよう。」
「メラちゃん、お疲れ様でした。やっぱり大変だったでしょう?」
「はい、アイスさんが『大変なことになる』と言っていた意味がわかりましたよ。それではこれで失礼しますね。」
「メラちゃん、ありがとうございました。」
メラちゃんが部屋から出ると、戦姫達を席に案内する。2人部屋ではあるが、一応何とか4人座れるテーブルがあるので何とかなった。狭いけど。戦姫の3人が席に着いたところで、用意していた飲み物を出した。
「お茶でも用意しようかと思いましたが、あいにくとそういったものは持っていませんでしたので、代わりといっては何ですが、こちらをどうぞ。」
「まあ、ありがとうございます、早速頂きますわね。」
さて、気に入って頂けるだろうか。念のため味見はしてあるので大丈夫だとは思うが。
「!! アイスさん、この飲み物は一体どこで?」
「これは、移動中に見つけた木の実の絞り汁をお湯で3倍に薄めたやつです。」
「初めての味で驚きましたが、このほのかな甘みがすばらしいですわ。」
「即興で用意したものなので、お気に召してくれるか心配だったのですが、喜んで頂けて何よりです。セイラさんとルカさんはどうでしたか? 正直な感想を頂けると嬉しいのですが。」
「私はこの味好きかな。甘すぎないところが飲みやすくて美味しいと思う。」
「私は、もっと甘い方が好みだけど、これはこれでいい。」
「そう言って頂けると嬉しいですね。」
うん、3人の表情から察するとお世辞ではないようだ。ちなみにマーブル達はどうかというと、可もなく不可もなくといったところかな。即興だからこれで今は我慢してね。
「アイスさん達はこの部屋で普段は過ごされているのですね。」
「そうですね。ちなみにホーク亭はどれもこういった部屋だそうです。タンバラの街もほぼここと同じ感じの部屋です。ベッドもテーブルも調度品もほぼ同じですよ。さらに言うと、ホーク亭は一族経営だそうで、それぞれのご主人は兄弟だそうですよ。しかも、この宿の看板娘であるメラちゃんとタンバラの街での看板娘のメルちゃんはほぼ同じ顔です。正直私では区別がつきません。それこそ鑑定スキルがないと無理じゃないでしょうかね。」
「このタンヌ王国は一族で経営なさっている店が多いのです。アイスさんは驚かれたかもしれませんが、この国ではそういったことは意外にあるのですよ。ほら、冒険者ギルドでもギルド長のアイシャさんとアルベルトさんは性別以外はほぼ同じではありませんか。とはいっても、それは一般市民の話であって、貴族の方達はそういったことはありませんのよ。」
「確かに、言われてみるとその通りですね。しかし、貴族もそういった似た感じの外見だと面白かったのですがね。」
「外見だけ似た感じだったらいいのですが、貴族は逆に外見ではなく、考え方がみんな似たり寄ったりですの。まったく迷惑ですわね。」
「そ、そうなんですか? 私には無関係な世界なのでその辺のことはさっぱりわかりませんが。」
「ええ、このタンヌ王国は分類的には小国となります。街もここ王都とタンバラの街を含めても街といえる数は6つ程度しかなく、その周辺に集落がいくつかあるだけですの。そのくせ貴族の数だけは他国に引けを取らない数がありますの。そのせいで貴族同士の足の引っ張り合いがもの凄くて、、、。」
「なるほど。そういった背景があるのですね。ところで、今日わざわざここにお見えになったのは?」
今日来た理由を尋ねると、ふと思い出したかのような感じでアンジェリカさんは答えた。
「そうでしたわ。今日はアイスさんにお願いがありまして、、、。」
「その表情から察しますと、あまり良い内容とは言えない感じですねぇ。」
「はい、お父様がアイスさんに興味を持ちまして、それでお会いしたいと言ってきたのですわ。」
「やっぱり。手紙で呼び出そうと考えたけど、断られた挙げ句この国を去ってしまう可能性があるから、アンジェリカさんに話してもらうことで断れなくしてきたと。」
「お察しの通りですわ。」
「しかし、何でまた、そこまでしてこんな冴えないオッサンに会いたいと思うのかねぇ。」
不思議に思っていると、アンジェリカさんではなくセイラさんがそれに答えた。
「あのねぇ、アイスさん、あなたは自分がどれだけ凄い存在かわかってるのですか?」
「え? 別に凄くないでしょう。」
「いいですか? まず、私達戦姫と一緒にパーティを組んでクエストをする唯一の人なんですよ? 私達と一緒にパーティを組もうと誘ってくる人達は大勢いますが、王女殿下が全て断っておりました。それを盗賊討伐のみならずワイルドボアや今回のミノタウロス討伐で一緒にパ-ティを組むこと自体が異例中の異例なんです。王令であっても王女殿下は今まで一度も首を縦に振ったことはなかったんですよ。」
「そ、そうなんですか?」
「そうです。それを自覚してくださいね!!」
「は、はい。」
「それと、今回の護衛依頼。」
今度はルカさんが一言いうと、それに付け足すようにセイラさんが畳み掛けてくる。
「そう、護衛依頼です。王女殿下は本人は嫌がっておりますが、王族です。移動となると近衛兵が護衛として必ず着いてきます。普段は冒険者として行動するからといって断っておりますが、今回は強制送還みたいなものでしたから、近衛兵はほぼ決定事項だったのです。それを断ってまでアイスさんに護衛任務を依頼するほどなんですからね。国王陛下が興味を持つのは当たり前です!!」
普段見たことのない2人の勢いに押されてしまう。
「で、ではいつでしょうか?」
「明後日、一緒に昼食を摂りたいとのことですわ。」
「呼ばれるのは私だけですか? マーブル達は置いていかないとなりませんかね。」
「マーブルちゃん達と一緒にとのことだそうですわ。マーブルちゃん達についてはお父様ではなくお母様が特に興味をお持ちですの。」
「マーブル達も一緒ならお受けしますか。ましてアンジェリカさん直々の頼みとあっては断れませんしね。」
「あら、いくらわたくしの頼みとはいえ、マーブルちゃん達と一緒でなかったらお断りなさったでしょう?」
「ありゃ、バレてましたか。マーブル達は登録上は従魔となっておりますが、私はマーブルとジェミニとライムとのパーティだと思っていますので。」
「確かに、マーブルちゃん達あってのアイスさんでしたわね。」
「そういうことです。」
その言葉にマーブル達は嬉しそうに周りを走り回った。狭いから無理しないでね。でも、可愛い。
「はぁ、オニキスが私達のメンバーになって改めて、アイスさんの気持ちがわかりましたわ。」
「でしょう? カワイイは正義です!!」
「うんうん、カワイイは正義。」
ルカさんが即座に反応した。
「ところで、王都に戻ったときに身ぎれいになっていたことについては違和感をもたれませんでした?」
「ええ、城内で入浴したときにメイドに聞かれましたわ。でも、流石にねぐらのことは話せませんし、第一信じてもらえないでしょうから正直困りましたの。でもオニキスがそれを解決してくれましたわ。」
「あ、なるほど。オニキスに綺麗にしてもらったということにしたのですか?」
「ええ、実際にそうでしたわ。オニキスは凄いんですのよ、お願いすると、わたくしの全身を覆うように広がってシュワシュワさせてくるんですの。そのシュワシュワが気持ちいいのですわ。」
「ほう、全身を包むようにですか。それで息はできるんですか?」
「ええ、問題なくできましたわ。」
「なるほど、ところでライム、ライムもそういったことできるの?」
「うん、できるよー。でも、あるじはお風呂に入っているし、特に何も言われなかったからしなかっただけー。」
「そうなんだ、今度お願いしても良いかな?」
「うん、やるよー。むしろお願いして欲しいなー。」
「ということは、オニキスがそういうことができるということは、ライムが分裂するときにそういった能力をつけたのかな?」
「うん、おねーちゃん達がお風呂に凄く興味を持ってるみたいだったから綺麗になる技つけたー。」
「ということは、オニキスがもの凄く硬いのって、ライムが意識して付けたの?」
「うん、そうだよー。ぼくが2体になったら別れた方をおねーちゃん達にあげる約束だったからね。おねーちゃん達には守ってくれる仲間がいなそうだったから、守ることを一番にした方が役に立つと思ったの-。」
「そうなんだ、ライムありがとうね。そこまで考えてくれたんだ。」
ライムの優しさに少し涙ぐむ。マーブルとジェミニもよくやった!! と言わんばかりにライムにスリスリしてきた。オニキスもそれを知ってライムにスリスリしてきた。これもいい絵だ。癒やされる。
「ライムちゃん、ありがとう。わたくし達のことを考えて用意してくれたんですのね。」
「ライムちゃんありがとう、オニキスはもの凄く活躍しているよ。」
「うん、オニキスのおかげで安心して魔法が撃てる。」
うんうん、私は良い仲間に恵まれているな。いつも一緒にいてくれるマーブル達はもちろん、この縁を作ってくれたアマさんに感謝してアマデウス神殿にお祈りと戦利品を献上するとしますか。こうやって素直に感謝などしてくれる戦姫の3人も気持ちの良い人達だ。これから先も良い関係を築いていけたらいいなと思う。
話を戻して、明後日の予定に関して話を詰めていく。城の使いのものをホーク亭に出してくれるそうだ。格好は冒険者の装備で問題ないそうだ。ある程度方向が定まったところで戦姫の3人は部屋を出た。
さて、これからアマデウス神殿に向かいますか。
「アイスさん、いますか?」
「いますよ、どうぞ。」
「では、失礼しますね。っと、何ですかこの部屋?」
メラちゃんが部屋に入ると驚いた顔をしている。何で驚いているのだろうか? 別に部屋は特に改造しているわけではないのだけど、一体どうしたんだろうか?
「? 普通に利用しているだけですが、何か問題がありますか?」
「いえ、あまりの綺麗さに驚いているんです。普通は連日宿泊されるとある程度汚れますが、アイスさん達が利用している部屋は汚れていないというか、むしろ綺麗になっているので驚いたんですよ。」
「ああ、そういうことですか。それはここにいるライムが綺麗にしてくれているんですよ。」
「えっ? ライムちゃんがですか? なるほど、そういえば、スライムって汚れなども食べてくれるから一部の貴族はスライムを飼っていると聞いたことがありますが、そういうことですか。」
「はい、何か私が寝ているときに綺麗にしてくれているみたいで。こちらは全く気付きませんでしたよ。」
「それは、羨ましいですね。私もライムちゃんみたいな可愛いスライムを飼いたいです。」
「うんうん、気持ちはよくわかります。けど、ライムはあげませんよ。大事な家族ですからね。」
「ぴーーーー!!」
私がそう言うと、ライムは嬉しそうにその場でピョンピョン跳ね出した。うん、可愛いな。
「ところで、何か私に用があるのでは?」
「あっ、そうでした! 戦姫の方達がアイスさんに用があるそうです。」
「おお、そうですか。こちらに案内してもらうのは大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。しかし、アイスさんも隅に置けませんね。」
「いや、そういう話ではないですよ。それよりも早く案内してください。時間をかければかけるほど、このホーク亭がやばいことになりますよ。」
「は、はい、わかりました!!」
メラちゃんは急いで部屋を出た。ドタドタと凄い音で階段を降りていく。しかし、戦姫の3人がこの部屋に来たことが知られると何かとまずいな。こちらの意図していないところで恨みを買ってしまうな。とはいえ今更どうにかなることではないか。それよりも折角来てくれたのだから、お茶の用意くらいはしておきましょうかね。しかし、考えてみたらこの世界に来てから茶というものを飲んだことがないな。今ある採集物でお茶に出来るものはないかな、、、、。お、これを使ってみますか。名前は知らないけど、オレンジとパイナップルを足して3で割った感じの味がする木の実があったな。それを絞り出してお湯で薄めてみますか。足して2ではなく3で間違いないからね。残りの1は何かわからないけどそんな感じの味かな。
絞り汁1のお湯3で結構いい塩梅になったので、これにしようか、と準備完了となったときにようやくノック音がした。やはり何かあったな、これ。
「ア、アイスさん、お、お待たせしました。」
メラちゃんの声が途切れ途切れだ。大変でしたね。
「メラちゃん、お疲れ様です。入ってもらってください。」
「失礼します。」
私がドアを開けようと思ったら、マーブルが開けに行ってくれた。猫っぽく飛びながらドアを開ける。ちなみにドアは開き戸みたいな感じだ。しかし器用だよね。
ドアが開くと、疲労困憊のメラちゃんと、そのメラちゃんを心配そうに見つめる戦姫の3人がいた。
「おはようございます、アンジェリカさん、セイラさん、ルカさん。本来は2人部屋なので狭いですがどうぞ、お入りください。」
「ごきげんよう、アイスさん、マーブルちゃん、ジェミニちゃん、ライムちゃん。失礼いたしますわ。」
「アイスさん、おはよう。マーブルちゃん達もおはよう。」
「ウサちゃん達、おはよう。」
「メラちゃん、お疲れ様でした。やっぱり大変だったでしょう?」
「はい、アイスさんが『大変なことになる』と言っていた意味がわかりましたよ。それではこれで失礼しますね。」
「メラちゃん、ありがとうございました。」
メラちゃんが部屋から出ると、戦姫達を席に案内する。2人部屋ではあるが、一応何とか4人座れるテーブルがあるので何とかなった。狭いけど。戦姫の3人が席に着いたところで、用意していた飲み物を出した。
「お茶でも用意しようかと思いましたが、あいにくとそういったものは持っていませんでしたので、代わりといっては何ですが、こちらをどうぞ。」
「まあ、ありがとうございます、早速頂きますわね。」
さて、気に入って頂けるだろうか。念のため味見はしてあるので大丈夫だとは思うが。
「!! アイスさん、この飲み物は一体どこで?」
「これは、移動中に見つけた木の実の絞り汁をお湯で3倍に薄めたやつです。」
「初めての味で驚きましたが、このほのかな甘みがすばらしいですわ。」
「即興で用意したものなので、お気に召してくれるか心配だったのですが、喜んで頂けて何よりです。セイラさんとルカさんはどうでしたか? 正直な感想を頂けると嬉しいのですが。」
「私はこの味好きかな。甘すぎないところが飲みやすくて美味しいと思う。」
「私は、もっと甘い方が好みだけど、これはこれでいい。」
「そう言って頂けると嬉しいですね。」
うん、3人の表情から察するとお世辞ではないようだ。ちなみにマーブル達はどうかというと、可もなく不可もなくといったところかな。即興だからこれで今は我慢してね。
「アイスさん達はこの部屋で普段は過ごされているのですね。」
「そうですね。ちなみにホーク亭はどれもこういった部屋だそうです。タンバラの街もほぼここと同じ感じの部屋です。ベッドもテーブルも調度品もほぼ同じですよ。さらに言うと、ホーク亭は一族経営だそうで、それぞれのご主人は兄弟だそうですよ。しかも、この宿の看板娘であるメラちゃんとタンバラの街での看板娘のメルちゃんはほぼ同じ顔です。正直私では区別がつきません。それこそ鑑定スキルがないと無理じゃないでしょうかね。」
「このタンヌ王国は一族で経営なさっている店が多いのです。アイスさんは驚かれたかもしれませんが、この国ではそういったことは意外にあるのですよ。ほら、冒険者ギルドでもギルド長のアイシャさんとアルベルトさんは性別以外はほぼ同じではありませんか。とはいっても、それは一般市民の話であって、貴族の方達はそういったことはありませんのよ。」
「確かに、言われてみるとその通りですね。しかし、貴族もそういった似た感じの外見だと面白かったのですがね。」
「外見だけ似た感じだったらいいのですが、貴族は逆に外見ではなく、考え方がみんな似たり寄ったりですの。まったく迷惑ですわね。」
「そ、そうなんですか? 私には無関係な世界なのでその辺のことはさっぱりわかりませんが。」
「ええ、このタンヌ王国は分類的には小国となります。街もここ王都とタンバラの街を含めても街といえる数は6つ程度しかなく、その周辺に集落がいくつかあるだけですの。そのくせ貴族の数だけは他国に引けを取らない数がありますの。そのせいで貴族同士の足の引っ張り合いがもの凄くて、、、。」
「なるほど。そういった背景があるのですね。ところで、今日わざわざここにお見えになったのは?」
今日来た理由を尋ねると、ふと思い出したかのような感じでアンジェリカさんは答えた。
「そうでしたわ。今日はアイスさんにお願いがありまして、、、。」
「その表情から察しますと、あまり良い内容とは言えない感じですねぇ。」
「はい、お父様がアイスさんに興味を持ちまして、それでお会いしたいと言ってきたのですわ。」
「やっぱり。手紙で呼び出そうと考えたけど、断られた挙げ句この国を去ってしまう可能性があるから、アンジェリカさんに話してもらうことで断れなくしてきたと。」
「お察しの通りですわ。」
「しかし、何でまた、そこまでしてこんな冴えないオッサンに会いたいと思うのかねぇ。」
不思議に思っていると、アンジェリカさんではなくセイラさんがそれに答えた。
「あのねぇ、アイスさん、あなたは自分がどれだけ凄い存在かわかってるのですか?」
「え? 別に凄くないでしょう。」
「いいですか? まず、私達戦姫と一緒にパーティを組んでクエストをする唯一の人なんですよ? 私達と一緒にパーティを組もうと誘ってくる人達は大勢いますが、王女殿下が全て断っておりました。それを盗賊討伐のみならずワイルドボアや今回のミノタウロス討伐で一緒にパ-ティを組むこと自体が異例中の異例なんです。王令であっても王女殿下は今まで一度も首を縦に振ったことはなかったんですよ。」
「そ、そうなんですか?」
「そうです。それを自覚してくださいね!!」
「は、はい。」
「それと、今回の護衛依頼。」
今度はルカさんが一言いうと、それに付け足すようにセイラさんが畳み掛けてくる。
「そう、護衛依頼です。王女殿下は本人は嫌がっておりますが、王族です。移動となると近衛兵が護衛として必ず着いてきます。普段は冒険者として行動するからといって断っておりますが、今回は強制送還みたいなものでしたから、近衛兵はほぼ決定事項だったのです。それを断ってまでアイスさんに護衛任務を依頼するほどなんですからね。国王陛下が興味を持つのは当たり前です!!」
普段見たことのない2人の勢いに押されてしまう。
「で、ではいつでしょうか?」
「明後日、一緒に昼食を摂りたいとのことですわ。」
「呼ばれるのは私だけですか? マーブル達は置いていかないとなりませんかね。」
「マーブルちゃん達と一緒にとのことだそうですわ。マーブルちゃん達についてはお父様ではなくお母様が特に興味をお持ちですの。」
「マーブル達も一緒ならお受けしますか。ましてアンジェリカさん直々の頼みとあっては断れませんしね。」
「あら、いくらわたくしの頼みとはいえ、マーブルちゃん達と一緒でなかったらお断りなさったでしょう?」
「ありゃ、バレてましたか。マーブル達は登録上は従魔となっておりますが、私はマーブルとジェミニとライムとのパーティだと思っていますので。」
「確かに、マーブルちゃん達あってのアイスさんでしたわね。」
「そういうことです。」
その言葉にマーブル達は嬉しそうに周りを走り回った。狭いから無理しないでね。でも、可愛い。
「はぁ、オニキスが私達のメンバーになって改めて、アイスさんの気持ちがわかりましたわ。」
「でしょう? カワイイは正義です!!」
「うんうん、カワイイは正義。」
ルカさんが即座に反応した。
「ところで、王都に戻ったときに身ぎれいになっていたことについては違和感をもたれませんでした?」
「ええ、城内で入浴したときにメイドに聞かれましたわ。でも、流石にねぐらのことは話せませんし、第一信じてもらえないでしょうから正直困りましたの。でもオニキスがそれを解決してくれましたわ。」
「あ、なるほど。オニキスに綺麗にしてもらったということにしたのですか?」
「ええ、実際にそうでしたわ。オニキスは凄いんですのよ、お願いすると、わたくしの全身を覆うように広がってシュワシュワさせてくるんですの。そのシュワシュワが気持ちいいのですわ。」
「ほう、全身を包むようにですか。それで息はできるんですか?」
「ええ、問題なくできましたわ。」
「なるほど、ところでライム、ライムもそういったことできるの?」
「うん、できるよー。でも、あるじはお風呂に入っているし、特に何も言われなかったからしなかっただけー。」
「そうなんだ、今度お願いしても良いかな?」
「うん、やるよー。むしろお願いして欲しいなー。」
「ということは、オニキスがそういうことができるということは、ライムが分裂するときにそういった能力をつけたのかな?」
「うん、おねーちゃん達がお風呂に凄く興味を持ってるみたいだったから綺麗になる技つけたー。」
「ということは、オニキスがもの凄く硬いのって、ライムが意識して付けたの?」
「うん、そうだよー。ぼくが2体になったら別れた方をおねーちゃん達にあげる約束だったからね。おねーちゃん達には守ってくれる仲間がいなそうだったから、守ることを一番にした方が役に立つと思ったの-。」
「そうなんだ、ライムありがとうね。そこまで考えてくれたんだ。」
ライムの優しさに少し涙ぐむ。マーブルとジェミニもよくやった!! と言わんばかりにライムにスリスリしてきた。オニキスもそれを知ってライムにスリスリしてきた。これもいい絵だ。癒やされる。
「ライムちゃん、ありがとう。わたくし達のことを考えて用意してくれたんですのね。」
「ライムちゃんありがとう、オニキスはもの凄く活躍しているよ。」
「うん、オニキスのおかげで安心して魔法が撃てる。」
うんうん、私は良い仲間に恵まれているな。いつも一緒にいてくれるマーブル達はもちろん、この縁を作ってくれたアマさんに感謝してアマデウス神殿にお祈りと戦利品を献上するとしますか。こうやって素直に感謝などしてくれる戦姫の3人も気持ちの良い人達だ。これから先も良い関係を築いていけたらいいなと思う。
話を戻して、明後日の予定に関して話を詰めていく。城の使いのものをホーク亭に出してくれるそうだ。格好は冒険者の装備で問題ないそうだ。ある程度方向が定まったところで戦姫の3人は部屋を出た。
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【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
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