とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき

文字の大きさ
81 / 85

第78話 ほう、やっと出られますね。

しおりを挟む
 テシテシ、テシテシ、ポンポン、今日は牢屋での朝起こしだ。幸いにもワイルドボアの毛皮があったのでそれを敷いて寝床にしたので、目覚め自体は悪くない。いつも通りマーブル達と挨拶を交わすが、ライムだけは人目があるので、人語ではなかった。うん、しっかりわかっているね。


 今朝は王宮内とはいえ牢獄なので、朝食の用意をする。といっても水は準備してもよろしくなさそうなものが出来上がりそうなので、ボア肉のステーキではなく、焼き肉で食べるような大きさに切ってもらってから焼いた。場所こそ悪かったが、味はそこそこよろしかった。スープなしというのは多少きついが致し方ない。


 朝食を食べ終わった頃に、牢番が食事を持ってきたが断った。何が入っているかわからないからね。断っても置いていったので、放っておいた。後で勝手に回収でもなんでもするだろう。ちなみに、偉そうに牢を蹴りつけて凍らせた牢番は相変わらずそのままの状態だった。顔には涙の後があったが、表情はほとんど無い状態だった。まあ、自業自得というか身の程を知らないというか、とにかくどうでもいい。このまま放っておくとしますか。


 マーブル達とモフモフしたりしていると、アンジェリカさん達がやってきた。


「アイスさんに、マーブルちゃん達、ご機嫌よう。」


「あ、アンジェリカさん、セイラさん、ルカさん、お早うございます。」


 いつも通りに戦姫の3人と挨拶を交わす。


「アイスさん、用意しておいた食事には手を着けてくださらないのですね。」


「はい、何が盛られているのかわかりませんしね。」


「これは料理人がアイスさんのために用意したものですから、召し上がって頂きたいのですが。」


「お気持ちはありがたいのですが、仮に料理人の方が作ったとしても、こちらに届く過程で何か盛られている可能性が高いので。」


「少しは私達を信用して欲しいのですけれど。」


「アンジェリカさん達は信用できると思いますが、それ以外の方達についてはその限りではありません。何せお墨付きを頂いていても平気で牢に放り込んでくる国ですからね。」


「そ、それをおっしゃいますと、返す言葉が見つかりませんわ。その件については誠に申し訳なく思いますわ。」


「まあ、アンジェリカさんが謝ることではないと思いますよ。ところで、私達をどうするのかが気になりますね。場合によっては力尽くでもここを去ろうと思いますので。何せこちらには落ち度はないと思っていますからね。」


「昨晩からお父様達が動いているみたいですわ。わたくし達は蚊帳の外に出されておりますので現在どうなっているのかわかりませんの。メイド達に聞いても『知らない。』と言うばかりで、、、。」


「そうですか。そういえば、昨日お渡ししたオーガジャーキーの味はいかがでしたか? 忌憚の無い意見を伺いたいのですが。」


「申し訳ありませんが、今はそれどころではないので、まだ手を着けておりませんの。落ち着いたらゆっくりと頂くつもりでしたので。」


「ありゃ、そうでしたか。まだであれば致し方ないですね。」


「ところで、ここで足を上げたまま放っておいてある牢番の方はどうされるおつもりですの?」


「ああ、これですか。死ぬまでその状態でいてもらうつもりです。」


 そう言った途端、凍ったままの牢番は顔を真っ赤にして叫ぶように訴えてきた。


「本当に申し訳ありませんでした! もう絶対にあなた様に舐めた態度はとりませんので、お願いですからこの状態を解いてください!! あれから食事はおろか水すらも飲めていないのです、どうか、お願いします!!!」


「水すら口にしていないのは見ればわかりますが、おたくは散々牢に入った方達に理由も無くそういったことをされてきているんですよね。ただ、今度は自分の番になっただけで。」


「そのようなことは致しておりません! 確かに囚人に舐められないように偉そうな態度を取ったことは認めます! しかし、金輪際このようなことは致しません!! お願いですからわたくしめを助けてください!」


 いい加減うざったくなってきたので、水術を解いてやると、その牢番は体勢を崩して後ろに倒れた。そして足が動くのがわかると今度はこちらに土下座してきた。


「ありがとうございます、ありがとうございます。今後絶対にあなたたちに舐めた態度を取ることは致しません!! いえ、他の囚人に対してもそういった態度は絶対に取りません!!」


 そう言って逃げるようにこの場を去って行った。


「さてと、五月蠅いのがいなくなりましたが、アンジェリカさん達は、いつまでもここにいていいのですか? 周りからあらぬ疑いをかけられる可能性もありますよ?」


「アイスさん達を牢にいれるような国、いくら自分の国とはいえゴメンですわ。わたくしはお父様にアイスさんがこの国を出るようなことがあったら、わたくし達もこの国を去ると宣言しておりますの。ですから、アイスさん達がこの国を去るのであれば、わたくし達もそれに着いていくまでです。ですからここに来たのですわ。」


「いやいや、それはまずいと思いますよ。私はともかく、あなたたちはこの国に必要な存在ですよ。いきなりこんなことを言うのも何ですが、恐らくアンジェリカさん以外にこの国を継げる方っていないと思いますよ。でないと、私が呼ばれたときに同席しているのがアンジェリカさんしかいないというのはおかしいと思います。少なくともいずれかの王子に継がせるつもりでしたら、必ず同席していると思うんですよ。でも、どの王子も同席していなかった、となると恐らく国王、王妃両殿下や宰相様、などの中枢の方達はアンジェリカさんを次期国王にするつもりだと私は思いますよ。」


「わ、わたくしがですか? わたくしはご存じの通り冒険者として普段は行動しておりますので、わたくしのことを狙っている貴族はおれども、わたくしを助けてくれる貴族なんて皆無ですのよ。」


「だからこそですよ。国の財政を傾けている要因となっている過剰な数の貴族とは誰も親しくしていない、というのは大きいと思います。そして、冒険者として一般市民の目線でものが見られる、というのも大事なことだと思います。恐らくその2点だけでも跡継ぎとしては十分ではないかと思います。ですので、私がこの国を去ろうとも、あなたたちは決してこの国を去ってはいけないのです。」


「では、アイスさん、これだけは約束してください。仮にわたくしがこの国を継いだ場合には、わたくしと敵対すること無く友好的な関係でもってここを訪れてくれることを。」


「アンジェリカさんが治める国でしたらもちろん約束させてもらいます。」


「わかりましたわ。アイスさんが仮にこの国を去ったとしても、わたくしは去らずにとどまります。」


「それでいいと思いますよ。これで安心してこの国を去ることができます。」


「わたくしとしては、この国にとどまって頂いて、わたくし達と一緒に冒険者として依頼をこなして欲しかったのですが。」


「それはそれで嬉しい話なのですが、少しやらないといけないことがありまして。」


 そんな遣り取りをして、どうにか無理矢理納得させてから、アンジェリカさん達は戻っていった。いくら何でもゴブリンの集落には案内できないですからねぇ。彼らが気のいいゴブリンだとしても、彼女たちの精神が追いつかないかも。まあ、それはそれとして、この後どうなるかだよな。とりあえず夕飯時までは大人しくしていますかね。しかし、暇だなぁ。いくらマーブル達が一緒とはいえ、こんな狭い中にずっといるのもかわいそうだし、何より私が嫌だ。


 これからどうしようかな、と思っていると、意外な来客があった。何と国王陛下自らこちらにやってきたのだ。国王陛下は王妃殿下こそ連れてきていなかったが、宰相様は当然として近衛兵長と軍団長、さらには魔術師長などタンヌ王国ではこれ以上無い顔ぶれであった。こちらを確認すると、国王陛下が話しかけてきた。


「アイスよ、こんなところに入れるような真似をして済まない。そなたを牢に入れたのはホンダム公爵の差し金だそうだ。ホンダム公爵は位こそ公爵と高いが領地のない王宮貴族である。アイスに対して自由を保障する旨を余はしっかりと伝えたのだが、それを敢えて無視してこういった行動を起こしたそうだ。こういう類いの貴族を押さえることの出来なかった事に対し、改めてお詫びする、アイスよ、本当に済まなかった。」


 国王陛下が一冒険者に対して頭を下げた。一緒に同行した中枢幹部達もそれに倣うように頭を下げた。これには流石に驚いた。


「国王陛下、並びに皆さん、顔をお上げください。一市民に対する行動ではありません。」


「いや、自由に行動できるお墨付きを与えておきながら、そなたを牢に入れてしまった失態に対して、余があずかり知らぬ事だったとはいえ、こうするしかないのだ。これを期に王都に巣くう害虫どもを駆逐する。これでようやく行動が取れるのだ。」


 国王陛下が気合のこもった声で語り出した。いや、そういった機密をここで話していいのだろうか。一緒に来ていた大幹部の方達も頷きながらも顔はやる気に満ちていた。頑張っていい国にしていってくださいね。


「おっと、済まん。お主をここから出さないとな。」


 近衛兵長のランバラルさんが牢の鍵を使って開けてくれた。


「アイスよ、本当に済まなかったな。本当はこの国、いや王都にとどまってもらいたいのだが、それは無理なのじゃな。仕方がない。それについてはあきらめるとするが、いつか、この国、いや、この王都に戻ってきて欲しい。」


「それについては絶対にとは申し上げることはできませんが、できるだけ、ということであればお約束できると思います。それですと、約束になるかどうかはわかりませんが。」


「ははっ、そうだな。」


 その後も少し話をした後、衛兵に案内されて王宮を出て、王都の城門へ向かった。久しぶりにジュセイさんがいた。


「おう、アイス、とんでもない目に遭ったね。ところで、もう出て行ってしまうのかな?」


「ええ、行きたいところもありますしね。」


「そうか、元気でな。」


「はい、ジュセイさんも。」


 ジュセイさんに挨拶して、王都を出た。行き先はゴブリンのムラである。周りに人がいないのを確認してムラの入り口付近に転移した。あ、戦姫の3人に挨拶するの忘れてた。まあ、今生の別れにはならないからいいか、、、ってフラグ立った?


 久しぶりにゴブリンのムラに到着したが、いつもなら元気に声をかけてくれていたのが、何か今日は様子が違っていた。ゴブリンのムラに何かあったのかと心配になったが、ムラが荒らされたという訳でも無く、かといって誰かが殺されたのかといったら、これも違っていた。たまたま近くにいたエーリッヒさんが出迎えてくれたが、その表情は硬かった。一体何があったのだろう。


「アイスさん、おかえり。元気そうで何よりだが、早速で申し訳ないが、アイスさんが戻ったらムラ長のところに案内するよう言われていたんだが、来てくれないか。」


「エーリッヒさん、一体どうしたんですか?」


「詳しくはムラ長が話してくれる。詳しい話はそっちでしよう。」


 何だろう。嫌な予感しかしないが、私が何かやらかした訳ではなさそうだ。不安ではあるが、話を聞かないことにはどうしようもない。


 ということで、案内されるまま長のカムドさんのところに向かった。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

追放された最弱ハンター、最強を目指して本気出す〜実は【伝説の魔獣王】と魔法で【融合】してるので無双はじめたら、元仲間が落ちぶれていきました〜

里海慧
ファンタジー
「カイト、お前さぁ、もういらないわ」  魔力がほぼない最低ランクの最弱ハンターと罵られ、パーティーから追放されてしまったカイト。  実は、唯一使えた魔法で伝説の魔獣王リュカオンと融合していた。カイトの実力はSSSランクだったが、魔獣王と融合してると言っても信じてもらえなくて、サポートに徹していたのだ。  追放の際のあまりにもひどい仕打ちに吹っ切れたカイトは、これからは誰にも何も奪われないように、最強のハンターになると決意する。  魔獣を討伐しまくり、様々な人たちから認められていくカイト。  途中で追放されたり、裏切られたり、そんな同じ境遇の者が仲間になって、ハンターライフをより満喫していた。  一方、カイトを追放したミリオンたちは、Sランクパーティーの座からあっという間に転げ落ちていき、最後には盛大に自滅してゆくのだった。 ※ヒロインの登場は遅めです。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】 佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。 新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。 「せめて回復魔法とかが良かった……」 戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。 「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」 家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。 「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」 そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。 絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。 これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。

処理中です...