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第八話 星の下で君の名を~エピローグに代えて
星の下で君の名を(1)
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クローバーの爽やかな香りが一瞬、辺りに立ちこめた。
まだ夜の八時である。
だが、周囲を見渡すことは難しかった。
山あいのキャンプ場には最小限の電灯しか灯されていないからだ。
おかげで一面の星空を堪能できるものの、外を歩くとなると足元はおぼつかなかった。
コテージをモブ子らに明け渡してテントエリアにそろりそろりとやってきたのは、大きなリュックサックを背負った三十路のポンコツ講師・花咲蓮である。
「大丈夫ですか、先生?」
気遣う声は彼の少し前から聞こえた。
こちらも同様、暗がりの中でおっかなびっくりといった歩調である。
足元のクローバーの葉を踏んでは、スニーカーの靴底を滑らせているようだ。
「懐中電灯の電池がすぐに切れちゃうなんてね。まさかのホラー展開かと思って、俺はちびりそうになったよ。あっ、実際には漏らしてないからね。大丈夫だよ」
「ちび……ははっ……」
呆れたような笑いは梗一郎のものであった。
蓮の冗談に、どう反応してよいのか計りかねたようで笑い声は乾いている。
「そうだ、待ってください」
上着のポケットをさぐる気配。
「どうしたんだい?」と尋ねた瞬間、暗闇に白い顔が浮かび上がった。
「ひいっ!」
情けない悲鳴とともに、蓮はクローバーの茂みに尻もちをついてしまう。
懐中電灯代わりにスマートフォンの照明をかざした梗一郎は、図らずも己の顔を下から煽るように照らしていたのだ。
端正な顔が闇の中、急に浮かびあがり蓮が腰を抜かしたというわけだ。
「ひ、ひどいじゃないか。小野くん!」
「すみません。驚かせるつもりじゃ……」
「ヒッ! わ、分かったから、その顔やめてくれよ」
「すみません。もともとこんな顔なんで」
「ヒイッ!」
まだ夜の八時である。
だが、周囲を見渡すことは難しかった。
山あいのキャンプ場には最小限の電灯しか灯されていないからだ。
おかげで一面の星空を堪能できるものの、外を歩くとなると足元はおぼつかなかった。
コテージをモブ子らに明け渡してテントエリアにそろりそろりとやってきたのは、大きなリュックサックを背負った三十路のポンコツ講師・花咲蓮である。
「大丈夫ですか、先生?」
気遣う声は彼の少し前から聞こえた。
こちらも同様、暗がりの中でおっかなびっくりといった歩調である。
足元のクローバーの葉を踏んでは、スニーカーの靴底を滑らせているようだ。
「懐中電灯の電池がすぐに切れちゃうなんてね。まさかのホラー展開かと思って、俺はちびりそうになったよ。あっ、実際には漏らしてないからね。大丈夫だよ」
「ちび……ははっ……」
呆れたような笑いは梗一郎のものであった。
蓮の冗談に、どう反応してよいのか計りかねたようで笑い声は乾いている。
「そうだ、待ってください」
上着のポケットをさぐる気配。
「どうしたんだい?」と尋ねた瞬間、暗闇に白い顔が浮かび上がった。
「ひいっ!」
情けない悲鳴とともに、蓮はクローバーの茂みに尻もちをついてしまう。
懐中電灯代わりにスマートフォンの照明をかざした梗一郎は、図らずも己の顔を下から煽るように照らしていたのだ。
端正な顔が闇の中、急に浮かびあがり蓮が腰を抜かしたというわけだ。
「ひ、ひどいじゃないか。小野くん!」
「すみません。驚かせるつもりじゃ……」
「ヒッ! わ、分かったから、その顔やめてくれよ」
「すみません。もともとこんな顔なんで」
「ヒイッ!」
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