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55 ■ Meant for each other 02 ■
しおりを挟むギンコにお礼を言って別れた後、私は図書室に行くことにした。
まだディナーまでに時間があるし、何か本を読んでおこうかと思って。
学校なんて初めてだし、実はちょっと授業についていけるか心配なのだ……。
というか、授業中寝ちゃわないかな?
ブルボンスでもよく船こいで鞭打たれた……自動回復なかったから辛かったよ!!
ちなみに半年間植え付けられた王妃教育は既に忘れていってる。ミギカラヒダリー。
うん、私にはとても王妃なんて無理ですね。
ココリーネはあれを小さい頃からずーっとやらされたのか、と思うとちょっと同情はある。
中身は男性でも王妃の素質あるんじゃない?
しかし、前世の記憶ってあったら面白いだろうなって昔は思ったけど、ココリーネみたいなパターンがあると思うと、前世の記憶ってない方が良い場合もあるんだね。
シスター・イラは思い出したほうが良かったねって思ったけど。
アカシアもそう言ってたし……。
それにしてもココリーネの夢……
「う……」
思い出して、ちょっと気持ち悪くなった。
まだ時間はありそうだけど、早めに解決しないとたまにこうやって思い出して気持ち悪くなりそう。
なんとかしたい。
「ふう……」
しっかし図書室……というか、これもう図書館だよね。
てかレインツリーにあった街の図書館なんかより断然……。
教会にも一応図書室、みたいな部屋あったけど、本がいっぱい置いてあるだけの部屋って感じだった。
しかし、ここは……目的の本を探すだけでめちゃくちゃ歩く。
「えーっと……」
普通科で習う……うーん……私はなんとなく魔法学の本を取った。
ブラウニーとアドルフさんと冒険行きたい……。
私も精霊魔法とか覚えられるのかな?
……あ、ギンコいるんだから今ならギンコに教えてもらえるかも?
旅立つ前に少しだけでも教えてもらおうかな?
……とか思いながらパラパラ精霊魔法の章を読む。
「……なるほどわからん!」
私は図書室のテーブルに突っ伏した。
ブラウニーは、こんなのどうやって覚えたというか理解したん?
頭の構造どうなってるの?……ああそうか、スパダリだからだ!
すべてはスパダリでかいけつする!
「どこがわからないのかな?」
その時、聞いたことのない声が降ってきた。
あ、司書さんかな。
図書室には司書さんがいて、本を管理してくれてる。
「……どこが……って。こんなの全部わからないよぉ~」
「ははは、それじゃどうしてあげたらいいか、わからないな」
「ですよね!あ、司書さんそういえば――」
振り返って司書さんを見た。
あれ?
私は首をかしげた。
「ん?」
そこには優しい瞳で微笑んでいる背の高い男性がいた。
あれ? 司書さんこんな人だったっけ。いや、ちがう。
金髪……というかプラチナブロンドで…これはなんとも美しい翠眼。
わー。私は絵心ないけど、絵が上手なら絵に描いてみたいって思うような綺麗な男の人だ。
ん? ちょっとリンデンに似てる?
「あれ? 新しい司書さん? 初めまして?」
「……ん? ……うん、初めまして」
司書さんはニッコリ微笑んだ。わあー絵になるうー。
ん? でも司書さんにしては、ずいぶんラフな格好だな。
シャツにズボンだけとか。
制服どした?
「司書さん制服は洗濯中なの?」
「……(くすっ)」
「?」
「あ、いや、ごめんね……精霊魔法を覚えたいの?」
「あ……うん。でも私にはハードルが高くて。……もうちょっと他のお勉強頑張らないといけないかも。この半年結構お勉強はしたんだけれど……」
ブルボンスで、あまりにもわらじ履かされすぎて、頭がごっちゃだよ……。
逆に頭悪くなった気がするまである。
ブラウニーならきっと全部マスターしてるんだろうな……。
「ふうん、そうか。えっとそうだな……」
司書さんが本棚に近づいて何冊か持ってきて聞かれた。
これはわかる? それはわかる? と終始優しく、わからないといったら工夫して別の観点から教えてくれたり。
「わあ、以前の教師の人と全然違う、すごくわかりやすい!
すごいね、司書さん、教師やったほうがいいんじゃないの?」
「いいね、教師。なろうかな?」
「あ、でも司書さんのほうがお給料いいのかな?」
私は頭をひねった。
司書さんは、やさしくフフ、と笑って懐中時計を見た。
「あ、そろそろ行かなきゃ」
「そっか、勉強教えてくれてありがとう。よかったらまた教えてね」
「いいよ。……じゃあね」
司書さんは優しく微笑んで、図書室から出ていった。
なんか癒された。
さっきの庭でのハプニングでちょっと心落ち着かなかったから。
私は図書室の窓から沈み始めた夕日を眺めた。
ブラウニーとアドルフさん、何してるのかな。
二人でご飯作ってるのかな……?
あ、そういえば、入学パーティとか言ってた!
ブラウニーに『報』書いておくろっと。
パートナーはブラウニー以外ありえないもの。
あ、そうだ!
『報』よりもかしこまったお手紙送っちゃおうかな!
令嬢っぽいよね!
応援ありがとうございます!
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