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しおりを挟むシャツには胸元に細かなタックと小さなフリルが付いている。白いシルクの生地は着心地が良いのに、背筋が伸びるような新鮮な気持ちがした。これまでこんな上等な服を着たことがないからだろう。
「ありがとう、ございます……」
アドウェルの穏やかな顔を間近で見て、世凪は心臓をドキドキさせながらお礼を口にする。この距離と眩しすぎる笑顔は、世凪には少し刺激が強い。
「じゃあ、朝食にしようか。今運ばせる」
言いながらアドウェルが世凪から離れる。少しだけほっとした世凪は部屋のベルを鳴らすアドウェルに視線を向けた。今日は生成のプルオーバーのシャツに黒いパンツを履いている。きっとラフな部屋着のようなものなのだろうが、そんな格好でもキラキラと眩しいくらいにカッコいい。
世凪がアドウェルにしばらく見惚れていると、部屋のドアがノックされ、ワゴンを押したメイドが現れた。ワゴンの上には食事が並んでいるようだ。
自分が思い描くお城の朝食はどんなものなのだろうと、少しわくわくして世凪がワゴンに近づく。けれどそこに載っているのは、厚切りのステーキとワイン、それにハード系のパンだけだった。
「……僕の理想の食事ってこんなの、だっけ……?」
世凪がぽつりと呟く。
確かに給料はよくないからこんな肉を食べることは滅多にないし、ワインだってコンビニの安い物しか飲めない。ただ、職業柄食事のバランスだけは気を付けているし、その方が美味しいと思っている。実はこういうワイルドな食事に憧れていたのだろうか、と考えるが、実際見ても『美味しそう』とは思えなかった。むしろ朝からこの肉の塊は重い。
「すまないが、しばらくはここで一人で食事をとってほしい。父や兄弟に紹介できるようになったら……」
「僕だから、この食事なんですか?」
世凪はここでは異世界から来た者になっている。そんな人物になにを与えたらいいのか分からなくて、無難な物になっているというなら、それも仕方ないと思う。次からこんな立派な肉は要らないと言えばいいだけだ。
ただ、みながこの食事を毎日毎食とっているのだとしたら、それは放っておけることではない。
「いや、そんな差別はしていない。俺も、これを食べてからここに来たし、家族もこれを食べている」
毒見が必要か、と訪ねられ、世凪は首を振った。
「これだけでは、栄養が足りていません。僕のような大人ならまだいいですが、成長期の子どもには、これでは全く栄養不足です」
「どういうこと、だ?」
世凪の勢いに圧されアドウェルがこちらに寄り、聞き返す。世凪は不思議そうな顔をしているアドウェルを見上げ、言葉を返した。
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