天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました

藤吉めぐみ

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21-3

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「アドウェル様、状況を伺ってもよろしいでしょうか……?」
 階段の手前にいた華やかなブルーのドレス姿の女性がこちらを見上げて声を掛ける。若く可愛らしいその人もアドウェルとの結婚を夢見て今日この場にいるのかもしれない。その気持ちを思うと少し複雑だが、世凪はアドウェルの手を離すつもりはなかった。
 アドウェルもそのつもりらしく、世凪の手を握ったまま、会場へと体を翻した。一瞬だけ世凪を見てから、その口を開く。
「……今日は、俺の為に集まっていただいたこと、心から礼を言う。それから……俺自身も今日が婚約者を決めるための催しを兼ねていることも理解している。だからこそ、今この場で告げたい。アドウェル・ドーヴェルジュは、今隣にいる石丸世凪を伴侶に迎える」
 騒めきはどよめきと悲鳴に変わり、やがて拍手が起こった。
「世凪、ここにもう用はない。行こう」
 その拍手を合図にしたようにアドウェルが世凪の手を引き歩き出す。世凪はそれに惹かれるように歩き出した。けれど、いくらも行かないうちに、その足が止まる。目の前には、可愛らしい女性が立っていた。さっき、アドウェルに声を掛けた女性だ。近くで見ると益々キレイな人だと思えた。
「なぜ、彼なのですか……? 私は小さい頃からあなたの隣に立つことを夢見ていました。今日、その夢が叶うと思っていたのに……」
 大きな瞳から雫が零れ落ち、頬を濡らしている。以前の世凪なら、こんな場面に出くわしたら、多分手を離して彼女に譲っていただろう。
 きっとここに来るまでに色々な事があって、世凪と同じようにアドウェルに惹かれたはずだ。そしてアドウェルの隣に立てるならと努力したこともたくさんあると思う。
 だからこそ、世凪はアドウェルの隣で同じだけの努力をしたいと思った。だから、譲れない。
「それは……」
「認めてもらえるようにします」
 弁解をしようとしたアドウェルの言葉に、世凪がそう重ねると、女性はもちろん、アドウェルも世凪を見つめた。
「アドウェル様を想って美しさを維持したり、アドウェル様の目に留まるように瞳と同じ色のドレスを用意したり、他にもたくさん色々な努力をしたのだと思います。だからこそ、僕は同じだけ……それ以上に努力をして、アドウェル様の隣は世凪がいいと思ってもらえるようになります。だから……どうか見守ってください」
 世凪が頭を下げると、アドウェルはそんな世凪の肩を抱き寄せた。それを見ていた女性が俯いて静かに道を開ける。アドウェルはそのまま何も言わずに世凪を連れて会場を後にした。
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