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しおりを挟む「井波くん、ついでにおれにもおかわり!」
空になった茶碗を勢いよく聡祐に差し出した湊は、炊飯器から白飯をよそっていた聡祐に驚いた顔をされた。
「いいけど……今日はよく食べるな、野島」
聡祐が大盛りにした自分の茶碗をテーブルに置いて、代わりに湊の茶碗を受け取る。食卓には聡祐のリクエストで作ったトンカツを中心にした食事が並べられていて、聡祐は白飯が進むらしく、いつも通りおかわりをしていたが、元々小食の湊はいつもご飯は一杯で済んでいる。だから珍しいようだ。
「珍しいっていうか、多分こんなに食べるの初めて」
「無理するなよ」
これで終わりな、と聡祐に言われ、湊は頷きながら聡祐から茶碗を受け取った。
「帰ってきてからなんかイライラしてたけど、なんかあった?」
優しく問われ、湊は箸を置いて少しだけ俯いた。聡祐には関係ないことなのにイライラをぶつけてしまっていたのだろうか――そう思うと申し訳ない気分になる。
「何もない。ちょっとだけ嫌なことがあって……ごめんね、井波くん関係ないのに。おれなんかのこと気にさせて、ごめん」
「関係ないってことはないだろ。こうやって一緒に飯食う仲なんだし、部屋だって隣なんだし」
「けど、それだけを理由に巻き込んでいいなんてことはないし」
湊が言うと、聡祐は少し怒った表情を見せて、巻き込めよ、と返した。
「同じ高校出て、同じアパートに住んで、同じ釜の飯食って……そういう関係なのに、関係ないって言われる方が寂しい」
最後は少し悲しそうな顔をした聡祐を見て、湊の胸は少し痛んだ。
聡祐はちゃんと自分の事を友達だと思ってくれている。少なくとも春よりはきっと聡祐の中で自分の存在は大きくなってくれているのだろう。
「……そっか。ごめん、井波くん」
関係ないという言葉は、気を使って言っているつもりでも時に人を傷つける一言になる。自分だって聡祐に関係ないと言われたら、やっぱり悲しいかもしれない。
「いや、いいって。それ自体を解決してやれないけど愚痴とか聞くし、ストレス発散には付き合うよ」
優しい言葉に湊の胸が熱くなる。優しいのはずっと前から知っていた。明るくていつも笑顔で――そんなことはずっと遠くから見ているだけでわかっていた。それでもこうして改めてその優しさとか笑顔とかが自分に向けられると、やっぱり好きだと再認識してしまう。これが惚れ直すという感情なのだろう。
湊が、ありがとう、と小さく呟いた時だった。床に放り投げていたスマホが音を立てる。慌てて引き寄せると、神崎からのメッセージだった。
「そういえばさっきも鳴ってたな、トンカツ揚げてる時」
聡祐が食事の続きをしながら言う。確かに神崎からのメッセージと着信が残っていた。『もう家に居る?』
『誰と会ってる?』
『何してる?』
そんなメッセージが五分おきに入っていた。背中がすうっと冷えていくような感覚に湊は思わず唇を噛む。
きっとあんな別れ方をしたせいだろう。監視されているようで怖かった。
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